45話:やっぱチート持ってるじゃねぇか!
「へぇー、アキラは僕より1つ上なんだ」
なろう太郎君ことコウキ君が受けたクエストは、森に巣くうキラービーの討伐。
Cランクのクエストなのだが、パーティーを組んでいるので問題は無い。
因みになろう太郎君の話は特に聞いていない。今もなんか年齢とかの説明を受けているが、俺には興味無い。どうせこの後イレギュラーが起きて、俺は『す、凄い…』って言わされるんだ。
「やっぱり東の国ってあるんだな。僕も行ってみたいよ」
「ああ、良いところだぞ(多分)。俺はてっきりなろう──コウキも同じ国の出身かと思ってたんだがな」
全部嘘。それはそれは真っ赤っかな。
ここで俺が異世界から来た何て言ったらどうなるなわかったもんじゃない。
一緒に冒険しようなんて言われた暁にはどうなると思う?俺もわからん!
「もうっ…話してばかりいないで集中しなさいよね、コウキ。アキラが困ってるじゃない」
そうだよ。自重して、どうぞ。
「えぇ~!?そ、そんなに話してないと思うんだけどなぁ…」
十分話してたよ。似てる奴がいてはしゃいだんだな?分かるけど…ごめん、俺お前嫌いだわ。何が嫌だとか無いけど…何か嫌。
「なぁコウキ、シアリーとはどこで知り合ったんだ?」
「えっ!?どうしたんだよ急に」
「いや、あんな美人さんと知り合うにはどうすればいいのかなって」
主人公の友達でよくいる、【彼女を欲しがっている友人】の役を演じる。どうだ俺の演技力、中々良いだろ?こうすると情報を引き出せるんだぜ?
「べ、別に普通だよ……路地で絡まれてたから助けたのがきっかけだよ」
「………へぇ」
やっぱこいつ嫌いだ。
恐ろしいな…これが主人公補正ってやつか。俺は何度も路地裏で人助けしたが…ガキだったり若い兄ちゃん達のケンカだったりとヒロインはいなかった。
『そういえば…初めて助けたあの子、元気にしてるかな?急にいなくなったけど』
「あっ!いた!」
「うるさいわよ、コウキ。キラービーに見つかっちゃうでしょ!」
なろう太郎とヒロインが言うように、大きな木に巨大な巣があり、何匹も空を飛んでいる。
蜂って言うとヘルキング・ホーネットを思い出すが、アイツと比べると小さく見えるが、、
「デッカイな…人間並の大きさはあるぞ…」
「人を殺す蜂って言われてるからね…あれでも小さい方よ」
お二人の言うとおり、かなり蜂がデカイのだ。大体1m程だろうか?大きければ切りやすいから助かるが。
「どうする?ばか正直に真っ向から戦うか?」
「…いや、中にも沢山いるだろうから…火魔法を使って燃やそう」
「賛成ね」
火魔法ねぇ…?どれくらいの威力なのか、大方予想はつくけども。いつでも拍手が出来るようにしとくか。
「[極炎の灯火]ッ!!」
「うっわ…」
巣に向けて手をかざし、何かスッゲェ厨二臭い技目を叫んで巨大な火球を飛ばす。
着弾した巣は大爆発。思わず耳を塞いだ。
「よしっ!当たった!」
「ホントデタラメな魔力ね…」
あーはいはい、チートチート。ホントデタラメな力だな。羨ましいとは思うけども。
もはやキラービーが可哀想だな。いきなり爆発させられるってキツいよな。
「何匹か生き残ってるな」
「あれっ?火力弱かったかなぁ…」
「火力があっても制度が悪いのよ、コウキは」
はいはい、そういうのは後でやってくれ。
ざっと…15匹だろうか。さて…どうするか。近距離になれば切れるが。
「俺は細剣があるけど、二人はどうする?コウキはまだ魔力残ってるか?」
「僕はまだ全然撃てるよ」
「私はコウキに貰ったコレがあるわ」
|ヒロインが取り出したのは、ドミネー○ーみたいな銃。俺は頭の血管がブチキレる程に怒りが湧いてくる。こりゃあ…頭にきますよ!お前は背中に背負ってる弓使え!
「……魔銃かよ」
「えっ!?アキラ知ってるの!?」
おっと、口が滑ってしまったな。
ちょっと都合が悪いので俺はコウキを無視して、接近してきたキラービーをかわして、[霧雪]を使用して反撃の三段突きをキラービーの頭、胸、尻に放つ。
「ギ…ギギィ…」
「ふぅ…通用して良かった。向こうは…」
ヒロインはバンバンと弾丸を放ち、特に苦戦も無くキラービーの頭を粉砕していく。
なろう主人公君の方は、小さな水の球をマシンガンのように発射して蜂を蜂の巣にしていく。
蜂だけに。
──は?
「俺いるか?これ…」
俺がやっと1匹倒したっていうのに…強力な遠距離攻撃がある奴は羨ましいよ。はぁ…
「ふぅ…こんなもんかな?結構数が多くて大変だったね」
「そう?私は黒悪夢があったから余裕だったよ?」
嘘つけ、大変そうじゃなかっただろうが!そしてお前は借り物の力だろうが!それはっ…!ズルいぞ!
因みに俺は4匹だけ倒した。魔法とか弾丸の音がデカくて、アイツらの方に寄って行ってしまうから全然倒せなかった。
『さて…前座は終わったな。ボスはいつ来るかねぇ…』
俺の予想では間違いなく補正の掛かっているなろう太郎君。なら十中八九、序盤に戦うには強すぎる相手が出る。これ、あると思います。
「魔物の部位を取ったら帰ろ──っ!!二人とも危ない!!」
何かを察知したなろう太郎は、俺とヒロインを押し出した。
一体何が?とは考えなくても分かる。どうやらボス戦が始まったようだ。
「痛っ…なにするのよコウキ!!」
「押したのはごめん、でも今はそれどころじゃ無い!」
なろう太郎が指差す先には、体から青白いプラズマが出た蜂がいる。
キラービーの変異種だろうか。本来なら黄色と黒色の蜂だが、水色と黒色となっている。
「あれは…!まさか変異種!?そんな…キラービーの変異種なんて私達じゃ相手にならないわよ!」
『体からバチバチ電気が漏れてる…アイツ速いな、多分』
俺がそう考えていると、変異種は俺達に向かって高速で接近してくる。そのスピードはとても目には追えない。
俺は回避しよう左へ飛ぶと、なろう太郎とヒロインは防御壁のような物に包まれる。
俺も入れろや。
「はっや!!クソッ…切る前にいなくなる…!」
雷のようにジグザグと高速で移動する変異種に、俺は切る前にかわされてしまう。
「速い…!それなら![高速化]」
なろう太郎は[高速化]と唱えると、目に追えないスピードで動き始めた。
よく分かんないが、変異種のスピードに対応しているようで、何かがぶつかり合うような音が聞こえる。
「やっぱ俺いら──っ!!?」
俺が愚痴を溢そうとした瞬間、俺に青白い光が急接近してくる。俺は咄嗟に細剣でいなした。
細剣に伝わる衝撃に手が痺れる。
「あっぶな…ミルの剣撃を受けてなかったら危なかったぞ…」
どうやら奴は標的を変えたようだ。
不味いな…俺じゃ変異種の速さに追い付けない。カウンターならいけるか…?
「[重力増加]!!」
俺が額に汗を出しながら周りを警戒していると、森になろう太郎の声が響き渡る。
するとドカンッ!という地響きと共に地面が窪む。見ればその中心に変異種がいた。
どうやらなろう太郎が魔法で動けなくしたようだ。始めからやれ。
「危なかった…大丈夫だった?アキラ」
「あぁ、なんとか」
どうせ手を出すならもっと早くが良かった…中途半端に助けないでくれよ…
まぁ助かったから口に出して文句は言わないけど。
「まさかキラービーの変異種が出るなんて…ホンットコウキといると厄介事しか起きないわね」
それな
「そ、それは僕のせいじゃ無いだろっ!」
お前のせいだよ
「まぁまぁ…コウキが倒してくれたんだから良いじゃないか。部位を取ってギルドに戻ろう」
もう面倒だから帰ろうよ…お前らといるとまた厄介なイベントが起きて、俺がモブ化しちゃう。さっきだって俺の出番取られたし…
「そうだね、またあんなのが来たら困るし」
なろう太郎の許可もおりたので、俺達は急いで部位を取り、ギルドへと向かった。
どうせギルドで騒ぎになるぞ。
『そういえばヒロイン、お決まりの棒立ちだったな』
「えぇぇ!!?キラービーの変異種に遭遇したんですか!?」
ほらな、受付嬢に事情を説明したなろう太郎が騒がれている。現実で【なろう】作品を見ているようで面白いが、なんかちょっと嫌だ。
「はぁ…早く報酬貰えないかな……」
「ん?何か言った?アキラ」
「いや、何でもないよ」
引き気味のなろう太郎と興奮状態の受付嬢が話している様子を少し離れた椅子に座って小さくそう言うと、反対側に座っているシアリーまで届いてしまった。ちゃんと聞かれてなくて良かった。
「………」
「………」
何か緑の蜥蜴が俺を見つめてくる。スッゲェ見つめてくる。キラービーと戦ってる時から思ってたけど…何か言いたい事でもあるのかよ…
「ごめんごめん、結構手間取っちゃった」
遅いんだよ。ったく…人を待たせる奴は嫌われるぞ。あーやってられない、撤収撤収。
「気にするな、あの人頭おかしいから」
茶髪受付嬢を許すな。
それは兎も角、なろう太郎が報酬を持ってきた。
「小金貨3枚と大銀貨1枚か」
日本円で3万5000円。3人で分けるなら1人……あーめんどくせぇ。
「活躍したのはコウキだから、コウキは小金貨1枚と大銀貨1枚でいいんじゃねぇか?」
「そうね、私もそれでいいわ」
「えっ!?いやいや、ちゃんと分けようよ!1人少なくなっちゃうけど、それは僕で──」
「いいよ、面倒臭いから」
俺は半ば強引に言い切って、先にお金を貰う。先に貰っちゃえば残ったのを受け取るしかないからな。
「んじゃ俺用事あるから行くな。またな、コウキ、シアリー」
俺は2人に手を振ってギルドから出た。
…別に逃げた訳じゃないからな!?シアンの様子が心配だったからだからな!
──────────
「あぁ行っちゃった…もっと話したかったんだけどなぁ」
「また会えるわよ。どうせしばらくはこの国に滞在するんだし」
たしかにそうだな。その時はまたパーティーを組んで貰おう。なんだかアキラと話してると日本にいるみたいで落ち着くんだよな。黒髪だからかな?
『コウキよ、我はあの者は怪しく感じる。あの目は嘘をついている目だ』
僕の肩に乗っている相棒のセレナから脳に直接話し掛けられる。
『えっ?アキラが?別に普通だったと思うけど…』
『………奴はあの変異種の速度に反応していた。加速魔法無しでだ。高がEランクの冒険者に反応できる訳が無い』
たしかに言われてみればそうだな…アキラはまるで見えているように細剣でいなしていた。僕でも[高速化]がないと見えなかったのに…
『警戒は怠るな。お前に死なれては困るからな』
『分かってるよ、セレナ』
僕は優しくセレナな撫でると、ぐるぐると喉を鳴らしてすり寄ってきた。
あまりの可愛さに、シアリーに怒られるまでなで続けた。
天草光輝 17歳
学校の帰り道で、轢かれそうになった幼馴染みを助けて代わりにトラックにはねられた死亡した筈だが、気が付いたら何も無い真っ白な空間で神様と出会い、色々あって転移させて貰った。
千の魔法を使えるのと、莫大な魔力のチートを貰い、異世界へとやって来た。




