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2話:森、入ります

「うぉぉぉい!?何か答えろやぁぁぁ!!」


地団駄を踏みながら天に向かって叫ぶ。もう何分叫んでいるのだろうか…返事は無いし、叫び過ぎて喉が痛い。


「……はぁ、まぁいいや、異世界には来れたんだし」


そのうちロリ神がミスった事に気付くだろう。

ならば俺はしばらくこの世界の情報でも探ろう。


「っと、思ったけど…どこ行くかなぁ…」


全方位360度草原。

もしかしたら人を食うバカデカイ馬とか、ゴブリンとかいるかもしれないから気を付けて行こう。何せここは異世界なのだから。


ん~っと唸っていると、近くに30㎝程の木の棒を発見。風で遠くに見える森から飛んできたのだろうか。


「まぁどうでもいいか。さぁーて、どっちに行く?」


地面に棒を立たせる。するとカタンッと俺から見て真っ直ぐの方向に倒れる木の棒。ここは運任せに行こう。そう決めて、木の棒を拾ってブンブンと振りながら進んでいく。



歩くこと約10分。

段々と森に近付いてはいるが、後2㎞程ありそうだ。


「それにしても、魔物的なのとエンカウントしないな」


こういうので王道ならプルプルしたスライムが出てきそうなもんだ。後ゴブリンとか。


「でも異世界物見てると、スライムって強いんだよなぁ…ゲームのせいで雑魚キャラってすりこまれてるけど」


スライムが魔王になるお話だってあるくらいだ。怖い怖い。

それにゴブリンも強いよね、多分。『ゴブリンは馬鹿だがマヌケではない』ってスレイヤーさんも言ってた。

要するに油断するなって事だよな。


「ふぅ、やっと森到着。地味に遠かったな」


見た感じジャングルって感じよりも、田舎の山を思い出す森だな。あんまり暗い感じもしないし、程よく日光も入ってる。

よし、入ろう!


「…ちょっと待てよ?俺の装備って…」


装備:木の棒(30㎝)

服:部屋着のジャージ

ズボン:部屋着のジャージ

靴:スニーカー

持ち物:無し


「おっと…?これで森入るのか…?早速俺の異世界ライフが終わりを迎えそうだぞ?」


見知らぬ世界の森にこんな格好で行くって馬鹿じゃねぇか…。もしここがアマゾンみたいな森だったら、俺死ぬゾ?せめて虫除けは必要だよな…


「しかしぃ…ここは森に囲まれた草原、絶対森に入らなきゃいけないんだよなぁ………うしっ!気合いだ気合い、根性論で乗り越えてやる」


入るしか選択肢が無い。こればかりは仕方ないと腹をくぐり、息を潜めて一歩一歩確実に進んでいく。

途中手に持つ棒より、少し長い木の棒を見つけたので乗り替える。若干ではあるがリーチが長くなった。


「怖ぇ…俺の殴る蹴るは自然界の動物に効くのだろうか…」


多分木の棒は一回攻撃したら折れる。もしそうならなかったとしても、念の為に体を動かす準備はしておこう。アキレス腱伸ばしは大事、覚えておこうね。


歩く事数分。そろそろ入った場所が見えなくなってきた。こう…心細いよね。森に1人って。


「生き物出てきませんように…!あっ!あれリンゴじゃね!?」


祈るように手を重ね、天を仰いだ時だった。たまたま視界に入った木には赤いリンゴが何個か実っている。しかし…


「高いな…木の棒使っても───よっ!ほいっ!…ダメか。となると…登るしかないよな」


食料と水分が取れる絶好のチャンス。逃したら次は無いかもしれない。餓死は嫌だ。何としても取る。しかし木登りなんて何年ぶりだろうか、まだ登れるかな?


「うっ…!く、くぬぬぬ!オリャ!オリャ!後…!ちょっと…!」


持ち前の筋肉でゴリ押しでの木登り。腕に掛かる負荷が凄い、が!諦めずに手を伸ばす。リンゴまでの距離僅か10㎝。


「んぬぬぬ!取った!───おわぁぁぁぁ!!!」


ドシンッ!!

リンゴを取った瞬間足場の枝が折れ、木から転落して砂埃が上がる程派手に落下した。


「痛っ……でも、リンゴは無事ゲット!さてさてお味は?」


この世界で初めての食べ物。しかも現世で見慣れている赤いリンゴちゃん。しかし俺は油断しないと先程決めたばかり。このリンゴも実は毒的なのもあるかもしれない。だから念の為にパッチテストをする。


「えっと?少し噛って、舌がピリピリしなきャ平気だった…よな」


小さく一口、シャリっと口に含む。

そして舌を刺激するこの味は…!まさしく毒!!



では無く…



「すっぺぇぇぇぇえええ!!なんじゃこれ!?」


赤く熟れてるのにバカみたいに酸っぱい。レモン丸かじりよりも酸味を覚える。舌が突然の暴力でビックリしてるよ。


「食べられない…程では無いが…好き好んでは食べないな。あぁ…だからこの木にあるリンゴは鳥につつかれてないのか」


第1回異世界ご飯、失敗。

それでも無いよりはましだ。なので何個か取っておきたいが、流石に痛い思いをするのは少し嫌だった。


「武器もかねて…何か作るか」


作るなら槍が妥当だろうか。リーチも今と比べ物にならないし、あの高いリンゴにだって届く。でもその為には棒を採取しなきゃいけない。


「でも槍に最適な棒なんて…易々落ちてなんかないよな」


となれば、丁度良いサイズに加工するしか無い。

木を加工するには…


「石、か…」


腕を組んでそこら辺に落ちている石を見る。たしか石と石を強く合わせたら、どちらか割れるんだった筈だ。

少ない現代知識(笑)を使い試行錯誤。


「一番!天道明星!行きます!!」


地面に落ちている石に向かって、ハンドボールくらいの大きさの石を叩き付ける。


ゴチンっ!


「痛っっっってぇぇぇぇぇぇ!!!!」


石と石を力任せに合わせた瞬間、手にビリビリと衝撃が走り、激痛が襲う。見れば手に持つ石は見事粉々。違うそうじゃない。

てか俺この世界来てから叫んでばかり…喉が渇く…

チラッと下を見れば俺が一口だけ食べたリンゴが。


「………」


シャリ…


「うぅ……酸っぱい…」


それでも我慢し、リンゴを何とか食した。

そして当初の目的である鋭利な石をゲットしよう作戦は石が粉々になってしまったので、再度やらねばならない。


「はぁ…異世界って…辛いのな」


フィクションは本だけ。改めてそう思わされながら、手頃な石を探した。

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