307話:歓楽都市・ガルシェ帝国
入国審査を済ませた俺達は、ガルシェ帝国へと入国した。そして歓楽街として有名なこの国での第一声は……
「うっわ…」
であった。
いやもうね…なんか凄いんだよね。まだ昼間だってのに何だかか夜みたいに暗いし、ピンク色の光があっちこっちで光ってる。
「何か臭い……気がする」
ミルは分かりにくいが、少し微妙な表情を浮かべてそう呟く。確かになんだか臭い気がする…性臭ってやつだろうか。何かたまに駅にいる香水キツい人の臭いがあっちこっちで混ざりあって臭い。
「なんつーか……異世界はもっときらびやかとして夢のある場所じゃなきゃいけないのにこれは…」
キャッチのお姉さんは皆美人だし、当然のように胸はデカい。種族もバラバラで本当に【異世界レビュアーズ】みたいだ。夢があると言えばあるんだろうが……俺の趣味じゃないかも。
「ここからアスモデウスを探すのか…。こりゃあキツいぞ…」
国全体が歓楽街と言われているこのガルシェ帝国。この国に住む者は全員そういった目的やその手の仕事をしている者ばかり。俺から言わせれば、ここにいる全員がアスモデウスに見えてくる。
本来なら、アスモデウスの髪色が淡いピンク色と特徴的な為見付けやすそうに思えるが、異世界では髪色は自由自在。お前それ地毛なの?と突っ込みたくなるような髪色や髪型ばかりだ。ルナやソルだって一部だけメッシュ入ってるしな。
「さて、どうするかね……普段なら別れて情報収集とかをするんだが…相手がなぁ」
「ん……もし“色欲“に出会したら危険。あの悪魔は何をしてくるか分からない」
この国には情報屋なんかはあるんだろうか。あるなら活用したいが、ここだとぼったくられそうだ(偏見)
そう考えながら唸っていると、ローザが俺の袖を引いてくる。
「そのアスモデウスっていう悪魔はそんなに危険なの?私が昔読んだ本だと“七つの大罪“内で1番弱いって書いてあったわよ?」
「んー…まぁ戦闘能力で言うならそうなのかもしれないな。でもアイツの恐ろしい所は固有の能力だよ。相手を洗脳出来るし魅了も出来る。その上雷魔法を得意としてるから、1番弱いって言っても侮れないんだよ」
「そうなのね……なんだか怖いわ…」
少し不安そうな顔を浮かべるローザ。やっぱり洗脳類いの能力はチート並に強い。恐怖しない方が変だ。
しかし…ホントどうやってアスモデウスを見つけ出すか。悪魔は男でも女でもなれてしまうから、アイツが女になっていたら見つからない可能性が高い。
『だけどアイツは女を痛め付ける事に快感を覚えているような奴だ。そんなアイツがわざわざ女になっているだろうか…?』
「考えててもしょうがない。取り敢えず宿を取ろう。そこでならここよりはゆっくり作戦を立てられる」
「うんっ!そうだねっ、私それに賛成ーっ!」
こんな場所でも元気なルナに笑みを浮かべつつ、皆に視線を向けると、他の皆も賛同してくれた。
「シアンは…俺がおんぶしてあげるよ」
「なんで?僕歩けるよ?」
「なんつーか…あんまり周りをキョロキョロと見てほしくないからな」
シアンはあまり理解していないようだが、俺におんぶされると分かると、嬉しそうに催促してきた。あわよくばこのまま眠ってくれればと思っていると、シアンは寝息を立て始める。よかったよかった…シアンが汚れなくて。
□
「それでどうすっか」
「そうね…ここにいるってだけの情報じゃ探し出すのは困難ね」
「前にアキラ、悪魔の気配に鋭いって言ってたよね?それを使えれば見つかるんじゃないかな?」
「おっ!それ名案かも!あっ…でもこの左目は自由に能力が使えないんだよ…。俺自身でも発動条件が分からないし…」
「そっか……それなら仕方無いね」
俺とミルとローザは、俺の取った皆よりも広い部屋へと集まっていた。ルナとソルももうすぐ来るだろうが、いち早く作戦会議を始めていた。
「ごめんお待たせーっ!────て、うわぁ~……なんというか凄いお部屋だねっ」
「言うな、ルナ……」
少し遅れてやって来たソルとルナ。そして入って早々にルナは部屋を見渡してそう驚く。俺だけが何故広い部屋に止まっているのか…それは通常部屋が4部屋しか取れなかった為である。その為、俺は1人だけ広い部屋を取らざるを得なくなったのだが……
薄紫色をした壁。淡いピンクの色を放つ小さいシャンデリア。丸いダブルベッド……そう、俺が取った部屋はまるでラブホテルかのようなのだ(童貞妄想)
「クソッ…!あの時グーを出していればこんなに事には…!」
「ぷっ…!まあいいじゃん?部屋は広くて快適…だし…!くくくっ…!」
じゃんけんに負けた為、俺はこの部屋となったのだが、ソルは俺の悔しそうな顔を見てか笑い出す。コイツ…!後でデコピンしてやる…!
「シアンがいるから1人じゃないが…これ俺1人だけだったら凄い惨めで辛かったわ。まあそう考えると、ある意味俺が適任だったのかもだけど」
「まだ幼いシアンとこんな部屋にいるってのも聞く人によってはヤバい気がするけどね」
「うっ…!確かに…」
ローザの言葉に、俺の脳裏には児童ポル○という言葉が過る。だ、大丈夫だ…!シアンは雄…つまりは男だ。俺も同様に男…なんの問題がある?
…え?そういうの好きな人もいるの?それマ?
「兎も角…俺のこの眼の力がアスモデウスを見つけ出すキーになると思う。だから少しだけ時間をくれないか…?必ず使えるようにして見せるから」
俺は皆に頭を下げてそう言うと、皆が笑い出す。そんなに変な事をしただろうかと思いつつ、俺はゆっくりと顔を上げた。
「アキラは普段頼り無いけど、こういう時はやる奴だからな。任せたよ、アキラ」
「そうそうっ!なんだかんだあっても、いつもアキラ君から始まるからねっ。今回も頼むよっ!」
「貴方ならどうせやり遂げるんでしょ?だったら私達は待ってるわ」
「ん。アキラ、頑張って。ボクに出来る事があったら何でも言ってね」
……ほら、皆聖人だろ?あーやべ。自分涙いいっすか?
だけど俺は泣くのを堪えて、更にやる気を奮い立たせる。皆が俺を信じてそう言ってくれたんだ、何がなんでもこのラミエルの眼を使い物にしてみせる。
□
「ふぅ………[悪魔放出]」
皆が1度部屋へと戻った所で、俺は出来るようになった悪魔の排出を行い、マルバスを体の外へと出す。
「どうしたんだ?それにしても驚いたぞ…まさか自由に私を外に出せるとは…」
「そこは俺の(地味目だけど)才能よ。それよりマルバス、少し協力してほしい事がある」
「分かっている。君のその眼を扱えるようにしたいのだろ?」
俺の中でキチンと話を聞いていたらしく、マルバスは腕を組ながらそう言った。
「話が早くて助かるよ。早速悪魔特有の気配ってヤツを出せるか?殺意とか闘気は無しで」
「変な要望だな…」
「無理そう…?」
「…!出来るに決まっているだろう。私は“72柱“の一角なのだぞ?これくらい容易い」
食い気味にそう答えたマルバス。なんだかあたふたと必死に私は出来るアピールしてきて可愛い。見た目は凄いクールっぽいのに。
「……君はまた良からぬ事を考えているな?」
「さぁ…?どうでしょう」
俺の沈黙で察したのか、マルバスは疑いの目を俺に向けてくる。
「つ、次可愛いとか訳の分からぬ事を呟いたら…!」
「呟いたら?」
「えっと………そう!凄い怒るぞ!」
「…やっぱ可愛いじゃねぇか……」
「また言ったな…!くっ…!」
そんなやり取りの後に、俺はマルバスの協力の元、ラミエルの力が宿る左目を自由に扱えるようにする練習を始めた。
語彙力カスカスマルバス。




