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380話:強襲

後少しでブックマークが300になりそうで震えてます。

「あ“あ“ー…疲れた…」


マジで殺されると思ってしまう程に激しい攻撃の連続……実際俺は部分的に欠損や、数回()()()

まぁ俺はもう死んでるような感じだし、死んでも[不死鳥之焔(フェニックス)]で蘇生可能。強力な能力だが、反面1日1回はフェニックスの酷い歌を聴かなければならないのと、蘇生時に1度全身燃え尽きて灰にならないと蘇生出来ず、それが痛すぎるのが難点だ。それを差し引いても強いんだが、あまり死にたくはない。痛すぎる。


「それにしてもこの服凄いな……あんだけ激しく戦ったのにほつれ1つ無いし、燃えないとかヤバいだろ。一体いくらしたんだか…」


ローザがプレゼントしてくれたこの服は、かなりの数のエンチャントが施されているようだ。

だからこそ値段を思わず気にしてしまうのは、やはり庶民だから…なんて考えていると、見覚えのある人物の姿を見つけた。


「よっ、ソル。何か久しく会ってなかった気がするよ。って……お前なんか汚れてないか?」


「あ?ああー…そう言えば最近風呂に入ってなかったか。そんな事より見てくれ!」


そんな事で流してしまっていいんだろうか…普通に不潔だ。イケメンが台無しだぞおい。

それは一先ず置いといて、ソルがドヤ顔で見せたのは何て事無い小さなアタッシュケースだった。


「何これ?アタッシュケースか?」


「アタッシュ…?その言葉の意味は分からないが、これはただのケースじゃない。まあ見ていろ」


狙い通りと言わんばかりの表情でそう言うと、ソルはケースのロックを外して開く。

中は空っぽ……いや、真っ黒だ。光を一切通さないような漆黒。その中にソルは手を突っ込むと、中から超遠距離用狙撃銃・ペネトレイトを取り出したのだった。


「え、は…!?どういう事だ!?」


「フフッ、驚いたか?」


「もしかして…!亜空間収納か!?」


「おっ、流石アキラ。初見で見抜くとは物知りだな。そう、これはケース以上の物を収納できる魔導具。通称亜空間収納庫だ。ローザが着けてる指輪よりも更に収納できる」


やはりか…!と内心ウキウキさせながらケースを見つめていると、ソルに『触ってみるか?』と言われたので遠慮なくベタベタ触る。


「この国の魔導具工房はスゴい。なんてったって最先端の道具と技術があるからな。今はまだそのサイズだが、今後はアキラが腰に着けてるその袋くらいのサイズに……聞いてるか?」


「えっ?ああ、聞いてるぞ」


そうは言ったものの、アキラは子供のように目を輝かせながらケースを見ては触っている。とてもソルの話を聞いているようには見えない。


「亜空間収納は極めて稀なレアスキルを持って生まれた奴か、超高級で少ししか入らない亜空間収納しかこの世にない事で有名なんだぞ?それを()()()()()ケース型且つ大容量で造れたってのに…。はぁ…まあいいさ、アキラらしいし」


え…?おい待てぃ!今ソルは初めてこれを造り出したって言ったのか…?

いや確かにソルなら造れるんじゃないかと思ってはいたが、それを造り出したのが初だとは思わなかった。


「な、なぁ…?そんな大それた物をどうやって────」


どうやってこんな凄いものを造り出せたのか、詳しく聞こうとしたその時だった。

ドタドタと足音を立てて此方にやって来る者がいた。


「見付けましたよぉおおお!!」


「ゲッ…!?」


息を切らしながらソル目掛けてやって来たのは、紳士的な服装をした老人であった。

まだ息を吸うので忙しそうにしていた彼は、ガシッ!とソルの肩を掴んで逃げられなくする。


「はぁ…!はぁ…!ソル、さん…!逃げてしまうだなんて酷いではないですか…!」


「はぁ…面倒だなぁ……」


心底面倒くさそうに溜め息を吐いたソル。肩をガッシリ捕まれていて逃げられないので、この老人の呼吸が安定するまで暫く待つことに。


「ソルさん!貴方が造り上げたそのケース!どうかルービュル商会に売っては下さいませんか!?」


「だから何度も言っただろう、これは売れない。今後の改善点を見付ける為にも、僕の手元に置いておきたいからな」


「そこを何とか…!ソルさんが造り出したそれは、運送を始めとしたあらゆる場所で間違いなく重宝される!!」


どうやらソルが造った亜空間収納出来るケースを商会に売って欲しいそうだ。

密かに造ったならまだしも、人が大勢いる魔導具工房とやらで造ったら、即情報は広まるだろう。


そんな事を思いながらその様子を見ていると、ソルは困った表情で俺に耳打ちをする。


「なぁアキラ…このおじさんしつこいんだよ。悪いんだけど追い払ってくれないか?」


「はぁ…?追い払うってお前…そんな事したら、タダでさえ悪い世間の評価が更に下がるだろうが……」


「頼むよ…!」


ソルがここまで頼み込んでくるなんて、余程面倒らしい。しょうがない、ここはヒロインを庇う“なろう“系主人公ムーブでお引き取り願おう。


「あー横からすいません。ソルがこう言ってるので、諦めてもらえませんかね?」


「君は…“悪魔王“のテンドウ・アキラ君ですね。貴方のような大物にこのような場所で出会えるとは驚きです。ですがこれ程までの逸品を前に、一商人である私は引き下がる訳にはいかない」


おっと…ペコペコとしていたおじさんが、急に表情と雰囲気を変えたな。値踏みするような視線と、俺の手が届かない丁度の所に移動した。

ふむ……しっかり警戒されてて萎える…


『大変遺憾だか、悪名高い“悪魔王“って知ってても引かないか。このおじさんは確かに面倒そうだな。しゃーない』


──殺すか?任せろ、一瞬で終わらせる。


──死体は食っちまっていいんだよなぁ?


──久しく人なんか食してないから楽しみですね。


コラコラ、物騒な事言うんじゃないよ。

ホントコイツらと来たら……俺には温厚なのに、その他に対して酷すぎるだろ。


「ソル、一応聞くけど売る気は無いんだよな?」


「ああ、同じ物をまた造れる保証は無いしな。改良もしたいし、売るつもりは無い」


「了解。んじゃちょっと掴まってて」


「え…?──────うおおおお!!?」


俺はソルを抱き寄せると、そのまま背中に黒い翼を生やして飛翔した。…前より翼が大きくなってるな。

それは兎も角、あのしつこくて気が抜けないおじさんを撒くのはこうして飛ぶのが丁度いい。


「わ、わ…!?こ、怖い…!高い…!」


「暴れんな…!落ちると最悪死ぬぞ」


そう言うとソルはガチッと石像のように固まった。

これで安心して飛べると思い、地上へと視線を向けると人々が俺を指差しザワついている。


『はぁ……まぁ~たロクでもない変な噂が立ちそうだな』


俺はそんな事を思いながら、一定の距離を保って後をついてくる集団に嫌気が差しながらもソルと共に少しの空の旅をして帰るのであった。






『退屈だ……眠くなるまで軽く筋トレでもしようかな…』


その日の夜。俺は全く眠くない体に違和感を覚えつつも、隣で眠るミルとシアンを起こさぬようにベッドから抜け出し、寝室を出て水を口に含んだ時だった。


「ヴッ…!!?頭が…ッ…!!!」


突然の目眩と共に俺を襲った激しい頭痛。平衡感覚さえもマトモに保てなくなった俺は、手に持っていたコップを落とす。


『何だこれ…ッ!?頭が、割れる…ッ…!!』


悪魔達の能力を使い過ぎた?

いやだとしても突然こんな事が起こるとは思えない。何より確認しようにも悪魔達とやり取りが一切出来ない。

そして決定的なのが体内にいる悪魔達が衰弱し始めた事。間違いない。これは外部からの攻撃だ。


「だ、れ……か…っ」


平衡感覚を失った事で起こる猛烈な吐き気を必死に抑えながら、助けを呼ぼうにも声がマトモに出せない。当然のように悪魔の力が使えず、魔法さえも安定して発動できない。


「“悪魔王“と呼ばれる男も対策してしまえばどうという事ない。早急に駆除開始だ」


「っ…!?」


どこから都もなく聞こえてきた男の声。その声がどこからしたのかも分からないまま、地面にひれ伏していると一部の空間が歪み始めた。


『誰だ…コイツら…!?』


歪んだ空間から現れたのは、黒いマントで姿を隠した6人の集団。助けを求める……そんな雰囲気では無く、本能的に命が危険だと悟った俺はその場から這いずってでも逃げ出そうとする。


「…!逃がすか」


「ッッ…!!!」


両足に走る激痛。だが悲鳴さえも出せない。

何か刃物でも刺さったらしく、太ももから下が熱い。ゆっくりと視線をそこに向けると、俺の両足に長剣が突き刺してあった。


「終わりだ」


動きを完全に止められ、強い憎悪と嫌悪感を発しながら俺の首を狙って剣を構える男。

やがてその剣は振り落とされる。


「────待て」


だが寸前の所で剣が止まる。

この集団のリーダ格と思わしき人物は、何かブツブツと小さく発した後、俺を見て言う。


「作戦は変更だ。この場では無く、本国にてテンドウ・アキラを駆除する手筈となった」


「…!?何故ですか?」


「理由は分からない。だが本国からの命により、テンドウ・アキラを生かしたまま連れ帰れとの事だ。……そして何より今この場所に、“魔術王“のアマクサ・コウキが向かっているとの情報だ」


「っ……分かりました」


理由を聞くと、男は俺強く睨み付けて剣を鞘へと納める。そしてすぐさま俺に白い鎖で縛り上げると、再び空間が歪みだした。


「……もう来たか」


何かを察した男は、壁へと視線を向ける。

するとその壁は吹き飛ばされるが、物音が一切鳴らない。そんな異様な空間の中、青い鳥が複数部屋へと入り込んだ。そしてその青い鳥は爆発し、室内は見る見る内に凍結されていく。─────筈が、すぐさま解凍されていく。


「アンチマジックエリア……これがある限り、我々以外の魔法は使用不可能。お前の対策もしっかりしているさ。───アマクサ・コウキ」


男の視線の先には空を飛翔するコウキの姿があった。


「お前ら…!アキラをどうするつもりだ!!」


「お前が知る必要は無い。が……1つ教えよう。この男は世界の歪み。存在してはいけない。無論、それは悪魔を契約しているからもあるが…()()()()()()()()もこの世界では歪みなのだよ」


「っ…!」


男はそれだけ言うと、拘束されたアキラを担ぎ上げて空間の歪みへと向かう。

当然それを許す筈もないコウキは部屋へと突入を試みるが、それは結界により阻まれる。


「ッ…!!二重結界(デュアルエリア)…!────っ!!…違う!これは三重結界(トリプルエリア)…!?そんなバカな!」


三重結界はこの国の宮廷魔術士が漸く扱えるような大魔法。刺客を送った国の検討はついているが、あの国は宮廷魔術士レベルの魔法使いを使ってまでアキラを捕獲して、何を企んでいるんだ…!?


「アキラッ!!」


三重もの堅固な結界を突き破ったコウキは、アキラへと手を伸ばす。

1m……後1mで手が届く。だが最後の最後と言う所で……


「ッ…!!?ここに来て障壁ッ!?」


最後の最後で魔力障壁が行く手を阻んだ。

英雄と讃えられ、数々の助けを求める人の手を掴んで来たコウキの救いの手は、初めて届く事が無かった。


そして黒いマントの集団は、アキラを連れて空間の歪みへと消えて行ってしまった。

ミル、アキラ連れてかれたぞ。

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