255話:城塞国家・バルバレス
最近時間より遅かったり、投稿できなかった日があったので、少し文字数多めです。お詫び的なあれです。逆に迷惑だったらごめんね。
そして次の日の早朝。俺達はルミナス聖国を出て、隣国へと向かっていた。
カルネージ帝国との戦争と、“強欲“による襲撃。その2つの事態によって列車は運行出来る筈もなく、そもそも駅までもが破壊されているので乗れないんだが。
「おっ……おおおお…!!うおっ!?」
「五月蝿いわよ、アキラ…」
列車同様に、竜車も出ていないからクリークス家の地竜に乗って隣国を目指しているのだが、相変わらず俺は地竜が苦手だ。しかも操作もろくに出来ないから、ローザの後ろに乗ってるっていうね。凄く男として惨めな気がする…
本当はローザの安全面を考えて、ミルの後ろに乗ってもらう筈だったのだが、『別に心配する必要はないわ。自分で出来る事は自分でやるから』と言って、俺の手を掴んで地竜へと歩いていったのだ。
「ローザって地竜にも乗れるんだな、流石お嬢様」
「別に普通よ。地竜なら昔から乗っていたから」
ミルもお嬢様だが、ローザとはジャンルが違うからな。それはそうとルナ&ソルの姉弟も1頭の地竜に乗っているのだが、操縦してるのが意外にもソルなのに驚きだ。
以前ルミナス聖国前に“厄災の十二使徒“のジェミニが現れる前もルナを後ろに乗せて地竜を操っていた。
「今更だがソルって地竜に乗れたんだな。運動神経悪いから、勝手にそういうのも苦手だと思ってたんだが」
「中々上手いだろ?こういう事は割りと得意なんだよ。逆に僕から言わせればアキラが地竜に乗れない事の方がビックリだよ。前は乗れてたじゃないか」
「いやまあ……あははは」
確かに俺は乗れないって訳じゃない。ただ凄く下手なんだ、地竜を操るのが。どういう訳か俺が地竜に股がると大体が暴れる。背中に乗るなこの野郎!と言わんばかりの剣幕で威嚇してくるんだよ……主人公たるもの、地竜や馬を巧みに操ってこそ輝くんだけどな…
「アキラ君はその地竜に乗る時も威嚇されてたよねっ」
「アキラは魔物に嫌われやすい体質…なのかも…?」
魔物だけでなく地竜にも嫌われるのか……いや、地竜も魔物か。でも嫌われてるのは悲しいなぁ……。しかもそのせいで魔物から凄い狙われるっていうね。
「見えてきた。あそこが城塞国家・バルバレスだよ」
ルミナス聖国の左側にあるのがアルカナンであり、逆に右側にあるのがバルバレス。
城塞国家と言われるだけあって、国を囲う高い壁。山岳に囲まれた国は難攻不落って感じのする重厚な国だ。
因みに事前情報によると、この国は自分からは戦争をしない特殊な国らしい。その上で防衛戦はマジで強いらしい。なんか日本感のする国だ。
────────────
城塞国家・バルバレス。その厳重な入国審査を終えた俺達は、無事に国内に入れた。
そう、入れたのだ。この俺が。世界的に犯罪者扱いされている俺がだ。
「多分その髪色とかが原因なんじゃないか?ほら、服装だって前みたいに真っ黒でセンスの無いのじゃないしさ」
「んなっ…!?」
「よく分からない変な武器も持ってないしねっ!」
「っ…!」
「自信満々なニヤつきも滅多にしたくなったものね」
「……」
「大丈夫、そんなアキラもボクは好きだから」
「ッ…こ、この流れでそれは違うでしょうが!」
無事に入国出来たって言うのに……何でこんなに心がやさぐれるんだ…?皆の言った事を1つにすると、典型的な“なろう系主人公“になるんですがそれは……
てかミルだけ言ってる事がヤバいぞ。おかしいだろ、このタイミングでそれを言うのは……いやまあミルは昔から思い立ったら即行動だしな。
「恐らく悪魔の力を持っている方のアキラが現在進行形で“強欲“と争っているのも原因1つでしょうね」
そう言ってローザは俺に新聞と手渡す。そこには大きく“強欲“と“嫉妬“の衝突と書かれていた。
いずれぶつかるとは思っていたが、先にもう1人の俺とぶつかるとは思っても見なかった。いや、逆に欲深い者同士だからそこぶつかったのかもしれない。
「おいおい、またアイツがやらかしたのかよ……まさか“強欲“と手を組んだりしないよな…?」
「いや、それは絶対に無いと思う。アイツは俺でもあるからな、1番アイツの行動理念は分かってるつもりだ。だからこそ言える、“強欲“とは絶対に手を組まないってな」
「そういうものなのか?僕にはよく分からないが…」
逆に俺は“強欲“を徹底的に潰そうとする筈だ。だからこそこの新聞に書かれているように争っているんだろう。欲深い俺の事だ、“強欲“の力全てを狙っている筈だ。
「それにしても賑わってるわねーっ!今日はお祭りでもあるのかなっ?」
いつものように明るく話の流れを変えてくれたルナ。彼女の言う通り、やけに人が多く感じる。沢山の種族もおり、皆笑顔で歩いている。
「そうだ、思い出した。今日はバルバレスの独立記念だ」
「へぇー、よくある記念日なんだな」
ミルは思い出したと言った顔をしてそんな事を言った。異世界モノでも稀に見る展開に、1人ポンッと納得した。
しかしこうも人が多いと列車が混雑しそうだ。
───バルバレス独立記念になんとっ!!我がベルシュベーカリー名物・ベルシュめろんパンが大特価!お1つ大銅貨1枚だよーっ!!
「えっ!メロンパン!?なんでこの世界にそんな─────うわぁぁぁああああ!!?」
突然聞こえた呼び込みの声。その中で1つ疑問に感じたワード、メロンパン。何故メロンパンがあるのか疑問に抱いた瞬間、雪崩のようにベルシュベーカリーへと走って行く様々な種族の者達。
バシバシと俺に当たるのも気にせず、一目散にベルシュベーカリーへと走る。全員顔覚えたからな…!
「ったく…満員電車の降りる時じゃないんだからさぁ……それにしても凄い人波だったな、皆は大丈夫……か…?…………え?」
消えた。
皆が消えたのだ。
「え、ちょっ…!嘘でしょ…?」
まさか……いやまさかなぁ…?
この歳で迷子とかはねぇ…?流石に無い…よね?
「あっ、ああ……ど、どうしよう…っ」
「君、大丈夫?もしかして迷子?」
「い、いや全然っ!平気っす…!」
知らないおば様に声を掛けられてしまった。だが素直に迷子になったと言うわけもなく、俺はその場から即逃走した。
向かうは勿論路地裏。お約束だね。
「あ、あはははっ…!ウェイトウェイト、俺は迷子になった訳じゃあないさ…!はぐれた、そうはぐれただけだ…!うんっ…!」
はぐれたのなら、すぐに合流すればいいんだ…!そう、合流すればいいんだ!
「よし、少し冷静になれた。皆も同じように人波に押されたんだろうけど…どこまで行っただな……迷子センターなんかあるわけないし…地道に探しますか」
まずこうした場合に目指すなら、注目を浴びるような建造物がある場所が普通だろう。待ち合わせ理論、これは通るだろうか。
ミル達も俺と同じように考えていればの話なんだが……
「……いや、待てよ?そもそもこの国に来た目的が列車に乗る為だ。なら駅に向かえばもしかしたら会える…かも?」
そうと決めたら向かうは駅だ。だが駅はどっちだろうか。まあここは大きな国だし、歩いてれば地図の1つでもあるだろう。そう決めて歩きだした時だった。
「だ、誰か助け───」
「騒ぐなッ!チッ、手間取らせやがってこのクソガキがァッ!!」
「おいなに見てんだ!!見せもんじゃねぇぞ!!」
俺は見てしまった。
男達が少女を袋に積め込む瞬間を。
「なにしてるんだ……アンタ達…。まさか誘拐…っ!」
「見せもんじゃねえっつってんだろうが。早くどっか行かねぇと痛い目見るぞ」
強い視線と共に取り出したナイフ。チンピラの必須武器だが、今の俺は素手だ。持ち物はみなローザの指輪の中に入っているからだ。
「素手だからって…見過ごせない…!」
「バカな奴だ。この世の生き方って方法を知らないボンボンか?」
完全に敵意を向ける男達。
怖がるな、俺は強い。大丈夫、スキルや魔法が無くたって勝てる相手だ。
勇気を持て。戦え。こんな展開は早々ある事じゃないぞ。
「戦うぞ、俺は…!」
「ホントバカなや────ウヅッ…!!」
相手の言葉を待たずに攻撃を仕掛ける。1番前にいた男の左頬を回し踵蹴りで蹴り飛ばす。
心拍が凄い。勝てる相手だと分かっているのに、怖くて仕方ない。だけど戦う。捕まった子を助けるんだ。
「コ、コイツ強いぞ…!」
「チィ…!時間が無いってのに…!オイ、ここは任せたぞ!!」
「っ…!逃がすか!!」
少女が入った袋を抱えた大柄の男はそう言うと、反対方向から逃げ出す。
当然捕まえようとしたのだが、他の男達が壁となって行く手を遮る。
『この数で1人の少女を誘拐……おかしな話だな』
このタイプのチンピラは自分優先の筈だ。自分の身に何かあったら誘拐した子を捨ててでも逃げるだろうに……解せないな。
「そこで何をしてるんだ」
そんな時だった。
俺の背後から聞こえた青年の声。俺はその声を知っている。何度か会った事のある者の声だ。
「っ…!?君は…!なんでここにいる、アキラっ!」
「はぁ……なんでここに来るんだよ…天草光輝…!」
ゆっくりと振り返る先にいたのは天草光輝、この世界で初めて出会った“なろう系主人公“の男だった。
これが本当の主人公補正。動くだけでイベント発生させる人間です。




