379話:動き出す組織
明けましておめでとうございます。
今年も1年頑張って行きますので、応援よろしくお願いします!
リベルホープの国内から出られなくなって暫く経つ。定期的にシアンとお散歩に行ったり、皆で娯楽施設なんかに行ったりはしたものの、いい加減限界だ。
俺はもっと戦いたい…。
もっと戦って、強くなって…主人公のような誰にも負けない男になりたい。
「っ…!危ない…」
……と、シリアス風に独り語りをしてみたものの、実際は国を勝手に飛び出るなんて事はせず、1人部屋で悪魔達の能力を更に使えるように鍛えていた。
「んー…体の一部を炎に変える……やっぱり想像以上に難しいな。どうしたもんか…」
[獄炎化]……この力を最大限に生かせれば、物理攻撃無効を始めに僅かな隙間に入れたり、相手の背後を取るのも音を立てないで移動も出来る。
出来るようになれば、あらゆる事が広がっていく。今後の通過目標だ。
──あまり無理をするな。いくら異常体質のお前でも、1日中私達の力を使い続ければ失っていく一方だ。
「心配かけてごめんな、マルバス。でも俺は…まだまだ半人前だからな、もう少し頑張るよ」
──目標は大きいのに、自己肯定が低い奴だ全く……
「あはは…」
呆れ気味にそう言ったマルバスに、俺は小さく笑う事しか出来なかった。
だって俺の仲間は皆天才だ。もう嫉妬とかはしてないけど、ちょびっと劣等感と言うかなんと言うか……それに異世界の環境もインフレの一方だから、自己肯定が低くなってしまうのも仕方がない事だと思っている。
「でもやっぱ室内で火を扱うのはヤバイよな……しゃーない、1人だけど行きますか。そこならもっと派手に体を動かせるし」
今日シアンはローザについて行っててここにはいない。あいつ…ローザといれば何か食べ物を貰えると思ってるな。子供ゆえのあざとい知恵だな。俺じゃあ使えない。
そんな事を考えながら、乾いた笑いと共に着替えた俺は部屋を出る。
今日は生憎の曇りだ。何か雨降りそうな天気だな…っと俺はここにフラグを立てて街へと出るのであった。
□
『今日もついて来てるし……嫌だなぁ』
ここ最近シアンと共に行っていた御神木のある森。そこへと向かう最中、相変わらずの監視人が数人ついてきている。……今日はなんかいつもより多いし…落ち着かない。
そんなこんなで今日も嫌な顔をされながら森へと入っていく。精神攻撃やめて…
──今日は何をするんだぁい?アイボウ君。あ、もしかしてボクの能力を極めてくれるとか!?いやまいっちゃうなぁ~♪でも嬉しいよっ?何てったって人間の君には僅かしかない時間をボクの為に使ってくれるんだからねぇー。あ~…でもアイボウ君には関係無い話だったかな?だってもう人間の体じゃ────
「うるせぇ!!ちょっと黙ってろベリト…っ…!今集中してんだから…!」
何か大事な事を聞き逃したような気がしたが、今はそれどころじゃない。
現在俺の両腕は炎と化している。形を持たない炎。それをいかに腕の形にして、物理攻撃を無効にするか……今頭の中はそれで一杯だ。
ミスれば腕が無くなるし、下手したらこの森が燃えてしまう。洒落にならない。
「────あ……っ…!?しまった…!!」
炎を腕の形にしようと欲張ったばかりに、加減を間違えて炎が消滅。それと同時に両腕から吹き出る赤い血液。とても見せられない……ここモザイク頼む。
「痛っ……はぁ…マジで自信無くなるわ…」
損失した両腕を、僅か数十秒で完治させると大きかった溜め息と共に寝っ転がる。
「剣も魔法も中途半端で才能は無い。挙げ句能力も上手く扱えない……だぁー!クッソー!!」
自虐でそう呟いた俺は、数秒の間を開けた後に頬を叩いて起き上がる。
そして再度[獄炎化]の稽古……ではなく、今度は[悪魔放出]を発動した。
「…?んぁ?どーゆうつもりだぁ?アキラ」
眠そうに欠伸をしながら出てきたアスモデウスを筆頭に、アモンとバルバトス、そしてハルパスやグラシャラボラスなどの戦闘に秀でた悪魔達をこの場に解き放った。
「どうもこうもないさ。この流れでお前達を出したんだ、もう分かってるだろ?」
挑発気味に笑みを浮かべてそう言うと、悪魔達は笑みを浮かべる。それはそれは恐ろしい…異世界来たてだったらチビるようなわっるい笑みを……
ごめん、調子に乗って挑発が過ぎたよ……だからその笑みやめて…?ね…?
「さぁ~てぇ?始めるとすっかね」
「ああ…!来い!!」
「死ねよ、アキラぁぁ!!」
隠しもせずに殺意剥き出しの瞳をしてアスモデウスが叫ぶと、体外へと出した悪魔達が俺に向けて一斉に攻撃を開始した。
人間の急所目掛け容赦の無い高速の矢が放たれる。それを回避した途端に複数の属性を宿した魔法が逃げ場を奪う。
「ッッ…!!」
「ハッ…真っ正面から受け止めるとかバカだな」
爆発と共に立ち上る煙から姿を現したアキラ。全身血塗れに体の至る場所には矢か突き刺さっている。そんなアキラの姿を見てグラシャラボラスは乾いた笑み浮かべる。
「まだ……だ…っ!こんなじゃ俺は終わらねぇーぞ!!もっと来いやァ!!」
好戦的な笑みと共に力強く叫ぶアキラ。その姿は普通の人間とは何かが違う。何か大切なモノを欠落させた者の笑みだった。
□
次々と繰り返される爆発音。対象者であるテンドウ・アキラの体内から出現した複数の悪魔達は、あろうことか契約者である筈のテンドウ・アキラへと次々と攻撃する。
「隊長…これはどういう事なんでしょう…?反乱…でしょうか?」
「どうやら反乱では無いらしいが……そもそもが規格外の男だ。何が起こったとしても、我々が心を乱してはならない」
特殊なローブによって気配を完全に絶った集団。その中の隊長と呼ばれた男は狂ったように攻撃を受けては、己の拳と脚で反撃するアキラを凝視していた。
「どうしましょうか…もう攻撃を仕掛けますか?」
「いや、まだだ。まだ本国からの命令が下っていない。我々の一存で下手を起こせば国際問題…当然我々の命は無い。間違っても早まった行動はするな。いいな?」
男の言葉に部下達は重く頷く。
本国からのテンドウ・アキラを駆除、または捕獲命令が出た瞬間、彼は己の命を懸けて攻撃を開始する。失敗は絶対に許されない。
「フッ…そう重苦しい顔をするな。我々にはコレがある。必ずこの作戦は成功する」
「は、はい…!」
そう言って震える新人の肩に手を置いた隊長は、懐からとある物を取り出して見せた。
それは金色の聖杯であり、特殊な訓練を受けた者でさえ触れる事を臆してしまう程の神力が籠められた“古代遺物“。
『テンドウ・アキラ…お前のような塵が“悪魔王“だと?ふざけるのも大概にしろ。この世に悪魔を宿した人間など、居てはならない!!』
ギリッ…と下唇を噛んだ男は、憎悪と殺意を抱いた瞳をアキラへと向けた。
───彼らが行動を起こすまで、残り10時間
そろそろ動きます。
忘れ去られたかもしれませんが、分離したアキラや、“強欲“なども登場し始めます。




