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35話:沸き上がる感情

ミルの体は結構細くて肌白い。無表情系で眠そうな眼をしていて、おまけにアホ毛付き。


…っというのが作者がイメージするヒロインの姿。ラノベ作者特有のヒロインへの拘りってやつです()

「う、うん…かっこいい剣だな」


夜の仕事を終えた次の日。買った細剣を研ごうとしたが、思うように行かず、顔面を赤面させながら武器屋へと向かった。

おっちゃんは大爆笑。笑いながらもやってくれのだが…

これじゃ俺のプライドが傷ついたぜ…!


んで今はその帰り道。ピカピカになった剣を見て、俺は顔が気持ち悪い程緩む。


「これで魔物を倒しに行ける!」


魔物退治クエストは、薬草採取や街の人のお願いと比べて貰えるお金が多い。今までは念の為受けないようにしてたし、薬草採取の時も魔物と出会ったら持ち前の【逃走Ⅱ】で逃げていた。


「ミックさんっ!Fランクでも出来る魔物退治クエストを紹介してくださいっ!」


「えっ…?あっ…剣買ったんですね。なら…うん、平気かな…。えっとそうですね…これはどうでしょう?」


森蝙蝠(フォレストバット)の討伐

適正ランク:F

目的:森蝙蝠を15匹の退治

報酬:銀貨4枚


中々いいんじゃないだろうか。4000円も貰えるなんて…凄い!

早速手続きをして、いつも通り山へと向かう。今回は山にある洞窟に森蝙蝠がいるらしい。


『洞窟戦か…ヴッ!ゴブスレの記憶が…!』


でも俺は調子に乗ってる雑魚じゃない。…いやまぁ調子には乗ってるし、雑魚ではあるのだがそういう意味じゃなくてね?何も知らないバカじゃないって事。


俺は山へと向かう途中から左目を瞑る。事前に暗所に慣らしておけば、暗がりでも目が効く。本当は松明でもあれば良かったのだが、生憎こちらは剣を買ったからカッツカツだ。

松明あっても今後の置き場に困るしな。


山の中を歩いていると、目的の洞窟に到着。ここにいると言われる森蝙蝠は、最近夜な夜な街にやって来て、フンなどをしていくらしい。

この蝙蝠独特のマーキング方法らしく、対処しないと街にも森蝙蝠が溢れてしまうらしいのだ。


「シャーマンの記しは無し。うしっ!行きますか!」


洞窟の中へと潜入。ある程度進んだら左目を開眼する。予定通りちゃんと暗がりが見える。


「クッサ……なんか独特の臭い…」


鼻を刺激してくるこの臭いの正体は……分かってるけど、考えたくないので進んでいきます。


「キキーッ!」


「うおっ!出たな!」


悪臭に耐えながら進んでいくと、蝙蝠がこちらに飛んでくる。どうやらアイツが森蝙蝠らしい。予想以上にデカイな…横30㎝くらいか?


「はい投石!!」


ショルダーバッグから手早く取り出したのはピンポン球程の石ころ。

それを飛んでくる森蝙蝠へと投石した。


「ギッ──!」


見事的中した森蝙蝠は地面に落ちてきて、バタバタと暴れる。そこを細剣でトドメを刺す。

退治の証拠とした、森蝙蝠の羽を切り取り、買っておいた専用の袋へと入れる。


「ふぅ…まずは1匹っと」


思ってたより、この戦法は効果的だ。ここに来る途中に石を取っておいて良かった。少し重いけど余裕余裕。



その後もずんずん洞窟中を進んで行き、遭遇しては投石の戦法を取った。


石散弾(ロックショット)!!」


「ギギッ…」


複数現れた場合は、石を大量に投げて落とす技を披露。別にスキルでもなんでもないが、主人公ってのは必殺技を叫ばなくちゃいけないのだ。


「折角細剣を買ったのに初戦が使えないとは……んしょっ。えっと?これでー……12か」


特に何事も無く、面白味も無いような狡い戦闘をし続け、ジャンジャン倒していく。

変異種が出てきた!とかのイレギュラーも無く、俺は15匹の森蝙蝠を退治した。


『触れ幅が激しいんだよぁ…テンプレの時はトコトンテンプレのくせに』


ぶつくさ心の中で世界に対して文句を言って下山。ギルドに到着して森蝙蝠を渡した所でクエスト完了。報酬の銀貨4枚を受け取った。


「4000円、か。ボチボチだな」


銀貨を巾着に入れて、俺は再度山へと向かう。もう一体何度登り降りをしただろうか。足腰が強くなってる気がする。


「まだ来てないか。……自主練すっかな」


細剣を抜いて素振りをする。何度も上げ下げして腕と背筋を鍛える。


竹刀より重いだけあって、何十回も振ってると汗が出てくる。

そう言えば俺ってまだ服装農民風なんだよな。


「服もっ…!買わないとなっ…!主人公にっ…!なるためにっ…!」


やっぱ膝下まであるなっがいコートを前を開けて着たいよな。んでぇ~童顔ドヤ顔キメて~

…俺って言うほど童顔か?前に水の中を覗いた時は年相応の顔してたが…ガキ臭いって言えばガキ臭いし…童顔だな、うん!


「あっ、髪の毛もセットしないとなぁ…」


素振りを一旦止めて、髪の毛を弄る。転生前からずっと続けてるなろうヘアー。所々跳ねた垂髪を昔からヘアワックスで演出している。


「こっちの世界にヘアワックスってあるかな……あれやんないと上手く演出出来ないんだよな」


別に癖っ毛って訳じゃないけど、現実だとあの所々跳ねた髪って難しいのだ。

あれ何なんだろうな?寝癖って訳じゃなさそうだが。


「あれ…?今日は早いね」


「ん?やっほ、ミル。今日もお願いな」


髪の毛弄ってたらミルがやって来た。結局素振りをほんの15分程度しか出来なかった。


「今日は【終雪(しゅうせつ)】を教える。とても辛いから覚悟しててね」


「…!ウッス!」


ミルが扱う剣術【終雪】は、吹き荒れる吹雪の様に鋭く、氷華のように美しく舞う剣術。振られる剣は氷触の如く凍てつき、剣撃の速さは巡る四季のように視認することが出来ないと言われている。

てかミルがそう教えてくれた。


「この【終雪】には型は無い。ボクが放つ剣撃全てが【終雪】になる」


「ほ、ほう…成る程」


全然分からん…。天才なのか、天然なのか分からないが、仰ってる意味がイマイチ理解が出来ない。


「だから見て覚えて欲しい。ボクの剣を」


「…ああ、分かった。善処してみるよ」


ん、と頷くミル。こうは言ったが、正直自信が無いのが現状。型でもあれば努力のしがいがあるのだが…


「ボクは今日の打ち合いで【終雪】を使う。昨日と何が違うか…その眼で、その体で感じて欲しい」


そう言ってミルは俺に木刀を渡してくる。

俺は受け取った木剣を構え、戦える体制に入る。


「じゃあ…───行くよ」


「ッッ!!」


いつでも反応出来るように構えていた。

だがミルの剣撃を視認する事は出来ず、気が付いたら俺の後ろへと木剣は落ちていた。


『何が起きた…全然見えなかった…!』


あの日、ドラゴンから救ってくれたミルの剣撃を思い出す。一瞬にして切り伏せていたあの時を、、


「これが【終雪】…ゆっくりやっていこう。時間はまだあるから」


「………あ、あぁ…」


──────────


「グアッ…!!はぁ…はぁ……もう一回!!」


「ん…」


あれから何度も俺はミルの【終雪】によって吹き飛ばされている。あまりに速すぎる剣撃に俺は対応が全く出来ていなかった。


「ガッ!!……くっそ…!もう一回!!」


これで果たして何回目だろうか。

何度やってもミルの剣を眼で追うことが出来ない。偶然防いでも、矢継ぎ早に白い一撃が俺を襲った。


「アキラ、大丈夫…?」


「平気……ッ……ミル、もう一回頼む」


これで何十回目になるだろうか。

吹き飛ばされてはまた立ち上がるの繰り返し。そんな全くの成長が見られない俺の稽古に付き合ってくれるミルには感謝しかない。


「アキラ…怪我してる」


「こんくらい…なんてこと無い…!もう一回」


アザや切り傷は腕や頬に無数にある。

だがそんなのどうでもいい。そんな小さな傷程度で折れていては、俺はこの世界を生きてはいけない。








「もう一回…!」


「………もう暗い。続きはまた明日にしよう」


「で、でも──」


「足腰もフラフラ。そんなんじゃ体を痛めるだけで何も学べない。…ね?明日またやろう」


「……そう…だな」


いつより暗い時間。山の森は既に薄暗くなってきている。

そんな時間になるまで打ち合ったが、俺は一度足りともミルの攻撃を、【終雪】を反応する事が出来なかった。


「…じゃあね、アキラ。また明日」


「……うん、また…」


帰っていくミルを見送り、俺は拳を強く握りしめた。悔しくて、情けなくて。浮かれていた自分を殴り飛ばしたい程に、ただただ情けなかった。


自分が今までしてきた事は決して無駄ではなかった。だがまだ足りなかった、ただそれだけ。



「ッ…!」


もっと強くなる。


今日ほどそう強く想った程は無いほどに、俺の心の中に火が灯った。それは胸を焼き付くす程の強い想い。












名前:テンドウ・アキラ

種族:人族(ヒューマン)

魔法:[火花(ヒバナ)]

スキル:[背水の陣][限界突破(オーバーロード)][斧熟練Ⅱ][弓術Ⅰ][逃走Ⅲ][激情]

加護:[治癒の女神・リコスの祝福]




[激情]

感情の強さによって、戦闘能力が上下する。


取得条件

激しい沸き上がる感情。強い覚悟と意思。

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