266話:世界のインフレ
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「───はあッ!!」
「ギュギィィィ……」
精霊国シルフィールのすぐ後ろにある巨大な原生林。太く高い木々が特徴的で、視界は悪いが空気が旨い。そんな巨大な森で俺は稽古をしていた。
「自然が豊かなせいか魔物達もデカいな…───ッ!?危ねっ…!」
「キュエエエエッ!!」
「デカ鳥が…っ!危ねえじゃねぇか!!」
蟻の魔物を倒し終えた瞬間を狙った姑息な攻撃。それを素早く回避し、攻撃元へと視線を向ける。そこには太い木の枝に止まって見下ろすバカデカイ鳥がいた。
「キュエエェェェエエエ!!」
「上等だ…!やってやるよッ!!」
鳥の威嚇と共に動き出す両者。
デカ鳥は自身の翼から羽を投げナイフのような飛ばして攻撃を仕掛ける。1本1本が鋭利になっていて、数も多い。
『不味いな……コイツは…』
何度もやってきた剣による弾きで自身を守りながらふと思ってしまった。
──敵のインフレ
それが始まりつつある事に表情をしかめる。
現にこうして羽を弾いていても、風魔法かどうかは分からないが羽が再度俺に向かってくる。いやらしくて姑息。そしてシンプルに強い。奴が見下ろしている事を見るに、まだ本気ではないのがその証拠……
「この世界の物語が後半に差し掛かった合図……つまり世界にいる“なろう系主人公“達の強化が終わりつつある証拠…!」
右手で剣を振るいながら左太腿に付けられたホルスターからレールガンを抜き、そして舐めきった態度のデカ鳥へと発砲。
その大きな爆発音と光は一瞬にして原生林に広がり、デカ鳥に被弾する。
「ビンゴっ!…って言いたかったが…流石にワンキルは無理か」
「ギュエェェエッッ!!」
デカ鳥の右翼に当たった事で奴は怒りだし、耳の痛くなるような奇声を上げて威嚇する。飛んでいる姿を見るに、傷は深くないようだ。
怒った事で接近してくれればと思ったが…そう上手くいかない。…いつもの事だな。
「剣と銃を1つずつ持つこのスタイル、最高だな。───[氷月刃]ッ!!」
「────ッッ!!?」
銃で牽制した次の瞬間には氷の刃が襲う。
が、素早い動きはまさに縦横無尽。当たらない。1発も当たらず氷の刃も当たらない。恐ろしい程までの反応速度。
「チィ…!ふざけんじゃねぇぞ…!こっちはまだ初期段階だってのにインフレされちゃ勝てないだろうが!!」
右手に持つ剣を地面に突き刺し、もう一丁のレールガンを抜いて発砲。ただでさえ素早い連射可能となったこの銃をもう一丁扱えばどうだろうか。その結果はすぐに表れた。
「やっぱり恐ろしいな、人間が産み出した銃ってのは」
翼に複数被弾したデカ鳥はすぐに落下し、殺意の宿った瞳で俺を睨み付ける。
いくら反射神経がいいと言っても、レールガンの速度には敵わない。
「終わりだ、デカ鳥。俺を獲物と判断した事を悔やむんだな」
「ギュェエエ……────ギェェエエエエエッッ!!!!」
「んなっ…!!?─────グッ…!!」
銃をホルスターにしまい、突き刺していた剣で首を切断しようと近付いた瞬間だった。
デカ鳥は孔雀のようにその大きな翼を広げ、それをはためかせる。魔法無しであるにも関わらず、産み出される突風はまさに竜巻の如し。
「うッ…!?ぐ…ッ!!」
人間など軽々と吹き飛ばしてしまうその威力に、俺は空中で数回回転しながら後方へと飛ばされていく。
回転しながら飛ばされる最中、僅かに視線に捉える事が出来た大木。まさかデカ鳥は俺をあの大木に叩き付けるつもりか?だとしたら不味い…人間が飛ばされる威力の風であれに当たれば内臓破裂は避けられい。
「────~~っ…!舐めんな!!」
俺はその回転に抵抗せず、そのまま大木へと飛ばされていく。だが当然諦めた訳ではなく、激突する寸前の所でタイミングを合わせて大木に足を付けて蹴り込む。
「───[部位変化]ッ!!」
腕の表皮だけを刃へと変化させる。それによって腕の可動域を奪わず、それでいて腕からまるで刃物が飛び出したかのようにする事に成功。
「トドメだッ!!」
大木を蹴った事によって加速した俺は、そのまま一直線にデカ鳥の頭部へと向かう。
腕から飛び出している刃はデカ鳥の首に当たり、そのまま奴の首が宙に舞う。
「くそ…予想以上に手間取った……まだまだこんなんじゃダメだ…!もっと…もっと頑張らないと」
まだ時間はある。少しでも強くなる為に、俺は再度新たな魔物を探すべく森へと駆け出して暫くした時だった。
──…!アイボウ君、気を付けなよ。この辺にいるよ。ぼくと同じ種族がねっ……あっはは、相変わらず鋭い視線だよ、彼は。
「…?何がいるんだ?同じ種族って事は悪魔…なのか?だが俺の眼には何の反応も…」
──そうだろうねぇ。彼は狩りのプロっ!そう簡単に気配を出す奴じゃないんだ。ふふ、どうやら彼は君に興味を持ったらしい。獲物か好敵手かどうか…今の彼は見定めてる。狩猟の悪魔・バルバトスがねっ
「…っ!!いるのか、ここに…!」
俺がそう発した瞬間、強い死が俺の頭部に接近するのを感じた。いち早く察知出来た事で回避に成功した。
「ほう…今のを回避するか。流石、と褒めてやりたいがこれくらい出来なければ面白くない」
「あんたがバルバトスだな…ッ!今の攻撃、戦う意識と見た。俺自身が強くなる為に…バルバトス、あんたに戦いを申し込む!」
大木の枝に座り、小さく微笑む狩人。視認した事で漸く奴から悪魔の気配を察知する事が出来た。強さはベリト以上なのは確か。それだけのオーラを放っている。
「私に戦いを挑むとは…ククッ、やはりお前は面白い人種のようだ」
「お褒めに預り光栄ですよ」
両者の睨みが続く。
だがそんな時間は吹いた風の音と共に動き出す。両者の命を狩り取る為に、、
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場所は変わり、ホテルの1室。
そこではソルが設計図を元に、リング状の魔道具を製作していた。
「ねねっ!ソル、何してるのっ?」
「姉さん…急に入って来ないでよ、ビックリするだろ?これはアキラに頼まれて作ってる魔力保存の魔道具だよ」
「へぇ~、なら完成したら私に貸してねっ!お姉ちゃんの魔力をアキラ君の為にふんだんに盛り込んじゃうからっ!」
「それは…うーん……耐えられるかな、このリング…」
姉の魔力量を知っているからこそ少し不安なソルは、姉の魔力を入れても壊れない仕様にするべく、改良を始めた。
『おっ……雨だ。アキラの奴、大丈夫かな…』
そんな心配をしつつ、ソルは窓を叩く雨音と共に魔道具の製作を再開した。
メタく感じるかもですが、アキラはホントの意味で現代人って設定なので、インフレや主人公補正などを理解しています。




