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283話:想いよ届け

「ちょぉぉぉおっと待ったぁぁぁッ!!」


自分でもうるせぇと思うくらいの声量で叫んだ俺は、空を埋め尽くすかのような大きさで羽ばたくミラージュバタフライへと視線を送りつつ、再度叫ぶ。


「ソイツには手を出さないでくれ!!頼むッ!!」


俺はこの場いる全員に攻撃しないでもらう為に、喉が痛みながらも懇願する。

何故魔物相手にここまで必死になっているのか、それも全て空にいるミラージュバタフライが原因だった。



それは遡る事数分前。


「…!アイツ…!ブレスで一帯を吹き飛ばすつもりか!?」


ソルか完成させた超遠距離用銃。通称ペネトレイトで密かにベリタスの援護をしている時だった。ピンチに思ったのか、アルバナは全身に流れるマグマを口へと1つに集め、巨大な光線を地面に放とうとしていた。


「んな事させねぇーぞ!!」


ダンダンダンダンッ!!と4発の連射でアルバナの攻撃を中断、または時間稼ぎと思い連射した。[変則射撃(へんそくしゃげき)]のスキルを使い、建物への損傷を減らしつつアルバナの口元へと弾丸を全てヒットさせる事に成功した。

そして俺が作った時間の間に、ベリタスはよく分からない大技でアルバナの首を切り落とした。もう全部アイツ1人でいいんじゃないかな?


「ふぅ……神経使ったわー…」


「ふふっ、お疲れ様」


「それで、どうだった?ペネトレイトの性能は。予想通り高出力でレールガンを放っても砕けなかったが、使用者からは何かあるか?」


ミルの労いの言葉を受け取りつつ、ソルの質問へと答える為にペネトレイトを両手に持ち、見つめながら答える。


「火力は文句のつけようが無いぐらい最高だったよ。だが問題は手ブレだな。俺には[変則射撃]っていうスキルがあるから軌道修正出来るが、他の奴が使ったら辛いかも。あ、後はスコープもあると便利だな」


「スコープ…?……あぁ、双眼鏡のような物だな、理解した。しかし反動か……威力を高めた分どうしてもそこがネックになってしまう…。今後の改善点として受け取っておくよ」


「頼むわ、ソル」


真面目な顔でそう言ったソルにペネトレイトを手渡すと、彼は早速いろんな箇所を確認している。使用による損傷などを調べているんだろうか……頭の悪い俺にはよく分からない。


「んじゃローザ達も心配だし向かうと…………え…?」


ローザとルナが無事かどうかを確認するべく、アルバナの死骸がある方へと歩こうとした時だった。視界に映ったバカデカイ蛾……いやあれは蝶…か?その蝶はアルバナがいる場所で滞空すると、その区域を飛び回る。ここからはかなりの距離があるというのにあのサイズ……いったい拏何十…いや何百mあるだ?


「なんだかあの蝶…ミラージュバタフライみたい。それにしては大きすぎるけど…」


「言われてみれば…………ッ!ミラージュバタフライ!?」


「あ、アキラ…!?」


突然走り出した俺に驚くミルとソルを置いて、俺は全速力で駆け出した。

ミラージュバタフライという魔物と、そしてあの独特の羽模様……あのステンドグラスのような綺麗な羽模様をしたミラージュバタフライを俺は知っている。

もしかしたら、そんな思いを胸に、俺は全速力で走り続ける。ベリタスや他の者にあのミラージュバタフライを殺されない為に、、





そして今に戻る。

俺は誰も動けないような緊迫した声で叫んだ事で、誰1人として動く者がいない。だがそれも時間の問題だ。ミラージュバタフライの危険性を知っている者ならば、間違いなく上のミラージュバタフライを……いや、俺の相棒であるシアンを殺されてしまう。そんな事、絶対にさせてはいけない。


「シアン!!俺だ!アキラだよ!!分かるか!?」


「~~~~~!!!!」


俺は大きく空にいるシアンに向けて手を振ると、シアンは金切り音のような高音で鳴いた。俺と一緒にいた頃では出さなかった高音に驚きつつも、俺は言葉を続ける。


「大きくなったな…!俺ずっとお前の事が気掛かりで……死んじゃったんじゃないかって心配してたんだ…!でも無事で本当に良かった…!」


「~~~~~~!!!!」


俺の言葉に返しているのか、シアンはまたしても高音で鳴く。それは耳が痛む程の高音であり、とてもじゃないが友好的な鳴き声とはとても思えないが……大丈夫だよな…?こういう再開って向こうは忘れないのがお約束…だよね?

そもそも蝶がどうやって鳴いているのかという疑問を胸に抱きつつも、俺はシアンの様子を窺っていると、、


「危ない、メイセイ!!」


「…!?うわああ!?」


たが突如俺はベリタスによって押し飛ばされる。何事かと思う前に、俺は目の前の光景を見て絶句した。

俺が先程までいた場所に突き刺さるシアンのストローのような吸収管。それは確実に俺を殺しに来ていた。ベリタスが俺を押し飛ばさなければ今頃は……


「バカが!何ミラージュバタフライを刺激してんだお前!!」


「いやアイツは俺の…!」


「訳の分からない事を言ってないで剣を抜け!アイツは魔物で、()()()()なんだ!!」


「…!」


激昂しているベリタスの言葉に、俺は何も返せない。そんなバカな……シアンが俺を忘れたっていうのか…?産まれた瞬間からずっと一緒だったのに……


……いや、俺は“強欲“と出会ったあの日、シアンは別れてしまったんだ。お互いがどこにいるかも分からないような状況で、俺は心配はすれど探すまではしなかった。それがきっとシアンには裏切られたと思ったのかもしれない。もうアイツの中では俺は……ただの一人間でしかない。


「…………」


ベリタスを始めとした冒険者達や兵士達はシアンに攻撃を開始した。響き渡る爆発音と悲鳴。シアンも同じく、地上にいる人間や精霊達に向けて攻撃を開始した。

俺はその様子をただ黙って傍観していた。無理だ……俺にはシアンを倒す事が出来ない…


「俺が……責任を持って殺すべきなのか…?」


あの日卵を持って育てたのは俺の選択だ。全ては自分の為であり、シアンの事もシアンの親の事もろくに考えずに取った行動。それがシアンを育てる事だった。

なら最後まで責任を突き通すべきなのか…はたまた最後まで無責任に自分の都合を通すのか……


「アキラ。前にボクが言った言葉…覚えてる?」


「え…?」


自分の考えに答えを出せないでいると、背後からミルがそう言いながら俺の隣に並ぶと、彼女は俺の目を真っ直ぐと見ながら告げる。


「“人間を襲うような化物になったら、ボクが駆除する“……前にそう言ったのは忘れた…?」


「…っ!ま、待ってくれ…」


ドクンッ……と心臓から嫌な音が聞こえた。

汗が止まらない。嫌だ…シアンが殺されるなんて絶対に嫌だ…!シアンには生きていてほしい……自分の都合だと罵られてもいい、シアンは悪くないんだ…全部俺が悪いんだ…!


気付けは俺はミルの無い右腕の袖を掴んでいた。その手は震えが止まらず、息も荒くなっていく。


「……アキラは…どうしたい?」


「…!俺は……シアンを殺されたくない。無茶かもしれないけど…直接シアンに会いに行く…!それでダメなら……その時は俺も覚悟を決めるよ」


「ん…!わかった。ならアキラ、3秒後にジャンプして」


「え…?あ、ああ…分かった」


優しく微笑みながらそう言った言葉に戸惑いつつも、俺は言われた通り3秒後にジャンプをした。


「[氷冠(ひょうかん)]…!」


「ッ!!?マジかぁぁぁぁ!!!!」


突如ミルが放った高速[氷冠]によって腹部を強打した俺は、そのまま威力に乗って上空へと飛ばされる。物理法則ってなんだろう。

だがそんな異世界パワーによって、俺はシアンがいる上空へと到達。そのまま俺はシアンの背中へと飛び乗り、再度語り掛ける。


「お前の事をずっとほったらかしにしてたのは本当にすまない…!言い訳はするつもりもない……俺の事を忘れていようが、憎んでいようが構わない!!だから今は逃げてくれ!!ここにいちゃダメなんだよ…!ベリタスがいる今だけは…!」


アイツには絶対に勝てないように設定されている。どれだけ強い魔物だろうが、必ずアイツの功績として残す為に世界から消される。


「~~~~~~!!!!」


「うるさっ…!!このっ…!分からず屋がァッ!」


耳の穴を指で閉じても脳内に響き渡るシアンの高音に、俺は耳から血を出しながらシアンの頭部へと走る。

そしてそのまま俺はシアンの頭に触れると、[精神干渉(せいしんかんしょう)]を使用して俺の意識や記憶などをシアンの脳に直接ぶつける。これも本来の用途では無いのだが、微かな希望を抱いてこのスキルを使用した。


「~~~!!??」


「覚えてるか、シアン…!俺とお前が初めて会ったあの日の事を…!初めてお前を見た時俺は毛虫だったから怯えてたよな」


クスクスと笑いながらシアンに語り掛ける。俺の記憶をシアンにも与えながら、優しく言葉を続けた。


「シアンのお陰で何度も命拾いしてさ……いつの間にかお前の事を気持ち悪くなくなってたんだよな…懐かしいって程前じゃないの、凄く懐かしく感じるよ……」


「~~~っ…!」


「どうか思い出してくれ………それが無理なら思い出さなくてもいい、だけどどうか…!どうかここから逃げてくれ…!シアンが殺される所なんて見たくないんだよ……」


「─────!!」


強く願いを込めた俺の言葉に、シアンは体を震わせる。するとその瞬間、シアンの体が光輝く。その光はとても目を開けてはいられない輝きを放つ金色の光。


「一体なんなんだ…!?────うおおおおお!!?」


やがて光が収まった所でゆっくりと瞼を開くと、なんと俺は落下していた。

俺は確かにシアンの背中に乗っていた筈だったのだが、これは一体どういう事なんだ!?


『ヤバい…!今の俺には翼は勿論、飛行能力なんか無い…っ!』


かなりの高さからの落下だ、これは着地は不可能……落下して内臓破裂で死亡だなんて絶対に嫌だぞ…!

だがどうすればいい…![終雪(しゅうせつ)]を使えばどうにかなるだろうか……いや不可能だ。今の俺じゃ[終雪]の上位技は使えない。


「……?」


……さっきから気になっていたんだが……なんか俺の手が暖かい。それに何かに握られているような気がするんだが…


「……え、君……誰?」


「えへへっ!」


「え、怖いんだけど!?」


俺の手を握っている者へと視線を向けると、そこには俺の両手を掴みながら、俺と同じく落下している子供がいた。

見たところ5歳から7歳だろうか……その子は俺の手をニギニギとしながら嬉しそうに笑っている。凄く怖いんだけど!ホラーなんだけど!!


「だ、誰っ!?」


「ぼく、シアン!やっとパパとお喋りが出来るっ!」


「……ええええええええ!?!?」


可愛らしくニコッと無邪気に笑った子供は、なんとあろうことかシアンと名乗った。

異世界ではあらゆる生き物、それどころか物まで擬人化する世界だから、もしかしたらと考えてはいたが……まさかシアンが擬人化するとはなぁ…


その後俺はお祭り男のような絶叫を上げながら、ニコニコと楽しそうにしているシアンと共に落下したのであった。

仕事の都合上、明日は絶対に投稿出来ないと確信しています……ごめんなさい。

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