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333話:生け贄を捧げて

丸々1話使用。もったいな。

聖道協会に所属する大勢の聖職者の死体を生け贄に、俺は大規模な魔方陣を描き悪魔の召喚をする。

そして今、その魔方陣は光輝くと同時に生け贄に捧げた聖職者達の死体が全て消える。


「どんな奴が来るか…っ」


ラプラスのように友好的な悪魔が最も好ましいが、アイツは特例だ。召喚した悪魔や、出会った悪魔は皆俺の力を試すように殺しに掛かってくるの者ばかり。今はそんな時間は無い為、何としても俺の拙い話術で説得しなければいけない。


『こんな結界内での召喚ってだけでも悪印象だったのに、力を貸す理由が天使を助ける為だと言ったら殺されるかもしれない…』


そう考えながら唾をゆっくりと飲み込むと、やがて魔方陣の光は収まる。

そしてそこに現れたのは5人の人影であった。


『5人…っ…予想以上だ……』


生け贄にした聖職者達が良かったのか、なんと召喚されたのは過去最高の5人の悪魔であった。ここでも数のインフレが起こるのかと思いつつも、同時に5人の悪魔を宿す事を危惧する。


「………」


1人目は明るい茶髪に、眼が全て真っ黒な悪魔はであり、俺をジッ…とガン見して動かない少年。


「ふぅ~む…?久し振りに呼ばれたと思って来てみれば、これはどういう事かな?」


2人目はボサボサの濃い青髪の青年であり、顎に手を当てて難儀そうにブツブツと呟いてはキョロキョロとしている。


「う、うん?一斉召喚かな?珍しい……あれ?でもいるのはこの少年だけ?う、うん…?どゆこと?」


3人目は“?“マークを浮かべて混乱している、黒髪に赤と青のメッシュが入った青年。この中では1番話が通じそうな相手ではある。


「うわぁー…今回召喚した子、若いなぁ……早死にしそうで怖いわぁー…」


4人目は薄ピンク色の髪をした少女の悪魔。その背中には黒っぽい天使の羽が見えるが、堕天でもしたのだろうか。


「わわっ…!久し振りの若い男の子だ…!ふふっ」


そして最後の5人目は、水色のショートボブの悪魔であり、口元のホクロが特徴的の女性の悪魔だ。そして胸が異常にデカい……


どの悪魔も俺よりイケメン&可愛いという、俗にいうキャラがちゃんとある作画をしている。つまりネームキャラであり、ネームキャラは強い。頼もしい反面、俺に力を貸してくれるかどうかが心配だ。何より5人同時に受け入れられるかどうか…


「ねぇ君!えと、君だよね?僕達を召喚(よんだ)のって」


「えっと…そうだよ」


心配ばかりが募っていく中、俺に声を掛けたのは3人目に言ったメッシュが凄い青年だった。彼の言葉に肯定すると、彼は笑って『そっかそっか』と言って笑う。フランクな性格なんだろうか……悪魔にしては珍しい…のか?


「あっ!ごめんね?突然話し掛けられてビックリしたよね?なら君と仲良くなる為に自己紹介するよ。僕はバティン、こう見えても“72柱“の18席を冠する者なんだ。よろしくね!えっと……」


「あっ、ご丁寧にどうもです…!俺は明星…!天道明星(テンドウアキラ)と言います!」


「うん!よろしく、アキラ!」


凄い爽やかな(あくま)だ……こういう人が陽キャってやつなんだろうか。俺は心でそう考えていると、他の悪魔達も俺に近付いてくる。

正直言って怖い。突然腹に手を貫通してきそうで本気で怖い。


「む…?そう警戒しないでくれ、俺の名はグシオン。君に…いや、アキラ君に敵意は無いよ。ただ1つ質問なんだが……俺達全員を召喚したのは君だけなのかい?他に術者は?生け贄はどうした?」


グイグイ来る濃い青髪の青年に、俺は1つ1つ説明していくと、彼は『成る程…興味深いな』と呟いてまた熟考し始める。


「あー……えっと、流れ的にワタシも言っとくわ。名前はイポス。コイツと同じで“72柱“やってんだわ、不名誉ながらね…。んまぁ…よろしく」


面倒そうに髪の毛を触りながらそう名乗ったイポスと言う天使のような翼を持つ悪魔。

そして未だに俺をガン見している少年は一先ず置いといて、最後の水色髪をしたショートボブの女性へと視線を向けようとした瞬間、俺の体に何かが張り付く。


「え!?えっっ!?」


「んん~!反応も可愛いっ!甘やかしたくなっちゃう!!」


全身の鳥肌が立つ。

俺に抱き付いてきたのはまさかの水色髪の女性であった。

怖い…距離感バグってて怖い。しかも胸を凄い当ててくる。ネット風に言うなら“当ててんのよ“状態。だが押し付けすぎてこっちが痛い。凄い邪魔だ…!


「お、おいおい()()()!アキラが困ってるじゃないか、過度なスキンシップは嫌われるよ」


「あっ……ご、ごめんなさい…!アキラ君の精神が凄い傷付いてたから私ったらつい…」


バティンのお陰で離れる彼女は、申し訳なさそうな顔をしてペコリと頭を下げて謝罪する。

だがそんなやり取りの中で、俺はバティンの言葉を聞き逃さなかった。


「今…ブエルって言ったか…?」


「え?あ、うんそうだよ。私の名前はブエル!実はお姉さん、スッゴい治癒術師なんだよっ!」


それに付け加えて、イポスが『そのオバサ──コワッ……んん、お姉さんも“72柱“だよ』と言う。


「やっと……やっと会えた…!!俺はずっと貴女を探してたんだ…!!」


「ええっ!?わっ、私の事を探してくれてたの!?と言うかよく私の事知ってたね…?もしかして悪魔術師の家系?」


俺はその言葉に首を横に振って答えると、彼女と他の4人の悪魔達に深く頭を下げて懇願する。


「お願いします!俺に力を貸してください!!大切な人達が危ないんだ…!面倒なら契約しないで、これが終わった後は自由にしてくれて構わない…!だからどうか…っ」


そう言って俺は土下座する勢いで頭を下げると、バティンに『ちょ、ちょっと待ってくれよ!』と止められる。何か不備があったのだろうか。…!そうか、成功報酬だな。


「勿論俺に出来る事なら何だってする!俺に出来る事は少ないけど…」


「いやそうじゃなくて…!今アキラは面倒なら契約しなくてもいいって言ったよね?」


「言ったが…それがどうしたんだ?」


するとバティン達は眉を少し下げて、他の悪魔達と顔を合わせる。そして彼は言う。


「もしやアキラは僕達全員と契約するつもりだったのかな?」


「そうだが……だけど無論契約するかしないかは皆の自由であって、強制じゃない。勿論この先も力を貸しては欲しいが…」


「アキラ、それは少し無理な話なんだよ。僕達悪魔の力を借りるってのも、この世界じゃいけない事なんだ。ましてや契約してしまえば最後、心が汚染されてしまう。そうなった人間の寿命は短い。とても5人の悪魔との同時契約は不可能だよ…」


バティンはそう言うと、俺を心配するような視線を向ける。現在俺の中には合計で8人の悪魔がいる。全員が瀕死状態の為か、皆は気が付いていないようだ。

だが確かに5人同時に体に宿せるんだろうか…。そうなれば俺の中に13体という2桁の悪魔が宿る事になる。


「………平気だと思うよ」


そんな時、ずっと黙って俺をガン見していた少年が口を開く。そしてゆっくりと俺の近くに来ると、突然素早い拳を俺の腹部に放つ。


「っ…!どういうつもりだ…!」


「やっぱり……。今の、結構本気で拳を撃ったんだけど止められた。この人間、普通の人間じゃないよ」


未だビリビリとする手の平から手を引いた少年は、そう言うと顔を上げて俺の目をじっと見る。


「凄く気配が薄いけど……多分この人間の中には悪魔がいる。それも普通の人間じゃ考えられないくらいに大量にね」


「なんだって…!それは本当かい?」

「何…?ありえんだろ、そんなの…」

「うそ…そんな人間いるの…?」

「道理で精神が傷付いていたのね…」


少年の言葉に他の4人はそれぞれ違う反応をするが、驚くのは同じようだ。4人の視線を一気に浴びていると、少年が俺の手を握る。


「僕、アモン。皆と同じで“72柱“。よろしくね、おにいさん」


ゾクッ…という何度も体験した感覚を味わうと同時に、少年ことアモンの存在が無い筈の心に強く感じた。


「ほらね……出来たでしょ。…それにしても、まさか7人も“72柱“がいるとは思わなかった……おにいさん、凄い精神力だね」


真っ黒い目を細めてニコりと微笑むアモン。それに続くようにしてグシンオンが近付く。


「もし本当に1人以上俺達悪魔を宿せるなら、それこそ俺達悪魔にとって大発見だ!こんな興味深い奴がいるとは……フゥハハハッ!だから人間は面白い!」


半ば強引に俺の胸へと手を当てたグシオン。するとグシオンの因子が体内へと入ってくる感覚が全身に広がり、体を僅かに震わせる。


「どうだ!?生きているか!?生きているな!!クゥフフフッ!!凄い…!凄いぞこの男は…!!」


大興奮のグシオンは、ポケットからメモ帳のような物を取り出すと何やら書き込み始める。

契約する様子を見ていたバティンとブエルは俺の肩を持ち、背中を擦る。


「確かに凄い事だけど…アキラ、君は大丈夫なのか?あまり顔色が良くないよ」


「大丈夫だ、慣れてる」


「大丈夫!これからはお姉さんがアキラ君を支えてあげるからねっ!!」


ブエルはそう言って抱き付くと、これで連続3回目の因子が体内へと入り込む。

だがアモンやグシオンとは違い、少しだけ体が楽に感じた。


「皆いいのか…?一時的な協力でも俺は構わないんだぞ…?」


「何言ってるの!こんなにボロボロな男の子をほっとけるわけないでしょっ?」


俺の言葉にブエルは俺の頭を撫でながら優しくそう言った。だけど皆の前で頭を撫でられるのは恥ずかしい。憧れてはいたんだがな。その…恥ずかしい。


「僕は…そうだね。まだ出会ったばかりの訳だし、アキラの事をもう少し知りたい。その上で、僕は君と契約するかどうか決めたい。それでもいいかい?」


「勿論だ。今の俺にはどうしても皆の力がいるんだ」


「ありがとう、アキラ」


「此方こそありがとう、バティン」


俺は彼の意見を尊重し、一時的な協力関係を築くことに成功する。

そして最後の1人である彼女は、、


「えーっと……まぁワタシも保留かなぁ…。君の言い方的に、強い相手と戦うんでしょ?その後で生きていられたらまぁ……契約してあげてもいいよ」


「ありがとうイポス!」


「ちょっ!?い、いきなり手を掴まないでよ!」


「ご、ごめんなさい…」


嬉しさのあまりイポスの手を握ると、彼女は大慌てで俺を押し退ける。少し気不味くなったが、これで3人と契約。そして2人の協力を得る事が出来た。


「早速で悪いんだが、ブエル。俺の体を───いや、厳密には俺の中にいる皆を治してあげてほしい……出来るか?」


「もっちろん!お姉さんに任せなさいっ!」


ブエルはニコッ!と笑うと、俺の中へと飛び込む。すると体内で暖かいモノが全身に広がっていく。


「魔力も微力だが回復した。うん…これなら勝てるかもしれない」


俺はポーションと魔力回復薬(マジックポーション)を飲み込み、貧弱ながらも悪魔の黒い翼を生やす事も出来るようになる。

そして俺は1度全員を体内へ入れた後に、ラミエルの元へと急いだ。

比較的温厚な悪魔達。…って思うじゃん?


“72柱“の悪魔ってその名の通り、72人いるから先がヤバい。現在12人+1人。

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