353話:異業種討伐
遅くなってしまい申し訳ありません。
現在就活中…大目に見てね…(震え)
「頼む皆…!俺に協力してくれ!![悪魔放出]ッ!!」
俺がそう叫び、スキルを使用すると、俺の胸の心臓付近が怪しく光輝く。
そして体の力が抜けたような脱力感の後に、俺の目の前には心強い仲間が現れた。
「くくくっ…!まさか俺達を外に出すとは思いも見なかったなぁ。随分とリスキーな事をするじゃねぇか」
「嗚呼…!偉大なる我が王の駒として、ワタクシを使ってくれるだなんて…!!この上ない幸福で御座います…っ」
この中でも我1番とばかりに猛スピードで飛び出たのは、アスモデウスとラプであった。2人はある意味危険人物であり、目が離せない悪魔だ。
「なんだあの魔物は!?見たことが無い!!是非ともサンプルが欲しい!!」
「落ち着きなさいよ、全く」
「オレ達を外に出したって事は、コイツらぶち殺しちまってもいいんだよな?」
「本当に落ち着こうよ皆…」
興奮状態のグシオンとハルパスを、何とか落ち着かせながら軽々と魔物を葬っていくバティンとイポス。
そしてもう既に戦闘を開始してるアモンとグラシャラボラス。笑いながら魔物を挑発するベリト。
師弟関係であるバルバトスとリライエは共に行動し、知ってはいたが自由すぎるよお前たち……
「ちゃんと側にいてくれるのはマルバスとブエルだけだな…」
「当然だろう。私がここにいなければ、力を無くしたアキラを一体誰が守ると言うんだ?」
「まぁ私は戦えないからね…」
2人共やっさしぃ……マルバスにいたっては男前過ぎるでしょ。クール系美少女…いや美少年に惚れてしまいそうなんだが。
それは兎も角、体内から外へと出した悪魔達の力は本物であり、次々と魔物を殺していく。お互いに殺した数を競い合うかのように次々と…
「その気持ちはありがたいが、俺は守られるよりも守りたい派でね。その為に俺は今日まで鍛練してきたんだ」
俺は迫り来る触手をジャンプでかわし、その触手をバネのように踏んで空へと舞い上がる。
そしてそのまま体を捻りながら、空中の魔物を切り裂く。我ながら中々の技術だと思う。
「シアン!来てくれ!」
「…!うん!行くよー!」
空中でシアンに向けてそう叫ぶと、俺が地上に落下する前にシアンは俺の背中に張り付いた。同時に背中に痛みが走るが、それ以上の効果をもたらすのがシアンの寄生だ。
「実戦でこうするのは久し振りだな。頼むぜ相棒!」
その声と共に、空中で氷の斬撃である[氷月刃]を目玉の怪物へと放つ。
騎士団へと向いていたヘイトを、俺へと向けるようにする為に次々と間を入れずに斬撃と共に火球を飛ばす。
「ギィイイイウウウ!!!!」
「チッ…!やっぱり硬いな…!」
思惑通り奴のヘイトを向けさせる事には成功したが、次々と俺を貫こうと迫る触手が硬すぎて切れやしない。
気のせいかもしれないが、若干奴の攻撃スピードも上がっている気がするが…嫌な予感がする。
「バティン!合わせてくれ!!」
「っ…!分かったよアキラ!!」
俺はその嫌な予感を感じ取りつつも、それが予感でなくなる前に攻撃を放った。
それは単なる微弱な火球魔法であるが、バティンの[短距離転移]と合わさる事で、奴の弱点と思われる本体である目玉の前へとワープさせた。
「ギィイシシイィイ!!??」
「おっしゃ!ナイスだバティン!」
俺はまだ新しく契約した5人の力を使いこなせていない。その為奴が作る触手の壁が邪魔して、火球を移動させる先を考えられない。
だが元々の持ち主であるバティンが使えば、それも可能となる。そう予測したが、見事に的中した。
『これで奴に火をぶつける事に成功した。結果はどうなるか…』
完全に直撃した火球は爆発して煙を上げる。未だ奴の姿は見えにくいが、今の攻撃で効いているのなら、間違いなく火は奴に通る。
俺よりも何10倍と威力があるルナが放てば、間違いなく勝てる。
「…っ!ビンゴ…!」
直撃した目玉の怪物は、目を真っ赤にして動きが一瞬止まった。その動きが止まると同時に、奴の視線が完全に俺へと向いたのを感じ、全身に鳥肌が走る。
「ギィイイイウゥゥウウ!!!!」
「無礼な奴だ。誰を前にしている、目玉風情がッ!!」
騎士団と冒険者に向けていた触手の殆どを、全て俺へと向けた奴だったが、ラプを中心とした悪魔達がそれぞれ触手を弾き、俺を守る。
「知ってはいたが、改めて皆の力を目の当たりにすると凄いな…」
「感心もいいが、その剣をよこせ」
俺の近くまでジャンプで跳んできたグラシャラボラスは、強引に俺から細剣を奪うとその剣に手を当てる。
「その剣に施されてる付与魔法だけじゃこの触手は切れねぇだろ?だから[崩壊]を付与してやった」
「あ、ありがとう」
グラシャラボラスはそれだけ言うと、鼻を鳴らして前線へと戻って行った。
俺は雑に渡されたその剣を見つめると、駆け足で俺も目玉の怪物との距離を詰めていく。
「っ…!凄い切れ味だ…!」
実際は切っていると言うよりも、触れた瞬間から触手を崩壊させているのだが、大差は無いだろう。
俺にはミルのように、触手を凍結させて砕くような器用な事は出来ない為、グラシャラボラスの力はありがたい。
「はあああああッ!!」
俺は次々と触手を切断していき、ルナの魔法が完全に当たるように触手を切断行く。
触手の数は多いが、再生はしていない。今まで相手にしてきた奴らが再生持ちばかりだった為、今回奴が再生もしない事が弱くさえ思える。
「こ、この機会を逃すな!!完全に仕留めるんだ!!」
エリオットさんの掛け声と共に、次々と魔法や剣を向けていく騎士団と冒険者達。数が減ってはいるが、この場に召集される程の者なだけある。形勢が変わってきた。
「ルナ!行けるか!?」
「オッケー!任せてよっ!![太陽之業火]っ!!」
この機に乗って、俺はルナへと合図を送る。すると目玉の怪物の上空に、見た事も無いようなサイズの魔方陣が展開させる。
そしてその魔方陣から生まれたのは、30mを越える巨大な炎の塊だった。ゆっくりと落ちてくるそれはまさに確殺であり、皮膚が焼けるように熱く燃えている。
「ギィイイウウ!!?ギシャシャ…!!」
「逃がす訳がない…!」
あれを喰らっては不味いと判断したのか、今までその場を動かなかった目玉の怪物が移動を開始する。
だがそれはミルが辺り一面、目玉の怪物ごと凍結させる事で逃げる方法を潰した。
「ギィイイイイイ─────」
逃げる術を潰された目玉の怪物は必死にもがき逃げようとするが、ルナの炎の熱に負けない冷気と硬度を持つ氷の足枷が邪魔をして逃げられず、攻撃手段であった触手さえももう無い。
奴は最後まで逃げようとし、最終的には空から迫る炎を見つめながら絶叫を上げて呑み込まれた。
「エッグ……」
ルナの魔法が地面に落ちると同時に発生した熱風と衝撃波によって、吹き飛ばされた俺は地面に出来たクレーターと言うには深すぎる穴を見て背筋が凍る。
嘘みたいだろ?この穴作ったのうちのパーティーのルナなんだぜ?
──こちらベリタス。こっちも無事に穴を消す事が出来た。
「………嘘だろ…?」
ルナの魔法に呆気に取られるのも束の間。今度はベリタスからのテレパシーが入り、俺は絶望する。
その視線の先には、まだ閉じ終えていない“魔災“の核である穴があったからだ。その穴は目玉の怪物を産み出した時よりも膨張すると、またしてもガラスの割れる音が辺りに響き渡った。
そして姿を表したのは、10m程の人間のような体格をした怪物。体は鱗のような物に覆われており、目や鼻は無く、唯一口だけがある異形な怪物であった。




