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50話:俺の見せ場が…

ここで50話です。見ていただきありがとうございます!

「あんまり遠くに行くなよー!」


シアンが羽化してから2日後。俺は以前やった通りに、背中にシアンをくっ付けて山までやって来ている。

お陰でギルドではファンシー野郎って呼びれてるらしい…(ミックさんからの情報)


さっきもこの山まで来る途中に、町行く子供達に指を指されて虫男って笑いながら言われたしな。クソガキが…!


「はぁ…ボッチ体質とかじゃない筈なんだがなぁ…」


主人公の設定でよくあるボッチ体質ではないし、1人で何もかもこなす事をカッコいいとも思ってないのにこの仕打ち。酷すぎる。

まぁ…町に癖が強すぎる奴がいたら怖いよな。俺だって距離を取るだろうし。


それは兎も角、俺は空を自由に飛んでいるシアンを地上から追い掛けている。そんなに速く飛んでないから、一定のペースで歩けるのはありがたい。


「どこ行きたいんだ?シアン」


ずっと同じ方向へと進んでいくシアンの後を追い続ける事数分。シアンがゆっくりと地上に降りてくる。どうやら目的の場所についたようだ。


「これは…蜂蜜……いや樹液か?」


巨大な木から溢れんばかりに垂れている琥珀色の液体。巣は無いから多分樹液。シアンはこの樹液に釣られて来たらしい。

シアンは木に止まって、垂れている樹液を銀色のストローでチウチウしている。


「甘ったるいな…むせそう」


甘い匂いが漂うこの空間。甘いのは好きだが、ここまで強い匂いはキツイ。たまに駅とかですれ違う女性の強い香水並みにキツイ。


「でもまぁ…シアンには何度も助けてもらってるしな…我慢するか」


俺は少し距離を取って、美味しそうに吸引するシアンを見守った。…最近見守ってばっかだな。

それは置いといて、木についている引っ掻き跡が気になって仕方ない。俺の【なろう】センサーが告げている。イベント起こるよ、と…


ガサッ…


俺とは反対側にある茂みが揺れて、ナニカが此方にやって来る音が聞こえる。まぁイベントなんだろうが、一様細剣を抜いて構える。


「シアン…用心しろよ、相手がどんな──ッ!!!!」


ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!!

茂みから露になった魔物の姿を見て俺は戦慄する。本能が告げているとかじゃない。()()()()()()ヤバい奴が姿を現した。


「シアンッ!!逃げるぞ、今すぐに!!」


俺はシアンに向かって大声で叫ぶ。アイツはヤバい。文字に起こすだけでヤバい奴が姿を現すなんて反則だろ。兎に角アイツの説明は出来ない。姿は勿論、色も何もかもが説明出来ない。しちゃいけない。


俺は急いで街まで走って逃げた。[逃走Ⅴ]のお陰か、異常な速さで森を駆け抜けた。

街ギリギリになったら、シアンを背中に背負って街の中へと入る。俺は早足で[ニューカマー・ヘブン]へと向かった。





「あら…そんなに息を切らしてどうしたの?何か怖いことでもあった?お姉さんが抱き締めて──」


「いえそれは大丈夫です。…ただ森でヤバい奴に会っただけですから…」


店に駆け込んだ俺は、息を整えながらプーちゃんママにそう告げた。後プーちゃんママに抱き締められたら、軽く背骨逝っちゃうから、、


「ヤバい奴?また変異種でも出たの?」


「いえ…その……えっと、熊が…」


「熊?あーもしかして全身黄色で上半身が赤の─「わあー!!わあー!!」─ど、どうしたの?」


な、なんて恐ろしい事を言おうとするんだこの人は…!あの魔物には触れちゃダメなんだよ!!しかもプーちゃんママがそれ言ったらアウトだろうが!


「あの熊は此方から仕掛けないと攻撃してこない温厚な熊よ?蜂蜜大好きな可愛いらしい熊で、子供達にも人気があるし」


そんな事言ってるんじゃないんだよ!あの熊のビジュアルその物がアウトなんだよ。主に色合いが。異世界に輸入とか頭バグってんのか?!?


「異世界…ある意味怖い」


────────────


次の日の朝。

俺は日課のトレーニングをこなして、木に大胆に隠れ…きれてないけど隠れてるシアンに会いに、小庭へと向かう。

昨日は結局魔物をシアンに与えられなかったので、実費で肉を与えた。上手そうに食ってたよ。高かったんだから当たり前なんだけども。


「おはようシアン。今日も元気だな」


俺の姿が見えた瞬間木から降りて来て、すり寄って来るシアンに可愛いと感じる。朝から元気一杯だ。


「今日はちゃんとご飯食べさせるからな」


俺がそう言うと、シアンは羽をパタパタさせる。うん、喜んでるな。多分だけど。

今日はクエストを受けると同時に、ご飯を与えよう。与えるっつても勝手に捕まえてくるんだけども。






「えっと……この蛇顔鳥(スネークフェイス)とかどうでしょう」


「じゃあそれでお願いします」


いつも通りミックさんのおすすめクエストを受ける。視線は俺の背中に向いている。いつも通りだ。


『ギルド内からヤバい奴の視線を向けられる…解せぬ。こんなにシアンは綺麗なのに』


お陰で絡まれる事は無い。でも俺は逆にそれを望んでるっていうね。

まあいい、俺は気にしない。気にしないんだ…!




いつもの森で蛇顔鳥を探す。名前から察するに、鳥だけど蛇なんだろう。うん、そのままだね。


「崖とかにいるらしいが……あ、あれだ絶対」


崖に止まっている蛇のような頭をしたカラスを発見する。流石に届かないから、向こうから来てもらおう。

適当に拾った石を奴に向けて投げる。当たりはしなかったが、俺の事を見つけてもらう事は成功した。


「シャカーァッ!!」


「来たぞシアン!気を付けろよ!」


蛇のようなカラスのような鳴き声で此方に向かって飛んで来る蛇顔鳥。遠くにいた為気付かなかったが、奴も結構なサイズだ。


俺は森に向かって走り出して誘き寄せる。向こうには悪いが、自分が得意な場所で戦わせてもらう。

俺の事を猛スピードで追う蛇顔鳥だが、[逃走Ⅴ]のスピードにはついてこれない。


「ここでッ!!」


俺は走るのを止め、シャトルランのように右足で地面を蹴って逆走する。俺は細剣を抜剣し、体を捻りながら飛び上がる。


「シャカァーッ!?!?」


俺を追うために猛スピードで向かって来た蛇顔鳥のスピードを利用して、俺は縦回転斬りを放つ。

真っ直ぐ突っ込んできた蛇顔鳥は、回避する事は出来ずに、縦に切り裂かれる。


「流石に真っ二つ、とはいかないか」


これは日本刀じゃないからそんな斬れない。何故異世界の剣はあんなに斬れるのだろうか…

それは兎も角、深傷を負った蛇顔鳥は体制を低くして、俺の事を睨み付けてくる。俺はその眼を見てしまった。


「ッ…!?動けない…!」


奴の眼を見ると、体が言うことを聞かなくなる。クソッ…!リサーチ不足だ…!

瞼を閉じれば解かれるだろうか。しかしその間に奴は間違いなく飛び掛かる。


「ッ……仕方ない」


俺は目を閉じ、耳を澄ませる。

音を聞け、聞き逃すな。奴の動きを音で判別しろ。【やれるか】じゃない【やるんだ】


……

………

あれ…

向かって来る筈の蛇顔鳥の反応が無い。いやそもそも体が動くぞ…?


俺はゆっくりと目を開いた。そしてそこで見た景色は、、


「シアン……お前…………うっわ…」


俺と蛇顔鳥の距離は僅か1mまで迫っていた。どうやら目を閉じている間に接近したようだ。しかし奴はそこから動くな事は無かった。


シアンがやったのだ。いや言葉が違うな、殺ったのだ。

銀色のストローで、蛇顔鳥の頭から顎にかけて、その……刺さっている。貫通しているのだ。

後はもう……はい…


「めっちゃカッコつけて目を閉じたのに……良いとこ取りされちったな…」


それ以前に縦回転斬りなんて普通やらないような事をして盛り上げたのになぁ……いや助かったけどさ…もう少し俺を信じて欲しかった。


────────────


「はぁ……俺の見せ場が…」


その後は蛇顔鳥退治の証拠に、体の部位を取ってその場を後にした。

蛇顔鳥の死骸を美味しそうに食べるシアンはカットです。とても世間の皆様には見せられません。


俺はまたシアンを背中に背負って、報酬を貰うためにギルドへと足を運んだ。1匹だけが目的の退治だったから、そこそこ強かった。報酬の小金貨が楽しみだ。


「あっ!いたいた!アキラ君、ちょっと来てっ!!」


「はい?」


んだよ茶髪受付嬢。お前が俺のこと田舎者扱いした事忘れてないぞ。しかもやたら高圧的だし…ふざけんなこの野郎。なろう太郎と同格でお前が嫌いだっ!#茶髪受付嬢を許すな で拡散お願いします。


「ギルドマスターがアキラ君の事呼んでるんだよっ!速く速くっ!」


………は?

音も無く殺したシアンは強い(確信)


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