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360話:大規模召喚術

「なんで…!?なんで治らないのっ…!?傷は何回も塞いでいるのに…!!」


2体目の怪物を撃破した事で沸き上がる冒険者や騎士団を無視し、ローザはすかさずにアキラの治癒へと入った。

だが何度傷は塞いでも、再度皮膚が裂けて出血する。まるでローザの治癒を拒否するかのように…


『出血が多すぎる…っ!このままじゃアキラは……死んでしまう…っ』


救える筈の自分の治癒魔法が通じず、何度治癒してもアキラの出血は止まらない。

絶望的な状況に、ローザの目尻には涙が溜まる。


「何よこれ…!こんな事って…!」


「っ……泣き言は後にしろ!今はアキラの治療が先だ!」


魔物達の隙間を縫って駆け寄ってきたブエルとマルバスもまたアキラの治癒へと専念するが、最高位に近いこの3人でさえアキラの傷を治しきれなかった。


だがその時、アキラは突然目を開き体を起こす。すると不思議な事に、先程まで治る気配を見せなかった傷も同時に止まった。


「……うん、何とか抑え込めたね」


アキラは自身の体を隅々チェックすると、手を閉じたり開いたりとして周りを見渡す。


「アキラ…!良かった…っ……死んでしまうんじゃないかと思った…っ!」


そんなアキラへとローザは涙を浮かべて抱き付いた。アキラは困ったように背中を擦ると、口を開いた。


「えっと…心配掛けてごめんね…?僕はもう大丈夫だよ」


「…?」


言葉遣いに違和感を覚えたローザは首を傾げるが、そんなローザを置いてアキラは立ち上がった。


「また異業種が現れては迷惑だ。他の皆には悪いけど、ここはアキラ君を優先させてもらうよ」


そう呟くと、アキラは未だ魔物が出現し続ける穴へと金色の光線を放つ。その瞬間、アキラの瞳が僅かに金色に光った事にローザは気が付いた。


「これでよしっと………っとと…やっぱりまだ派手な事は出来ないみたいだね。なら力尽きる前に終わらせるとしようか」


フラっと倒れそうになったアキラだったが、すぐに持ち直して小さく微笑む。その姿はアキラを知っている者が見れば、すぐに違和感に気が付く程であった。


「おい、アキラ…まだ完全に治療は終わっていないんだ。今は次に控えて休んでいた方がいいんじゃないか?」


手こずっていた筈の穴を一瞬にして消滅させたアキラに激しい違和感を覚えたマルバスは、目の前の人間が誰かを確かめる為にも声を掛ける。下手をすれば自分自身が死んでしまう可能性も視野に入れながら…


「いや、問題は無いよ。それに今はやらなくてはいけない事があるからね」


「そ、そうか…。だがあまり無理はするなよ」


振り返ったアキラは綺麗に微笑みながらそう言うと、『ありがとう、マルバス』と言って魔物の死骸へと向かって行く。


「さてと、始めようか」


そう呟いたアキラの足元から、広範囲に渡って魔方陣が描かれていく。何百mとある魔方陣を作り出したアキラは、自分の親指を噛むとその血を魔方陣へと垂らす。


「さあおいで、“72柱“の悪魔達よ。テンドウ・アキラの軍門に下れ!」


手を大きく広げ、そう叫ぶアキラ。

すると魔方陣が赤く輝き出し、倒れていた魔物の死骸が次々と消滅していく。


「おい貴様ッ!よくも堂々と悪魔召喚という禁忌を我々の前で────」


「しっー……今良い所だから。静かに、ね?」


背後からアキラの肩へと掴み掛かったリベルホープ騎士団団長エリオット。だがアキラは彼へと振り返る事もせずに、エリオットの顔面へと裏拳を放ち、悶絶させた。


「き、貴様ァ…!!“悪魔宿し“の分際で何をする!?私を誰だと思っているんだ!!」


「さぁ…?誰ですか?」


煽りなどでは一切なく、本当に知らないと言わんばかりの表情を浮かべてそう言ったアキラ。それが余計にエリオットの神経を逆撫でした。


「ッ…!やはり貴様はこの場で殺さなくてはならん存在だ!!リベルホープ王に気に入られたからと言って、悪魔召喚が許されると思ったか!!」


遂には抜剣したエリオットであったが、アキラは特段反応せずに、悪魔召喚へと意識を向けている。

激情したエリオットは、背を見せたアキラへと斬り掛かる。だがエリオットの剣はアキラに届く事はなく、衝撃波によって吹き飛ばされる。


「来たね」


そう呟き、笑みを浮かべるアキラ。遂に魔物の死骸は全て生け贄として消化され、大きな魔方陣からは次々と姿を現していく。


「ウァサゴ、ウァレフォル、シトリー、アミー、ブネ、ロノウェ、マルコシアス、ヴィネ、ムルムル、フラウロス………10人か。少し少なくも感じるけど、この程度の魔物なら…うん、中々上々だね」


今回の召喚に答えたのは10人の悪魔。同時に召喚された事への驚きからか、皆同じような表情を浮かべている。

その中でも1人、アキラの元へと近付いてくる悪魔がいた。


「これはお前が行った召喚か?」


「そうだよ。アキラ君の仲間に───いや、部下になってもらいたい」


アキラへとそう声を掛けたのは“72柱“の35席を担う悪魔、マルコシアスであった。


「…ほう?どうやら嘘をついてはいないらしいな。だが俺を部下にしたいのであれば、それ相応の強さを持つ主でなければな」


「強さ…ね」


アキラは顎に手を当てて少し考える。

今ここで自分の力量を見せれば、間違いなくここにいる悪魔達全員がアキラ君の前に跪くだろう。だがそれでは意味がない。アキラ君自身の強さを見せなければ。


「なら…こういうのはどうだい?」


そう言うと、アキラは悪魔の力を高めていく。それは通常の人間では越えられない領域へと片足が踏み込んでおり、それだけで悪魔達を黙らせる事に成功した。


「君達レベルの悪魔なら察していると思うけど、アキラ君は特別でね。現在13人もの悪魔を体に宿している」


その言葉にざわめき出す10人の悪魔。本来ならば不可能であるが、現に目の前には自身と変わらぬ程に悪魔の力を秘めた人間がいる。


「退屈し、刺激を求める君達を見た事も無い世界へと導いて見せよう。僕とアキラ君が必ず実現させてみせる。だからその為の助力を君達に頼みたい。とても優秀であり、()()()()()()()()()()()として…」


アキラのその一言で、悪魔達の顔付きが変わる。そして人の言語ではない言葉で悪魔達と数回会話を交わすと、マルコシアスを始めとした悪魔達が膝を付く。


「我々一同は、アキラ様への忠誠をここに誓う。その代わり、必ずや俺達の悲願を…ッ」


「うん、分かっているよ。僕とアキラ君達に任せてほしい」


「ありがとう…ございますッ…!」


心臓に手を当てながら忠誠を誓った10人の悪魔達は、過去を思い出し、歯を食い縛る。

“72柱“の悲願でもある神殺しの願いを、アキラへと託し、契約と忠誠を誓った。



「これで23人……もっと味方を増やさないと」


契約を終えた悪魔達はアキラの命令の元、生き残っている魔物の駆除を開始する。

異業種が討伐され、穴も閉じられた今、魔物達が討伐されるのも時間の問題だろう。


「でも…ここからが本番だ」


1人残されたアキラは、空を見上げてそう静かに呟いた。その視線の先は分厚い雲であり、なんて事無いただの曇り空が広がっている。

だがアキラは知っている。あの雲の先に何があるのかを。遠く最後の5つ目の穴が閉じられた今、これから何が起こるのかを……

合計23体の悪魔と契約&体内保管しているアキラ君。

キチンとした描写はまだですが、通常1体でもヤバい。体内に入れたら人格乗っ取り&死ぬ。


現在の契約悪魔

3席:ウァサゴ

5席:マルバス

6席:ウァフォル

7席:アモン

8席:バルバトス

10席:ブエル

11席:グシオン

12席:シトリー

14席:リライエ

18席:バティン

22席:イポス

25席:グラシャラボラス

26席:ブネ

27席:ロノウェ

28席:ベリト

32席:アスモデウス

35席:マルコシアス

38席:ハルパス

45席:ヴィネ

54席:ムルムル

58席:アミー

64席:フラウロス

世界関数の悪魔:ラプラス

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