329話:鉄の竜
暫くダウンしていたら、いいねが130!?
そして評価も3.4から3.5になってる…!
なんだこれはたまげたなぁ…
「こんな筈では…っ……こんな事がある筈が…!」
ローザによってあっさりと捕獲された白黒の魔導人形を破壊した俺は、上空で頭を抑えて何かを呟くオズロへと視線を向ける。
俺を除いた主人公勢の成長により、インフレが激しくなっていく現在の異世界。予想以上の厄介さを見せ付けたオズロと魔導人形に苦しめられた。
だが同時に仲間がいれば、何も恐れる心配が無いのだと、仲間の偉大さを改めて思い出した俺は静かに笑う。
「お前はローザの親父さんの仇だが…俺個人としては感謝してるよ。お前のお陰で、“仲間“の重要さを思い出せたんだからな」
「ハッ……何です?もう私に勝ったつもりでいるのですか?笑わせないでください…!魔導人形だけが私の本質ではない!」
オズロは血走った眼でそう叫ぶと、倒した白黒の魔導人形が起き上がる。
完全に核破壊した筈だと言うのに、復活したのかと戦慄した俺だったが、魔導人形はその身に覆っていた鎧が弾け飛ぶと、そのまま上空のオズロへと装着された。
「私は魔族狩猟者であると同時に聖道協会の枢機卿なんです…!たかが魔族と“悪魔宿し“である貴方達程度を葬る事ぐらい、容易いんですよ!!」
「舐めてくれるなよ、オッサン。言ったろ、今の俺達は負けないって。こっちからも言わせてもらうが……お前を守る魔導人形がいない今、お前を倒す事ぐらい容易いんだよ」
オズロへと指を指した俺は、得意気な表情と共に盛大にイキる。主人公っての最後にこうするのがお約束だろ?だったら俺もたまにはバシッと決めないとな。
「あまり強い言葉を使うと弱く見られるわよ?まぁ…私もアキラと同じく負けるつもりは無いのだけどね。……それより腕はもういいのかしら?」
「おう!バッチし繋がったよ」
チラッと俺に視線を向けたローザに、俺は笑いながら繋げた腕を見せ付ける。
彼女が前に出て、オズロのヘイトを集めている間に再生させた。
「ふざけるな…!ふざけるな!!私が貴様らを舐めているだと…?当然だろう!!お前らは所詮人間に成りきれない化物だ!!お前らのような人外が!!人の街を歩いているだけでも虫酸が走るんですよっ!!」
オズロはそう激昂しながら帝月リベリパトスを振るうと、漆黒の斬撃が高速で放たれる。
『ッ…![世界関数]!!』
危険事に強制発動される[世界関数]を任意で発動し、俺はオズロの次の1手を先読みする。
『この斬撃の後に十字の斬撃……そしてその後に不可視の風の刃か…!』
オズロの初撃を翼による飛翔で回避する。またローザは紅の鎖を巧みに扱い、まるでロープでも操るかのように屋根の上へと移動した。
そしてオズロと同じ高さまで上昇した俺は、そのまま左手の平から紅い矢を3連射する。
「今更矢による攻撃など効きませんよ!!」
だが腕を弓の形状にした時とは違い、手から直接生成した矢を放つのは威力が落ちていた為、オズロの障壁によって簡単に防がれてしまう。
「死になさい![暴風の刃]!!」
そしてオズロは反撃の魔法を放つ。それは視認出来る程に黒く染まった暴風の刃であり、まるで嵐の夜のように生暖かい風を放っている。
「はああああッッ!!」
だが俺は止まらずに細剣を手にオズロへと高速で接近していく。勿論自殺しに行く訳じゃない。彼女が守ってくれると信じているからだ。
「全く…無茶し過ぎよ」
「サンキュー、ローザ!」
俺と暴風の刃の間に割って入ったのは、紅の鎖の束であった。黒い風の刃を受け止めた鎖からはギチギチという音はするが、切れる気配は一向に感じさせない。
そして俺はその鎖の壁を足場にして、更に加速してオズロへと斬り掛かる。
「ぐうっ…!?」
だがオズロは紙一重で俺の攻撃を長剣で受け止める。剣を選んだ時点で察してはいたが、ある程度は剣を扱えるようだ。
もっとも、、
「お前よりも人形どもの方が強かったがなァッ!!」
「っ!!?」
俺は鍔迫り合いの状態から、その場で1回転してオズロへと踵落としの態勢に入る。それと同時に魔法の力で踵から炎を出し、加速して更に威力を高めた一撃をオズロの脳天へと放ち、地上へと撃墜させる。
「頑丈且つ魔法を反射するその鎧でも、中のお前には響いて効くだろ?人形と違ってよォッ!!」
地上に小さなクレーターを作ったオズロに向けて、俺は電圧を高めながら細剣をオズロへと投げる。
その瞬間天候が崩れ、ピンク色の落雷がオズロへと堕ちた。
「う……っ…!!何故だ…!何故こうも一方的に…!!私は誇り高き……!」
落雷を喰らっても尚、オズロはゆっくりと立ち上がる。今回の落雷はルナの協力が無かったからか、落雷によるダメージは少ないようだ。
だが地上には既に彼女が待機している。
「その言葉はもう結構よ」
「な…っ!!」
冷たい眼したローザはそう言い捨てると、落雷を喰らったオズロへと容赦無く紅の鎖を巻いていく。
そして手足を拘束すると、左右の建物へと何度も何度も叩き付ける。
「がっ…─────ごっ…!─────っ…!!!」
俺でもうわっ…と思ってしまうくらいに、ローザは何度も壁へとオズロを叩き付ける。鈍く嫌な音が暫く続くと、ローザは最後に地面へと叩き付ける。
「まだ死んではいないんでしょ?さっさと立ちなさい。この程度で終わらせるつもりはないから」
激しい砂煙が立ち上る中、ローザは砂煙の中にいるオズロへとそう冷たく言った。
すると砂煙の中から瓦礫の動く音が僅かに響いた。
「ゴホッ……ゴホッ…!………流石は化物ですね。この鎧と結界が無ければ今頃私は死んでいるでしょう……ですが残念です。───その程度では私は倒せない!!」
砂煙が晴れると、オズロは体も鎧も一切傷を付ける事無くその場で佇むと、嫌な笑みを浮かべた。その次の瞬間、オズロは怒りのままに力強くリベリパトスを横に振るった。
漆黒の斬撃は四方へと飛び、そしてそれは分裂する。逃げ場の無い斬撃が迫る中、ローザは兎も角俺にまでは彼女の鎖は届かない。
『っ……ごめん…![精神干渉]』
俺は間に合わないと即座に判断し、ローザの精神へと干渉して、俺を守らずに自身を守るように心を揺さぶる。
「っ…!?」
驚いた表情と共に、動きが止まったローザ。紅の鎖は既にローザを守る準備は終えている。
これでいい。俺なら生きてさえいれば何度だって生き返れるのだから。もっとも、今の俺は生きていると言えるかどうかは分からないが、、
「ガハッッ………」
それでも俺は最後まで足掻いた。
[部位変化]で全身を硬め、[城壁建築]で周りを囲う。そして念には念を、全身に[崩壊]で覆うという危険な事をした。
『あー……イテェなぁ…』
ゆっくりと宙を舞うように見てる光景には、俺の両腕が見える。やはり接合が甘いのだろうか。今日だけで3回も腕が飛ばされている。
もっとも、攻撃を受けた瞬間に脳へと[精神干渉]と[毒操作]で脳を麻痺させて、痛覚を減らしているからさほど痛くは無いが。
「回収…しないと……」
アキラはポツリとそう呟くと、切断された両腕と背中から、真っ黒な触手が生えてくる。
そしてその触手はアキラを起こすと、切断された腕を回収して無理矢理腕へとくっ付けた。
『なんという………やはりあの男だけは生かしておけない…!即刻駆除しなければこの世界に更なる災いを招く…!』
オズロは段々と人とは思えぬ行動を取るアキラに冷や汗を浮かべると、アキラは静かに体を反らす。
「…………は…?」
その瞬間、オズロの腹部に激痛が走る。
手を当てれば、そこには赤い血がベットリと付着している。ゆっくりと視線を落とすと、オズロの腹部には握り拳程度の風穴が空いていた。
「何…を……」
「忘れたのか?俺の仲間は何もローザだけじゃない。頼もしい姉弟もいるんだよ」
そう言ってアキラは自身の背後へと親指を動かす。その先には何も見えない。当然何が起こったのかも分からない。そもそも何故この鎧を突破出来たのかすらも分からなかったオズロは、失われていく血と共に膝を付く。
「終わりだ、オズロ。聖職者であるお前にピッタリの技でな」
そう小さく言ったアキラは、ゆっくりと瞳を閉じて力を溜めると、先程アキラが腹部を突き刺された際に何度も地団駄を踏んだ場所が盛り上がる。
「ローザは俺の仲間だ。だからこういう汚れた事をするのは俺でいい。もう罪を犯しているしね……」
ゆっくりとローザへ振り返ったアキラは、力無く微笑むと、目線を強めて再度オズロへと向く。
「その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の生贄たる絶叫。我が血肉を糧に生み出されし竜の顎により激痛に絶叫しながら生贄と化せ
─────[擬似ブラッドサクリファイス]ッッ!!」
オズロを中心とした地面から出現したのは、黒いトラバサミの体を持つ禍々しい竜。
その竜はオズロを咥えると、そのまま天へと向かい、ギチギチと鉄の鈍い音と共にトラバサミを閉じようとする。
「あが…!ああああああああっっ!!!!」
最後の最後まで抵抗したオズロであったが、その抵抗を何の意味も無いかのように、鉄の竜は鎧ごとオズロを噛み潰す。
激しい悲鳴と骨が砕け散る音。飛び散る鮮血が辺り一面を真っ赤に染め上げていく。
「ぁあ……っ!わ、私はこんな…所で死ぬ訳には……いかないんだ……嫌だ…!!いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだっっ!!!!!いや──────」
ぶしゅり……
そんな音と共に、オズロの絶叫は消え、鉄の竜はオズロを咥えたまま地下深くへと消えていった。
「………」
俺はそれをただ黙って見ていた。
背中にローザの視線を感じながら……
そしてオズロと鉄の竜が消えた場所には、帝月・リベリパトスが光を放ちながら地面に突き刺さっていた。
やっぱそろそろ怒られるかな…(苦笑)
一応言っておきますが、最後のは[罠者]の多重効果です。




