表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/392

284話:厨パ疑惑

お休みした分多め。長くて迷惑だったらすまない…!

「うおおおおおお!!?」


「あははは!」


ただいま突如擬人化したシアンの両手を握りながら地面に向かって落下中の俺は、そのふたつの事で混乱しつつ、この状況から逃れる方法を考えていた。


「えへへっ!久しぶりにパパの力になるよ!えいっ!」


「うおっ!?おお……」


眩しいくらいにニッコニコのシアンは、自分の背中から美しい羽を生やすと、そのまま羽をはためかせて落下速度を落としていく。蝶の羽だってのに凄い耐久力…流石異世界。

そしてそのまま俺とシアンは無事に地上へと着地した。さてさて、この後が問題なんだよなぁ…


「うわ…もう来たよ……シアン、危ないから少し向こうに行ってて」


「いや!」


「ええ……」


俺達に群がってくる冒険者や兵士達を前に、シアンに危害が加わるかもしれない。だから少しの間隠れててもらおうと思ったんだが……シアンは俺の太ももにくっついて離れようとしない。セミみたいになってるぞ。


「君!大丈夫だったかい!?」


「え、ああ…まぁはい」


主に冒険者達を指揮していたエルフのように耳の長いおじさんが声を掛けてくる。どうしたものか……色々めんどくさそうだ。


「そうか、それは良かった。それで…その子は?突然空に現れたように見えたが…」


「え~っと……」


「ぼくシアン!パパの子だよっ!」


おい待ってくれ、今はややこしくなるから喋らないでくれよ!皆さん困惑してらっしゃるから…!それに少し離れた所で見ているミルが凄い顔してるから…!


『どうすっかなぁ…この状況』


シアンの口を軽く抑えながらどうするか考えていると、人混みを分けてこちらにやって来る者がいた。それはベリタスであった。


「待ってくださいギルドマスター!恐らくその子はミラージュバタフライの背に乗っていた、或いは捕まっていたんじゃないでしょうか」


………は?

それゃ…ちと無理があるだろ…


「そして突如ミラージュバタフライが消えたのは、ミラージュバタフライの特徴である幻影を使って逃げたのでは?」


「ふむ…確かに突然消えた理由はそれで通るが……この子が突然現れた事は説明がつかない。この子は本当に突然現れたのだから」


そらみろ、ガバガバ過ぎてダメじゃないか。そもそも何でこいつ庇ってくれてるんだ?しれっと俺とそのギルドマスターと呼んだ男の間に入って来たが……


『理由が全くわからん。なんだか怖い……ん…?これは…』


──ここは俺に任せてくれ。


ベリタスの指からなんかそう言葉が出ていた。どうやってんだ、それ。HU○TER×HUN○ERで見た事あるような……

それは兎も角、ここはベリタスに任せて俺とシアンは退散する事にした。もっとも、彼に任せるのは少し心配だが。





「ふぅ…なんとか切り抜けられたな」


あの場をベリタスの任せた俺は、シアンの手を引いて安定の路地裏へとやって来ていた。

シアンは変わらずニコニコとしながら俺の太ももに抱きついている。そんなシアンの頭を撫でつつ、息を整えていると、、


「その子…本当にアキラの子なの?」


「うわあ!?ビックリした、ミルか…驚かさないでくれよ」


真後ろから突然ミルの声がしてビビった。彼女の表情はどこか気が気じゃないといった顔で、質問に早く答えろと言わんばかりの眼で訴えていた。


「んと……少しややこしいんだが、シアンはあのミラージュバタフライで、シアンが産まれた瞬間から育ててるから一応俺は親…って事になる。だから──」


「血は繋がってないんだね?」


「そ、そういう事だな」


凄い食い気味のミルに、少し引きながらも俺は肯定した。するとミルは安堵したかのようにホッと胸を撫で下ろした。


「一先ず、シアンが人間になったのは理解した。でも…その格好は色々と不味いと思う…」


「確かにな。俺もそれを思っていた所だ」


シアンの今の格好は、俺の来ていた上着を着せているだけ。人間になったのはいいが、服までは自動的に生成されないらしい。まあその辺は俺も同じだ。以前もアル・セルベリウスと戦った時も服全部燃えたした。お陰で俺は大きな葉っぱを体を巻いて国に入るというハメになった。当然職務質問付きで……



「取り敢えずボクはローザ達と合流する。だからアキラ達はここで待ってて」


「ん、分かった」


俺が頷くと、ミルは駆け足であの人だかりへと向かっていた。

そんな後ろ姿を見送った俺は、静かにシアンへと視線を送った。


「…?なぁに?パパ」


「いや…シアンお前……オスなんだな」


「うんっ!」


「そっか……うん、まぁ…それはそれでいいか」


シアンにはその……()()()()()()()。アレが。まあこういう場合の殆どが女の子って決まってるから少しだけ驚いたけど、ショタも人気だし、何よりシアンが可愛いからOKだ。


「うちの息子(シアン)の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない………なんてな」


クスッと小さく笑いながら、俺はシアンと共にミル達が戻ってくるのを静かに待った。





「と、兎に角っ!今は逃げていったミラージュバタフライよりあのアルバナの死骸をどうにかした方がいいのでは…!?ほら、Sランクの魔物だから素材も貴重品ですし…!」


「ふむ…確かにそうだな。あの子については後に調べる事としよう」


俺の話術によって、スロウさんの目的を反らす事が出来た。なんだかスロウさんの顔が根負けしたかのような表情だったが……気のせいだな!


「…そう言えばクリンの姿が見えないな。怪我してるんだから動くなって言ったのに…」


いなくなったクリンを探す為に辺りを見渡すと、長い列の先頭でクリンの姿を見つけた。どうやこの列はアルバナやミラージュバタフライとの先頭で傷を負った者が並んでいるようだ。


「あっ!おーいベリタス!こっちこっち!」


俺の視線に気が付いたクリンは、治療中だというのに元気に手を振っている。治癒してくれてる子、少しだけ困った顔してんぞ。


「彼女が無償で治してくれるって言うからさ!私も頼んだんだよ!」


「へぇ、無償でか。献身的なんだな」


クリンの言葉に耳を傾けつつ、治癒している黒髪ロングの少女へと視線を向ける。

彼女は色白で、ゴスロリみたいな黒いドレスを着ている。背筋も延びていて、顔立ちもいい所を見るに、どこかの貴族の娘だろうか。


「…別に。ただ傷付いている人がいたから治癒しているだけよ」


「ふーん、優しいんだな」


「だ、だからそんなんじゃないってば…!」


俺がそう言うと、彼女は照れたのか頬を赤らめて顔を背ける。ツンデレってやつか。初めて見たが、中々可愛らしいな。


「あっ!いたいたっ!おーいローザ!ってうわ!凄い行列だねっ」


初のツンデレを堪能していると、今度は長いブロンドヘアーを編んでいる少女がやって来た。こちらの子も容姿が整っており、可愛らしいという印象を抱く。


「それにしても君っ!さっきの攻撃スゴかったねっ!私ビックリしちゃった!」


「別に大した事じゃないさ」


「またまたご謙遜を~!」


黒髪の子とは打って変わって、こっちは親しみやすい明るい接し方だ。なんだがクラスのカーストトップだった鈴北さんを思い出すな…金髪だし。


「お、長い列だと思ったら姉さんとローザだったのか。2人ともアキラとミルを見なかったか?凄い速度で走ってったから置いてかれてさ…見失っちゃったよ」


「んーっ、私も探してるんだけどいないんだよねっ。流石にまたいなくなったりとかはしないだろうけどねっ」


なんだか次から次に人が来るな…

今度やって来たのは銀髪のイケメン。彼が姉さんと呼んでいたって事は、このブロンドヘアーの子と銀髪の彼は姉弟なのか。よく見れば2人とも一部メッシュが入っているな。


『イケメンと美少女の姉弟か…遺伝子ってズルいな。………あれ、あの銀髪の彼が背負ってる黒い奴ってスナイパーライフルじゃないか?』


遺伝子に嫉妬していると、銀髪の彼が背負っている黒いスナイパーライフルに目線が止まる。その形状はまるで現代の銃のようだが、メカメカしくてゴツい。こういうのは近未来と言うのだろうか。


『…!もしかしてアルバナの時に狙撃してたのって彼なのか?』


もしそうなら凄い狙撃術だ。人間のレベルを遥かに越えている化物……


『この人数の傷を完全に治癒出来るローザと呼ばれていた黒髪の少女、アルバナの進撃を食い止められる威力を何度も放てるブロンドヘアーの少女、凄まじい狙撃術と現代以上のスナイパーライフルを所持する銀髪の青年……なんだこのパーティー…強すぎるだろ。もしかしてSランクの冒険者か?』



「皆見つけた。アキラの所に行こ」


「少し待って、ミル。この人の治療で最後だから。………よし、行きましょうか」


「あ、ちょっと待ってくれ!」


またまた誰かがやって来たと思ったら、その子は俺の知っている人物だった。

その人物とは薄灰色の髪色に、長い三つ編みをした少女、ミル・クリークスだった。

思わず呼び止めてしまったが、彼女は俺の顔をジッと見つめて黙る。


「お久し振りです、ミルさん」


「…………」


「えっと…?」


「………………………………はっ」


俺の言葉に答えず、ただ黙ってジッと凝視される時間が暫く続いた。彼女は首をコテンと倒し、何かを考える顔をした後にハッ!と思い出したかのように口を小さく開ける。


「ベリタス・ブレイブ……だったよね?久しぶり」


「はいっ…!勲章式以来ですよね…!」


「ん、そうだね」


彼女は俺と同じく聖剣に選ばれた人物であり、その強さは折り紙つき。若くして六剣という肩書きを背負った彼女はまさしく才女であり、俺の憧れている人物の1人でもある。


「それじゃあボク達はもう行くから。じゃあね」


「えっ!?いやもう少しお話を───」


もっと彼女とお近づきになりたい俺は、足早に去ろうとするミルさんを止めようとしたのだが、、


「ちょっと!ミルさん困ってるじゃないの!」


「ク、クリン…!でも俺ミルさんともっと仲良くなりないんだよ!」


そして彼女と本気で打ち合いをしたい。

そう思っていたのだが、クリンは少し表情を暗くして口を開く。


「ミルさんは…もう昔みたいに本気で戦えないわよ……」


「なんでだよ」


「……ミルさんの腕、見てないの…?」


重い口調でクリンがそう言った所で、俺は漸く気が付いた。ミルさんの右腕が失くなっている事に……

俺はなんて失礼な事を……興奮のあまり見えていなかった。


「ごめんなさい、俺……」


「別にいい。これはボクが弱かったせいだから。それじゃあね」


それだけ言うと、ミルさんはローザ達を連れて今度こそ行ってしまった。

その背中を静かに見送った俺は、ある事に遅いながらも気が付く。


『さっきミルさん……アキラの所に行こって言ってたよな?』


アキラという言葉を聞いてまず思うのが“嫉妬“のテンドウ・アキラだ。


「まさかあのアキラなのか…?………いやまさかな。あのミルさんがそんな奴といるわけ無いか」


そう1人納得した俺は、元気になったクリンと共にアルバナ討伐の報酬を受け取るべくスロウさんの元へと共に向かった。

はい、ベリタスとのお話はここで一旦終わりです。次回からは本格的にアキラ強化に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ