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339話:多重契約

お盆終わり!閉廷!

「──────ッッ…!!ここは……また倒れたみたいだな」


全身に広がる激痛に目を覚ました俺は、安定の知らない部屋で眠っていたようだ。

また皆にもっと自分を大切にしろと怒られてしまう…そんな事を考えながら苦笑いを浮かべていると、視界に違和感を覚える。


「ん…?……ん…?」


部屋にある植物。何て事無い植物だが、その色がおかしかった。葉の色は色が抜け落ちたような灰色をしており、よく部屋の物を見れば同じく灰色の物が多く感じる。


「気のせいか…?まぁ異世界だし、変な色の植物くらいあるか…」


異世界は何でもアリ、そんな知識がある俺は1人呟きながら納得すると、体にピリッと電流が一瞬走った。

そしたその電流は俺の体から離れ、部屋にある椅子へ向かうと人の形に変化する。


「気のせいじゃねぇよバカ野郎が」


「アスモデウス……なんだよ、どうしてそんなに怒ってるんだ?」


俺の体から飛び出たのはアスモデウスであった。彼は不機嫌そうに椅子に座りながら、ジッとベッドの上の俺を強く睨む。


「お前の()がおかしいのは気のせいなんかじゃねえ。俺の力…[色欲罪(アスモデウス)]を酷使した代償だ」


先の戦いで[情欲(ラスト)]から進化した[色欲罪(アスモデウス)]。能力が上がると同時に代償も上がったようだ。


「代償……そうだった。それで、お前が俺から清算するのはなんなんだ?」


忘れていた訳じゃない。ちゃんと何かしらを失う覚悟で俺はアスモデウスの力を限界まで引き出した。覚悟の上だ。


「俺の代償“五感の喪失“だ。力を使えば使うほど、視力、味覚、嗅覚、聴覚、感覚を少しずつ失っていく」


「…成る程ね、こりゃまたエグい代償だな」


俺は渇いた笑いを数回して、額に手を当てた。

レヴィの代償は“肉体の老化“で、アスモデウスが“五感の喪失“……大罪の力を全て揃え、酷使した場合どうなってしまうんだろうか。


──チッ…呆れたヤツだな。五感の1つである視力が失いかけてもその言葉が出るとはな。


その言葉と共に俺の体から飛び出たハルパス。彼女もまた怒りの表情を浮かべているのが見える。

そしてハルパスに続くように、未だ契約をしていないレライエ、グラシャラボラス、そしてバティンとイポスも俺の体から出た。


「テメェ…あれだけ痛い思いをしてまだ懲りてねぇのか?」


「…懲りるとかじゃないんだよ。俺はそれこそ死ぬレベルの無茶をしないと主人公(アイツら)に追い付けない……それに、分裂した俺だって倒す事も出来ない…」


皆の視線から逃れるように、俺はベッドの横に置いてった新聞へと目を向ける。そこには俺の名前が大きく載っており、とある英雄と衝突したと書かれていた。間違いなく分裂した俺の事だ。


「インフレの進む世界で、俺は間違いなく強さで言えば下位だ。だからこうして無茶をしないといけないんだ…」


「アキラ…君の覚悟は確かなようだが、あえて聞くよ。本当にこのまま契約してもいいのかい?…君は耐えられるのかい?」


俺の言葉に一瞬静寂が支配した部屋の中で、バティンはそう言って話を切り出す。

俺が耐えられるかどうか……それはハッキリとした答えは言えない。だけど、もう覚悟は決まっていた。


「俺は皆の力が欲しい。それがどんなに辛い事でも、俺は絶対に乗り越えてやる…ッ。貧欲に主人公達の後を追い掛けてやる…!」


「そうかい。なら僕も君の想いに答えるとしよう。何より、アキラみたいな危なっかしい人間をほっとけないからね」


そう言って爽やかに笑ったバティン。すると俺とバティンの繋がりが強くなるのを感じた。どうやらバティンは俺と契約してくれたようだ。


「アキラの追い掛ける先がどんなモノなのか興味が沸いてね。よろしく頼むよ」


「ああ…!よろしく、バティン」


俺は差し出されたバティンの手を掴み、握手をすると、バティンは未だ重苦しい雰囲気の皆へと視線を向ける。


「それで?皆はどうするんだい?」


「わ、私はアキラさんと契約しようと思ってましたよ。良いですか?アキラさん」


「私もするわ、契約。約束通り、生き残ったわけだしね」


バティンの言葉に答えない中、スゥー…っとゆっくり手を上げたのはレライエと、空気に呑まれる事なく手を上げたイポスであった。ラディウスに同じく捕まっていたハルパスとグラシャラボラスは少し驚いたような表情を浮かべている。


「おいおい、どういう風の吹き回しだ?レライエ、お前も人間に支配されるのは嫌がってたろ」


腕組みをしてそう言ったグラシャラボラスの言葉に、彼女は特に反応する事無く俺の元へと近付いてくる。


「確かに私は人間が嫌いです。ですが…この方は…アキラさんは私の師であるバルバトス様と契約しています。師匠がここまで信頼を置く人間ならば、私は信じられる。それだけですよ」


「レライエ…さんはバルバトスと面識っつうか師弟関係だったんだな」


「はい。それとアキラさん、私に“さん“は要りませんよ」


ずっと敬語で表情が一切変わらないから少し怖い悪魔(ひと)かと思ってたけど、今の言葉と共にニコっと微笑んだレライエからはそんな感情が消えた。


「んだよ、レライエもソイツと契約するのか。ま、なら俺も契約しようかね?」


よっこらせ、とソファーから立ち上がったグラシャラボラスは、俺に『ほらよ』と言って手を差し出す。


「な、なんで急に…?」


「んー?まぁノリみたいな感じだな。皆が行く方に着いていく、みたいな感じだ」


人は見掛けによらないと聞いた事があるが、今回ばかりは見た目通り軽い印象を受ける。


「はぁ…貴方って本当に昔からそういう性格よね。いい加減直しなさいよ」


「うっせぇぞイポス。お前も似たり寄ったりの性格してくるクセに」


「は?何?ケンカ売ってんの?」


「上等じゃねぇか!今日こそお前をブチのめす!」


俺がそんな事を考えている間に、イポスとグラシャラボラスの喧嘩が始まった。部屋だからという事を考えてか、あまり派手ではない動きでプロレスのような事をしている。あ、イポスの関節技が入った。


「アスモデウス、ハルパス。2人は俺と契約してくれるか?」


一先ずあの2人を置いといて、俺はアスモデウスとハルパスに視線を向けてそう言った。


「くくっ…代償を伝えてもまだ俺と契約したがるとはなぁ?お前、そうとう変人だぞ」


「……否定は出来ない」


「まぁいいさ。アキラは俺の力が欲しいんだよなぁ?だがいいのか?俺はお前の仲間であるルナちゃん、ソル君の親を殺してるんだぜ?」


「分かってる……納得はしてくれないだろうけど、俺が頑張って説明するよ」


親の仇であるアスモデウスを俺が匿っていると言ったら軽蔑するだろうか。だが俺にはアスモデウスの力が必要だ。悔しいが。


「くくっ…!ならいいさ、お前に着いていってやっても。だが約束だぜぇ?アキラ。オモシレぇモンを見せてくれよ」


「それは約束する。高みに登った者にしか見えない景色を約束するよ、絶対に」


そう言って俺はアスモデウスに手を伸ばすと、彼は俺の手を掴む。今までの悪魔とは群を抜いて激しい痛みが全身を襲うが、耐えられる。どうやら悪魔に対する耐性っぽいのが付いたのかもしれない。今更かよ。


「で?お前はどうすんだぁ?ハルパス。折角“72柱“のメンツもまあまあ揃ってきたし、お前もどうだ」


アスモデウスはハルパスにいつも通りヘラヘラとしながらそう言うと、彼女はアスモデウスの手を払いのけた。


「オレはまだお前を認めた訳じゃない。あの時力を貸したのもオレが生き残る為だ」


「……そうか。分かった、ならお前は────」


自由にしてくれて構わない。

そう言おうと思った瞬間、、


「だからもう1度オレと戦え。ヘタな小細工は無しのガチ勝負をしろ。それでオレに勝てたのなら、今度こそお前を認めてやる」


段々と逆立っていく彼女の髪と、瞳孔が小さくなった好戦的な瞳が俺を捉える。


「いいぜ、その話乗った。俺は相手が女だろうが手は使うがいいか?」


「当たり前だ。そうでなければ面白くない」


そう言ってハルパスは八重歯を出して笑う。その姿はまるで獲物を前にした獣のようだった。

現在の契約悪魔

:ベリト

:バルバトス

:ラプラス

:マルバス

:グラシャラボラス

:リライエ

:バティン

:イポス

:アモン

:ブエル

:グシオン

:アスモデウス


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