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358話:4頭の鉄龍

無駄に長くなって申し訳ないです。

鎖の拘束から解かれた怪物は、此方を嘲笑うかのように歯を鋭く光らせ笑う。

体をぐちゃぐちゃにされた挙げ句、悪魔の力を過剰に使い過ぎた影響で心身ともにボロボロだと言うのに、いい加減勘弁してほしい。


「まだ終わらないってのに、こっちはもう限界だ…!」


そんな弱音を吐いても、現状は変わらない。

体に掛かる負荷の事も考えねばならないと言うのに…ッ


「どうやらコイツは熱に反応するみたいよ!だから熱量を持たない方法なら、私達の攻撃も通る…!」


「成る程…熱だったか…っ」


音に反応して攻撃していると思っていたが、どうやら俺の予想は外れてしまったらしい。

だが仕組みが分かればある程度戦える方法が考えられるものだ。


「こんな風にな!」


俺は[城壁建築(キャッスル・テクチャ)]で地中に潜り、地下に道を作って進む。そしてそれと同時進行で火魔法を使い、人形の囮を作り出す。


「…!!」


もしかしたら成功しないのではと思ったが、俺の思惑通り奴は火の囮に反応し、殺そうと拳を振るう。やはり目が無い為、その人形が人間かどうかの判別が出来ないようだ。


「[擬似ブラッドサクリファイス]ッ!!」


奴が囮に気を引かれている内に、俺は奴の真下から現在最高威力且、熱量を持たない冷たき鉄の竜を放つ。


鉄の竜は無慈悲に怪物の体に巻き付き、トラバサミのような口で怪物の頭から噛みつき始めた。

発動条件は縛られるものの、当たれば強力なこの技は例外無く、脅威的な力を振るった怪物でさえその堅固な体に大きな傷を負わせる。


「このまま持ってける─────訳無いよな…!畜生め…!!」


願わくは、このまま奴には死んでもらいたかったが、やはりそういかないのが俺の補正。

間違いなく奴は()()()()()()()()()の前座だと言うのに、まだ倒れてくれない。


怪物は腕の筋肉を異常なまでに膨張させると、そのまま力任せに鎖を引きちぎる。

形も威力も違うとは言え、【盾の勇者】に登場する必殺技の名を騙るだけあり、その殺傷能力には自信があった。だがこうも簡単に俺の必殺技を真正面から打ち砕かれては、心にそれなりのしこりを残す。


「──…!どうやらこの場で決めてくれるのは俺じゃないみたいだなッ…!なら俺のやれる事をするだけだ!!」


絶望に近い感情を抱いた俺だったが、視界内に見えた吹雪が嵐のように昇る光景を見て、俺は安堵と共に笑みを浮かべる。


「ローザ!!」


「…!」


「俺が倒れたら……後は頼む…!」


この場をギリギリの所で抑え込んでいた俺は、同じくこの場を抑えるローザへと叫ぶ。

無責任でいつも心配ばかり掛けてしまっているが、俺が倒れた時に頼って1番安心できるのはローザだ。


ローザは察したように表情を曇らせたが、彼女は決心したように頷いて答えた。

信頼できるローザが頷いてくれた。なら俺は後の事を考えないで、本当の意味で全部を出し切れる。


「ガハッッ…!!ッ………!!」


俺は再度悪魔達の力を高め、自身の体を人間から悪魔と同じになるように変化させていく。

額からは皮膚を突き破り角が生え、赤い瞳が更に紅く染まっていく。


そうこうしている間にも、怪物は[擬似ブラッドサクリファイス]から徐々に抜け出していく。最早奴の体が自由になるまで時間はもう1分も無いだろう。



「逃がさねぇよッ…!お前が動いちゃ、ミルがトドメを決められねぇーだろッ!!」


俺は体が裂けるような激痛に耐えながら、リライエが事前に設置していたトラップを一斉に発生させた。全て[擬似ブラッドサクリファイス]として。


「これ…だけじゃダメだ…!もっと…ッ……も“っ“と“だ“…!!」


皮膚が裂け始めた俺の体からは、真っ赤な血が出血し始める。それでも集中を一切切らさずに、ただその技を完成させる為だけに尽力を尽くす。


リライエが仕掛けた罠の数は200。それら全てが鉄の竜であり、それだけでもアキラの体には致死量の負荷が掛かっている。それでも手を止める事は無く、200にも及ぶ鉄の竜をそれぞれ50ずつ重ね合わせる。


重なり合った200の鉄の竜は4頭の竜となり、それぞれ火、水、電、地の力を宿す“龍“へと昇華する。


「───[鉄龍四天王(クアドラングル)]ッ!!」


天を統べるような強大な4頭の龍は、怪物の四肢に噛みつき砕く。それぞれの龍が宿す属性に焼かれ、凍らされ、麻痺させ、切り刻まれ……僅か数秒で怪物を無力化にした。


「あ“……とは…頼むぜ…!ミ“ルっ……!」


だがその代償に、アキラは内臓が破裂したかのように穴という穴から大量の血を吐き出し倒れる。その倒れた体は、高圧電流を流されているかのように痙攣し、左眼は深海魚のように膨張して破裂寸前だった。

それでも彼の口は笑みを浮かべており、サムズアップをしていた。






「ありがとう、アキラ…!2人が作った時間を無駄にはしない…!![天牢雪獄(てんろうせつごく)]…っ!!」


高く舞い上がったミルは、ローザの剣、リベリパトスに永久凍土とさえ感じてしまう冷気の嵐を纏い、それを4頭の龍に喰われている怪物へと容赦無く放つ。

大地を裂く程の威力で辺り一帯を氷の世界へと変える嵐は、怪物を丸々呑み込む。そして嵐に呑まれる事数分。怪物は30mを越える巨大な氷塊の中心で凍死してきた。


「さよなら」


冷たい言葉と共に、ミルが剣を振るうと同時に、怪物を凍死させた氷塊は粉々に砕け散り、ダイヤモンドダストが美しく舞う。

そしてアキラはその美しい光景を最後に、ゆっくりと息を引き取るように瞳を閉じるのであった。

火、水、電、地(氷とも読む)……

四天王……

狩猟………うっ頭が。

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