40話:どうやらイベントが起こせそうだ
PVがもう少しで5000に到達しそうです。ありがとうございます。
タイトルとあらすじが悪いのかな…(笑)
服を購入し、手の甲に紋章を書いたその日の夜の事。俺はプーちゃんママから不評をいただいた。ただでさえ似合ってないロングコートに加え、紋章がかなり痛々しいとのこと。
「後、ロングコートなら前閉めなさい。ちょっと…ううん、かなり変よ…?」
「そう…ですか…?結構いいと思ったんだけどなぁ…」
前を完全オープンしてるロングコートってカッコいいよね…カッコよくない?
「アキラくんが似合うのはこういうピンクの──」
「ないです。絶対似合わないです」
というのが昨夜の事で、今現在ミルと稽古しているのだが、、
「似合ってないよ」
「うへっ!?ま、マジすか…?」
「マジ」
ミルにまで似合ってない宣言をいただいた。
スパッと言えるのは良いことだと思う。でも…でもっ…!嘘でもカッコいいって言って欲しかった…!女性の意見としてよぉ!!
……あっ、ミル嘘下手なんだった…
「それよりアキラは、[霧雪]の習得に専念して」
「は、はい…」
ミルは木刀を持つと、鋭い目付きに変わった。氷のように冷ややかな目線。興奮したらアウトだな。
俺も木剣を持って構えに入る。構えの時だけ剣道を意識。その後は完全にミルに教えて貰った剣術を使用する。もはや剣道を使ってない俺だが、現世で剣道の練習をしていたのは果たして意味はあったのかと聞かれれば、俺はあったと答える。
精神的な問題面も解決できるから剣道はやってて良かったよ。夏以外は。
「遅い、もっと速く」
「クッ…!やってるよ…!」
これが現世の剣術とかフェンシングなら、間違いなく負け無しと言える程速い打ち合い。全くの素人が見たら、殆んど剣筋は見えないだろう。
それでもまだ[霧雪]のスピードへと達していない。まだ俺の剣撃は白く光らない。
「一旦休憩にしよう。やり過ぎは良くない」
「はぁ…はぁ…はぁ………ッ…キッツ」
俺は人が座れる大きさの石にもたれ掛かる。[霧雪]の練習は速いから神経使うし、何よりスゲェ疲れる。18歳となり、体力もついてきているにも関わらずこの疲労。ミルは……息が上がってない。化け物め…!
「アキラは冒険者カードって持ってるの?」
「ん?あー持ってるよ、ほら」
息が整ってきた所で、ミルが話し掛けてきた。俺はショルダーバッグから水を出すついでに、冒険者カードをミルに渡した。
「カードを見ればどんな人生を歩んできたか分かる。……アキラは面白い人生を歩んでるね」
「んー…俺にとっては面白くはないんどけどな」
若干苦笑いをしていると、ミルも珍しく微笑み、冒険者カードを返してくれた。
「ボクはアキラを本当に弟子にしたいと思ってる。アキラは…最後までついてきてくれる…?」
「え?まぁ勿論そのつもりだけど…?」
別に言うまでもないだろうに…何だよ今さら。ミルは変わってる人だな。
ま、まさか…!俺の事を今までの弟子だと思ってなかったのか!?ショックだぞおい!
「良かった…」
「どうした、今日はやけに弱々しいじゃないか……何かあったのか?」
「ん…ちょっとね」
やはり何か問題を抱えているっぽいな。ここは思いきって踏み込んでみよう。それで嫌われたらどうしよ…
「なんかあったなら聞くぞ?もっとも聞くだけしか出来ない可能性があるけど…」
「……前にここリコティ王国には用事があって来たって言ったの…覚えてる?」
「あぁ、たしか魔物退治だったよな?2つ隣の山の」
「うん。その2つ隣の山でミラージュ・バタフライが目撃されたの。その魔物をボクは倒しに来た。でも見つからないんだ…後少しなのに…」
ミラージュ・バタフライ?聞いたことも無い名前だな…バタフライって事は蝶なんだろうけど。
「そう言えば一昨日にバカデカイ蝶を見たっけな…」
「…!それ、どこで見たの?」
俺が小さくそう言うと、ミルは目見開いて俺に詰め寄った。
「どこって……普通に帰り道だよ。稽古後に下山してたら空飛んでたぞ」
「アキラは…ミラージュ・バタフライを見付けられるの?」
「見付けられるのも何も…普通に飛んでたじゃん。ミルは帰り道見なかったの?スゲェデカイ羽音もしたけど…」
俺がそう言うとミルは黙り混み、なにやら考え事をしている。
少しするとミルは俺の目を見て口を開いた。
「アキラは運が良いんだね」
「いや良くねぇよ?!」
俺が運がいいだよ?バカが!冗談も休み休み言え!そのミラージュ・バタフライ?を見つけたせいでマジでビビったんだからな!!
俺がちょっと焦りながらそう言うと、ミルは首をコテンと倒して困り顔。困るのは俺の方だよ。
「ミラージュ・バタフライはその名の通り、蜃気楼のように見ることが出来ない特殊な魔物。その姿は滅多に見られない。だからアキラは運が良いんだよ」
「そういうもんか…?」
「そういうもん」
そ、そういうもんなのか…
あまり納得は出来ないけどミルがそう言うならきっとそうなんだろう。納得出来ないけど。
「そろそろ再開しよう。アキラには早く【終雪】を習得して貰いたいから」
「そうだな。俺の体力も回復したし」
ミルが、んっと頷き、打ち合いは再開した。ミルがここにいるまで残り少ない。早く【終雪】を…せめて[霧雪]だけでも習得しないと話にならない。
──────────
辺りが夕日に染まってくる時間帯。俺は後少しで[霧雪]に届きそうな、そんな時だった。
山に響く揺れと森を突き抜ける突風。それらが稽古をしていた俺達を襲った。
「な、なんだ!?」
「……どうやら動き出したみたいだね。ごめんアキラ、ボクは行くよ」
そう言ってミルは山の奥へと走っていく。俺は咄嗟にミルを引き留めて叫んだ。
「み、ミル!気を付けろよ!」
「ん…大丈夫、必ず戻ってくるよ」
やめろよ、そんな死亡フラグみたいなの…
ミルに死なれたら俺はこの先どうすればいいんだ。
なんて夫の帰りを待つ妻みたいな感想が出た俺に羞恥を覚えた。
「行っちゃった…大丈夫かな…」
とても心配だが、ミルは強いという事を知っている。知っているけど…
「やっぱ心配だよな…行った方がいいか…?」
俺が行って何か出来るとは限らないが、それでもいないよりはマシだろう。いやマシにしてみせる。
そうと決まれば、急いでミルを追いかける。シアンは悪いがここに置いていく。流石に抱えて山越えは厳しい。
「来ないで欲しかった…って言われたらどうしよう…」
あの冷たい琥珀色の目でそんな事言われたら軽く死ねるね。もうヤベィ性癖出来そうで怖いよ。
それは兎も角、恐らくこれから起こる戦闘は俺にとっては大事な戦いになると予想できる。
このまま俺の強化イベントが起きない可能性があったのだが、ここがそうなんだろう。しかも丁度夜の店はお休みときたもんだ。これはもう行けってことなんだろう。
本来の主人公なら、色んな事があって、結局は戦う羽目になるのだろうが…俺は自分から行かないと、そんな事は起こらない。
自分から死地に行くなんて、中々ヤバい話ではあるのだが、俺はこういうことがしたくて十何年も頑張ってきたんだ。今更である。
「おしゃっ…!気合いを入れろ、天道明星!」
まただ。また胸が熱くなる感覚がする。
今なら勝てる。不思議とそう思えてしまう程に燃え上がっている。
俺は頬を叩き、気合いを入れて走り出した。
自分自信で未来を切り開く為に。




