265話:厳重な準備
改めて思うと凄いと思うな、やっぱ。うん、凄いなーと思うな。毎日投稿出来る人は。
「ふぅ…いや参った参った…」
シャルゼさんからの連続質問に苦しめられた俺は、暫くして満足したのか解放された。
凄く恥ずかしかった……自分の口で言うのってなんだか恥ずかしさが増すんだよな。
「さて…与えられた期間は1週間。その期間でアル・セリベリウスを倒し、花を持ち帰らなければ話は無し、ね……辛いな」
だが幸いな事に、武器の提供と城の書庫が俺には解放されている。そこで知識と武力を上げろという事なのだが、やはり心配が残る。正直言って怖い。
「だけど…ローザは俺の恩人だ。少しでもその恩を返したい…!───よっしゃ!やるぞ!」
頬を叩き気合いを入れ、俺はその足で書庫へと向かい出す。敵を知る。まずはそこからやらなければ始まれない。
「う~む……成る程…」
円形に作られたこの部屋は、異常に高い天井と無数の本がある巨大書庫。そこで俺は危険指定植物について調べていた。
事前調査は大事。情報が戦いでは重要と聞いた事もある。それほどまでに自身の命を繋げるかを左右する大事な事だ。
「竜に寄生し、支配する植物……こっわ…!」
山積みになっている資料本から得られた知識は沢山あった。
竜種に寄生する植物・アル・セリベリウス。それはすぐさま宿主の脳を支配し、その体を乗っ取る。寄生した体の中で繁殖させた蔓を操り、対象を捕獲し、酸によって捕食する。
また、アル・セリベリウスから30mの範囲に地面から根を生やして敵を拘束も可能。高い酸性と毒霧は、毒耐性の無い生物には致死量となる。
もう殺意の塊みたいな武器を積んでるくせして、まだまだ隠玉があるんだから恐怖ものだ。
移動速度も速いし、知能も高い。その上再生能力に魔法の使用も可能……鍛えられた騎士が10人いても勝てないと言われているそうだ。そりゃあAランクで危険指定になるわな。
「知れば知る程勝てる相手じゃないぞこりゃあ……」
やると決めたばかりだと言うのに、早々に心が折れかける。脳内では想像で戦闘を行っているが、勝てるビジョンがまるで浮かばない。あまりに力の差がありすぎる。
──ぼくも噂では聞いた事があったけど危険指定ってかなりヤバめなんだねっ。いや~やっぱこんなのに会わない為にも、引き込もって生活してる方が断然ラクだよっ。
「ちょい静かに……今考えてるから」
弱点は植物らしく火だと書いてあるが、生憎俺には魔法が使えない。適性が火だと言うのに参っちゃうよ、ホント。
しかし奇跡的にも氷も通用するのが救いだ。[終雪]の一部ではあるものの、氷系統の魔法は剣技によって擬似的ではあるが一応使える。得意の近接格闘は今回は悪手な為、回避に意識を回して遠距離からの氷の刃で……なんとなるだろうか…
──困ってるみたいだねっ?ならぼくから少しだけイイコト教えてあげるっ!あーでもどうしよっかなぁ~、こういうのってあっさり言ったらツマンナイじゃん?ならここはお約束って事でもったいぶるってのもオモシロイよね?
『ソルから渡されたこの銃は通用するだろうか……仕組みはレールガンだし、威力で考えるなら申し分無い。だが問題は一点にしかその威力が向かない事だな。再生能力もどれだけ速いのかによって話は大分変わってくるし…』
──………でもやっぱり言っちゃおうかなぁ~!?これさえあれば絶対に勝てちゃうヒントがあるだよなぁ~!!どうどうっ!?気になる?気になるよねっ??
『やはり魔法の習得を重点的にやるか…?だが1週間程度で使えるなら苦労はしない……それは剣技でもそうだが………やはりここは作戦を立てるしかないか?』
──はいは~い!大注目ぅ~!!ト・ク・ベ・ツ・ニ・♪ヒントを差し上げたいと思いますっ!ヒントは~デレデレデレデレ…!
『力量で勝てないなら魔道具はどうだ?シャルゼさんは1人で討伐しろと言っていたが、誰かの力を借りる事はダメとは言っていなかった。頭の悪い俺には作戦を立てるだけ無駄。なら魔道具ガン積みならどうだろうか…いや無謀過ぎるか?』
──………狩猟の悪魔“バルバトス“。彼の力を借りれば倒せるかもしれないよ…
「はぁ…最初っから言えよ。変に勿体ぶらないでさ」
うるせぇから無視していたらそんな事を呟いたベリト。その声は泣きそうな程震えているが、今は無視だ。いちいち構ってらんない。
「それで?その“バルバトス“っての悪魔なんだよな?お前から出てくるって事はソイツも“72柱“か」
──そうだよ……近接が厳しいってアイボウ君がぼやいてたからね、軽く提案しただけだよ…はぁ……
なにやら拗ねてるベリト。なんだよ、見た目通り子供っぽい所もあるのか。普段は憎たらしい笑みを浮かべているのに…これがギャップか?この場合は全然可愛くないけどな。
「だが会えた所で力を借りるのはそう簡単な事じゃないんだろ?どうせ。ベリトにしては良い提案だったが…生憎俺に差し出せるモノが無い…」
ベリトの場合はコウキによって瀕死状態へ追い込まれた所を、俺という依り代が偶々あったから回復の代わりに俺に力を貸しただけ。
だが狩猟の悪魔と言われてるバルバトスが負ける事は早々無いだろう。つまり力を無償で得られそうにない。
──いいんや?そうでもないよっ?悪魔の全員が何かを欲している訳じゃなんだよねっ。
「そうなのか…?てっきり俺は何かを差し出さないとダメだとばかり考えてたが…」
──あっはは!悪魔ってのはねっ?共通してオモシロイ事が大好きなんだよ。まぁ…そのオモシロ加減は悪魔個人によって変わるんだけどねっ!
面白い、か。それもまた俺には難しい話だ。今の俺はなんの面白みも無い凡人。個人によって感じる面白さは違うにしても、今の俺は本当につまらない人間だ。
「……さっきは無視をして悪かった。その…ベリト、お前も案を出してくれてありがとな」
──…!あっはは…なんだよ~急にっ!照れるじゃあないかっ。なになに、泣きそうなぼくの声に可哀想だとか感じちゃったのかい?あはは、あの日ぼくに近付いた時から思ってたけどさぁ……ほんっと甘いんだよなぁ~♪
「…っ!?うるっせ!!ああクソッ!こいつマジで可愛くねぇ!!」
──あっははは!怒った怒ったっ!もしかして照れちゃってるのかなぁ!?ぶはははは!!いいねいいね~!アイボウ君の新しい面を知れて、ぼくスッゴク嬉しいよぉ~♪
「もう知るか!!」
俺はベリトからのイジりを無視して、本を元の場所へと戻して書庫を出ていく。…とやっても、ベリトがいるのは俺の中だから何の意味も無いんだけどな。
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「は?魔力を貯蔵する魔道具が欲しいだって?」
書庫を後にした俺が向かったのはシャルゼさんの紹介で宿泊しているホテル。そしてその中でもソルがいる部屋へと俺は来ていた。
「ああ、俺はルナから魔法の仕組みは人より理解出来てるって言われたんだけどな。だけど生憎その仕組みを展開出来るだけの魔力が俺には無い。だからそれをサポート出来る魔道具が作れないかなってな。どうだろう、無理そうかな?」
「愚問だな。僕は誰よりも魔道具作りに自信がある、それくらい出来るさ。だがアキラは相変わらず変な事を思い付くな」
「おっ!もしかしてまだこの世に無い物を考案しちゃったかなっ??」
「いや、あるぞ」
あるんかい。
なんだよ、少しだけ期待したじゃねぇか。まあ無い方が変な話しか。そもそもこの世界には俺より頭のいい、まるでネット知識を積んだような“なろう系主人公“がいるんだもんな。
「魔力貯蔵の魔道具は戦争とかによく使われる物だ。たまに魔力の少ない冒険者なんかも付けてるのを見る。だけどそこそこ高い上に、コスパが悪いのがネックなんだけどな」
「それでも作れるんならありがたい…!粗悪品でもいいから作ってくれないか?頼むっ!」
「粗悪品ってお前…ナメるなよ?僕がそんな物を大事な仲間に渡す訳ないだろう。作るなら1級品だ、任せてくれ」
「マジか!ホントありがとうな、ソルっ!」
「あ、ああ…!」
嬉しさのあまりソルの手を掴むと、照れているのか頬を赤くする。あ、視線反らした。お前…まさか…!?
『ソルってかなり美形だし…アリ、なのか…?いやいや待て待て!俺はノンケだ!』
しかしソルを女装させれば……いやいや…
俺は兎も角、ネット民には受け入れられそうだ。どんなジャンルにも一定層需要があるからな。特に日本は。もう終わりだよこの国…(言いたいだけ)
「んじゃ魔道具の件、頼んだぞ!」
「それは任せとけ。だけどアキラ、お前はどこに行くんだ?」
「修行!!」
な、なんだその顔は……またかよみたいな顔しやがって。弱いんだから仕方ないだろうが!!
「魔物の素材狩りも含めてな。そうじゃなきゃ魔道具の代金払えないしなっ!んじゃちょっくら行ってくるわ!」
「あ、おい!って行っちゃったよ……別に金はいらないってのに…何であんなに焦ってるんだ?ま、いつも通りのアキラだから問題は無い…か?」
飛び出ていったアキラにそう1人呟いたソルは、早速魔道具製作の準備に取り掛かり始める。
ああも大口を叩いた以上、アキラにピッタリの魔道具を生み出す。その為にも彼は羊皮紙へとペンを走らせ始めた。
準備回で1話丸々使ってしまうバカ作者。今更だろとお察しください(迫真)




