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290話:認めない

ギリセーフ

「あがッ……!!あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“ッッ!!!」


アキラが書庫で無数の本を読み漁っている頃と同時刻。精霊国シルフィールから遠く離れたとある廃村。その朽ち果てた村の家で、苦痛の声を上げる者がいた。それは本来の天道明星(てんどうあきら)から分離したもう1人の黒いアキラだった。


「まあまあまあ、落ち着きなってアキラ」


「あ“あ“あ“あ“あ“…ッ!!うるさい…!黙ってろベルフェゴールッ…!!」


「はぁ…やれやれ、ってやつだねぇ…」


胸を抑え苦しむアキラを宥めるメランコリーだったが、彼は血走った瞳のままメランコリーを睨み付けた。


「なんで…っ……なんで再生しないんだよ…!!サタン!お前の能力ですぐに再生するんじゃなかったのかッ…!」


「…回答。その理由は至ってシンプル。強力な呪いによるモノだ」


「なん、で…!!なんでなんだよ…ッ!!」


壁に凭れながら瞳を閉じているサタンは、実につまらなそうにそう答える。するとアキラは再度激痛に表情を歪めた。


「…………」


だがメランコリーとサタンが呆れ返るような醜態を晒すアキラに、唯一献身的に傷の手当てをするボロボロの黒いドレスを着た少女がいた。


「レヴィアタン…ッ……お前…俺に近寄るなと命令したのを忘れたか…!?不快なんだよ、お前のその面が…!!お前は黙って俺に力を寄越してればいいんだ─────」


パンッ!!


「五月、蝿い…」


アキラの言葉を遮って、レヴィアタンはアキラの右頬を叩く。瞳の輝きが無いレヴィアタンは、いつも以上に冷たく鋭い視線で睨み付けてそう言った。


「わた、しは…お前、の為に…治してやって、る訳じゃ…ない。()()、の…アキラの為に…やってる、だけだ…!」


「テメェ…!ふざけんじゃねぇぞ…ッ!!誰に向かって口を聞いてると思ってんだクソがッ!!」


何度も見てきた光景に、誰1人として言葉を返そうとしない。そんな状況の中でも、本物のアキラに何かあってはいけないという一心だけで、レヴィアタンは嫌いなもう1人のアキラの治療をただ黙って再開した。





「おっかしいなぁ…なんでだろう、今のアキラは完璧の器の筈なのに……」


レヴィアタンがアキラの治療をしている中で、1人古びた家から出たメランコリーは、空に流れる雲を木陰から見つめながらそう呟く。


『弱い感情を全て捨て、誰が相手だろうと邪魔になる者は必ず消す…そんな存在が今のアキラの筈なのに……何で僕達悪魔の完全なる器、“悪魔王“にならない?』


身体能力及び戦闘センスなら僕達の力が無くても小国程度の英雄なら殺せてしまう程のポテンシャル。だが今のアキラは悪魔との適性率が並の人間以上に低い。


「一体何故……今のアキラは全ての人間の欲を固めたような心を持っている…本来なら悪魔との適性率が飛躍的に上がる筈なのに…」


思い描いていた道筋とは大きく外れたアキラの姿に、メランコリーは懐疑の表情を浮かべる。

メランコリーの本来の道筋ならば、既にアキラは“強欲“を殺し、悪魔を統べる王となっていた筈……それなのに“強欲“は予想以上の成長を見せ、対してアキラは予想以下の成果を遂げる。


「……まだ様子を見る必要がある…かなぁ?」


誰に言うでもなくそう呟いたメランコリーは立ち上がると、再度アキラが体を休める古びた家へと向かった。





「……誰だ貴様」


「あれ、マジで?完璧に隠蔽魔法出来てた筈だったんだがな」


そしてアキラ達とは遠く離れた違う世界…通称“魔境“。そこではクリークス家長男であり、ミルの兄であるコル・クリークスはとある場所へと斬撃を飛ばすと、そこから黒髪にオレンジ色をした青年が現れる。


「この俺の稽古を遮るという意味は…分かっているだろうな?」


「うわ、こっわ!」


氷のような冷たい視線で邪剣・禍雨(まがさめ)レイニングネブラを向けたコル。それだけでも伝わる程に鋭い闘気を放つが、そんな闘気をモノともせずに茶化すように笑う青年。


「へぇ~、それが水の邪剣か。主と似て鋭い気配だなぁ」


「…!成る程、貴様が噂に聞く聖剣や邪剣の主を襲撃しては奪っているという男か」


「正解。んじゃ自己紹介する必要も無いだろうし、始めよっか。一応聞くけどさ…その邪剣、俺にくれないかな?」


「ふざけるな」


「だよねぇ~。ま、そうなるって分かってたんだけどさっ」


コルは鋭い視線を強め、警戒の強めていく。そんな中でも黒髪の青年はケラケラと笑いながら1人納得すると、異空間に手を突っ込むと2本の剣を取り出した。

1本は金色の輝きを放つ邪剣・黎雷界(れいらいかい)ヴロンディボル。そしてもう1本は、、


「…!?貴様…!それをどこで…ッ!」


「ん?あーこれ?確か……あ、そうそう、ルミナス?って国を襲撃した時に灰色の髪の毛をした娘から奪ったんだよ。丁度君の髪色と同じだったかな」


黒髪の青年が手に持つもう1本の剣。それは今彼が対峙しているコルの実の妹である、ミルが持っている筈の聖剣・銀零氷(ぎんれいひょう)グレイシャヘイルだった。


「奪っただと…!?そんなバカな…!アイツが…ミルが貴様のような男に敗北したというのか…ッ!?ありえん…!」


「ありえん、って言われてもな。俺って結構強いんだぜ?別に聖剣持ってる奴が束になっても負けねぇし。だからこうして沢山の聖剣や邪剣を持ってるんじゃないか」


青年は鼻で笑いながらそう言うが、コルの耳には届いていなかった。


「…………けるな…!」


「え?何て?聞こえないんだけど」


「ふざけるな…!!」


「……は?」


突然激昂したコルに、思わず声を漏らしてしまった青年。彼には何故コルが激怒しているのかがまるで分からなかった。


「貴様のような男にミルが敗れただと…!?そんな事ある筈が無いんだ…!アイツを越えるのは俺だ…!お前のような男が先にミルを越えるなど俺のプライドが赦さんッ!!」


「はぁ…?…………あー、めんどくさ。つまりさ、戦うって事でいいんだよね?まあ拒否権なんか───与えないんだけどさッ!!」


音を置き去りにする程のスピードで迫る青年。黎雷界の力もあり、加速されている青年は確実にコルの首を落としたと思った。


「───────ガハ…ッ……!!」


「どこを狙っている。遅いぞ」


青年が落とした筈の首が突如水となって消え去る。そしてその代わりに青年の腹に突き刺さる剣と、背後からするコルの声。


『バカな…ッ!俺のスピードを越えるだと…!?』


不味いと判断した青年は、瞬間移動のスキルを使ってコルから距離を取り、腹部を再生させる。


『傷自体はどうとでもなる……だけどアイツはヤバイ…!今まで1番強い剣士だ…ッ!』


焦りを抱く青年。

だが同時に高揚感を抱いている事に気が付くと、彼はゆっくりと笑みを浮かべた。


「この程度で終わるなよ。お前はこの俺がこの場で消す」


「あはは…!上等じゃん…!」


そして人がいない辺境の地である魔境で激闘が始まる。だがそこ戦いを誰も知らず、誰かに語られる事も無い。

魔境は今アキラ(本体&偽物)がいる世界とは違います。反転世界のような場所です。魔物…のような怪物がウヨウヨ出てくるって設定です。因みにビジュアルは気持ち悪い設定。

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