294話:失踪事件
皆様、すいません!仕事の都合上、やはり土日のどちらかでお休みします…!(高確率)
週に一回のお休みをどうか…お許しください。
そして次の日。俺は太陽の日差しで目を覚ましたので、体を起こすとそこは知らぬ部屋……あ、そうだった。寝台列車に乗ってたんだったな。忘れてたわ。
「まだちっと時間が早いか?」
シアンもまだ寝ているし、空がまだ薄暗くて青い。太陽が出ていても、まだまだ早朝と言った所だ。なので折角早起きしたので、シアンが起きる前に朝シャンしようと部屋を出た。
その後は特に事件に巻き込まれたとか、シアンが起きてしまい迷子になった、とかは無かった。本当にただシャワーを浴びて戻ってくる。本当に何もない…
「ま、別にいいんだけどさ…そういうのは慣れてきたし」
ちっちゃく溜め息を吐いた俺は、小さな部屋の中で持ち込んでいた本を取り出す。書かれているのは勿論魔導学。最近はこういう本ばかり読んでいる。それに飽きてきたら、悪魔学の本を読み、また飽きたら魔導学に戻る。それを繰り返している。
『火力を上げるには、自身の魔力を大く消耗すると上がる、か。…このリング頼りの俺には少しキツいな…』
このリングに入っている魔力はルナかローザから提供されている。火力を上げて、出せる数を減らしては不味いだろう。俺にはルナのような魔法の才能が無いし、操作も苦手。その上魔力回復ポーションを飲んでもリングの魔力は回復しないからキツい。
『やっぱ俺は一撃必殺系よりも、弱攻撃連打の方が合ってるな、きっと』
それに俺の好きな“なろう“でも、初級魔法が強いってのはもはや一般常識。学校の問題にも出てくるレベルの常識だ。
「あ~あ…結局誰かの力を借りないとこの世界では生きていけないのか…。それも今更っちゃ今更なんだけどな」
パタンと本を閉じた俺は、いまだ眠るシアンの頭を撫でながら窓からの景色を楽しむ………と思ったのだが、生憎今はトンネルの中。真っ暗闇だ。二度寝しようかな…
「……いや、勉強だな。寝てる時間が勿体無いし」
そう決めた俺は再度本を開く。今度は悪魔学であり、後に戦う事になるであろうアスモデウスの弱点でもあればと本を読み込んだ。
□
──おはようございます。本日も素晴らしい日になりますように。寝台列車・青星は、申刻の表をお知らせします。
「ん…………もうそんな時間か、早いな」
脳内でミルとの戦いを繰り広げていると、あっという間に日本時間で午前9時となった。この4号車の人は皆朝食を食べに食堂に向かうんだろう。ミル達も起きているだろうし、俺もシアンを起こして行くとしよう。
「…!おはよう、アキラ」
「おっす~、あれ?ミルだけ?」
4号車内にある食堂へと到着した俺とシアン。食堂エリアにはチラホラ他のお客さんが集まっているが、俺達とパーティーだと現在はミル以外来ていなかった。
「ローザはお手洗いに行った。ソルは寝坊したみたいで、今ルナが起こしに行ってる」
「あ、そうなんだ」
ソルは寝起きが悪い。特に朝はダメダメだ。今までルナとソルで24時間半分ずつで生活していた名残だろう。その証拠にルナは早寝だし、朝6時にはきっかり起きる。
「皆が来るまで…一緒に景色見よ…?」
「いいな、それ。ほら、おいでシアン」
バーのように設置された椅子に座った俺は、シアンを膝の上に乗せて隣のミルと共に風景を楽しむ。どっかの林でも走っているのだろうか。早すぎてよくわからん。でもいい景色…だ、多分。
それから少しした後に、シアンがリンガルジュースをチビチビと美味しそうに飲んでいる所でローザやルナとソルが食堂へとやって来た。
あ、何か嫌な予感がするぞ。
「遅かったね。何かあった?」
「ああ、それが…8号車で1人の男が忽然と姿を消したらしいんだ」
ほら始まったよ……こういう列車ではそう言ったミステリーはよくある事だ。だがここは異世界。起こるミステリーな事件も、ガバガバスカスカの犯行なのはもはやお約束……探偵役となったどっかの主人公が自然と解決してくれるだろう。兎に角関わらない事。ここテストに出るよ。
「…行こうとしないんだな」
「行かないよぉ…犯人候補になっても面倒だし、こういうのは関わらないんだよ」
「違いがいまいちわからないわね…」
何だよローザまで…。皆俺の事を何だと思ってるんだ?まさか何か起こったらすぐに突撃するヤツとかって思われてるのかな…
何だか微妙な視線を浴びつつ、俺達は共に少しだけ遅い朝食を食べ始めた。少し時間をズラしたお陰で、食堂には俺達以外の客が僅かしかいなかったので、実質貸切状態のようだった。
□
「ふぅ…暇だな。後2日もこの列車に閉じ籠ってたら体鈍っちまうよなぁ…」
「…?どうしたの?パパ」
「ん~?いや暇だな~ってさ。なんだか体動かしたいなって」
俺の呟きに、俺の膝の上で絵本を読んでいたシアンが顔を不思議そうに上げる。こういう列車旅行はその日常とは異なる日々を楽しむのだが、今回は旅行ではないし、体1本で生きているこの異世界だと体の鈍りは命取りだ。
『いくらこの列車が高級思考つったってジムは無いしなぁ…まあ異世界だから当然っちゃ当然なんだけど』
筋トレしようにも、個室はシングルベッド1つ分の広さしか無いので、あまり派手な事は出来ない。
「う~む仕方無いか。うしっ!シアン、俺部屋の外にいるから、何かあったら呼ぶんだぞ?」
「…?うんっ!わかった!」
シアンの許可を得た俺は、最後にシアンの頭を撫でて部屋の扉を開け、廊下へと出た。そしてそこで俺は壁倒立し、そのまま上下に腕を動かしていく。体の全体重が腕に集まり、いい筋トレになる。家に引きこもっている皆さんはやりましょう?やれ(豹変)
「……何やってるんですか」
「え?誰?」
壁倒立腕立て伏せを丁度50回越えた所で、突然知らない人から声を掛けられた。
綺麗な金髪を1本にしてポニーテールにしている女性。青と白のドレスを身に纏っているが…良い所の娘さんだろうか?俺には逆さに映ってるけど。
「何でこんな所で筋トレしてるんですか…」
「いやまぁ……体が鈍っちゃうなぁ~って…」
「変ですよ…」
金髪ポニーテールの少女は、まるで俺を不審者でも見るかのような視線を向けている。い、いやまあ確かに?こんな所で筋トレなんかしてたら変人だと思うわな。
「……あの…所で質問なのですが、8号車で起こった事件はご存知ですか?」
「あー、なんか消えちゃたんだってな?まあよくある事だよ、どうせ誰かが解決してくれるからそう考える事じゃないけど」
「何か御存知なのですか?」
不審者でも見る目付きから、今度は俺を怪しむような警戒を感じるが、俺は聞かれた事に筋トレをしながら答えた。
「御存知っつーか何と言えばいいか……勿論手口はわかんないよ?でもその消えちゃった人?は何かの重要人物で、その上死んでるだろうな」
何事も無いようにそう言うと、またも彼女の目付きが変わる。その目は怪しむ目から変わり、まるで人殺しでも見るような嫌悪と警戒、そして恐怖を感じた。
「そう…ですか。貴重なご意見、ありがとうございました。では私はこれで」
「え?ああ…うん?」
最後まで警戒色の強いまま頭を下げた少女は、後続車両へと戻って行く。後続の人だからこの事件が怖かったんだろうな、きっと。
よくわからない少女と出会ったが、その数分後には忘れて筋トレを完了させたアキラは、汗をシャワーで流した後にシアンと共に部屋で遊ぶのであった。
はい、イベントスタート。
今後出ないであろう設定。
寝台列車・青星は、全9車両となっており、空間拡張魔法が施されているので、9車両以上の広さを持ちます。1車両につき、トレイ、シャワー、食堂に売店+12の個室となっています。
先頭車両は2階建てとなっており、2階は全面ガラス張りの展望室となっています。また、全車両は強い魔物避けの効果を持ち、安全な列車の旅を楽しめる、ミチオと言う人物が十数年前に考案した列車となっています。




