279話:一難去ってまた一難
前回の話はいかがだったでしょうか。個人的にかなり“なろう“系のキツさを再現出来たつもりなんですが…(笑)※貶してません。尊敬してます。
ミルに担がれて運ばれるという、【異世界かるてっと】で見た展開になった俺は、嬉しさ2割と男としての惨めさ8割を感じていた。
「そう落ち込まないで」
「いや、別に落ち込んではないんだけどさ……まあいいや、兎に角あの怪獣の所まで早く行こう」
「ん、そうだね」
俺はこの国を守りたい。それはシャルゼさんへの恩義もあるが、以前俺がこの国で暴れてしまった謝罪も籠っている。
もっとも、俺やミルは兎も角ルナやソル、ローザ達が戦う事は無いのだが、、
「バカ、そんな事言ってる場合じゃないでしょ」
「そうそうっ!やっぱり皆には笑顔でいて欲しいもんねっ!」
「そういう事だ。お前らだけにいい格好させないよ」
ほんっと異世界の人て聖人かド畜生しかいないよなぁ……ある意味白黒ハッキリしてていいんだけどさ。
「それは兎も角なんなんだよあの怪獣は…!ゴジラじゃねぇんだぞ…!?」
二足歩行型のバカデカイ魔物。その姿はゴジラを連想させる程だ。てかそう考えたらもうそれにしか見えないわ。
「そもそもなんでそんなイベントが起こるんだよ…!───ハッ…!もしや俺も遂に主人公補正が付いたのか!?」
それはとても嬉しい事だ!───あ、いや……やっぱり嬉しくないかも…。実力に見合わない敵が出てくるのはちょっとね……もうアル・セルベリウスみたいな格上とは戦いたくない。てか勝てるのか?あんな怪獣に…
──緊急連絡!緊急連絡!Bランク以上の冒険者は至急“氷のエリア“のギルド前に集合してください。並びに、“氷のエリア“内にいる方は速やかに別エリアに避難してください。繰り返します。
「冒険者達も動きだすのか……しかもB以上ならあの怪獣はどんだけ強いんだよ…っ」
街に設置されたスピーカーからアナウンスされた冒険者集合の知らせ。その内容はあの怪獣の強さ並びに危険度を物語っている。
「シルフィールはリゾートで有名だけど、国の護りは強い方……なのに国を守る障壁が削られる速度を考えるに、あの魔物はSランクに近い…!」
「マ、マジかよ…!なんでそんな怪物がこんな平和なリゾートに現れるんだ!?」
そもそもこの国は不遇過ぎる。“七つの大罪“と大天使達の戦いの次はゴジラみたいな怪獣…しかもSランク。前半は俺のせいでもあるけど、後半は知らんぞ。
「つまりあの魔物が国に入ってきたら終わりという事ね」
「ん…!そういう事になる…っ」
ミルの深刻な顔なんて久し振りに見た気がする。それほどまでに危険であるという事だ。
それはAランクをギリギリ瀕死で倒した俺が身を持って分かる。
「急ごう…!他の冒険者やこの国の兵士達と協力すればきっと勝てる!」
俺はこうなってしまった原因が1つだけ心当たりがある。もしやと考えつつ、俺達は冒険者達よりも速く謎の怪獣の元へと急いだ。
□
「ヤバいヤバいヤバい!!」
壁に近付くにつれ、段々と大きくなっていく怪獣。その全長は30mはあるのではないだろうか。その怪獣は背鰭のような場所を発光させ、口から蒼いレーザーを放つという本当にゴジラのような事をして国を守る障壁を削っていく。あまりこの世界の魔術やその類いに詳しくない俺でも分かる、あの障壁は持って数分だ。
『魔法や砲台も効いてない…!こんなの人類が勝てる相手じゃねぇだろ…!』
あの謎の怪獣には再生能力が無い。だが全身を覆っている黒い鱗が硬すぎて、ボウリング球のような鉄球もまるで意味を成さない。
俺も念のため、安全圏である国の中からレールガンを放ってみたものの、当然通らない。
「ミル、これってヤバイよな…?俺達が扱う細剣って力で押すんじゃなくて技術で勝つってのがメインだし……これ刃通らないよな…?」
「ん……正直ボク達には相性が悪い……近付いて鱗の境目を狙えば攻撃は出来ると思う。だけど……あれにはとてもじゃないけど近付けない…」
ミルの言った通り、あの怪獣と俺とミルには凄く相性が悪い。近付いて鱗の境目を狙ったとしても、先程から奴が蒼いレーザーを放つ度に放たれる熱によって近付くのはとても困難。ここが“火のエリア“じゃかなった事を本当に感謝している。
「ならルナならどうだ?」
「待ってねっ、今術式組んでるからっ!────よしっ![蒼空雷]っ!!」
ルナの放った膨大な魔力が籠められた魔法の一撃。空のように蒼い雷が怪獣へと向かい、炸裂する。だがあまりダメージがあるようには見えない。
「えーっ!!私の魔法でもダメなのっ!?」
「いや、今のルナの魔法がヤツには1番効いてた。だけど…アイツが硬すぎるんだ…!」
今ルナの放った魔法は確かに強い。恐らく人間が喰らえば跡形も無く消える程に……それは俺の左目で分かる。
「さてさて……どうしもんかな…。相手は火属性っぽいからここは水なのか?だがあの熱に水なんかぶっかけたら水蒸気がヤバいだろし……うーむ…」
俺とミルに相性が悪く、ローザは治癒魔法系統が得意であり、彼女自身はあまり戦闘向きではない。血を使った武器も、俺と同じく通らないと見ていい。そうなればルナの魔法だが、あの威力で僅かな傷しか作れないとなると、効率が悪すぎる。
どうすればいいのかわからない…そんな中、ソルが声を出した。
「このままじゃ壁を壊されるのも時間の問題だ……皆、僕に少し時間をくれ。奴の鱗を突破できる魔道具を造る…!」
「…!成る程、面白いなそれ!おっしゃ!!時間は稼ぐから頼むぜ!ソル!」
「ああ!絶対に奴の鱗を突破する魔道具を完成させる!」
ニッ!と笑みを浮かべて走るソルへとサムズアップを取った俺は振り返り、いまだ壁を破壊しようとする怪獣へと左腕を向ける。
「ミル、ローザ、ルナ、分かってるとは思うが…」
「ん、分かってる」
「皆まで言わなくていいわ」
「私達が時間を稼げばいいんだよねっ!よぉ~し!皆、行くよっ!」
俺は左手首から2本の刃を生やし、弦を張って左腕を大きな弓へと変化させる。
「[一撃必射]ッ!!」「[氷月刃]っ…!」
「[赤槍血]!」「[激流烈波]っ!」
「ズギィィィィアアアアァァァァアッッ!!!!」
4人同時に放った攻撃は、攻撃を放とうとした怪獣に全て命中し、水蒸気爆発のようなスチームが辺り一体に広がる。
今まで声を上げる事無く壁を破壊していた怪獣だったが、自身に大きなダメージを与えられた事で俺達4人へとその眼を向けた。
「ヤッバ…目が合っちゃったよ…!」
「あら、アキラの事が好きなんじゃないかしら?」
「そんなの求めてないんだけどっ!!?」
ローザの茶々にツッコミを入れつつ、俺は警戒を解く事無く新たに紅い矢を3本造り出して構える。
「ソルが戻ってくるまで、なんとしても抑えるぞ!皆!!」
障壁が破壊されるまでに、どれだけヤツにダメージを与えられるかが勝敗を分ける。
俺は高ランク冒険者の到着を待ち望みながら、3本同時に紅い矢を放つ。
ゴッズィラ(ネイティブ)を連想して?しろ(豹変)
設定。精霊国シルフィールはリゾート地として有名で、それぞれのエリアごとに施設があります。例えば氷エリアならウィンター施設や、水のエリアなら海が。風のエリアなら大自然などなど…
またこの国だけの特産品などもあり、かなりお金が回っている。




