327話:父からの継承
ローザ強化回。
パーティー全員強化は、異世界では当然!
自爆を覚悟したアキラの前に現れたのは、なんとローザだった。彼女は涙を流しながら瀕死状態のアキラへと叫ぶ。
「貴方って人はいつもそう…!無茶をしてばかりで、貴方の帰りを待つ私達がどんな気持ちか分かる…!?」
ローザは泣きながらアキラの腹部に大きく空いた傷へと治癒を施していく。
だが傷が傷なだけに、一向に塞がる気配は見せない。
「絶対に死なせはしない…!アキラの命は私が繋ぐってあの時決めたんだから…っ!!」
ローザの脳裏に過ったのは腕の傷を治す為に命を懸けたアキラの姿。あの時の事を私は生涯忘れない。
アキラから吸血鬼族の王族の血が無くなったとしても、私は彼を守りたい、支えたい。
例えアキラに振り向いてもらえなくても……
「うぅ…!っっ……!」
[治癒]を発動し続けるローザだが、やはりダメだ。アキラの体が冷たくなっていき、意識が朦朧とし始めている。
「無駄ですよ。腹部を完全に貫通しました、どうみても致命傷です。ですが悲しむ必要はありません。私がすぐに彼と同じ場所に送って差し上げますから」
吹き飛ばされたオズロは砂埃を払うと、魔導人形と共に近付いてくる。このままでは確実に殺される。だがローザはアキラに[治癒]をやめる事はなかった。
「絶対に死なせない…!お願い…!今だけでいい……私に力を貸して…!」
ローザは首に掛けたロケットペンダントを握り締めて強く願う。
するの周りの時間が止まったかのように停止し、ローザの頬をそよ風が優しく撫でる。ゆっくりと顔を上げると、目の前にはとある人物が立っていた。
「よっ!ローザ。久しいな、何年ぶりだ?」
「お父…様…?なんで……っ」
魔力の使い過ぎによる疲労だろうか。私の目の前には何年も前に死んだ筈のお父様が立っていた。お父様は昔と変わらない笑みを浮かべて笑っている。
「なんでって……言ったろう?遠く離れていても、俺はいつだってローザの側にいるってな」
その言葉はかつて父が死ぬ前に言った言葉だった。その言葉を聞いた瞬間、ローザはポロポロと涙を流し始める。
「なんで…!なんでいなくなったのよぉ…っ」
「…ごめんな、ローザ。あの時はエルザと娘達、そして屋敷を守る為には仕方無かったんだ。まだ幼いお前達を残してしまった事を、悔やんでも悔やみきれない……本当にすまなかった」
ローザの父、エルフィンは無念そうにそう言った後に、静かに微笑むとローザの頭を優しく撫でた。
「でもまたこうして会えた。…だけど時間が限られている。だからローザ、お前に俺の残った全てを託す」
真剣な顔付きでエルフィンはそう言うと、ローザの頭に手を乗せたまま瞳を閉じる。それに習うように、ローザも同じく瞳を閉じる。
「…!これって…」
「感じるか。それがランカスター家の王族にだけが持つ秘められた力、[紅女王刻]だ。本当は代々子供に継承していくんだが、継承する前に俺は死んでしまったからな…」
「ランカスター家にまだこんな力が隠されてたなんて…っ」
ローザは溢れ出るように漲る力に驚きつつも、しっかりと父の目を見つめる。
その真っ直ぐな目を見たエルフィンは、娘の成長を感じ取り、優しく微笑む。
「おっと…もう時間切れか、思ったより早かったな」
「…!いや…!いかないで、お父様…!!」
段々と体が透けていくエルフィンに、ローザはしがみついてそれを引き止めようとする。だがそんなローザの想いは届かず、どんどん砂のように消えていくエルフィンの体。
「あはは…そんな悲しい顔をするな。父さんはいつだって屋敷の裏にある墓にいるさ。今回はそのペンダントに俺の力を乗せてたからこうして会えたけど、次は厳しい。でも安心しろ、屋敷に戻ってきたら、また会えるから」
名残惜しくも、最後まで優しい笑みを浮かべた催眠エルフィンは、最後にそう言ってローザの頭を撫でると、エルフィンの体は消えてしまった。
「………」
今のが幻想だったのか、幻覚だったのかは分からない。だがローザの体内では、確かに何かが宿っている事岳は強く感じたローザ。
ローザはその力を父との繋がりだと感じながら、再度アキラへと[治癒]を開始した。
そして停止していた時間も動き出す。
「さあ、諦めてテンドウ・アキラと共に─────っ…!」
動き出したオズロは、そう言って魔導人形にトドメを刺すように指示を送ろうとしたが、その言葉は止まる。
アキラの隣にいるローザの気配が突然変わったからだ。
「…[超回復]」
ゆっくりと息を吸い、そして吐き出したローザは、もう1度アキラに[治癒]を施す。
だが先程とは違い、アキラの腹部に出来た大きな傷は、新たな肉を生成して塞がっていく。
「ま、まさか今のは[超回復]…!?魔族であるあの娘がそんな高等回復術を使えるなんて…!あ、ありえない…!」
禍々しく赤黒く光を飛ばすローザ。とても神聖な魔法である[超回復]とは思えないが、その治癒力は聖道協会でも僅かしか使えない魔法であった。
「あ、あれ…?俺…死んだと思ったのに……」
「……ふん。全く、いつまで寝ているつもり?敵は目の前なのよ?気合いを入れなさい。私が隣にいる限り、貴方は死なない。死なせないから」
意識を取り戻したアキラに、一瞬涙を潤ませたローザであったが、すぐにいつもの彼女に戻ると、アキラへと手を差し出した。
「…!あはは!心強過ぎるでしょ、それ」
「当然でしょ?私はローザ・ランカスター。吸血鬼族の王族にして、現女王なんだから」
立ち上がったアキラ、隣にいるローザと共に剣を構える。2人ともお互いを信じきった表情をしており、その瞳からはオズロに勝てるというビジョンが浮かんでいた。
「何ですか?傷を再生し、貴女が来たから勝てるとでも…?舐めないで頂きたい!!私はオズロ・セルケルズ!聖道協会の枢機卿にして、誇り高き魔族狩猟者!!魔族と“悪魔宿し“なんかに負ける訳にはいかないんですよッ!!」
激昂したオズロは瞳孔を小さくして怒鳴るようにして叫ぶ。そしてオズロの怒りに反応するかのように、魔導人形からの威圧感また上がっていく。
だがアキラもローザも怖くはなかった。
隣にローザが、アキラがいるか。2人なら何でも出来てしまう、本気でそう思えたから。
「ローザ。不粋かもしれないが、お前の父さんの仇取り…俺も協力させてくれ」
「不粋なんかじゃないわよ。私達は血を分けあった仲よ?いわば家族みたいなものじゃない」
「え…?その解釈はあってるのか…?」
「う、うるっさいわね!そこに躓かないでよ…!恥ずかしい…!」
恥ずかしそうに顔を赤らめて、視線を反らしたローザにアキラは笑う。
それを目の前で行われた事に対して、オズロは更なる怒りが込み上げる。完全に舐められている、勝てると思っていると。
「いいでしょう…!どう足掻こうと、私には勝てない。この結末は変わりようがないのです…!」
「そうはいかない。今の俺は……いいや、俺達はマジで最強なんだ。お前如きの敵キャラなんて、相手じゃねんだよ」
アキラはオズロに細剣を向けて、イキる。それはまるで主人公のように、盛大にイキった。
「無駄話はもう終わり。行くわよ、アキラ」
「ああ!」
すんません、明日絶対に投稿出来ないっす……。許してください、何でも───
ん?今何でも…(早漏)




