3話:道具作り始めました
「俺…何で自給自足みたいな事してんだ…」
しばらく石を割り続けた俺。やがて何してんだろうという虚無感が襲い掛かり、手が止まる。もう手の痺れも感じない。ごめん嘘ついた。痛いわ…
「一体何個割った?1、2、3、4…4つか。思ってたほど割ってないな。なのにこの虚無感で4つはわりに合わない…」
やめやめっと手に持つ石を投げ捨てる。そして俺は割った石を集める。少しでも使えるものがあれぱいいのだが…
「これは小さすぎるな。こっちは…うん、ダメだ。うぅ~ん、中々丁度の奴が無いな。…んっ?これは…!」
見事に半分に割れている石。綺麗に割れたお陰で鋭利に尖っている。これで石斧の刃部分が出来た!
「後は…蔓が欲しいな。うっし、探索しますか」
相棒である木の棒を振って付近を探索。途中怪しいキノコを見つけたりしたのだが、流石に食いたくは無い。多分あれ死ぬ。だって蛍光色ピンクに白の水玉模様なんだもん…
まぁキノコの話は置いといて、3分程歩き回ると木にまとわりつく蔓植物を発見。それをブッチ切って、石割をしていた場所へと戻る。
「んと…確か×状に縛るんだよな?こう…してっ!」
少し太めの15㎝程の木に、石を付けて蔓で×に縛る。そして完成する即席の石斧。気分は原始人だ。ウホウホ。
「やった!出来た出来た!…何でサバイバルしてんだろ」
石斧を手に喜ぶのもつかの間。急に素になる俺。
見よう見まねのサバイバル術。プロが見たら指導物だろう。
俺の能力はモンスターとの敵に会うまではほぼ無力な力だから仕方ない事だ。
「早速槍作りに入るか!って思ったけど…もう夕方か…」
ようやく槍作りに入れると思った矢先、時間は夕刻。もしかしたら魔物的なのが出る可能性を考えて、俺は石斧をズボンのゴムに挟んで木に登る。2回目で、リンゴの木とは違う木だから少し登りやすい。
「木の上で斧片手に寝るって…何かカッコいい…!」
少し厨二感が滲み出るおっさん、今年31歳である。
それはさておき、段々と暗くなってきた森に鳥の鳴き声が響く。不気味な感じがして少し怖く感じる。
『明日起きたらリンゴ食って、体操して、槍作ってリンゴ取ったらここを離れるか…』
「ふぁ~あ……寝るか」
そして異世界に来て、1日目が終了。中々の成果を得られたのでは無いだろうか?だって石斧よ?石斧。石斧って凄くね?(絶対的信頼)
「んっ……朝か。んん~~!!…背中痛ぇ」
やはり野宿のお約束である背中痛い問題が発生。まぁ生きてる事に感謝して我慢しよう。てかロリ神いい加減俺を見つけろ。
「って…思ったけどいっか別に。これはこれで楽しい。よっと!」
伸びをした後、そう言葉を発して木から飛び降りる。今回は着地は出来た。足の裏はビリビリするが。
「リンゴリンゴ~♪すぱすぱリンゴォォ~♪」
適当に口ずさみながらリンゴを食べていく。昨日程酸っぱく感じない。慣れてしまったのだろうか。
「ごちそう様、よっしゃ、体操体操」
そして始まるヴィクトリー体操。テレビの見よう見まねの物だが、多分これ本当の体操なんだろうな。俺平成生まれだからわからないけど。…いや、やってたな…夏休みに。1回も行ってないけどさ…
「──んん~っ!ビクトリー!!」
最後にV!っとポーズを取って体操終了。
今は何時なんだろう?太陽の場所的には9時から12時の間だろうか。クソッ…理科2、体育5の俺には難問だ。ま、まぁそれより早く槍作りに入ろう。
「なるべく細い木を探さなくちゃな」
普通の木を伐採出来るほどこの石斧は性能良くない。丸太は欲しいけどな、強いし。
そんな事を考えながら手頃な木を探していると、無事に発見。
「丸太を武器にしたら俺も勇者の仲間入りだなっと!」
やはり素手で作業してた頃とは比べ物にならない程効率がいい。何回か石斧で木を叩くと木は見事斬り倒せた。
が、、
「おわぁ!?取れたぁ!!?」
木と石を縛っていた蔓がほどけて分解してしまった。どうやら縛りが甘かったらしい。
「うぅーん…思うように行かないな…」
頭を掻きながら縛り直そうとする。しかし同じ縛りではまたほどけてしまう。だから今度はほどけないよう、蔓と蔓を編んで丈夫な紐にしていく。
「くっそ…あんまりこういうの得意じゃ無いんだよな…」
ぶつくさ文句を言いながらも蔓を編む。しばらく編み編みすれば丈夫な紐が完成した。今後の事を考えればもう少しこの紐はあった方がいい、そう考えて追加で蔓を編んでいく。
「ふぅ…こんだけ編めば十分かな?んじゃ早速斧に巻き直すか」
今度こそきつく縛る。途中分解しないよう気を付けながら。
そして完成、石斧α。新たな武器、石斧αを使って先程斬り倒した木の余分な所を切断して行き、槍に最適な長さに加工する。
そして完成する100㎝程の棒。その先端を地道に斧で尖らせていく。
「ぃよしっ!木製槍の完成だ!」
素人にしては中々調子が良いのではないだろうか?まったくサバイバル知識なんて無いのにここまで来れた。
「リンゴ乱獲だぁ!!オラァ!!」
作ったばかりの槍で木に実るリンゴをつつく。槍の先端にリンゴが刺さり、地上から安全にリンゴ取ることに成功した。
こうして食料と武器、そして林業具を獲得。
「あっそうだ、この余った砕けた石を再利用出来ないかな?」
落ちている砕けた石を手に取り考える。そして思い付いたのが少し切ったりする程度に使うナイフ。
思い付いたら善は急げ。という訳でナイフっぽい石を探す。
探すこと数十秒。手頃な石を見つけ、手に持つ部分に葉っぱを巻いて、紐で縛る。そして簡単な即席ナイフが完成した。
「よしっ!いよいよ移動するか!」
一泊したこの場所ともいよいよおさらば。何か少し寂しく感じる。でもここにずっといるのは流石に勿体無い。
「あばよ…俺の想い出の地…!」
目に涙を貯め、カッコよくこの場所を去った。
もしこれが現世なら皆に[は?]って言われそうだ、そう考えながらも俺は歩いた。
両手に木製槍。紐で石斧の取って部分を縛って腰に吊るす。そしてへたを縛ってリンゴをストラップのように腰に吊るす。最後にポッケに10㎝程のナイフ。これが今の装備だ。
原住民かな?あれ…俺って本当にチート主人公なんだよね…?