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386話:フェーズ2

「ここは…国の外、か?」


ヴァルと呼ばれていた青年の能力によって、どうやら俺は国の外に出してもらえたらしい。

付近に目を向ければ、僅かに機械龍の姿を確認出来る。物凄い速さでこちらに向かってくるその姿は恐怖ものだ


「───っ!使える…!」


国外へと出されたものの、どうするか考えていると、体内で20人以上の気配を感じた。

それは俺が契約し、体内へ宿していた悪魔達であった。衰弱しているものの、どうやら皆無事らしい。


「っああ~!!効くぅ~!!」


ブチブチと肉の弾ける音と共に再生されていく俺の腕。全身の火傷も全て再生される。やはり異世界は再生、回復能力が必須だね。皆も悩んだら取り敢えずこれ取っておけばハズレないから。【暗殺貴族】のルーグも選ぶくらいだしね。


『……まだ皆喋れないくらい回復してないのか。まぁ、あれだけの結界内じゃしょうがないか』


彼らの能力は引き出せる。だが会話は勿論、彼らからの能力補助を受けられない。例えば回復は自動じゃないし、矢の命中率も落ちる。


「時間で回復してくんだろうけど…それまでアイツが許してくれるかどうか…」


もう500m程まで近付いた機械龍。徐々に大きくなってくるジェット機のような音が俺の不安を煽る。

それどころか奴は口に光を溜めているのが見える。殺る気満々だ。勘弁してほしい。

数秒の後に放たれた光線を空へと飛翔して回避した俺は、思考力を上げて演算を開始した。


『炎で溶けない鉄…あれを突破するには……そもそもあれは鉄なのか?テンプレで考えるなら間接部分に見える配線の切断だが…そう易々とやらせてはくれないだろうな、あれだけの兵器を開発した奴がわざわざ弱点を出すくらいなんだし。なら他の能力はどうだ?[三頭猟戌(ケルベロス)]の牙は…は通らないだろうな。だったら[大錬金術(だいれんきんじゅつ)]』で材質を変えれば……いや、元々この力の持ち主であるハゲンティや、知識や作戦を担うグシオンもいない今、あれを錬金出来ない。考えろ…思考を止めるな』


上空で巻き起こる激しい追尾攻撃を高速で交わしつつ、あの機械龍を止められそうな手を思考する。

その間にも[毒操作(ポイズン・レーション)]から作り出した酸性の毒を放つが、まぁ案の定通る筈もない。せめて少しでもいいから溶けていて欲しかった。


「─────あークソッ!そもそも頭の悪い俺が悪魔(みんな)の力も借りずに熟考する事事態間違いだ。やってやるさ、ああやってやるとも…!そっちがその気ならこっちも全力だ!スクラップにしてやるよ!!」


空中での逃走をやめ、俺は方向転換して機械龍へと加速していく。大きく開かれた口には光が灯っており、もう間も無く放たれるであろう光線目掛け真っ向から突き進む。


「ぅ……ッッ…!![短距離転移(テレポート)]!!」


放たれた光線を、[短距離転移(テレポート)]で逆に打ち返す。あれほどの被害を出せる火力ならば、ヤツの装甲を突破出来るのではないかと愚作にも考えたからだ。

打ち返しは成功。だが威力がとてつもなく、衝撃を受け止めた両腕が壊死した。



「傷は……無し、か。まあそう簡単にはやらせてくれないよな」


当然と言わんばかりに腕をクロスして防いだ機械龍。その防御方法を知っている事に驚きつつも、やはりダメかと溜め息を溢す。

硬い。あまりに硬すぎる。

俺にはコウキ達を始めとした、主人公のような瞬間的火力も出せなければ、取って置きの必殺技というのも無い。シンプルに物理耐性が高いため、俺にとっては“魔災“のラスボスよりも厄介やもしれん。


「アイツに触れさえすれば[崩壊(ディケイ)]で問答無用で粉砕出来るかもしれないが……悪魔達のカバーも、仲間の援護も期待できない今、無闇に突っ込むのは……って、何ヒヨってんだよ俺…!さっき気合いを入れたばかりじゃねぇーか…っ」


気が付けば余計な事を呟き、マイナス思考をしていた。皆と共に戦えないだけで、ここまで俺の心が弱るとは。



「これは弱さなんだろうか………………わかんねぇな」


止まった俺へ、容赦なく振り下ろされる銀色の爪。スローのようにゆっくりと動くその光景を他所に、俺は小さく笑う。


バチッ……バチバチッ…!


ピンクのプラズマがアキラの回りで弾ける。

その刹那、爪が振り下ろされた場所にアキラはもう既に居らず、気が付けばアキラは機械龍の顔前まで迫っていた。

[崩壊]の力を宿した右拳と共に、ジェット機の様に炎を出しながら、、



「その答えを知りたい。だから俺はこんな所で死なねぇし、止まらない!!」


[崩壊]を宿した右拳は、機械龍の顔面を打ち抜く。その威力によろける機械龍は顔に大きな亀裂が入っていた。


そこから更に加速していくアキラは、まるで複数人に分裂したかのような錯覚を受ける程に高速で機械龍の全身へと拳を打ち込む。

徐々に広がっていく亀裂と、悲鳴のような機械音を鳴らす龍。すると機械龍の至る場所から飛び出ている配線が紅く光だし、背中部分に付けられたファンが激しい音と共に動き出す。


「そっちも第2形態か?上等だよ」


ファンか激しいく動いているにも拘わらず、体から煙が上がる程の熱を帯びた機械龍は、全身を銀色から加熱された鉄のような赤色へと変色。特に珍しくもない第2形態だ。


「…マジかよ…ッ、あり得ねぇだろ普通…!」


差し詰め熱によって触れさせないようにしたんだろう、そんな事を思いつつ距離を取っていた俺に、奴は背中のパーツを開いてそこからミサイルを放った。

現代にいたって中々お目にかかれないミサイル。どう考えてもこの時代の兵器じゃない。地球と違って魔法が発展したこの世界で、あのような近代兵器の存在はおかしい。


「まさか現代転生者のチートか何かで造ったのかッ!?────ッ…!追尾までしてきやがる…!」


どこまで逃げようとも追尾してくるミサイル。これでは[短距離転移(テレポート)]での反射が出来ない。

だが俺にはこの手の打開策は知っている。


「逃げながら打ち落とす!!たったそれだけだ!!」


きりもみの様に地上へ落下していく最中、その僅かな合間に矢を放つ。[弓術Ⅸ]にまで成長させた力を使えば、バルバトスのサポートも必要ない。これくらい容易い。


放った6本の矢は、全てミサイルに命中。予想通り空中で爆発させる事に成功した。

だがあのミサイルは単なる爆発だけでは終わらなかった。


「っっ…!!?な、なんだ!?」


爆発から数秒後、空中から降り注ぐ何万という細い糸のような針が俺の全身に突き刺さる。

その瞬間電気でも流れたかのような激痛が襲い、体内に毒物が入り込んだ事を[病治癒(イルネス・ヒール)]で検知し、すぐさま解毒。


『……ッ…!?再生が遅すぎる…!ただの毒じゃな─────ッッ!!!』


体の異常事態に困惑する俺の目の前に、高速で急接近した機械龍。そのまま目にも止まらなく速度で振り下ろされた爪は、[部位変化(ぶいへんか)]させ硬化した俺の皮膚を容易に切り裂いた。

意識が飛びかける程の鈍痛が全身に広がり、脳みそが焼かれたような熱さを感じる。

そして僅かに耳で捉えられたチェーンソーのような不快な機械音。嫌な予感がしないわけない。


「ふ…[不死鳥之焔(フェニックス)]…[再生(リジェネ)……ッ]ッ…!」


切断された肉を炎で繋ぎ、内側と外側の両側から緊急で再生を開始する。内臓を大きく露出させたその姿はスプラッター耐性の無い者が見たら卒倒間違いなしだ。


「ッ…!!?ふざけんじゃねぇ![城壁建築(キャッスル・テクチャ)ッ!!]


再生に集中する間も与えないと言わんばかに、大きく広げた機械龍の翼からプラズマが弾け、それはもう次の瞬間にはプラズマ弾を放ててしまう体勢であった。

慌ててハルパスの[城壁建築(キャッスル・テクチャ)]で地面を盛り上がらせて遮蔽物を大量に形成。それと同時に[色欲罪(アスモデウス)]で実体のある分身を数十体作り出し、その間に遮蔽物で[気配遮断(けはいしゃだん)]を使用して再生に力を入れる。


『クソッ…!面倒な事ばかりしやがって…!』


唯一マトモに通ったのが[崩壊]のみ。あの放熱も耐えれば何も問題は無い。ただ近代兵器の使用────と言うよりも、あの機械龍が俺に対してアンチ過ぎる。機械だから友好度も視界もいじれない。炎に対しても耐久があって、俺の防御を軽く砕く爪。



まるで()()()()()()()()()()()()ようだ……


「そう…いえば……なんで俺だけを狙ってくるんだ…?」


ああ、そうか。

ちくしょう、あの真っ白な部屋に何十日もいたせいで考える力が鈍ったか?こんな簡単な事にも気付かず戦ってたなんてさ……


「………よぉ、元気ぃ…?」


錆び付いたかのように振り返った俺の背後には、鋭い2つの光が俺を捉えていた。

実体のある幻影にも引っ掛からず、これだけ多くの遮蔽物があるにも拘わらず、ピンポイントで俺だけを狙ってきた機械龍は、口に眩い光を溜めて佇んでいた。

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