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317話:予想を上回る事態

「アスモデウス…!」


「くくっ、久しいな。少し見ない間に随分と姿が変わったな、アキラ」


空中で浮遊しながらそう言ったのは、淡いピンク色をした長い髪を後ろで一本にした髪型に、真っ黒のトレンチコートのような服装をした悪魔・“色欲“のアスモデウスであった。


以前はもっと悪魔らしい捻れた角が生えていたが、今回は以前にも増して人間と変わり無い姿となっている事に些か疑問を抱く。


「…変わったのはお互い様だろ。お前もまた強くなったな…どんな手品を使ったんだ…?」


「はははっ!相変わらず面白い奴だなお前は。何、大した事はしてねぇさ。ただ魂を喰らって自分を強化したまでだ」


お互いにピリピリとした雰囲気が漂うが、お互いに手を出す事はまだ無い。辺りに散らばる聖道協会の聖職者達の死骸がある事を除けば、割りと穏やかな雰囲気ではある……が、そうも行かないだろう。


「ゴホッ……ッ…!こんな筈では…!!」


「あー?んだ、まだ生きてたのか。クソ天使の加護ってのは凄いねぇ~。俺の力を抑えるだけじゃなくて、体まで頑丈とはなぁ!!」


先程までアスモデウスと対峙していた筈のメルム枢機卿は血だらけになり、這いつくばりながらアスモデウスを見上げていた。そんなメルムへとそう言ったアスモデウスは、空中から降下してメルムの頭を踏みつけた。

地面に広がる亀裂がその威力を表しており、頭がトマトのように潰れていても何もおかしくない状況に、俺は静かに冷や汗を浮かべる。


「こっちのお邪魔虫は片付けた。久方ぶりに戦おうじゃねぇか。なぁ…?ルナちゃん、ソル君…!」


「っ…」「ッ…!」


少し怯えたような表情を浮かべながらアスモデウスを見つめるルナと、そのルナを守るように前に出たソル。

これは不味い……俺は兎も角、初戦で聖道協会を相手にしていたミル達は、その後に俺とも戦っている。ローザ、ミルの魔力は少ないだろうし、ルナに至ってはまだ毒が抜けたばかりで力もろくに入らない筈。そしてソルも物資はもう少ないだろう。


『逃げる……っては許してくれないだろうな…』


本来ならば万全での状態で戦いたかったが、アクシデントのせいでその予定も実行不可能。

そして逃げる事も恐らく不可能だ。アスモデウスが扱う魔法は電気……しかも普通のヤツよりも高電で迅速。追い付かれてしまう事など目に見えている。


「まあ待てよ、アスモデウス。これでも1度は協力しあった仲だ。そんなに闘争心を出さなくてもよくないか?」


「はぁ…?」


出来れば皆を戦わせたくない。そう思った俺は対話を望んだ。勿論成功するなんて考えちゃいない。時間稼ぎでもない。ただ成功すればいいなと思っての浅はかな考えであった。


…だがまぁ…無理だろうな。元より戦って倒す予定だった俺が、どの口で協力しあった仲だと語るのか……あーくそ…頭が回らない…っ…どうしたんだ…?今日はなんだか調子が悪い気がする…


「おいおい、どうしちまったんだ?俺の知ってるお前はそんな逃げるような事は言わなかったぜ?それともその髪色みてぇにやる気まで無くなっちまったのかぁ?」


苛立ちと疑念を抱いたような表情を浮かべたアスモデウスは、小さく溜め息を吐く。やっぱりダメか。俺ごときじゃイベント進行は止められない…。

そう考えた俺は、せめて皆を守れる…それこそ主人公のように戦おうと意気込んだ時だった。


「あ?お前……レヴィアタンはどうした?それにお前の中に複数の悪魔の気配を感じるぞ」


「うっ!!?」


落雷の音と共に、突如俺の目の前に現れた───否、高速移動したアスモデウスは、俺の眼をじっと見つめてそう呟く。

俺はアスモデウスの能力を知っている為、すかさず目線を反らしたが、魅力目的で俺の眼を見ていた訳ではないらしい。どうやら本当に疑問を抱いて接近したようだ。


「あぁ…?んでお前の中に“72柱“の悪魔がいる。それも複数体……さっきの暴走はまたレヴィアタンの癇癪だと思ったが…成る程、どうやら自我の強い奴らを宿しちまった事による弊害みてぇだな」


次々の看破されていく俺の事情と、反応速度を鍛えた俺でも目に終えなかった速度で接近したアスモデウスに、危機感と軽い恐怖心を抱いた俺は、1歩だけ後ろへと下がる。


「ハッ、本当に相変わらずお前は面白い人間だよ、アキラ。俺はお前みてぇな奴は初めて見たもんでよぉ?結構気に入ってるんだぜ?」


そう言って喉を鳴らしながら俺の頭を雑に撫で回すアスモデウスは、その後に俺の肩へと腕を回すと、ミル達への視線を向けた。


「コイツの中は居心地がいいんだよなぁ~不思議とよぉ…。だからコイツは俺が貰う」


その後に『って今の言葉をレヴィアタンに聞かれたら殺されちまうな。くくっ』と小さく笑いながら呟いたアスモデウス。

ミル達はその言葉に反応し、各々が自身の武器を取り出して、戦闘体勢へと入る。


「まあそう来るよなぁ?大事な大事なお仲間だもんなぁ?くくっ、まあその方が俺は都合がいい。お前ら全員を殺して喰っちまえばアキラも諦めがつくだろう?」


「……!────!?っっ?!」


肩を組むアスモデウスから不穏な気配を感じ取った俺は、すぐさま細剣を抜剣しようとしたが、何故か体が動けなかった。それどころか喋る事さえ出来ない。

まさか……っ


『クソッ!!やられたッ…!コイツ…!眼での魅了だけじゃなくて、触れられただけでも魅了状態になっちまうのかよ…!!』


強くなってはいると思っていたが、まさか能力まで進化しているとは…!完全に俺の油断のせいだ…!触れられただけで奴隷にするチートを持ってる主人公を知っていたと言うのに…!何から何まで浅はか過ぎた…!!


「さぁ~って、ずっとお預けだった飯の時間と行こうか…!嗚呼…大事な仲間が目の前で殺され、貪られる…!だが君は何もする事が出来ずにただ見ているだけ!!ッッッ~~!!なんて素晴らしいんだ!!考えただけで興奮が止まらねぇ…!!」


ダメだダメだダメだダメだダメだ…!!そんな事絶対にさせてはダメだ!!だがどんなに体に力を入れようとも、まるで金縛りにでもあっているかのように体はピクリとも動こうとしない。指先1つ動かせない状況で、アスモデウスは俺から離れて1歩前に出る。


『こうなったらもう1度さっきの暴走状態になるしか…!!』


何を仕出かすかはわからない。だが今この場で黙って見ているよりかは断然いい結果になる。そうなってくれないのと…っ俺は…!



──ゴーン…!ゴーン…!……ゴーン…!ゴーン…!


力の出し方なんかは分かる筈もない。だが何をせねばと焦りの限界を向かえた瞬間だった。

突如鳴り響く大きな鐘の音。それはまるで教会の上にあるような綺麗で大きな鐘の音であり、この国にはどう考えても不釣り合いな心地の良い鐘の音であった。


「あぁ…?何の音だ?こりゃあ…─────うぶッ!!??」


アスモデウスは突然鳴り響いた鐘の音に、眉間にシワを寄せて懐疑そうに空を見上げた瞬間、赤い血がアスモデウスの口から溢れ出た。


「これは一体どういう──────ッッ!!ガハッ…ッ…!!」


吐血したアスモデウスが倒れると、俺の体も自由となり、喋れるようになる。

だがそれと同時に俺もアスモデウスと同じように内臓が焼かれるような激痛と共に吐血して倒れる。全身の筋肉が弛緩されたかのように立つ事さえ出来ない状況に、俺は必死に思考を回転させる。


『なんだ!?何が起こった!?……いや落ち着け…!こういう時だからこそ落ち着くんだ…!……この痛み…覚えがあるぞ……確か…』


ゆっくりと呼吸を整えた俺は、記憶の糸を辿ってこの痛みの記憶を探る。そして出てきた答えが、かつてルミナス聖国にてラディウスからの拷問を受けた時と似ている。つまりこれは…!


「聖属性の攻撃……っ」


この鐘の音は恐らくこの国に全体に広がっている筈…。ならばそれほど間での魔法や術式、結界を造れるのは聖道協会か、或いは別の組織か……天使という線も捨てきれない…



「ふふふっ…!あはははは!遂に作動しましたか…!あまりに遅いので失敗したのかと思いましたよ…!」


その時、メルムの笑い声が響いた。


「どういう事…!?なんでアキラまで…!」


「何故か?ふっ、そんなの簡単な事ですよ…!この結界は我々聖道協会最大の対魔結界・天界の扉(ヴァルハラ・ゲート)なんですからね…!魔の存在は全て光へと浄化される…!そこの“悪魔宿し“も存在は魔…!人間の皮を被った化物だ!浄化されるのが定めなんですよ…!」


全身を血塗れになりながらも立ち上がったメルムは、ミルの言葉にそう答えると同時に笑い出す。


「“色欲“と“嫉妬“を相手に、我々枢機卿が2名だけだと思いましたか!?甘いですよ…!この国には今、東西南北全ての枢機卿が終結している…!貴方達はここで終わりなんですよ!!」

好きなキャラは誰ですか?ってアンケートでも取れればいいんですけどね。

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