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282話:アルバナ討伐戦

最近魔物の声に困ってる。

だから納得してないけど長い咆哮で誤魔化してます…

「ギヤアアアァァァァアアアスッッッ!!!!」


全身に流れる蒼い溶岩から漏れでる光線が地面を抉り、近隣の建物を粉砕する。

その無数の光線も厄介だが、それ以上に厄介なのがアルバナ自身が放つ熱だ。


「立ってるだけでダメージを受ける…!それに生半可な攻撃じゃ奴には届かない…ッ!」


装甲であった鱗を飛ばしても尚、俺の斬撃がろくに効かない。熱で…いや、あの蒼い溶岩で自身を包む事でその身を守る。


「あの蒼い溶岩をも越える攻撃…!神剣絶技・陸の型[伊邪那岐(イザナギ)]ッ!!」


下から上へと剣を振るうと、黄色い光の光線が超高速でアルバナへと突き進む。

俺が習得した神々の絶技が籠められた神剣絶技。この中でも最速の剣技であり、高威力の[伊邪那岐]


「よし!効いてる!!」


あの蒼い溶岩さえも弾き飛ばす威力の[伊邪那岐]は予想通り通用した。微量ながらも流血させる事が出来た。

この調子で畳み掛けようとした時だった。



「ギヤァァァァァアアア!!!!」


「な、なに…!?今一瞬アルバナの体に矢が刺さったように見えたけど…」


「ああ…一瞬で燃えてしまったが……一体どこから狙撃を…?」


クリンの言葉に頷いた俺は、放たれたであろう方角へと視線を向ける。だがその方向は高い建物が並ぶ商業地であり、障害物が多く、矢を射る場所が無い。だからこそ不可解だ。


「一体どこから……───あれは…!」


その不可解な射撃に目を細めていると、建物の間を縫うように放たれる矢が見えた。その軌道は通常では不可能な動きであり、アルバナを目指している生き物かのように、アルバナの傷がある部分だけを的確に狙う。


『一撃一撃は弱い。だがなんだあの弓術は……的確にアルバナの傷だけを狙って微量ながらもアルバナの嫌がる箇所を射っている…』


相当な技術が無ければ不可能な弓術。そしてそのお陰でアルバナはその方向へと僅かに警戒をしているのが分かる。

これはチャンスだ。


「もう一発…![伊邪那岐]ッ!!」


俺はその矢の援護にあやかりつつ、追撃に再度[伊邪那岐]を放つ。そしてそれと同時に神剣絶技・壱の型[天照大御神(あまてらすおおみかみ)]を使用して、この区域一帯の異常を全て無かった事へとして兵士達が動けるようにする。


「ありがとうベリタス君。これで全員動く事が出来る!!───この機会を逃すな!アルバナを仕留めるのだッ!!」


この場を仕切るギルドマスターであるスロウさんが冒険者達へとそう指揮を飛ばすと、冒険者達は剣を掲げて咆哮を上げて突撃していく。

その後方では魔法使いなどが詠唱を開始し、弓を得意とする者は俺の放った攻撃で出来た傷や足、目などを狙って狙撃する。


畳み掛ける為にこの場いる全員が一致団結として全方向からあらゆる攻撃手段を取る中で、城壁前一帯に突如巨大な爆発音が響き渡った。


「嘘だろ…!」


この場の時間がまるで止まったかのように、一瞬音が全て消えた。冒険者や兵士達は勿論、アルバナでさえその動きを止める事態が起こった。


何かがアルバナの右肩にある肉を大きく抉った。理由は勿論として、誰がやったのか、何が起こったのかは誰1人としてわからない。その出来事から1秒もしない内に、真っ先に理解したアルバナが悲鳴のような咆哮を上げる。


「まただ…!またどこからかわからない狙撃をされてる…!」


「味方なのよね…?」


「…分からない。だが今の所狙っているのかアルバナだけだ。この波に乗らない手はない!」


現状敵味方か分からないが、アルバナを敵としているのはどうやら狙撃主も同じのようだ。ならこの波に乗って、アルバナを完全に討伐する。


「ギヤガガガガガガッッ!!!!」


「不味い…!あの野郎この辺一帯を吹き飛ばすつもりだ!!」


すぐさま俺も神剣絶技・漆の型[伊邪那美(いざなみ)]を放つ為の構えに入ったが、奴は全身に流れる蒼い溶岩を口へと集め、俺の動作よりも速い段階で攻撃モーションへと入ってしまった。


だがそれも狙撃主不明の援護によって、アルバナの口元へと4回の狙撃によって邪魔をする。きっとどこからか俺の事を見ていたんだろう。だがナイスタイミングの援護だ。


「これで終わりだッ!!神剣絶技・漆の型[伊邪那美]!!」


「ギヤ───────」


アルバナへと放ったその一撃は、蒼い溶岩をも越える極熱により、アルバナの首を容易く切断した。そして光線を放とうとしていた為、口に溜めていた蒼い炎が不発し、熱風と大きな爆発が生まれてしまう。

だがSランク指定であるアルバナを討伐する事は出来た。


「凄い…!凄いよベリタス!Sランクの魔物まで倒しちゃうなんて!」


「いや…今回は本当に辛かった。皆の援護があったから勝てたようなものだし」


興奮しているクリンにそう言いながら俺は地面に尻餅をついて息を整えていると、ギルドマスターであるスロウさんがこっちにやって来る。


「ありがとう、ベリタス君。君のお陰でアルバナを倒す事が出来た」


「いや俺なんか…!本当にここにいる皆の援護が無ければ無理でしたしっ…!」


そしてあの謎の狙撃主の援護が無ければ俺は死んでいた。誰だが分からないが、その狙撃主の援護があったから俺はトドメを刺せた。


「そう謙遜する事はない。君がいなければアルバナにトドメを刺す事は出来なかっただろう。改めて感謝する」


そう言って頭を下げるスロウさんに、俺も思わず頭を下げてしまう。


「しかし…何故こんな平和な国にSランクの魔物が?本来この区域に出没するような魔物じゃないんですよね?」


「ああ、それが引っ掛かるんだ。シルフィールの近くにあるグレンドス火山の噴火と何か関係があるんだろうか…。近頃この世界の様子がおかしい……世界各地で天変地異が起こり、“厄災の十二使徒“などが暴れている…嫌な予感がしてしょうがないよ」


スロウさんはそう呟くと、暗い表情のままアルバナの死骸へと視線を送る。


「だが今はアルバナの死骸をどうにかしなければな。Sランクの魔物の素材は高値で取引される。国内で討伐出来たから素材も大量に取れる為、国が動かなければならない」


バカ騒ぎしながら喜ぶ冒険者達を見つめながら小さく微笑んだスロウさんを横目に、俺はアルバナへと視線を向けた。


「────ッ!!なんだ…!あれ…ッ!!」


だがそんな時、異様な気配を感じ取った俺は空へと顔を向けた。そこにいたのは空を埋め尽くすかのように羽を大きく広げた蝶がいた。

そんなバカな…!今の今まであの巨大な蝶の気配に気が付かなかったというのか…!?


「バカな…!ミラージュバタフライだとッ…!?何故こんな北の大地に…!いやそれよりもあの個体はなんだ…!?本当にミラージュバタフライなのか!?」


次から次に問題が起こる…この国は本当に運が無いと言うかなんと言うか……

しかしミラージュバタフライという魔物は以前本で見た事があったが……


「あんなに大きかったか…?ミラージュバタフライって」


「恐らく変異種だ…!アルバナの血の匂いでも嗅ぎ付けて来たのか…!?」


成る程、変異種なのか。どおりで羽の色がおかしいと思った。1色に定められてないと凄い蛾みたいに見える。綺麗と言われれば綺麗なんだけどな、ステンドグラスみたいだし。


「どちらにしろアイツも討伐しなきゃいけないんだろ?なら俺がまたぶっ潰してやるよ」


謎の狙撃主もこの光景を見ているだろうから、また援護も入るだろう。

それに今の俺は脳内物質が分泌されまくってて最高に『ハイ!』ってヤツだ。負ける気がしない。




「ちょぉぉぉおっと待ったぁぁぁッ!!」


俺が剣を抜剣した瞬間、バカデカイ声が響き渡る。どこかで聞いた事がある声だ。

誰だったか考えていると、その声の張本人が姿を現した。


「ソイツには手を出さないでくれ!!頼むッ!!」


高い建物の屋根上からそう叫んだのは以前ギルド前で出会ったテンダキ・メイセイだった。

そしてメイセイの懇願に答えるかのように、空に滞空するミラージュバタフライは耳を抑える程の高音で鳴く。

俺は訳が分からないまま、ミラージュバタフライの高音に耐えながらメイセイを見つめた。

だぁ~れだ!(イッツピk…)

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