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325話:更なる深みへ

「ああああッッ!!」


声を荒げながら魔導人形に猛攻を仕掛けるアキラ。1本となったクレイモアでは防ぎ切れない速度に達したアキラの攻撃は、次々と白黒の鎧に傷を付けていく。


「完全に予想外でした…っ。まさかここまで私の魔導人形を追い詰めるとは…!ですが……貴方のそれはとても辛そうですね?後どれくらい持つのでしょうか」


「はぁ…ッ……はぁッ…!」


今まで誰1人として傷を付ける事さえ許さなかったオズロを守護する魔導人形に、初めて傷を付け、尚且つスピードまで勝るとも劣らない明らかにに、驚きを隠せないオズロ。

だがオズロはアキラの息遣いと、その体から漏れ出るピンク色のプラズマを見て、アキラが活動できる時間が限られているという事を見抜いた。


「だったらなんだってんだよ……はぁ…はぁ…なら時間が来る前にお前とその人形をぶっ倒せばいいだけだろうが…!」


「ふぅ…脳筋ですね。実に品の無い思考です。まだ魔物の方が賢いのではないですか?」


呆れたと言わんばかりの溜め息と言葉に、俺の神経は逆撫でされていく。だが感情的になってはダメだ。オズロが言った事は、あながち間違ってはいないのだから。


俺は[部位変化(ぶいへんか)]の能力を使用して、肩部分から生やした2本の黒い触手部分に出来た弓でオズロを狙いつつ、腕を丸々刃へと変えた手で魔導人形の剣を受け止める。

グラシャラボラスの[崩壊(ディケイ)]を使って危険な剣の武器破壊を狙うが、1度行ったせいか、奴は能力を発動する前に攻撃を引く。自立して動くだけあって、まるでAIのように学習していく。それはつまり、5体の魔導人形の機能を停止させた落雷も通用しないという事だ。


『手数がもっといる……。もっと…!もっとだ…!!』


「うあ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“!!!!」


喉が張り裂けそうな声を上げたアキラは、彼を中心にしてピンク色の電磁波を周囲に飛ばした。

するとアキラの背中から裂けるような耳障りな音が辺りに響くと、更に背中から黒い触手が2本追加される。その新たな触手からは、黄緑色の粘液が滴っている。これはマルバスの[疫病発生(パンデミック)][毒操作(ポイズン・レーション)]によるモノだ。


「…弓の次は毒性の粘液ですか。気味の悪い怪物ですね」


目線を細めたオズロは、更なる嫌悪感を隠しもせずにそう呟く。

現在アキラは[部位変化][人操糸(じんせいそうさ)][矢生成(クリエイトアロー)][世界関数(ラプラス)][変則射撃(へんそくしゃげき)][疫病発生][毒操作][崩壊][城壁建築(キャッスル・テクチャ)]……これら全てを併用しており、これは今までに無い使用率であった。その為、アキラの脳は思考の限界を迎えていたが、それをアスモデウスの[黒雷(こくらい)]による高圧電流によって、強制的に思考を加速させていた。


「まだ…だ…!まだ……まだ俺はやれる…!!」


眼から流血が止まらない。

今にも意識が飛びそうだ。

全身が裂けるように痛い。

もう疲れた。やめてしまいたい、投げ出してしまいたい。


そんな甘えた感情を押し殺し、俺は叫びながら魔導人形へと突撃した。

黒く大きな翼からは羽根が舞い散る中で、俺は[城壁建築]を使い、魔導人形の逃げ場を無くしていく。それはまるで取り囲むようにした石の牢獄であり、突然の事に反応が遅れた魔導人形。俺はその瞬間を逃しはしなかった。


「これで…!終わりだああああああ!!!!」


右腕の刃化を解いた俺は、力強く握り締めた拳を魔導人形の中心である胸へと放つ。その拳には[崩壊]と[疫病発生]、そして[黒雷]が付与してあり、内側から奴を破壊する為に一撃であった。




ザシュッ…



「ぁ…………あ…?」


突然体のバランスが崩れた俺は、まるで足腰に力が入らないかのように膝を付く。

そして膝を付いた俺の目の前にベチュ…という音と共に落下してきた血塗れの腕……


「あ……ああ…!」


それは紛れもない、俺の腕であった。

何が起こったのかも分からない。完全に討ち取ったと思った。だが次の瞬間に膝を付いていたの俺であり、目の前には俺の腕が落ちている。理解が出来なかった。


「ッ…!?」


その時、鎧の音が耳に入った。

俺は錆びたかのように、ゆっくりと上へと視線を向ける。

そこには白黒の魔導人形が立っており、奴は俺の首にクレイモアを当てていた。


その兜の中で怪しく光る赤い瞳は、どこか俺を嘲笑っているように見えた。

その瞬間、俺はコイツに弄ばれてたのかという激しい絶望感が襲った。




そして……奴はそのままクレイモアを俺の首へと振り下ろした。その動きはとてもゆっくりだと言うのに、俺は動く事が出来なかった。

……いや違う。動こうとしなかったんだ。

こんな奴、偽者の主人公がどうあがいたって勝てっこない。どんなに化物になろうが、本当の化物には勝てない。そう思ってしまったから……






「何諦めてるのよ!!貴方はこんな事で折れるような人じゃないでしょ!?」


その言葉と共に、魔導人形の剣を受け止めたのはローザであった。

彼女は今にも押し負けてしまいそうだというのに、逃げずに必死に剣を押し返そうとしていた。俺を守る為に……


「っ…!っ……!ソル!まだなの!?もう…っ限界…!」


「待たせた、ローザ!そこから離れろ!!」


ソルの叫び声が聴こえると、ローザは俺を抱き抱えて立ち去ろうとする。だが魔導人形の剣を受け止めながらでは不可能に近い。

だから俺は……


「…ごめん、ローザ」


「っ!」


俺はローザの許しを得ずに、彼女を左腕で抱き抱えてその場から脱した。

するとその瞬間を待っていたかのように、魔導人形に向けて光線が放たれた。その速度は本当の意味での光速であり、身が焼けてしまいそうな程の熱風が襲う。


そして俺は屋根の上にいるソルとルナの所へと駆け付けると、ソルは煙幕を放ち、俺は[気配遮断(けはいしゃだん)]を使用すると、そのまま近くの建物へと逃げ込んだ。





建物へと逃げ込んですぐに倒れるアキラ。アキラの右腕は失くなっており、大量の血が流れていた。


「酷いっ…腕が…!」


痛々しい傷もそうだが、何よりも腕が失くなり、激しい出血を出すアキラにルナは顔を青ざめる。ローザとソルは何も言わないが、その重苦しい表情が2人の感情を物語っていた。


「はは……心配すんなって。こんくらい、腕があれば……ほら」


俺は逃げる際に触手で回収していた自身の腕を、傷口へ当てると、あろうことか本当に治ってしまった。

本当に何でも無いかのようにそう言って笑ったアキラに、ローザは先程以上に重苦しい顔を浮かべた。


「……もっと自分を大事にしなさいよ…っ」


とても小さな声でそう呟いたローザだったが、その言葉がアキラに届く事は無かった。


「ソル、お前……その肩…」


「ん?ああ……ペネトレイトの出力を最大にして撃っちまったからな。当分右腕上がんないかもしれないな。でも気にすんな、それだけでお前を助けられたんだ」


俺はその言葉とソルの不器用な笑みに胸が締め付けられた。だから俺は彼の目を見て、『ありがとう』と伝えると、ソルは恥ずかしそうに『やめろよ』と言って目を反らした。


「あー恥ずっ………ほらよ、アキラ」


「おっと…!」


照れながら頭を掻きむしったソルは、俺に細剣を投げ渡す。その細剣からは強い魔力量を感じる。


「頼まれていた物だ。ったく、この状況で頼むなんてな。まぁいいや……俺の付与魔法(エンチャント)で鋭利と耐久力を上げた。それにプラスして────」


「私の魔力も封じたんだよっ!これで魔法耐性も同時に、魔力の流れもよくなったから、私で言う杖代わりになると思うよっ!」


ソルの説明に入り込んだルナは元気にそう言うと、ニコッと微笑む。

俺は先程ローザに俺の細剣をソルに付与魔法を施してもらうように頼んだのだ。だが予想以上の効果に、俺は少々驚く。

本来ならば主人公勢にいるようは人材に溢れたこの仲間達。彼らが施した剣はまさしく最強の武器となる。俺が読んできた主人公達はそうやって仲間と協力していた。


「よし…!んじゃもう1回行ってくるよ!」


俺はポーションと魔力回復薬(マジックポーション)を飲むと、そのまま再度戦いへと戻ろうとする。


「ま、待って…!」


「…?どうした?ローザ」


俺の袖を弱々しく掴んだローザ。俺は彼女へと振り返ると、ローザは自分の指先を噛み切ると、その血を俺の細剣の刃へも付着させる。


「……え…?」


「ち、違っ…!変な意味じゃないから…!これはその……そ、そう!おまじないみたいなものよ!」


何故照れているのか分からないが、おまじないを掛けてくれたようだ。恥ずかしがっているローザに微笑みを浮かべつつ、俺は彼女の肩に手を置いた。…本当は頭を撫でたいんだが…度胸が無い。


「ありがとう、ローザ。お前のお陰で俺は一体何度救われて来たか……これが終わったら色々お礼をさせてくれ」


「…!まぁ?別に構わないわよ。貴方には普段から迷惑を掛けられっぱなしだしね。……絶対帰って来なさいよね…っ」


「うん、任せろ!」


俺は流れでローザの頭を撫でる。お互いに無言になり、恥ずかしい時間が少しだけ続いたので、俺ははにかみながら建物を出た。






『……っべー……流れで死亡フラグ立てちまったよ…!ど、どうしよう…?』


そんな不安と恥ずかしさを抱えながら、、

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