324話:限界を越えて
ブックマークが200越えてから、もう+10も増えました。もう感謝しかないっス。
200人以上が続きを見てくれてるのか……何か今更ながら緊張しますね(汗)
5体の魔導人形を、誘導した落雷によって全て機能停止させた俺は、未だ余裕の笑みを浮かべるオズロを強く睨み付ける。
だが内心では、どうやってあの白黒の魔導人形を倒すか思考をし続けては、それら全てがダメだと把握する。勝てるビジョンが浮かばないのだ。
『さっきの魔導人形よりも2倍近くデカい…!その上あのクレイモアみたいな大剣もヤバい…!』
重厚に構える白黒の魔導人形は、3mにも届く巨大な剣を静かに構えている。しかも2本を軽々と操って…。
そして何よりヤバイのが、先程あの魔導人形が放った一撃だ。次元を切り裂く斬撃は食らえば即死。被害をもたらす範囲もまた広く、回避は難しい。近距離なら尚の事だ。
「少ない頭を使え、明星…!こんな絶望的状況の中、お前が憧れた主人公達はどうしてきた…!?」
必死に思考していると、オズロが笑った。
そしてその次に気が付く。オズロの隣にいた白黒の魔導人形の姿が消えた。
「…!?どこに─────ッッ!!?」
消えた魔導人形を探そうとしたその瞬間、俺の顔面に激しい衝撃が走った。まるで顔面を潰されたかのような激痛と、ミシミシと嫌な音と共に沈んでいくそのナニカ。
何が何なのかも理解出来ないまま吹き飛ばされた俺は、その光景をまるでスローモーションのように見ていた。
そして理解した。
僅かに視界に映ったのは消えた魔導人形の姿があった。そしてヤツの籠手には、赤い血がベットリと付着していた。
『冗談だろ…!?アイツ…!俺の顔面に裏拳を放ちやがったのか!?』
目にも追えぬ速度で移動し、尚且つ相手に理解させぬまま攻撃を放った。そのスピードがあれば、殺そうと思えば余裕で俺を殺せただろう。その速度は[世界関数]の未来予知よりも速かったのだから。
それなのにアイツはわざわざ裏拳を放った。まるで小手調べかのように。いや、少し違う。あれは……所謂“舐めプ“だ。弱者にだけ行う、この上ない侮辱行為だ。
「今治すわ…!」
「あ“り“……がと」
[黒繭]を衝撃吸収に使ったローザが、すぐさま治癒の為に駆け寄る。いくらマルバスが治癒してくれるからと言って、サタンのように即座に治る訳じゃない。ローザとマルバスの治癒があって、俺は戦線復帰が出来る。
だが戦いに戻る前に、俺は不安そうに治癒してくれたローザへととある事を伝える。
「───────頼めるか?」
「…分かったわ。でもいいこと?貴方のお願いを聞く代わりに、絶対に死んではダメよ?いいわね?」
「ははっ……了解」
そう言って俺はローザにボロボロになった細剣を手渡すと、魔導人形へと近付いていく。
「ゴホッ……随分とナメた事してくれるじゃねぇか、オズロ…!」
「いやはやすいませんね。私の魔導人形がとんだ失礼を。何分この魔導人形と少々特殊でしてね、私の操作下には無いのですよ」
成る程……自立型か。こりゃまた厄介な事だ。だがある意味異世界らしさは出てきている。
それにしてもいきなり裏拳からの追撃無しでただこっちを見ているだけとは…あの魔導人形は性根が腐っているんだろうか。
──くぅ~!いいの食らったなぁ、アキラ
「……うるせぇよ…」
相変わらず俺を小馬鹿にする言葉を言ってくるアスモデウスに苛立ちを覚えつつ、俺は意識を集中させていく。
今までのように腕から刃を出すのではなく、俺の手自体を刃へと変える……そんなイメージを練っていく。
「アスモデウス…もっとだ」
──あ?
「俺の体にもっと電気を流せ。アイツの速度に対応するには、もっと速くなる必要がある……それこそ雷のように…!」
──バカかお前は。自分でも分かってんだろ?今俺が出してる電圧が、アキラの体の限界ギリギリを保ってるって。これを越えたらお前……脳が焼き切れるぞ。最悪廃人だな。
「分かってるさ………でも…今の俺じゃあの人形には勝てない。相手にすらならない。悔しいが…さっきの攻撃を受けて分かったよ」
──はぁ…チッ……お前も相変わらずだよ、本当に。普段はクソが付く程バカなくせしてこんなに土壇場で無茶をしたがる。バカだからわかんねぇのか?自殺志願者ですか?あ?
「異世界主人公ってのはな……頭のネジを何本か取らないとなれないんだよ…!」
──ほんっと訳わかんねぇ…
俺だって本当は怖い。自分の体だ、本当は誰よりも1番理解している。このまま体に流す電圧を上げれば、俺は間違いなく何かしらの弊害を今後抱える可能性がある。
でも……主人公は絶対にやる。危険を侵して必ずやる。どんな手段でも選ぶ。それが主人公だ。
ここは異世界……考えによっては空想の世界。その空想の話の中で、主人公達が取ってきた行動を俺も取らなければアイツには勝てない。
──………チッ…!あぁクソッ…!……分かった。電圧を上げる。だがこれだけは覚えておけ。生半可な覚悟のままだと…本気で死ぬぜ?
「ハッ…!上等…!」
強がりの笑いを上げた俺に、アスモデウスは静かに溜め息を吐く。すると意識が飛ぶような電気という激痛の拷問が始まる。
体が言う事を効かない。体の痙攣が激しく止まらない。意識が飛び、また戻る。それを何度も何度も繰り返す。
時間にしてどれくないなんだろうか。1秒?それとも何十時間?もう時間さえ理解出来なくなってきた瞬間がやがて訪れる。
そして、、
「終わりましたか?彼も早く戦いがっている。あまり待たせてやらないでください」
「ああ……終わったよ。気が狂いそうなくらい頭がグチャグチャしやがる。けど………何でだろうな、それなのに頭ん中がスッキリするんだ」
時間にして僅か5秒。白目を向いて声にもならない絶叫を上げていたアキラは、やがて静かになる。そして気味の悪い笑みを浮かべながら、こめかみに人差し指を当ててそう言った。
「何が変わったと言うんでしょうか?これからそれを見せていただけるのですよね?」
「あー……いいよ」
オズロの言葉に、アキラは気怠げにそう答えた刹那。アキラの姿が忽然と消えた。
そして次の瞬間にはオズロの目の前で脚蹴りを放っていた。だがそれをクレイモアで受け止めた魔導人形に、アキラは舌打ちをした。
『見えなかった……たった5秒で私にも目に追えぬ速度に達した…?バカな…!』
自立して動く魔導人形がアキラの蹴りを受け止めていなければ、自分は間違いなく頭を蹴り飛ばされていた。そう考えるだけでもオズロは恐怖に笑う。
「受け止めたな?俺の蹴りを。ならもうそいつは使えないぜ?」
アキラはまるでこの魔導人形が守りきれると分かっていたかのような笑みでそう呟くと、魔導人形が持っていた漆黒のクレイモアが崩壊した。
それを1番驚いたのは、オズロであった。あの剣は“魔“を滅する事を可能にした“聖霊“の加護が籠められた剣。それだというのに、目の前のテンドウ・アキラは容易く剣を破壊して見せた。
「化物ですか…。……いいえ、貴方は化物でしたね」
「何とでも言ってくれ」
少し表情を暗くしたアキラはそう小さく呟くと、彼の背中から2本の黒い触手のような物が生えてきた。その触手の先端には、アキラが普段腕に生成していた弓が完成しており、どちらも射撃態勢へと入っていた。
「醜い……なんと醜い生き物なんだ…。こんな生き物がこの世にいてはいけない」
もはやその姿は人間ではない、一言で言うのならば異形であった。アキラはこの瞬間、正真正銘の怪物となった。
「俺をあの時殺さなかった事…後悔すんなよ?こっからは俺のターンだ」
段々アキラがチートと言うより、化物になっていく……。この主人公って悪役だっけ…?(過去振り返り)悪役だったな…(振り返り完了)
この戦いらへんが終わったら、“なろう“系主人公達と戦わせる予定です。




