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341話:悪魔の力は万能です!

久し振りのタイトルをパク…───模倣(ヒール)しました。

そしてその日、俺はルナとソルの安全を確認すると同時にシアンの無事も確認した。

俺の知らない所で、シアンが縮小した状態での蝶化になれる事に驚きつつも、息子同然のシアンの頭を撫で回して褒めちぎる。我ながら親バカというヤツだろうか。


「今からミルちゃんの所に?」


「ああ。無事とは言え、やっぱり心配だからさ」


俺は共に会話をしていたルナ達にそう言って、部屋を後にする。どうやらここはガルシェ帝国にある高級ホテルのようで、医療設備なんかも充実している。とても歓楽街にあるホテルとは思えない。

そんなホテルの一室に、ミルが寝る部屋がある。


「ミル…」


部屋に入った俺は、眠るミルの隣に用意された椅子に腰掛ける。一定のリズムで息を吸っては吐いているが、目覚める様子は無い。話によれば俺と同様に3日も眠ったままだそうだ。


「[黒雷(こくらい)]。……よし、近くに人はいないな」


俺は[黒雷]から発生出来る微弱なプラズマを利用して、近くに人がいない事を確認すると、俺は眠るミルの右側へと移動する。


「フゥ……頼む…マルバス、ブエル」


──任せなさい。


──そうそう!お姉さんにまっかせなさい!



俺は左右の手にそれぞれマルバスとブエルの治癒能力を宿すと、それを眠るミルの右腕へと触れる。俺は壊す事は得意だが、治すのはあまり向いていないらしく、こうして触れなければ治療が出来ない。


『順調だな』


切断されたミルの右腕から、徐々に新たな腕が伸びてくるという現代医学からは考えられない光景に驚きつつも、俺は順調にミルの腕が再生していく様子を眺めていた。


「────っ…!ゴフッ……ッ」


だがその途中、俺は突然吐血した。口に広がる鉄臭い味が外に出る前に、咄嗟に手で押さえる。その手には真っ赤な血がべっとりと付着していた。


「………」


俺は近くにあった布巾で手に付いた血を拭い取ると、そのまま黙ってミルの治療を続ける。

どれだけ治癒に優れたマルバス、ブエルがいても、肉体にのし掛かる負荷までは治せないようだ。それこそサタンの[憤懣(ラース)]のような、体丸々作り直すような再生とも言えない方法じゃないと無理のようだ。


「後…っ……少し…!!」


手首までの再生を完了させた俺は、力を緩める事無く精一杯の力を出す。だが目と鼻からも出血してしまった為、俺は左手で顔を押さえながら右手に力の全てを乗せる。


「はぁ…っはぁ…っ…!」


そしたミルの右腕が完全に再生したのを確認した俺は、足腰の力が抜けてしまい、その場に尻餅をついてしまう。急いで俺はブエルの力で血管から漏れ出る血を圧迫して止めると、深呼吸をして息を整える。


「シャアァッ…!!」


俺は疲労から床に倒れながらも、念願のミルの腕を治す事を達成した喜びを噛み締める。ただでさえ近距離最強だったミルが、更に強くなって帰ってきたんだ、まるで主人公だな。


「……さてと。次の準備をしないとな」


俺は未だに残る疲労を無視して立ち上がると、治ったばかりのミルの手を掴み、ブエルの[再生(リジェネ)]を使用する。これでミルの受けた傷は完全に治った筈だ。もっとも、治癒に優れたローザがいるんだから俺はこんな事をする必要が無いんだがな。やっぱり心配が勝ってしまう。


「早く目覚めますように」


俺は眠るミルにそう言って部屋から静かに出て行く。向かうはガルシェ帝国のすぐ横にある平原だ。今夜ハルパスとの再戦があるが、まだ時間には早い。なら何の為に向かうかと言うと、無論格闘術の勘を取り戻す為の稽古だ。

ハルパスはスキルや魔法などを一切使用しない、己の拳と脚だけが頼りの真剣勝負を望んでいる。ここ最近は皆のスキルや、ミルからの剣術に頼りっぱなしだった為、僅かに鈍った勘を取り戻したかった。





「デェリャアアアア!!!」


木に巻き付けた布に向けてのパンチと蹴りをそれぞれ500回ずつ済ませた俺は、脳内で空想のハルパスを作り上げ、脳内で擬似的にハルパスとの試合を行う。その回数87回。

初めの方では惨敗していたものの、後半につれて勝てる回数も増えてきた。もっとも、それは単なる空想のハルパスであって、本人ではない為実際はどちらが勝つかは分からない。


「空想での俺の勝率は凡そ3割を切ってる……これが実戦となれば…」


悪魔の力を借りない俺など、高く見積もっても所詮人間の中の上レベルがやっとだろう。対してハルパスは完全に近接タイプのアタッカーであり、その身体能力は俺から言わせれば異常以外の言葉が出ない程だ。


「だがハルパスの能力は何度も活用してきた。彼女の力は頼りになるし、なにより俺の稽古にも付き合ってくれそうな悪魔(ひと)だ」


ミルとの剣の稽古の以外にも、格闘術を鍛えられる相手は今後の事を考えると必要な筈だ。

そしてこれは俺の勝手な憶測でしたないが、“72柱“の悪魔を全て揃えると、何か起こる気がする。確証は無いから、本当に憶測の域を出ないが。


「ネガティブな事ばかり考えててもしょうがない。……うしっ、気合いを入れ直して稽古を続けるか」


──我が王よ。僭越ながら、ワタクシが王のお相手をしましょうか?


俺が気合いを入れ直し、シャドーボクシングのような稽古を再開しようとした時だった。

ラプラスが俺にそう語り掛けてくる。その声はどこか自信に満ちていると言うか、まるで自分を使ってくれる事を望むような声だった。


「え?ラプが?ラプって近接いけるの?」


俺はラプラスを[悪魔放出リリース・ディアボルス]で体外へと出すと、俺よりも高身長且つイケメンなラプラスを見上げながらそう言った。

すると彼は自分の胸に手を当てて、得意気に頷いた。


「勿論でございます!ワタクシの家系は代々ラプラスの者が忠誠を誓った主に仕える為、様々な教育を施されてきました。勉学は勿論、剣術、魔術等の戦闘の他に、家事や給仕なども教えられてきました。…勿論夜の営みも」


おい、何故最後の言葉をねっとり言った。おい、なんだその目線は。やめろよ、俺は野郎には興味無いからな!


「ま、まぁそういう事なら頼ろうかな?んじゃ早速頼むわ、ラプ」


「ええ、お任せ下さい我が王。……因みに、ワタクシはいつでも呼び足して構いませんので、性欲をもて余した時にでも────」


「じゃかましい!!行くぞッ!!」


何なんだよコイツ…!折角聞き流してやったのに再度爆撃してくるんじゃねぇよ!!ラプの奴分かってるのか!?俺の中には11人の悪魔が今の会話聞いてるんだぞ!?俺が()()()()()って思われちゃうだろうが!


俺は大声を張り上げながら突撃し、ラプの言葉を強制的に遮った。

その後俺とラプは、ハルパスと戦うギリギリの時間まで拳を交え合う稽古を続け、完全に仕上がった状態で遂にその時を迎えた。

ミルの腕が再生。全盛期ミルが帰っていた!しかもあれから何度も死闘しているから、更に強いぞ!!(語彙力)

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