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314話:寄生共闘

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やった!ありがとうございます!

「パパ…!パパぁ…!」


涙を流しながら、嬉しそうに黒い怪物へと頬すりをシアン。ミルは不穏な気配を感じつつも、もしかしたらという奇跡に想いを託す。


「………」


「パパ…?どうしたの…?」


アキラだと思われる黒い怪物は、シアンの反応に困惑するかのように、はたまた苦悩するかのように、自身の頭を押さえて低く唸る。


「ッッ……」


「パパ…?ねぇパパ!しっかりしてよパパっ!!」


「…ッ…!黙…ッれ…!!」


苦しそうな掠れ声でそう叫んだアキラはシアンを蹴り飛ばし、頭を抱えながら震えている。


「シアン…!」


強く蹴られた事で、地面に頭を打ち付けたシアンは額から赤い血を流す。打ち所が悪かったのか、かなりの血を流すシアンに焦るミルは、すかさずローザの元と運ぼうとするが、、


「くっ…!アキラ…!早くシアンの傷を治さないと危ないかもしれない…!」


「………」


だがシアンを抱えるボクに向けて、アキラは紅い矢を足元に向けて放つ。彼が大事に思っているシアンの事を伝えても、アキラは攻撃を黙って仕掛ける。


「ミル…お姉ちゃん……」


「…!どうしたの、シアン」


「パパが…っ……パパが悪いモノに操られてる…!元のパパに戻ってほしい…っ。その為なら僕はなんでもする…!だからお願い、ミルお姉ちゃん……パパを元に戻して…っ!」


そう言うとシアンの体は光輝き、そして光の玉へと変化すると、そのままミルの背中へと入り込む。


「いっ…!な、なに…?」


突然の痛みに背中を撫でたミル。するとそこには本来ある筈の無い羽が生えていた。

驚きつつも、アキラの追撃を身軽に回避したミルは、改めて自分の背にある羽を触る。


『羽……ボクにも遂に母様の血が目覚めた…の?いやでもこれは……』


そう思考するミルに、脳内へと直接聞こえてきたシアンの声にミルはビクッと驚く。


──僕に出来る事はこれくらい…。痛い思いをさせてごめんなさい……でも僕もミルお姉ちゃんの力になりたいんだ…!


「ん、分かった。一緒に戦おう、アキラを元に戻すために…!」


背中にステンドグラスのような美しい羽を持つミルは、細剣を怪物と化したアキラへと向けた。





『やめろ…!やめてくれ…ッ!』


黒い炎に体を縛られたアキラが何度も叫ぶ。だがその言葉とは裏腹に、アキラの猛攻は止まらない。



ラディウスに3人の悪魔を強制的に体内へと入れられた瞬間、俺の体の中で異常が発生した。

心臓を盗られている間、俺は暗い精神世界へと強制的に意識を奪われ、そして3人の悪魔と対峙した。


『何なんだよ、お前ら…!』


「へぇ…ここはお前の体か。あの狭い箱の中よりかは快適だな」


そう言ったのは鉄のような色をした髪を、オールバックにした頬を刺青の入った男。前を全開に開いた個性的な服装をしており、腹筋がエグい。


「突然の侵入、失礼します。大変失礼ですが、暫くの間この体を占領させていただきます事をご了承下さい」


次に口を開いたのは、全身を緑色の狩人のような格好をした薄金髪の女性。事務的な口調が気になるが、彼女は黒い炎に縛られる俺へと頭を軽く下げた。


「んな雑魚なんかどうだっていいだろォ!?今は目の前のクソジジイをぶっ殺すのが先だろうがッ!!今までの屈辱と痛みを開放しねェーとオレの頭が狂っちまいそうだぜ…!」


そして最後にそう言ったのは、酷い寝癖のように所々跳ねた女性。彼女は他の2人とは違って俺には眼中に無く、まるでテレビのように映し出されたラディウスを目を見開いて暴れていた。


「この気配……そうか、お前ら悪魔だな…!?」


「だったらなんだ。俺達を追い出すか?無理だろう?諦めるんだな」


前を全開にした男はやれやれといった表情でそう言うと、彼もまた映像に映し出されたラディウスを睨み付けていた。どうやらこの3人の悪魔はラディウスに怨みがあるようだ。それも深い怨みが…


「すまないアキラ……君の体を治癒する事に意識を向け過ぎた…。彼らの侵入と君の体の自由を奪う前に止めようとしたのだが…私の力ではどうにも出来なかったよ…」


そう言って暗闇から現れたのはマルバスであった。彼女は俺の隣まで来ると、そう言って静かに頭を下げた。


「いや、最初の時点で罠の警戒を怠った俺の責任だ……ラプの力に頼っていたのが原因だな。我ながら恥ずかしいよ…」


数秒の未来が見えていた事を良いことに、俺は油断してしまった。ラプを始めとしたマルバス以外の力は使えないと言うのに…


「なあマルバス、この黒い炎は一体……それとこれを外せるか?」


「いや、すまない。それも私には出来ないんだ……この炎の鎖は彼らの怨念によって生まれた物だ。少なくとも彼らの目的を達成する迄は消えないだろう。そして炎についてだが、私は彼らと比べて非力だからな…とても解けそうにない。非力な私を許してくれ…」


「そうか…」


申し訳なさそうにそう言ったマルバスに、俺もまた申し訳なくなる。こうなったのは弱い俺が原因だ、彼女は何も悪くはない。今だってこうして彼らの怨念とやらに縛られているのも、俺の心が弱いからだ。



そしてそこから俺の体はあの3人の悪魔によって操作された。彼らの怨念からなのかは不明だが、俺の体は黒い鎧のような物を纏い、通常では考えられない程の腕力、脚力、スキルで次々と聖道協会の者を残虐な方法で殺害していった。


───そしてその後に問題は起きた。


『ッ…!!やめろ!!そいつらには手を出さないでくれ!!』


コイツらは聖職者達を惨殺した後に、あろうことかミル達の前に立つ。そして予想通り俺の体を動かして殺害しようとした。


「目的のクソジジイをぶっ殺せなかったんだ。やめる訳がないだろう?このイライラが収まるまで、ぶち壊さないとオレの気が収まらない」


『ふざけるな!!皆に少しでも手を出してみろ…!俺はお前を許さないぞ…ッ!』


「ハッ…そんな状況で何を言われてもな?」


『くそ…!』


そう言って俺の心を逆撫でする前を開けた男。俺は何度も炎の鎖を解こうと体を動かすが、切れる気配を見せない黒い炎。

そしてそうこうしている内に、俺はミルへと腕を振り下ろした。だが紙一重でソルの射撃によって最悪の事態を防いだ。


「気に入りませんね。あの人間」


「あァ…アイツからぶち壊そう」


そう言って俺の仲間へと攻撃を開始する。だが流石は皆だ、上手く攻撃から守っている。

だがそう思った矢先に俺の体は……ソルを庇ったルナに攻撃してしまった。


『ああ…!?』


「チッ、人間特有の姉弟愛か。下らねぇな」


ルナに傷を負わせてしまった事に体の震えが止まらない。悔しさと怒りが込み上げる。いいようにされる事へ悔しさ、大切な仲間を傷付けたアイツへの怒り。そして何より、それを許してしまった俺へと怒りが止まらない。



「なんだこのガキは?」


「構いません。この子供も殺してしまいましょう」


「餓鬼までぶっ壊せるなんて最高な日だなァ!」


だが俺の怒りさえも置き去りにして、今度は俺を止めようとしてくれたシアンを殺そうとしていた。


『やめろ……やめてくれよ…!シアンは大切な俺の友達で相棒で子供なんだよ…っ…!やめろおおおお!!!』


俺がそう叫んだ瞬間、シアンを殺そうとした手を止めた。そしてその代わりにシアンを蹴り飛ばす。

シアンに対して酷い事をしたのは変わりないが、殺されなかった事への安堵が勝り、俺は胸を撫で下ろす。


「おい雑魚。テメェ…今何しやがった?」


そう安堵するのも束の間。寝癖のような髪型をした女の悪魔は俺の髪を鷲掴みしてそう言いながら睨み付ける。


『俺は何もしてねぇよ』


俺もまた睨み返すと、彼女は俺の右頬を力強く殴る。そして更に顔を近付けると、


「ふざけるなよ、雑魚。お前が何かした事は分かってんだ。それとオレはテメェのような奴が大っ嫌いだ」


「そりゃ奇遇だな。俺もお前らが大嫌いだよ」


ニィ…!と笑いながらそう言うと、彼女は苛立ちの表情を浮かべたまま再度俺の顔を殴る。隣にいたマルバスが止めようとするが、それさえも振り払って何度も何度も……

クソ……精神世界だってのに相変わらずイテェ…


「おい、ハルパス。見ろ、あの女…何か様子がおかしいぞ」


「あ?」


前を開けた男の声に反応したハルパスと呼ばれた彼女は振り替えって映像を見る。それと同じく俺も腫れ上がった瞼が邪魔だと感じつつ映像を眺める。


『…!ははっ……スッゲ。流石はミルとシアンだな』


俺を口から血を流しながら、映し出されたミルの姿に思わず笑みが溢れる。

そこにはシアンの羽を背にし、細剣を構えるミルの姿があった。

アキラよりミルの方が絶対にシアンの羽は似合う。これは譲れない。

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