34話:遂に剣を買った!
今日で1週間毎日同じ時間に投稿しましたが…どうでしょう、タイトルとか覚えて貰えたでしょうか。
「待ってって言ったじゃん…!」
「ごめん」
こいつ…!ごめんって言えば済むと思ってるな?ごめんで済んだらニューヨークポリスデパートメントはいらねぇんだYO!
「許すっ!」
結局は許しちゃうんだよな…
俺のような奴らは顔とかキャラが良ければ、大体は大目に見てくれるからな。
「ミルは魔法とか使えるの?もし使えるなら治癒とかある?出来れば治していただきたいと…」
「ごめん…ボクは氷魔法しか出来ないや」
氷かぁ~髪色的にも、キャラ的にも合ってるよな。ブリザードソードッ!なんてな。
「もう少ししたら、また打ち合おう」
「うっ…わかった」
それから数分休憩したら、また木剣を持って打ち合いの稽古をする。
1回戦以降俺の動きの癖などを読まれたりして、俺の攻撃は全く当たらなくなった。しかも防御も儘ならない程まで打ち込まれる。
「ダハッ!?……いてて」
「ふぅ……うん、いい感じ。もう一本行こうか」
これは…中々きちぃな。
何がいい感じなのか分からないけど、ミル本人は納得している表情だ。俺は一方的に打ち込まれるだけなんだが……解せぬ。
「ンファッ!!」
「うん、成る程ね」
だから何が成る程なんだ…?もうこれで十二本目なんだが…。うわっ…腕とかアザになってる…
「アキラ、どうして右足から出すの?前に出る時はほぼ右足からだった」
「えっ…それは…」
剣道の癖って言っても伝わらないよな。一様左足も使うのだが…俺は基本的に下がる時にしか使わない。これは俺だけなのか?
「右足を出したら仕掛けてくるって一目でわかる。その癖、直した方がいいよ。実戦なら命取りだから」
「そう…だね。うん…直すか」
上手い人はそういうのすぐ気付くからな、気を付けないと。なら翻弄も兼ねて、派手に動いてみるか。
「はい、これ」
「これは…ポーション?」
コクリと頷くミル。どうやら飲めという意味らしい。栓を外して、黄緑色の液体を飲んでみた。
「まっず!!」
「でも体の傷を治してくれる」
回復ポーションか…。これを作るのにミール薬草が必要なのか。工程はどんな感じなんだろう。
「さ、飲んだらまた打ち合おう」
「うぇぇ…」
「そろそろいい時間だね。今日はここまでにしようか」
「お、終わった……」
日が落ちてくる時間帯。もう森はオレンジ色に染まっている。あの後ずっと、打ち合った。ポーション飲んでは打ち合い、飲んでは打ち合いの繰り返し……ポーション耐性とかつきそうだ。
いやついたら困るわ。
「そう言えばミルはここに…【リコティ王国】にはずっといるの?」
「…ううん。元々ボクがここに来た理由がこの山の2つ隣にいる魔物の退治だから。後……大体1週間もしたらここを出て行くつもり」
「そっか…」
これは着いていった方がいいイベントなのだろうか…世界は広いからな、もう会えないかもしれないし。
「大丈夫、アキラは覚えるの早いから。ボクの剣術、【終雪】を教えられるだけ教える」
「イマイチ実感わかないけどね…」
「ふふっ……アキラは強くなれるよ」
ミルと軽い談笑をしながら俺達は下山した。
既にクタクタだが、これから夜の仕事もある。頑張らなくては。
「んー…剣術を習う時間をクエストに…いやいや!それはダメだな」
まだ5000円も貯まってない俺の残高。欲しい物も買えない状況が辛い……剣が欲しい…
「あらっ!今日も早いわねぇ~!気合い入ってるじゃないっ♡」
「今日もよろしくお願いします…」
【ニューカマー・ヘブン】は夜から営業が始まる。まだ夕方過ぎだが、特にやることも無い俺。だがクエストを受ける時間も無い。
「店が開店するまで筋トレしてていいですか?」
「まぁ!筋肉がある男の子は好きよっ!アハッ♡」
ゾクッ…!
み、店が開くまでプーちゃんママの部屋で筋トレしよう。最近してなかったからな。
────────
次の日の朝、いつも通りプーちゃんママのご飯をご馳走になる。
「アキラくん、大丈夫?はい、お水」
「ありがとうございます…」
昨日の夜、お客さんにいつも以上にお酒を呑まされた俺は、絶賛二日酔い中。頭痛いし気持ち悪い…
「今日もギルドに行くの…?」
「ええ、行こうかな…と思ってます…」
本当は行きたくない。けどお金も必要だし…ミルとも約束もある。流石に破る訳にはいかない。
「行ってきます…」
 
「行ってらっしゃい…気を付けてね?」
少し遅い足取りで俺はギルドへ向かう。今日は薪割りよりもミール薬草の採取の方がいい。なんかあっても山で吐けるし…
「今日はミール薬草の採取クエストをお願いします」
「あ、はい…顔色悪いですが大丈夫ですか…?」
「あ、平気っす…」
受付嬢さんにも心配されてしまった。情けない…。よっぽど顔が青白いんだろうな。俺酒強くないしなぁ…
「んしょっ!んしょっと!ふぅ~…」
以前ミール薬草が大量に生えていた場所でミール薬草を採取する。ギルドは調査してくれたんだろうか。てか対処のしようが無い気がするが。
「ふぅ…こんなもんかな」
採取したミール薬草の数を数えるとピッタリ10。以前よりは速く終わった。
「うーん…まだ約束の時間まであるし…もう一個受けに行くか」
ミール薬草を持って、俺は再度ギルドへと向かう。今度は何を受けようかな?
「では報酬の銀貨2枚です!」
「どうもありがとうございます」
これで5850円。まだ小学生のお年玉レベルの財産。せめて後倍は欲しいところだ。
「初心者でも出来て、収入のいいクエストってありませんか…?」
俺はクエストアドバイザーのミックさんにダメ元で聞いてみる。
「そうですね…やはり魔物退治ですかね…」
やっぱそうなるよな…。でも俺武器を何も持っていない。籠手でも買おうかな。いや、そんなお金あるなら安くても剣買うわ。
「お安くても、持っておいた方がいいかと……逆にアキラさんは持ってないんですね…」
うーん…6000円に届かない程度のお金で買える武器ってどうなんだろう。
俺的には、逆に怖いんだが。
「成る程…ちょっと見てきてみますね」
そう言って俺はギルドを出る。向かうは以前立ち寄った武器屋。
「らっしゃい!!って…この前の兄ちゃんじゃねぇか!どうよ、金貯まったか?」
「ボチボチ、ですかね。アハハ…」
世間話を軽くして、早速店主に安く売れる剣があるかどうか聞いてみる。あればいいのだが…
「安い剣?そうだなぁ…ウチじゃ粗末な物は売らねぇようにしてんだが……ちょい待ってろ」
そう言っておっちゃんは店の奥へと入っていった。その間俺は店の剣を見て、妄想していた。
「待たせたな。ホラよ、こん中からならそうだな…大銀貨1枚でいい」
大銀貨1枚…5000円か、安いな。
おっちゃんが持ってきた樽の中には、数本の剣が雑に入っている。
『これはなんだ?…曲がってね?こっちは…短すぎるな』
樽の中に入っていた剣は、曲がって剣だったり、極端に短い剣などと変なのが多い。
「この樽の中に入ってるの全部失敗作。行程をミスっちまった駄作だよ」
どう行程を間違えたらこうなるのか気になる所ではあるが…まぁありがたく選ばせてもらおう。
「んー…こっちは使いにくそうだし、こっちはなぁ…───ん?これ…」
樽の中の一本の剣に目が止まる。
白と水色の綺麗な細剣。鞘から抜いてみると、刃が模造刀のようになっていて、錆びている。しかも刃がボコボコしていてとても斬れそうにない。
「…おっちゃん、研石ってありますか?」
「…!あるよ。セットで大銀貨1枚と小銀貨1枚。どうだ?」
「っ!買った!」
「毎度ありっ!!」
すぐにショルダーバッグから巾着を取り出し、大銀貨1枚と小銀貨1枚を出した。
「おっちゃん、ありがとう!また来るよ!」
「おうっ!今後ともご贔屓に!」
ニカッ!っと笑い、俺を送り出してくれた武器屋の店主。
恐らくこの細剣はわざとあの樽に入れてくれたんだ、俺のために。
『研げば全然使えるし、飾るだけでも綺麗な細剣。なのにあの中にあった…』
以前からお金の無い俺を見かねて、サービスしてくれたんだろう。だが普通にやってもつまらないと思ったのか…或いは照れ隠し?
前世の頃に、家で包丁を研いだことがあるから、多分同じ要領でやれば上手くいく…筈だ。
「まあなんにせよ、剣ゲットだ!」
剣を手にいれて浮かれるアキラ。
だが予想とは違って、剣を研ぐのは想像以上に難しい事をこの時のアキラは知らない。
翌日、アキラはめっちゃ赤面して武器屋へと向かうのであった。
 




