51話:ギルドマスターからの呼び出し
評価が下がってしまいましたが、上げられるように頑張ります!
5日程前の事。僕達がギルドマスターから直々に依頼されたクエスト、地底竜の討伐。
それを何とか討伐し、リコティ王国のギルドに戻って来た時の事だった。
「えっ?またですか?」
「はい、ギルドマスターから直々に話があると…」
受付嬢のアミーラさんからそう告げられ、僕達は案内された部屋で待つことになった。
数分後に扉が開かれ、以前会ったギルドマスターさんが入ってきた。
「待たせてしまってすまないね。地底竜の討伐、ご苦労であった。これで君達の実力は確立された。君達ならこの案件も任せられる」
「…?なんの事ですか?」
ああすまない、っと言ったギルドマスターは、1枚の羊皮紙を渡してくる。
それを見ると、何かの情報が載っていた。僕は翻訳魔法を使用して解読する。
「ここリコティ王国に“星屑の厄“が近付いている……数日の内に到着する…ですか」
「星屑の厄ですって!?それは本当なんですか!?」
僕が言葉にして一部を読むと、隣に座っているシアリーが驚きの声を上げた。何の事だか分からない…
「あぁ、この国に星屑の厄が迫っている。知っての通り、星屑の厄は厄災の十二使徒から生まれる厄だ。つまり星屑の厄が現れたということは、厄災の十二使徒が現れたと言うこと…」
『厄災の十二使徒…それってセレナが前に言ってた奴?』
『ああ、そうだ。忌々しい奴等だ。奴等のせいで我の体はこんな小さくなってしまったのだからな』
数十年程前に現れた十二使徒・レオとの戦闘でセレナの体に厄がついてしまい、今は小さな蜥蜴になってしまったらしい。
「僕達はその星屑の厄…と戦えば良いんですか?」
「ああ。勿論君達だけでは不可能だろう。うちのギルド内にいる高ランクの冒険者にも参加を呼び掛けている」
成る程、流石に僕達2人と1匹じゃキツイと感じていた。高ランクの冒険者達がいれば安心は出来る。
「ですが…何故僕達に?適任者はもっといる筈です。いくら人手が足りないとしても、低ランクの僕達に声を掛けるなんて…他の冒険者にもそうしてるんですか?」
「いや、Bランク以下の冒険者に声を掛けたのは君達だけだ。しかし君達はギルドカードを作る時から異次元の強さを持った者達だったから声を掛けた。特にコウキ君、君だよ」
僕ですか?っと思わず呟いてしまう。確かにギルドカードを作った時、水晶が割れるという事があったが…それだけでその待遇は変だろう。
「それに地底竜は本来Fランクじゃ討伐は不可能。少なくともBランクの強さは無ければな」
え…?
『ど、どういう事セレナ!?地底竜は雑魚って言ってたじゃん!』
『地底竜は雑魚だが?』
『いやいやいや…それはセレナ基準でしょ…?』
思い返して見れば、討伐が不可能な場合は撤退せよ、とか書いてあったり、魔法を何発も当ててるのにやけに硬いと思ってたけど…
「シアリーは知ってた…?」
「知らなかったわ…私の故郷には地底竜は出現しないもの…」
顔を青くしながらそう言うシアリー。僕も多分顔が青いと思う…
「どうだろう、コウキ君。星屑の厄の討伐戦、引き受けてはくれないだろうか」
頭を下げてそう言ったギルドマスター。僕は少し考える。隣にいるシアリーに視線を向けると、覚悟を決めた目で頷いた。シアリーは参加するようだ。
だがいくらチートがあっても、油断は出来ない。少しでも勝てる確率を上げたい。
「分かりました。星屑の厄の討伐戦、参加させてもらいます。ただ1つお願いがあるんですが…良いですか?」
「ありがとう、コウキ君。それでお願いとはなんだい?」
「Eランク冒険者のアキラも参加させて欲しいんです。彼ならきっと戦力になってくれます」
僕がそう言うと、シアリーと共にギルドマスターは驚いた表情をする。少し眉間にシワを寄せたギルドマスターは、口を開いた。
「アキラ君、か…確かに誠実で謙虚で信頼はある冒険者だが……彼はいたって普通の冒険者だぞ?」
やはりアキラはギルドにも実力を隠しているようだ。普通の冒険者にあの変異種の攻撃をいなす事は出来ない筈だ。
しかし驚いたな…ギルドマスターさえ彼をあまり認知していないとは…アキラが一方的に知っていたのか?
「お願いします、アキラならきっと百人力です」
「ふむ……コウキ君がそう言うならば…」
何とかアキラを討伐戦に参加させる事に成功した。実力を隠しているアキラには悪いが、国の人々を救う為ならきっと納得してくれる筈だ。
『斬られ…ないよね?』
『……さぁな。恐らく…平気だろうが』
「ギルドマスター、アキラ君をお連れしました」
「入ってくれ」
暫く待っていると、アミーラさんの声が扉越しに聞こえてくる。どうやらアキラは来てくれたようだ。
「突然お呼び立てして悪かったね。座ってくれ」
「いえ、全く問題は無いですよ」
笑うのを我慢しているのだろうか…口元がニマニマしているアキラ。目もハイライトが入っていて、いつもと雰囲気が全然違う。
「や、やあアキラ」
「…………よぉ」
ゾクッ…
僕の事を発見した途端、目のハイライトは消え、真っ黒で虚ろな目に変化し、口元の緩みが全て無くなった。
しかも背中になんかついてるし…
「また会ったわね、アキラ!」
「おう、久しぶりだな」
シアリーとのやり取りは一見普通の会話だ。だがアキラの本性までとはいかないが、大体を掴めてきている僕にとっては、アキラは怒りを抱いているようにしか見えない。
「アキラ君も加わった所で、改めて説明する」
こうして僕は、額に冷や汗をかきながらギルドマスターの説明を聞くのであった。
アキラは少し口を開けてアホ面をしている…こうやって無能をふりをしているのか…?何を考えているか全く分からない…
───────────
大嫌いな茶髪受付嬢に呼ばれたと思った矢先、なんとギルドマスターからお話があるとの事。俺は嬉しくってウキウキの状態で茶髪受付嬢の後に着いていった。
『キターッ!ギルドマスターからのお呼びだし!こりゃあ昇進間違いなしっすわ』
て…思ってましたよ、さっきまでは。
扉を開けて部屋に入ると、お高そうな椅子に座っている渋い男性。前に見たギルドマスターだ。ここまでは嬉しかった。
「や、やぁアキラ」
ナゼコイツガイルノ…?なろう太郎がよぉ…!!
「…………よぉ」
何故だ?俺だけ呼ばれたんじゃないのか?昇進…じゃないのか?特例の。
こいつは前にもギルドマスターからクエスト受けたって聞いたから、もう特例昇進してるだろうけど…
俺は?何の為に呼ばれたの?
『もしや……新手の嫌がらせか?俺がなろう太郎嫌いって知っててやってるのか?そうなのか?』
質が悪すぎるだろ…
「また会ったわね、アキラ!」
「おう、久しぶりだな」
えっと…ホントごめん、名前なんだっけ…?あークソ、ヒロインって呼んでた影響が出たな。
もうヒロ・インで良くね?
『なんかめっちゃなろう太郎の蜥蜴が見てくるやん…え、なに…?怖いんだけど…』
「アキラ君も加わった所で、改めて説明する」
真剣な表情になったギルドマスター。あーこれイベント発生ですね。何だろう…なろう太郎と同伴のイベントって何?俺またモブ化しちゃうじゃん…
『イライラしてきたら喉乾いたな……あー…スポーツドリンクとか飲みたい…』
出来れば炭酸飲料水がいいな…でも砂糖高いしな…
どっかに転移してきたチートな薬師いないかな……美味の味、美味の味(裏声)
「3日後に到着予定とされる星屑の厄を、リコティ王国のすぐ前にある、エルータ草原にて迎え撃つ。ここまでで質問はあるな?」
ふむ…大体分かった。その星屑の厄って奴を皆で倒しましょ~って言う名の、あれ?俺また何かやっちゃいました?だろ?どうせ隣にいるなろう太郎が全部かっさらうんだろう。
「1つ質問よろしいですか?」
「構わない。言ってくれ」
「ありがとうございます。では質問なのですが、何故俺が呼ばれたんですか?」
そう、そこよ。俺Eランクなんだよ。渡された羊皮紙を見れば高ランクの人ばかり参加する事になってる。俺…実力的にキツイんだが…
「それは僕がアキラを推薦したんだよ」
「コウキが…?」
何してくれちゃってるの…?なろう太郎君よぉ…!俺はお前みたいにチートは無いのっ!……言わせるなよ。まだ時期が速いんだよ、俺には。
しかも推薦だろ?めっちゃっ期待されちゃうじゃん…
「アキラの気持ちは分かる…でも力を貸してくれないか…?」
「んー……まぁ…頑張ってみるよ」
そんな顔されたら断れないだろうが。うーん…今回はモブになってやるよ。今回だけだからな!
やる事になったからには期待に応えられるよう頑張らないとな。
「アキラ君も参加してくれてありがとう。では3日後の早朝、リコティ王国前門に集まってくれ」
「「「はい」」」
こうしてイベント説明が終了。各々解散となった訳なのだが、、
「なんで着いてくるんだ…?」
「いや…ちゃんと謝りたくて…」
謝る?何をだ?俺に無いチートを見せびらかしてくる事か?それらな謝られてももう──許せないよねっ!!!
「何をだ?」
「アキラは力を抑えてるのに、それを話してしまった事を…」
「……は?」
えっと……もしかして喧嘩売られてるのか?それとも精神的な嫌がらせ?どちらにしても質悪いぞお前…!
俺が力を隠してるぅ!?バカ言え、こっちは全力じゃ!!
「別に隠してなんかないんだが…?」
「僕には分かるよ、アキラが強いって事が」
俺より遥かに強いお前がそれを言うのか…?確かにある程度の強さはあると思ってるよ。でもそれは一般レベルの話であって、、
「………コウキ、お前は何か誤解を──」
「えっと、それだけだからっ!じゃ3日後に!!」
「あ、おいっ!!……言いたいことだけ言いやがって…」
散々俺を煽り、言い返す暇さえ与えない。これが【なろう】系の主人公か…!恐ろしい奴め…!
『はぁ…なんか疲れた…誤解を解くのは3日後の時にしよう。少しくらいなら時間も取れるだろうし』
背中のシアンを潰さないように座るのに結構筋肉使ったから、多分それが影響して疲れたんだろうけど。
俺はそう納得し、背中のシアンを優しく撫でながら帰路へと着いた。
星屑の厄
厄災の十二使徒から生まれるという魔物。かなりの強さを誇り、Cランク冒険者では手に余る程。
厄災の十二使徒が現れる前兆として現れると言われている。
また、目的も不明であり、人が多くいる場所に向けて進み続けるのでは?と言われている。
 




