29話:ヒロイン助けて惚れさせ──あれ?
三日連続は初めてな気がします。
「その子から離れて貰おうか!」
『ククッ…!言っちゃった!言っちゃったよ!!やべぇ、興奮してきたw』
こっそり覗いた感じ、ナンパしてる男達、かな?でも相手にされなくてキレている、と。
殴っていいよね!
「んだテメェ!邪魔すんな!」
「いいや邪魔するね!悪いと思わず、暴力で解決させて貰うぞ!」
暴力で解決。これ【なろう】とか異世界物では当たり前。向こうもヤル気満々だし、やりましょう!てかもう行っていい!!?早く殴りたいんだけど!
「気に入らねぇな、その面」
そう言ってポケットから折り畳みナイフを取り出す男達。なにそれバタフライナイフってやつ!?俺も欲しい!
「………」
『おっ、ちゃんとヒロイン感満載の美少女おるやん!こっち見てますねぇ~』
ここはカッコいい所を見せて惚れて貰おう。ヒロインがいて初異世界物が始まると言っても過言ではない。それほど重要なヒロイン、逃すわけにはいかない。
「よそ見かよ──オラァ!!」
不意打ち、セリフ、実に小物らしい!!やべぇ…!俺今めっちゃ主人公じゃん。
取り敢えず、相手はナイフ持ってて危ないので、リーチ差がある左脚で男の手の甲を蹴る。
「痛ッッ!!テ、テメェ…!──ッッ!」
カランっと地面にナイフが落ちる音が路地裏に響く。頭の中ドーパミンがドバドバ。負ける気がしない。そのまま腹へ拳を沈める。
「舐めてんじゃねぇ!!──ガッ!!?」
さっき俺が手の甲を蹴ったの見てた筈なのに突進してくるチンピラモブ兄さん。う~ん、嫌いじゃないよ!
だから俺は下段蹴り。つまり太ももを蹴った。
「そちらの兄さんもどう?ヤッてかない?」
こちらとしては全然OK!だってこの兄さん達1人づつ来てくれるんだもん。優しいかよ。
後、敵さんが暴れてくれればくれる程、ヒロインが俺に向ける好感度も上がるしな!
「ただのガキじゃなさそうだな」
最後に残った男はそう言うと、ナイフを地面に投げ捨て、拳を構える。喧嘩馴れしてるのか、綺麗なフォームだ。
「行くぞ、ハァァァォァ!!───ッッ!?」
だが、所詮は喧嘩の強いだけの一般人。
右拳を振りかぶり、接近してきた男の攻撃を左腕で弾き、男の内股を右脚で外へと蹴り上げて転倒させる。倒れたお兄さんが起き上がらないように、脚で腹を踏みつける。
「ガハッッ!!」
流石に極真やってる奴がガチで殴ったり蹴ったら、相手さんは当然怪我をします。しかも中々の。また極真とか関係無く、武術に心得がある人には敵対しない方がいいです。マジで勝てないから。ドヤッ!
『クックックッ…こんなもんでどうだ?なかなか【なろう】系っぽかったんじゃね?』
成敗!!加減がわかんねぇけど、こういうのはやり過ぎず、やられた男達が逃げ帰るまでがセットだからね、全員のしたら王道のそれも出来なくなるし……うん、こんなもんでいいんだ、きっと!
「諦メロン、お前らじゃ束になっても勝てねぇよ。立ち去れ」
どうよ?結構ドスの聞いた声なんじゃ?
どうよ?イキれてる?イキれてるよね!?
どうよ?俺、なろう系になれてたk──
「……チッ、行くぞ!」
男達は舌打ちをした後、仲間を肩に担いで行ってしまった。異世界初の完勝、興奮した。
異世界行った一般人が力を貰ってイキる場面を体験したからわかる。これ、気持ちいいわ。
だから皆に嫌われるんだろうね。
まぁいい、モブより今はヒロインちゃん!
「無事かい?お嬢さ…………あれ?」
爽やか風に振り返る俺。
しかしそこには黒髪の美少女は既にいなかった。
………は?
いや久々に【は?】が出たよ。いや…え?マジで?いやいやいや普通逃げる…?助けて貰ってるのに…
…
……
………
「いや逃げるな、普通」
わざわざ引き付けてくれてるんだ、普通逃げるよな。チャンスだもんな。
「逃げるわなぁ……あっ、ナイフ!」
さっき男達が持っていたナイフが欲しかった事を思いだし、戦利品代わりにいただこうと急いで振り返る。
が、既に男達もいない。
なんの成果も得られませんでしたぁぁ!!
「……はぁ、うん切り替えてギルド探そ」
諦めて俺は路地裏から出る。ど、どうせヒロインなんて捨てる程いるさ!は、ははは…!
路地裏が暗かったから、通りに出ると日差しが眩しい。しかも人も増えてる。
「ふぅ…ま、異世界人に勝ったんだ」
モブだけど。
まぁそれはいい。いずれ俺の力でどこまで行けるか分かる。分かる時には死んでる可能性があるけど。うん、楽観視できねぇ…
「ギルドってどこにあんだろ。──あっすいません、ギルドってどこにありますか?」
「ギルド?あぁ、それなら向こうの大通りにあるよ。大きな建物で目立つ筈だからすぐに分かるよ」
俺は感謝の言葉を述べた後、俺は言われた通りに大通りへと向かう。
大通りでは竜車が沢山走っていて、ちらほら馬車もいる。異世界で馬がいるのは珍しく感じる。
そして1番目立っている建物。
こっちの世界で使われている共通言語で大きく書かれた看板に、冒険者ギルドと書いてある。
「来たぜ!冒険者ギルドッ!」
チンピラ戦以上に興奮状態の俺は、いてもたってもいられずに俺はギルド内へ入る。
「おぉ…!いかにもって感じだな!」
異世界あるあるの酒場風の内装。ガラの悪い男達。女だらけの受付。
う~ん…!また興奮してきた!
いや受付嬢に興奮した訳じゃないからね!?
「あらっ?見掛けない顔ですね…もしかして冒険者登録ですかっ?」
「えっ……あぁ、はい」
ギルド職員らしき美人さんが突然俺に声を掛けてきて、少しテンパる。が!それを顔に出さすにあくまでも平然を装って返事をした。
おい、今『童貞臭い奴w』って言った奴表出ろやぁ!!純潔の何が悪い!!
……いやマジで…何が悪いの…?良くない…?下手に女慣れしてる男よりは…
「あのー?私の声聴こえてますかー?」
「えっ?あぁ、はい」
「冒険者登録は、あそこの受付で出来ますからねっ!冒険者カードの発行料が掛かりますが」
「へっ!?発行料…?ちなみにおいくら程で…?」
「えっと、小金貨1枚程掛かりますね」
そ、そんなにするの!!?日本円でえっと……1万円!?料金高すぎ、高杉君だわ。
俺550円しか持っとらんぞ…
「あぁー…ご丁寧にどうも。出直してきますね…」
「えっ…?あ、はい…」
俺はギルドのお姉さんに背を向けて、ギルドから出る。酒を飲んでいる柄の悪い冒険者らしき人が指差して笑ってる。人に指を差すな…
─────────
「はぁー…どうするかねぇ…」
リコティ王国にて路頭に迷う30代男性。
またバイトするしかないのだろうか…
時刻は酉刻の表、午前9時だ。流石に夜までには何かしらの仕事を見つけないと不味い。激しく不味い状況だ。
「タ○ンワークのありがたみよ…」
有名求人誌のありがたみを感じながら俺は街を歩く。店を見つけては頼み込み、断られるの繰り返し。頭を下げては追い返される。
どれくらい街を歩き回っただろうか…
リコティ王国で営んでいる店は、飲食店にしろ、青果店にしろ、個人営業。人は間に合っている。
となれば、有名企業っつぅか商会か。そこで働きたいって言っても、俺の服装が服装だ。わかっちゃいたが、貧民差別的なのを感じる。
「まぁ商会の息が掛かってる店はとても一般人が入れる場所じゃねぇーしな。仕方ないっちゃ仕方ないんだけど」
腹が減ってきた。多分今は昼時なんだろう。手持ちの小銀貨1枚と、銅貨1枚を握って安い軽食でも買おう。
「リンゴと水で200円近く取られた…ん?妥当か?」
残った350円を小さい巾着に入れて、ショルダーバッグにしまう。
リンゴを噛り、水を飲みながらこの先の事を真剣に考える。
「もう…こういう所しか無いな」
真剣に考えた結果、俺は闇金らしき店で金を借りる事にした。
では無く、、
カランコロンカーン
扉を開けると、懐かしき喫茶店風の音が鳴る。
「あらいらっしゃ~い♡でもごめんなさい、お店は夜からなのよぉ」
「いえ…知ってます。俺は…っ…俺は…!ここに働きに来たんです…!!」
「あらっ!そうだったの?やだっ、そんなに、ガチガチに緊張しちゃってぇ~♡いいわっ、面接してあ・げ・るっ!」
もうお察しの方もいるかもしれない…
そう、ここは、、
「ようこそ、【ニューカマー・ヘブン】へ。歓迎するわぁ♡」
「よろしく……お願いしま…す」
リコティ王国にある歓楽街通りに店を開く、オカマバーである。
ヘルキング・ホーネット:体長8m程の巨大スズメバチ。肉食であり、大きな生き物もランスのように尖った両手で突き刺し捕らえる。人間を食べた事例もあり、大変危険。
ヘル・ホーネットの王であり、オス。
アキラ曰く、昔ポ○モンに似たのがいたとか…




