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41話:ミラージュ・バタフライ討伐 前編

やっと主人公らしい事をさせてあげられる…40話掛かった…

「はぁ…はぁ……結構…遠い、な…!」


山の中を俺は一定のペースで走り続ける。山は舗装されていない道の為、一方間違えれば転倒もありえる悪路。挙げ句に今は夜。慣れてきたとはいえ視界は悪い。


息が上がってきたその時、山に激しい揺れが起こり、俺は思わず尻餅をつく。


「ミラージュ・バタフライって奴が暴れてるのか──うおっ!!?」


立ち上がろうとした瞬間、1キロ程先で爆発が起こる。木々が燃え、暗かった森に炎が灯る。

それだけ激しい戦いをしているようだ。


座ってなんかいられない。急いで加勢に行った方が良さそうだ。

俺は尻の土を払い、また走り出す。

近付くにつれ、地響きや熱風が強くなっていくのを感じた。




「マジかよ……これ」


たどり着いた俺は、目撃したその景色を見てそう小さく溢す。

ミルと前に見た巨大な蝶、ミラージュ・バタフライが燃え盛る森で凄まじい戦闘を繰り広げられていた。


辺りの木々は薙ぎ倒され、まだ倒れていない木は真っ赤に染まっている。

上空に滞空しているミラージュ・バタフライを、ミルは[終雪]のどれかを使用して攻撃している。


「~~~~ッッッ!!!!」


「ぐあっ…!!?頭が…!割れる…ッ!」


ミラージュ・バタフライは超音波のような声を発し、鼓膜から頭へとぐちゃぐちゃにされるような感覚が襲う。

羽を大きくはためかせ、小さな2つの竜巻を作り出す。小さなと言ってもそれは巨体のミラージュ・バタフライサイズであって、人間が食らえば軽く吹き飛んでしまう程の竜巻がミルを襲った。


「ミルッ!!クソッ!」


竜巻によって上空15m程の高さまで上がり、森へと吹き飛ばされたミルを受け止める為に、俺は急いで落下地点へと走り出す。


「おおおおおおお!!!」


落ちてきたミルを俺はがっしりと受け止める。落ちてきた人間を1人で受け止めるには厳しい高さだが、絶対に落としちゃダメだと自分に言い聞かせて踏ん張る。


「くっ……え、あ、アキラ…!何でここに…!?」


「何でって決まってんだろ。助けに来たんだよ、ミルを」


俺の顔を見た瞬間今までで1番の驚きを見せるミルに、さも当然のように俺は言った。


「助けにって…!危ないって言ったでしょ!?」


「それでもだ。ミルを助けるのは勿論だけど、俺の目的の為にもここに来たんだ。まぁ今はそんなのどうでもいいな」


終始驚きっぱなしのミルに、俺は正直言った。内容は話しても分からないし、そんな時間は向こうさんは与えてくれないだろう。


今現在も、ミラージュ・バタフライは雷のような物を飛ばして、隠れた俺達を炙り出そうとしている。


「ミル、時間は無さそうだから長く話してる暇は無い。だから端的に作戦を話す」


「……詳しく聴きたいけど…たしかに時間は無さそう。はぁ…どんな作戦なの…?」


呑み込めきれていない表情でそう言ったミルは、俺が作戦内容を言うのを待っている。


「作戦は簡単だよ。俺が囮になる、以上」


「…!そんなの…許可できる訳無い…!アキラは奴がどれ程危険か分かってない…!」


「勿論普通に囮になるなら死んじまう。だけどミルは知ってるだろ?俺には[逃走]のスキルがあるってこと」


作戦なんて言える程の物じゃ無い。シンプルに俺がヘイトを集め、逃げ回っている隙をミルに突いて貰う。それだけだ。

他力本願で悔しいが、俺ではアイツに勝てないと本能的に悟った。だからミルに決めて貰わないといけない。


そして何より、俺はどういう訳か……いや理由は分かってるが、俺は魔物にとても追われやすい。魔物相手の囮としてはこれ以上いない程最適なんだ。


「大丈夫だミル、俺には神の祝福がある。そう簡単には死なないし、俺も死ぬつもりなんて無い」


「でも…」


「頼む、俺を信じてくれ。絶対に成功させるから……デカイ1発を頼むぜ?」


俺は今笑えているだろうか。本当はとても怖い。意思疏通の出来ない相手は大嫌いだし、何よりあんなデカイ奴から追われるなんて考えただけでも震えてくる。

でもここで行かなきゃ主人公なんかとてもなれない。


「…………分かった。でも約束、また2人で稽古するって。アキラはボクの弟子なんだ、このまま死んだら許さないよ」


「上等ッ!絶対に俺は死なねぇよ」


俺がそう言った瞬間、俺達が隠れている木の近くで落雷が起きる。本格的にヤバいな。


「ミル、最後の確認だ。あの丘に一際デカイ木が見えるだろ?俺は最終的にあそこへ奴を引き寄せる」


「分かった。ならボクは先に行くよ。……気を付けて…」


ミルは振り返らずにそう言うと、木の影に隠れながら走り出した。

俺もそろそろ行くか。


「よぉっ!!デッケェ蝶々!!俺とちょっくら付き合ってくれよっ!!」


「~~~~ッッッ!!!!」


燃え盛る山の中、俺は隠れるのをやめてミラージュ・バタフライへと指を指して大声で叫んだ。

それと同じく、ヤツも頭に響く声を発する。


「鬼ごっこ開始だぁ!!虫野郎ッ!!」


俺は叫びながら走り出す。それと同時にミラージュ・バタフライも落雷攻撃を開始した。










「やっぱりな…!魔物は俺ばかり狙って来やがる!」


木を立てに壁にしながら森を走り抜ける。

落雷、突風が次々と俺の命を奪うために襲ってくる。


「はぁ…!はぁ…!次から…次に…!」


恥を捨てて逃げ回って手に入れたスキルがあって本当に良かった。

[逃走]のスキルと、木が壁になっていなかったら俺は既に消し炭となって死んでいるだろう。


「あの木まで後少し…!このまま行けば逃げ切れ───あぁ!!?」


何かに足を取られ、俺は激しく転倒してしまう。[逃走]スキルの影響で速く走れていたせいで、身体中に痛みを感じる。


「糸…!?なんでそんなのがここにあんだよ!!」


糸を腰に着けた細剣で切ろうとした瞬間、周りの木から白い糸が発射された。

発射元を見ればそこには、、


「シアン…!?いや……色が…違う…?」


そこにはシアンとそっくりな黄色と黒の毛虫や、緑と黒の毛虫、紫色に白の水玉模様が入った毛虫が木の枝にいた。


──ゾクッ…


なら俺があの日に拾った卵は……

身体中から嫌な汗が出る。しかし今はそれどころじゃない。何とかしてこの糸を解かねば、少し先にいるミラージュ・バタフライの落雷で俺は死ぬ。


「っ…![火花(ヒバナ)]ぁぁぁぁぁああ!!」


指からではなく、全身から出すイメージで俺は唯一使える魔法を唱える。

火の球体を作った時のように、火を囲うイメージを必死にする。


「ぐぁぁああ!!!耐えろ、耐えろッ…!!」


皮膚が焼かれる感覚を、歯を食い縛って必死に耐える。たった5秒。それだけで俺は意識が飛びそうな程の痛みを受ける。

だがそのかいもあり、無事に糸から脱出する事が出来た。


だが、、


「あ…あぁ…!足が…」


走り出そうとした瞬間。俺の体を巨大な影が包み込む。その影を見ただけで体の震えが止まらない。


──ダメだ、行かないと…

──俺がここで死んだら夢も何もかもが全て消える

──止まるな、動かなくても動かせ


「あ、アハハハハ…!!ダメだ俺………死んじまう……」


フリューゲル家の皆、シアンやプーちゃんママ…それにミル。

まるで走馬灯のように感じる皆の姿、、


最後に…最後に大好きな星空を…


「…………それさえも…許してくれないのか…」


顔を上げ、空を見る。そこには空を埋め尽くすミラージュ・バタフライの姿があった。

星は見えない。変わりに見えるのはバチバチと弾ける雷。


ああ…もう終わった。

ゆっくりと瞳を閉じ、全てをあきらめた。もう何も見たくない。


───────────


「ッ!!………なに…?」


目的地の木の付近で激しい光と地響き山に響き渡る。それは先程から感じる物と同じもの。だが、何故か嫌な予感がした仕方ない。


「まさか…アキラ…!………ううん、ボクはアキラを信じる」


首を横に振り、再度走り出す。

アキラは言った。絶対に死なないって。また2人で稽古するって。

だからボクはアキラ信じる。

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