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369話:敵前逃亡

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ありがとうございます!!

「っ……なんつう威力だ…!あれが本当の主人公達の実力か…」


硬い外皮に包まれ、魔法を全て無効化してきた魔人は上半身を完全に吹き飛ばされている。主人公勢4人同時攻撃でまだ原型を保っている事は凄い。


「だけど街に一切被害が出てないのは何でなんだ?あの威力なら間違いなく街もろとも吹き飛ぶ筈なんだが…」


これも主人公補正…ってヤツか?にしては露骨に被害が出てないが。恐らくその辺も考慮して放ったんだろうな、主人公だし。


「終わった…の?」


「……どうかな。ハッキリ言って、まだ分からないがボス戦での怖い所だから」


脳ミソを吹き飛ばされたんだ、間違いなく死亡している。だけど頭を飛ばせば倒れる、なんて常識は残念ながら異世界では通ってくれない。

ましてやアイツは今回の“魔災“のボス。まだ2段進化もあるかもしれない。


俺はいつでも援護に入れるように、悪魔の力を解かずに視線を魔人から切らず、目を細める。


──パパ!!


「っっ!!!くっ──────」


全身に鳥肌が立ち、[世界関数(ラプラス)]の効果で未来が見えたと同時に、上空を飛来していたシアンからテレパシーが届いた。

俺は近くにいたミルへと急いで手を伸ばし、[短距離転移(テレポート)]でその場から少しでもと距離を取る。


「あ、ありがとう」


「なんて事ないよ。だがやっぱり死亡後に隠し玉仕込んでやがったか…!」


魔人の切断された下半身から、突然全方向へと一斉に4属性の魔法が放たれた。やはりと思い、警戒をしておいて正解だったな。


「っ…!?再生速度が…向上してやがる…!」


完全に消失した筈の魔人の上半身は、10秒程で完全に再生してしまった。先程までの再生速度とは比べ物にならない。

それにただ再生しただけじゃない。魔人の周りの地面からは、奴の腕と全く同じ大きさをもつ土の腕が生えている。5属性の内4属性しか使って来なかったから使えないと思っていたが……隠していたのか…!


「うっ…!?地上の腕は属性に縛られずに撃てるのかよ…!!」


土で出来た魔人の手からは、各属性の魔法を連発で放てるようだ。だがその反面、威力は本体から放たれるモノよりは弱い。が、それでも喰らえば次の動きが出来ないレベルであり、つまり喰らってしまったらどのみち死ぬ。


「アキラ…どうするの?」


「コウキ達からのテレパシーが届かない……恐らくさっきの攻撃でヘイトを買ったせいだろうけど、このまま何もしない訳には…」


2段階目に入った魔人は、本気的に主人公達を潰そうと殆んどの力をそっちに向けている。だからこうして話せる時間があるのだが、、


「……皆、各々の状況は?」


「僕の方は弾切れだ。作れない事もないけど、その為には魔力が足らないな…」


「私ももう……魔法撃てそうにないやぁ…」


ルナとソルの姉弟は、もう戦える状況じゃない。魔力回復薬(マジックポーション)はもう既に何回も飲んでいるから効果も期待出来ないだろうし…


「ボク達はまだ戦える。けど援護が無い今、あの怪物に近付けるかどうか分からない…」


「ええ。私もまだ動けるには動けるわ。ただ恥ずかしいけどあまり戦力として見ない方が正解かも」


高速で動けるミルでも近付けるか分からないらしい。それにローザも魔力と剣両方使うオールラウンドの為、両方の疲労が強いだろう。

シアンも今も無理をして空から竜巻で攻撃をしているが、アイツも重傷だ。


「どうする…?アキラ」


不安そうに俺を見つめるミル。それに続けように皆の視線が俺へと集まった。別に俺が皆のリーダーという訳じゃないけど、決定権が俺にあるのなら、正しい判断をしないといけない。


なら俺の言う言葉は、、





「皆……ここは退こう」


俺は撤退の選んだ。皆もまさか俺からそんな言葉が出るとは思っていなかったのか、驚いているのが表情から見て取れた。

正直、自分でも驚いている。まさか敵を前に…それも1番大事な所で逃げる事を選ぶなんて……


「認めたくはないけど…俺達はアイツらよりも弱い。頭1つどころか群を抜いて…。これ以上戦う力の無い俺達が戦っても、無駄死にして足手まといになる。だから撤退だ」


「…いいのか?この戦いに勝てば、お前が様々な国から追われ、迫害される事も無くなるんだぞ」


「別にそんなの構わない。今までと変わらないし、何より皆がいれば俺は…………それにアイツ達に協力はしてるけど、強制じゃない。勝てないと分かった以上、逃げる決断は間違ってない筈だ」


このまま何もしないでいても、その内アイツらが倒すかもしれない。何か奇跡が起こるかもしれない。逃げた後に普通に倒してしまうかもしれない。

だがどれもこれも可能性の話。絶対じゃない。元はと言えば俺が皆を巻き込んでしまったんだ。なら少しでも危険があるのなら、安全な場所へと逃げるのは間違っていない筈だ。


どんなに悪く見られても、言われてもいい。()()()()()()()()()責任を持って、俺は撤退を選ぶ。これは揺るがない。

俺は遠くに見えた激化する戦闘から視線を切ると、全員手を繋いで[短距離転移]を連続発動してその場から去るのであった。





アキラ達が撤退した頃と同時刻。コウキは[神龍化(しんりゅうか)]によって変化した体を最大限生かし、再生した怪物へと龍砲を放つ。


「よし…!このまま行けば勝てる…!」


怪物の腕3本を龍砲で吹き飛ばしたタイミングで、恐らくベリタスであろう斬撃が怪物の全身を血塗れに変える。

地上の腕もハジメの魔物達が抑えてくれている。このまま行けば勝機が見える。そのタイミングである事にコウキは気が付いた。


「アキラが…いない…!?」


アキラの…いやアキラだけでなく、仲間達の気配も感じられない。まさか死んでしまったのか!?そう焦りを覚えると、僕に向けて怪物の腕が振るわれる。[神龍化]している今、この程度では傷1つ付けられないが、今はアキラ達がいない事への驚きが大きい。


──何を余所見しているコウキ![神龍化]していなければ死んでいたぞ…!


『アキラ達がいないんだ…!もしかしたら攻撃に巻き込まれたのかも…っ』


──何…?ふむ…逃げたか


「え…?」


同化するセレナの言葉に、僕は思わず声を出した。アキラが逃げる…?そんな事、ある訳……


──状況が劣勢となった事で、早々に勝てないと踏んだんだろう。やはり所詮は悪魔と契約するような人間だ。当然の結果と言った所だな


『そんな…』


確かにこの戦いは僕が彼に頼んだ事だ、強制じゃない。だけど彼の性格から考えるに、敵前逃亡を選ぶとは考えもしなかった。


──あの男の事はもういい。今は目の前のアイツに集中しろ、コウキ


『ああ…そうだな』


僕はまだ飲み込みきれていないが、セレナの言葉に静かに呟き頷いた。

優勢だった状況が、僕のせいで元に戻ってしまった。アルカの怒っている声が聞こえてくる。僕は今ある思考を捨て、目の前の怪物へと意識を全て向けるのであった。

意外な逃亡。

だが強くなる為の逃亡とも取れる。(アキラを抜いて)

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