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316話:3人の悪魔

俺の胸の中で泣きじゃくるミルの背中を撫で続ける。操られていたとはいえ、ミルに心配を掛けさせ、更にルナに攻撃してしまった。


『クソッ……もっと早くにアイツらを止められれば…!』


レライエ、グラシャラボラス、ハルパス。この3人の悪魔との戦闘が予想を遥かに上回る激戦だった為に遅れた。1人でも俺より遥かに格上だというの、それが3人ともなると、主人公のように早々と倒すのは困難だった。


「…!ルナ…!ルナが毒にやられて…!」


「ローザが治癒していたから延命されてるだけろけど、俺の毒は危険だ…。すぐに向かおう」


「ん…っ」


ミルの言葉に俺はそう言って頷き、ローザ達のいる場所へと駆け出す。マルパスの能力を使えば、毒の抽出など容易い筈だ。


「ゴホッ……」


「平気…?アキラ……顔色悪い…」


「問題ない。心配しなくていいよ」


やはり精神世界とは言え、3人の悪魔を相手にした事が現実の俺にまで影響を出しているようだ。


俺がこの体の意思を取り戻すまで少し前の事、、




「はああああッ!!」


精神世界の中で、これまでこの異世界で経験してきた戦闘の全てを表すかのように、俺の力だけで3人の悪魔に全てをぶつけた。


「どうした?その程度か?」


「くっ…!」


だがどれだけ奮起して挑んでも、俺は物語の主人公のようにはいかない。俺の拳は服を全開に開けた悪魔、グラシャラボラスによって受け止められてしまう。


「…!!」


「…外しましたか。意外と反射神経は高いようですね」


俺の頭部を狙った緑の矢が、全身を緑色の服で包んだ少女の悪魔、レライエから放たれる。

咄嗟に俺はグラシャラボラスの腹を蹴り、彼から距離を取ると同時に矢をかわす。


「雑魚がァァァッッ!!!!」


「っ…!俺に頭突きされたのがそんなに悔しいか?拳が大振りだぞ」


長い髪を寝癖だらけにしかような髪型をした、瞳孔を小さくした女の悪魔、ハルパスの拳を腕で受け流し、カンウンターの蹴りを放つがそれを止められる。


「っ…やるな。この世界で俺と同レベルの体術を持つ奴は初めてだ…!」


「雑魚が…!テメェーと同格なんてふざけんじゃねェ!!」


このハルパスはどうやら俺と同じ格闘が得意のようで、近接だけを仕掛けてくる。スキルでは城壁を作れるのに、戦闘方法が完全近接とは勿体無い。


「無謀過ぎますね。人間如きが私達に勝てると思っているのですか?本当に浅はかな考えですね」


まるで俺をゴミでも見るかのようにして放つ緑の矢。それを俺は細剣で切り裂き、代わりとばかりにレライエへと投げナイフを投げる。投げたナイフはレライエの腕に傷を付ける事に成功し、これでアイツはそう何度も矢を放てなくなった。


「ッ…!」


「受け止めるか。人間にしては中々の反応速度だ。────だが甘いな」


ハルパスとの近接を対応しつつ、離れた場所から矢を放ち続けるレライエも対応する。その隙を狙ったグラシャラボラスが銀色の斬撃を腕から放つ。

それを俺は細剣で受け流そうとしたが、ニィ…と笑みを浮かべたグラシャラボラスがそう言った瞬間、斬撃の威力は突然上がり、細剣を真っ二つに切断されてしまった。


「っ…!細剣を────」


「させねェーよ雑魚がァ!!」


すぐさま切断された細剣を生成しようとしたが、間を入れずにパルパルの拳が迫り、それを腕を盾にして防ぐがその拳は重く、骨から嫌な音と共に吹き飛ばされる。


「クソ……やっぱり俺の力だけじゃ勝てないのか…?」


「アキラ!しっかりしろ!」


ハルパスの攻撃は衝撃波を纏っており、内臓にまで響いた攻撃は、一瞬にして俺をダウンさせる。すかさず俺のカバーへと入ったマルパスは俺の傷を治癒していく。


「私も戦おう…!君1人でこの3人を相手にするのやはり無理だったんだ…!」


「いや…!ダメだ!」


「な、何故だ…!?このまま君がこの精神世界で殺されてしまえば、君の精神は崩壊する…!」


俺はマルバスの肩を借りながら立ち上がると、両手の拳を握り締める。


「それでも俺だけの力でコイツらを倒さないとダメなんだ…!コイツら完全に武道派だから…!下手な小細工で勝ってもコイツらは納得しない…!」


「だがそこまでしてコイツらを君の中に宿すのはメリットどころかデメリットしかないだろう…!?前にも言っただろう!私達悪魔は契約だけでは縛りきれない…!」


「だとしても…!弱い俺にはコイツらの力もいるんだ…!」


そう言った俺は駆け出して、マルパスへと拳を放つ。だがそれも受け止められ、両者睨み合いが続く。


「ハッ!笑わせんな。お前は既にそこのマルバスと契約しているだろうが。お前、死にたいのかよ」


呆れ気味にそう言ったグラシャラボラスは、腰に手を当てて溜め息を吐く。そしてそれに同調するようにレライエもまた静かに頷いた。


「なんだよ、心配してくれてんのか…?だがその心配は無用だ。俺は悪魔を宿す限度は恐らく無い…!」


そう言いながら俺はマルパスの回し蹴りを受け止め、代わりに踵落としを放つ。だがやはりお互いに互角……いや、俺の攻撃が通ったとしても、マルパスにはあまり効いていないのに対して俺が食らえば1撃でダウンしてしまう。分は向こうにある。


「有り得ません…!そんな人間、いる筈が無い…!つくならもう少しマシな嘘を付きなさい…!」


「信じてくれないのならそれでもいいさ。だが俺はお前らに勝って、今の言葉が本当なんだとという事を契約で示す。俺自身の力と共に…!」


俺は自身の背中から炎を出現させて加速していく。これは俺の火魔法であり、リングが無い今、この炎の威力はまさにろうそくが消える最後の時のように一瞬だ。


「長ければ長い程俺は不利だ……。だからこの一瞬で決めるッ!!」


「ッ…!?調子に乗るなよ雑魚があああ!!」


背中から炎に押されるようにして威力を高めた突撃のまま、俺は右拳をマルパスの腹部へと放つ。

だがそう簡単には倒れてくれないマルパスは、血を口から吐血しながらも反撃の拳が俺の左頬へと入り、俺は空中で回転しながら吹き飛ばされる。今ので左側の骨は砕けたな。


「ッ…だオラあああッ!!」


俺は全身に広がる痛みを歯を食い縛って耐え抜き、そして右踵から炎を発生させ、ジェット機かのように猛加速したまま回転蹴りをマルパスの左側頭部へと放つ。


「マルパス…!クソッ!ここまで動ける奴だったとは…!」


「今度は当てます…!」


レライエとグラシャラボラスの同時攻撃。それは前後から迫る。だがその攻撃もアクロバットの如く、機敏で柔軟な動きを駆使して紙一重で回避した。そして俺はそのまま最後の魔力を振り絞って、レライエの腹部に拳を放ち気絶させ、また同様にグラシャラボラスの首を狙った蹴りで気絶させる。


「雑魚…!風情が……ッ…!」


「ッ…!ま、まだ意識を保ってたのか…!?」


精神世界だから魔力は無尽蔵!などとそんな都合のいい事は無く、魔力が底をついた俺はもう立つ事もままならない。

そんな状態の中、マルパスは流血しながらも立ち上がった。


「チッ……向こうでも終わりなのかよッ…!オレはまだ壊し足りねェってのに…!」


そう吐き捨てるかのように言ったマルパスは、最後に嫌な笑みを浮かべた。


「最後にあの女を壊してやる…!!」


「…!!させるか!!」


画面に映し出されるミルを最後に殺そうとしたマルパスに、俺は咄嗟にタックルして押し倒すと、そのまま馬乗りのままマルパスの目を真っ直ぐと見る。


「暫くの間、ここでじっとしていろ…!」


「嫌だね。オレは壊す事と争いが好きなんだ。それにあのクソジジイにお礼もしねェからなァ…!」


「別に契約しろとまでは言わない…だけど今はじっとしていてくれ…!お前が望む争いなんかは今後も起こる。きっとこの先もラディウスとの戦いもあるだろう。傷が癒えるまで契約をしなくてもいてくれて構わない。だから今は…頼む…っ」


「………」


俺はそうマルパスに懇願すると、彼女の高ぶった闘争心が収まるかのように寝癖が無くなった。どうやら通じたらしい。


「ありがとう……今日の夜、またここに来る……それまでは頼むぞ」


俺はそれだけ言うと、マルパスに後の事を頼んで精神世界から脱した。

そしてなんとかミルが殺されるギリギリに間に合ったという訳だ。そして長い回想をしている内に、倒れているルナの元へと到着した。


「[病治癒(イネス・ヒール)]」


俺は青ざめたルナへとマルパスのスキルを使用すると、彼女の体内にある毒を中和して解毒に成功した。





「おっ?そっちも終わったみてぇだな?」


「アスモデウス…!」


だが戦いはまだ終わっていない。

むしろここからが本番だ…!

レライエ:弓を扱う悪魔であり、性別は女性。全身を緑色の服で纏っており、エルフっぽい青髪の少女。誰が相手でも敬語で話す。


グラシャラボラス:鉄のような銀色の髪をオールバックにした男性の悪魔。シャツ1枚で、ボタン全開という痛々しい服装である。腹筋と胸筋がアキラより凄いく、右頬に刺青が入っててチンピラみたいだとの事。


マルパス:長い茶髪の髪をした女性の悪魔であり、己の拳と蹴りでの戦いを好む超近接アタッカー。戦闘時とキレている時には髪が寝癖のように所々跳ねる。アキラ曰く、目がガンギマリで怖いらしい。

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