277話:精霊族の秘薬
遅刻、だーァッ!!
魔術の力ってスゲェー!!
そんな事を突然言われても『は?』だろうが、ホントに異世界の魔術って凄いんだよ!だって全身の火傷の痛みを取り除いてくれたんだぜ!?
「流石にこんな全身大火傷で皆の所には帰れないしな、しょうがないね」
遊具が1つも無く、人気の少ない小さな公園の日陰でそう呟きながら、精霊印の軟膏を患部に塗っていく。
歩くだけでも激痛だったってのに、この軟膏のお陰で元気になりました!(個人の感想です)
しかしいくら痛みを無くす軟膏と言っても、“なろう“主人公のお仲間が使うような一瞬で回復とかは流石に無理だった。まあ塗り続けてれば治るって店の人も言ってたし、全身包帯まみれになって安静にしよう。
「さて、行きますかね」
俺は顔の火傷を隠す為に、シルフィールのお祭りの際に売られていたお面の売れ残りを着けて宿へと向かう。
道中ベリトとバルバトスに説教を受けたものの、その後は普通に脳内で談笑して帰った。
□
「遅かったね、アキラ……ぼく、心配したんだよ…?すっごくすっごく……心配したんだよ…?」
「あははは…」
宿に到着して即行ミルに捕まった俺は、人目を気にせず説教するミルと対峙していた。
ミルは特に表情は変えないものの、ロビーが尋常じゃないくらい温度が下がっているのを感じる……滅茶苦茶心配したと言われる。しかも2度も言われた…
「それに…なに?そのお面。まさかまたプラプラ歩いてたんじゃ…ないよね?」
「ま、まさかっ!!」
何をしていたかなんて恥ずかしくて言えないが、流石にそこは大慌てで否定する。
だがミルは勿論、ミルの後ろにいるルナとソルも疑いの眼差しだ。くっ…!確かに今着けているお面は少々…いやかなり愉快すぎる…!し、仕方なかったんだ…!ヒップバックやポーション諸々にお金を使ってしまったから、セール品のこのお面しか買えなかったんだよ…!
「…ミル、それくらいにしてあげて。きっとアキラは反省してるわ」
お面を取れとか言われたらどうしようと考えていると、意外にもローザからの援護が入る。ずっと柱に寄り掛かっていたのに…一体どうしたんだ?
「ローザ…!これが本当に反省してると思うの?」
「そ、それはまぁ…あんまり思えないけど……」
ビシッ!と俺の事(主にお面)を指差しながらローザにそう言ったミル。その言葉に言い返せないのか少し困ったように髪を撫でるローザ。おい、助けてくれよ…!
「それに見ろよ、あの両手の包帯!怪我なんかしてないくせにグルグル巻きだぞ!?おかしいだろ!」
「厨二魂…!」
「ほらみろ!やっぱり反省してないじゃないか!」
ソルの言葉に思わず反応してしまった俺は、包帯を見せびらかすかのように自分でもよく分かっていない謎ポーズを取る。
当然それを見たソルは、当然の言葉でローザに物申す。
「い、いいえ…きっと反省しているのよ…!───いや反省してないかもね…っ…!私が直々にお説教してあげないとダメね、これは…!」
おや…?何やら雲行きが怪しいな…
何か俺が包帯見せびらかしポーズを取った瞬間からローザは顔をヒクつかさている。怒ってねぇか?あれ…
「付いてきなさい!」
「あ、ちょっ───!!イッ…!」
包帯越しでも痛いって!!
ちょっ…!勘弁してくれ!!
□
そして連行された俺は、ローザの寝泊まりしている部屋へのやって来た。
「本当に反省してるんでしょうね?」
「は、はい…!しています…」
「………ならよし」
いやいいんかい。
なら何でわざわざここまで引っ張ってきたんすかねぇ…?
「あのままいれば、ミルからお説教を受けていたでしょ?それもロビーで。それは流石にこの宿に悪いわ」
あ、成る程ね。納得した。
「さっ、明日の事もあるし、アキラは自分の部屋に行ってなさい。私もやる事があるんだから」
「お、おいおい…!」
半ば合意に部屋から追い出された俺は、なんとも言えぬ表情でローザを見つめる。向こうからは表情なんか見えないだろうけど。てか背中も火傷で痛い…
「まあここ最近……て言っても1週間程度だけど、休みらしい休みは無かったからな…少しだけ仮眠すっかな…火傷も痛いし。はぁ…参った参った」
理解されないのは悲しいが、まあローザの為に頑張った!なんて言ったら恥ずかしいし、何より皆優しいから凄く暗い雰囲気になる。
それは絶対却下なので、結局1人寂しく自室へと戻るのであった。
□
そして翌日。
シャルゼさんの使いがやって来て、精霊族の秘薬が完成したとの事なので、早速皆で向かう事になった。
「良かったねっ!ローザちゃんっ!これで元気になれるよぉ~!」
「そうね」
明るくローザにそう話し掛けたルナは、可愛らしくスキップをしながら先頭を歩く。まるで自分の事のように嬉しそうにしている。
それに比べてローザは漸く傷の痛みから解放されるというのに、チラチラ俺へと視線を向けている。俺の単なる自意識過剰だろうか…
そして歩き続ける事数分。俺達は精霊国シルフィール内の氷の城に到着した。
今回は以前俺が1人で来た時とは違い、ミルがいるから早い。そしてすぐに応接室へと通された。
そして、、
「お待たせしてしまってごめんなさい。予想以上に仕事が溜まっててね」
「ううん、平気。それで…秘薬は作れた…?」
「勿論よっ!ほらっ!」
応接室に入ってきたシャルゼさんは、相変わらずミルと仲慎ましくキャピキャピしている。
だけど……あれ…?俺の見間違いかな……
「なぁ…ローザ、シャルゼさん……今度は小さくないか…?」
「今私も同じ事を考えていた所よ…」
何度目を擦っても、シャルゼさんが普通の人間と変わらないサイズになっている。
ミルより少し高いくらいだろうか…大体160cmくらい?兎に角以前より滅茶苦茶小さいのだ。
「お待たせ、ローザさん。これが我が精霊国シルフィールに伝わる薬……精霊族の秘薬よ」
「………ええ…感謝します」
いや良かった良かった。これでローザの傷の件は解決だ。だがまだやらないといけない事がある。
『第一にミルの腕の再生。それに続いてもう1人の俺を止める事、そして“強欲“の討伐……ドンドンハードルが上がっていくな…』
だが上等だ。
全部こなして、丸っと解決してやる。
「さぁ…腕を出して、ローザさん」
「はい…」
緑色の小瓶に入った液体をローザの腕に垂らすと、淡い緑色の光と共に痛々しい傷が塞がっていく。
「凄い……ホントにアニメみたいだ」
そんな感想が漏れ出てしまう程に幻想的な光景に、俺は鳥肌が立つ。そして本当に何も無かったかのように、完璧にローザの腕は再生した。
「うん!これでOKねっ!」
「凄い…邪剣・紫毒蛾から受けた傷が癒えた…っ」
傷が消えた本人も驚く圧倒的な治癒力。俺が塗ってた軟膏とはレベルが違いすぎる…
『でも良かった……ほんっとうに…良かった』
やべっ、涙出そうだ。ヤバイヤバイ、折角誰にも言わないでカッコつけてるのにそれはダサすぎるって…!我慢せねば。
「ア、アキラ…!」
「────な、なにかな!?」
ぐっと涙を堪えた所で突然背後からローザが声を掛けてきた。思わず声が裏返ってしまったが、なんとかギリギリ持ちこたえる。
「あ…!……ありが…とう…っ」
「…!お、おう…?どういたしまして……………え、何が?」
「何でもないわよ!」
恥ずかしそうにしながら突然お礼を言ったローザ。理由不明の感謝の言葉に思わず聞き返すと、ローザはそう言って離れていく。えぇ…?
「そうだ、アキラくん!後で大事なお話しがあるから少しだけ残ってもらえるかしら?」
「え?ああ…はい」
なんだろう?なんか嫌な予感がするんだが……
てか今俺の事君呼びした?あれ?昨日までさん呼びだった気がしたんだが…
よく分からないが、俺が頷くとシャルゼさんは嬉しそうに微笑みながら鼻歌を歌いだす。なんなんだ…?
『何て言うか……ミルもシャルゼさんもなんかフワフワしてるなぁ…』
そんな事を思いつつ、傷が癒えた事で喜び合う皆の事を眺め続けた。
ローザ、復活!!
ファンは少ないでしょうが、個人的に嬉しいです。




