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31話:ギルドカード生成

次の日の朝。

俺はプーちゃんママに朝食をご馳走になっていた。プーちゃんママって絶対ソッチだろうけど手を出さない。ある意味不気味だ。


「あっそうだ!はいっ!これどーぞ」


そう言ってプーちゃんママは、テーブルに小金貨を1枚置いた。


「これは…?」


「冒険者登録に必要でしょ?あっあげる訳じゃないからね?給金の前払い、よっ♡」


ウフッ♡とウインクするプーちゃんママ。恐ろしい…そして優しい…

いつもなら遠慮して断るのだが、ここは好意に甘えさせて貰おう。


「ありがたくお借りします!」


お金は早く返そう。大人として常識。

ま、まぁ…その為にはこの店で働かなくちゃいけない。最短で1ヶ月程。

早く冒険者で成功しなくては…!


朝食を食べ終えたら即冒険者ギルドへと向かう。小金貨を握って走る姿はまるで、駄菓子屋へと向かう子供だ。




「あのっ!冒険者登録したいんですがっ!」


「えっ?あっ…君は確か昨日お金が無くて帰った子よね…」


昨日とは違う茶髪の受付嬢。

やめろ。言うな、恥ずかしい。

全く…黙れドンッ!だよ。


──は?


「登録、お願いします」


「あ、はいっ」


受付のお姉さんに小金貨を渡すと、お姉さんはこちらへどうぞ、と違う窓口へと案内される。


「ほへぇ~…」


「ふふっ、よっぽど田舎から来たのかなっ?これはね、魔結晶が使われた物なんだよ」


うん、普通に失礼だからね?よくないよ?田舎者扱い。髪の毛全剃りするぞ、ボケ。


それは兎も角、やっぱ出てきたお約束の冒険者ギルドが所持する謎機械。


なにやらお姉さんが説明してくれるが、お姉さんの説明長いから端的に話すと、魔水晶に手を当てると、特殊なカードが出てくるんだってさ。


「ふぅ~…」


ある意味俺にはとても大事な瞬間になる魔力測定やらなんやら。


異世界あるあるその1

魔力水晶が割れる&測定不能。

或いは魔力0


「えっと?魔力は…うん、普通より下。下の上って言ったところでしょうか」


だから失礼だからね?寝てる間にブラジリアンワックス突っ込んでやる。


んで本題。

まさかの──いや、分かってたけど、魔力はある。しかも普通以下だとさ。

なら次だ。


異世界あるあるその2

見たことも無い、主人公専用スキルがある。またはとんでもない数のスキルと魔法が、カードに記入されている。


「ゴクリッ…!」


自分で唾を飲む擬音を喋りながら、出てきたカードを確認する。



名前:テンドウ・アキラ

Fランク冒険者

種族人族(ヒューマン)

性別:男

魔法:[火花(ヒバナ)]

スキル:[背水の陣][限界突破(オーバーロード)][斧熟練Ⅱ][弓術Ⅰ][逃走Ⅱ]

加護:[治癒の女神・リコスの祝福]



「あらっ!珍しいスキルがあるわね……物騒な加護もあるけど…」


「………パットしねぇ────んっ!!!?」


ステイタスを確認したあの日から何日か経っているが、見慣れないスキルがあった。


[斧熟練Ⅱ]や[弓術Ⅰ][逃走Ⅱ]

しかしそれより気になる物があった。


『は…?え、あ、え?な、何で…!?』


スキル欄に書かれた[限界突破(オーバーロード)]

何故それがあるのか、俺の頭は大困惑していた。


『何で…貰えなかった筈じゃ……どういうことだ…!?』


訳が分からないが、スキル欄にはちゃんと書かれている。

そして、頭爆発されるかも疑惑が復活した。してしまった。


『能力提供の代わりに頭爆発…!やる、シェイロンならやる…!』


人間の頭爆発して遊ぶようなサイコ女だ。

お父さん、お母さん…僕、死ぬかもしれません。


「ではこれで冒険者登録完了です。失くされた場合、再発行出来ますが、再発行料金は高いのでご了承下さいね」


「了解しました」


………さて、現実逃避しますか!調子を取り戻すんだろ?お前ならやれる。



『テンプレで言うなら、そろそろ先輩冒険者に喧嘩売られると思うんだが…』


酒を飲む冒険者達を見渡す。何人かこちらを見てニヤニヤしている。多分昨日の事を思い出して笑ってんだろな。いつか暴力で黙らせてやる…!(圧倒的脳筋)


「よぉ~兄ちゃん、今日はどうしたんだぁ?どっから金盗ってきたんだ?へへっ」


なにやらお酒臭い兄さんが俺に近寄ってきて絡んできた。良いぞ、この展開!


「盗ってないです、借りたんです」


「ほほぉ~?金蔓でも捕まえたか」


「なっ…!プーちゃんママに失礼だぞ!」


売られた喧嘩をなんやかんや理由をつけて、ほぼ買うのが【なろう】系主人公。


「ゲッ!?プリークさんの知り合いかよ!」


なんだ?何故そんなプーちゃんママを恐れる。…いや分かるけど、そんな恐い人じゃないよ?

………あ、理解した。


「…悪かったな兄ちゃん、勘弁な」


そう言って酔った兄さんは元の席に戻っていった。多分プーちゃんママことプリークさんは、ガチで強い人なんだろうな。俺も体鍛えてるから分かるけど、筋トレしてるだけでつくような筋肉じゃなかったし。


『元冒険者だろうな。あ、だから冒険者登録料金の額が分かったのか』


……一体何がプリークさんを変えてしまったのか…考えても答えは出ない。て言うか出ないで、怖いから。




プーちゃんママの話はさておき、俺は出来立てホヤホヤの冒険者カードを持って、早速クエストを受けにいく。


因みに冒険者にはド定番のランクがあり、Fから始まりSが最高らしい。Sランク冒険者は世界にほんの一握りなんだとか…

どうでもいいけど、ここって日本かな?カタカナ、漢字、ことわざ、英語。この全てがここの異世界に存在する。異世界特有のアレだ。あんまりこの事に触れると、世界から消されるので、やめます。


「Fでも出来るクエストってありますか?」


「えっと、そうですね……薬草採取とかどうでしょう…?」


この人はアドバイザーのミックさん。犬人族の女性。人間の体に犬耳がついた種族だ。犬耳ぃぃぃ…!!


俺は【なろう】知識は沢山あるが、冒険者としては初心者。なのでアドバイザーさんにアドバイスしていただく。


「薬草採取ッッ!いいですねそれ!」


「そ、そうですか…?大体冒険者になりたての人は高度なクエストを受けたがるんですが…珍しいお方ですね…」


まぁそうだよね…でも俺はゴブスレで学んだから。後アドバイザーさんに頼るのも、ダンまちで学んだ。【なろう】様々である。


「でも俺初心者なんで、右も左もわかりませんから。なので色々教えて下さい」


「うぅ…冒険者になる人が皆キミみたいな人だったら私がギルドにいる意味があるのに…」


なにやら暗くてオドオドしてる人だな。

正直な話、今一番ヒロインっぽいですよ、貴女。


「薬草採取がオススメなんですよね?ならそれやって来ます!」


「は、はい…!ではこちらにお名前を…」


書類に名前をカキカキした後、俺はリコティ王国の裏口から出てすぐ裏にある山に入る。

比較的安全で、弱い魔物しかいないらしい。


薬草採取

適正ランク:F

目的:ミール薬草を10本採取する。

報酬:銀貨2枚


これが今回のクエスト内容。

ミール薬草という草を採取する簡単なお仕事。んで報酬が銀貨2枚。日本円で2000円。この報酬が安いか高いかは、採取に掛かった時間による。1時間で終われば良い方だと思う(バイト並感)


「んで来てみたは良いものの…中々見つかんないな」


一様ギルドで薬草本を借りたのだが、ミール薬草と言うのが中々見つかんない。やった見つけたと思ったらゲール草という毒草。

ホンマ草。草だけに。


──は?


それから2時間程経った。

いまだにゲットしたのは0。完全に割には合わない。…まぁただ俺の探し方が下手なだけなんだけど。


「ん~ッッ!異世界って感じするなぁ!地味だけど!」


異世界物では薬草採取は超王道クエスト。

だが実際は地味でそこそこ面倒だ。現に見つかんないしね。


「こんなに見つかんないもんかねぇ……ん?あれって…」


ショルダーバッグから薬草の絵や特徴の掛かれた本を取り出して確認する。何度見直しても、ミール薬草だ。


「おぉ!大量に生えてる!そっか、ここに生えてたのか」


場所によって生えていないとか書いて無かったのだが、まぁ間違いもあるよね。採り終わったらギルドに報告しとこっと。


「~♪~~♪ふぅ~!うん、これで10本。結構時間掛かったけど何とかクリアし───」


鼻歌を歌いながら、ミール薬草を抜いてはかごに入れるの作業を繰り返す事10回。ようやく採り終わり、顔を上げた。


「グルルルル……!!」


「…………」


そこにいたのは………何だろう…ドラゴン?かな多分。もう目の前にいる。よだれをダラダラ垂らして、鼻息が荒い。

いや~マジすかぁ~www


「マジすかぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!?」


「グルアァァァァァ!!!!」


お互いの咆哮。片や絶望の声。もう片方は食事開始の合図の声。


絶叫の後、アキラはすぐに走り出す。街に向かって。

彼の頭では何故ここにドラゴンがいるのか、何故俺の目の前に現れるのか。答えは極めて簡単な話であった。


「リィィィコォォォォスゥゥゥゥ!!!!お前絶対シバく!!!!」


[逃走Ⅱ]をいつの間にか取得したアキラ。彼が走るスピードは、前の世界なら金メダルを余裕で取れる程のスピード。

しかし相手が悪い。アキラを追いかけるのは空の支配者まで言われるドラゴン。見事なスタートダッシュを切った彼にどんどん追い付いていく。とてもリコティ王国にいる騎士団まで逃げ切れそうにない。


「だ、誰か…!誰か助けてくれぇぇぇ!!誰か!!───助けてくれ!!!!」


魂の叫び。

それは山に木霊する。が、助けに来る者は誰一人現れない。当然だ、広いこの山にたまたま居合わせたなんて奇跡、俺には…


「俺には……無い──っ!……痛っ」


地面から飛び出ている木の根に足を取られ、転倒する。すぐに走り出そうとしたが、俺を多い尽くす程の影と恐怖が支配した。


「グルルル…!!ガァァアアアア!!」


「誰か…助け──」


最後の言葉を言い切る前に、ドラゴンの巨大な口が俺を飲み込む。恐怖の余り何も出来ず、ただその時を待つ。

瞳から一滴、最後の涙が溢れ落ちた。







その時だった。


「君の声…聴こえたよ」


優しい声と共に、俺の背後から突風が吹いた。思わず目を閉じ、再度開けるとそこには、、


「もう大丈夫。よくここまで頑張ったね」


薄灰色の短い髪に、腰まで伸びた三つ編み。琥珀色の瞳をした儚げな少女がそこには立っていた。


[逃走]

逃げる時にのみ、通常より速く走る事ができる。


取得条件

敵から逃げる。兎に角逃げる。プライドを捨てて逃げる。背を向けて逃げる。

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