254話:調べ物は書庫で
シゴトキライ(※遅れてすいません)
「これは……違う。これも…関係ない、か」
ローザを助けると誓った俺は、その日からクリークスの屋敷にある書庫で古い書物を読み漁る。ここは本当に異世界とかでよく見る広い図書館のようで少し興奮する。
そんな広い書庫で1人何をしていたかと言うと、12本の剣について調べていた。聖剣の歴史あるこの国になら、邪剣についても記されているかもしれないと考えたからだ。
「クッソ……俺頭悪いからこういうの苦手だわ…頭イテェ……」
古文だがなんだか知らないが、謎のワードがあって解読できない。文字は分かっても、その言葉の意味までがまるで理解できない。ローザを苦しめる毒を解毒する方法を見つけると意気込んだばかりだというのに情けない…。でも読めないんだもん。
「異世界と日本の文字が違う影響が出てきたな…」
俺が椅子にもたれながら高い天井を見つめながらそう呟くと、書庫の扉が開く音がして思わず振り返る。そこにはソルがおり、俺を見つけると『よっ』と軽く手を上げた。
「アキラが書庫にいるとなんか浮いてるな」
「うっせ」
ソルのからかいに俺も少し笑いながらそう答えると、ソルも同じく笑い出す。そして何かを思い出したかのようにソルは懐へと手を入れると、テーブルに2丁の銃を置いた。
形状は……ハンドガンだ、うん。し、仕方ないだろっ!?俺は【軍オタハーレム】とは違ってなろう系オタクなんだから…!兎に角形状は実に現代的なハンドガンだ!以上っ!!
「これは?」
「お前僕が作った魔道具を無くしたろ?だからその代わりになる物を作ったんだ。アキラの考えた形状も悪くは無かったが、こっちの方が性能はいい筈だ」
どうやら彼のオリジナル要素を盛り込んだ銃らしく、得意気にそう語ったソルへ『へぇー、凄いな』と言うと、彼は嬉しそうにその性能について語りだした。
「今回のはスゴいぞ!以前の銃より弾数が2倍入る!当然僕が作った魔道具だ、それだけじゃないっ!なんと以前のレールガンの仕組みを使って、高速連射が可能になった!!勿論レールガンの威力のままなっ!それになっ!?ここが────」
「あ、うん…凄いね…」
詳しい事がよく分からないものの、話を合わせたとたんに元気になるソル。彼は実に楽しそうに説明してくれるが、後半は専門用語?が多過ぎで何を言っているのさっぱりだった。
まああれだ、リボルバー型をやめてフルオートマチック銃を作りましたって感じかな?多分。まあ元々リボルバーの形にしてるのは飾りだしな。今回は現代銃とほぼ同じでその上レールガンの性能もあるのか…たまげたなぁ。
「ところでソル、この文字って読めるか?」
ソルの解説が終わった所を狙って話題を変える。するとソルは俺が読んでいた本に顔を近付けると、『ああ、これか』と呟く。
「これは今よりずっと昔の文字だよ。今でこそ英雄達の言葉や文字であるカ“タカナ“や“カンジ“が混ぜられてるけど、その英雄が現れる前はこの文字が一般的だったそうだよ」
そういう事。この世界にはやけに“ことわざ“や“英語“が使われてると思ったら俺達日本人の影響なのかよ。なんか【処刑少女】っぽいな。確かに異世界なのに水をウォーターとかって呼ぶのって少し変だよな。
つまりこの古文がこの世界の本来の文字って事なのか。なら凄い昔の文字なんだろうか。
「てかよく読めるな、古い文字なんだろ?」
「まあ姉さんが古代魔法とかの本を色々読み漁ってたからな。夜は1人で暇だったからよく姉さんの本を読んでたら自然にな」
マジかよ、読んでて分かるか?普通…
ホントこの兄弟はスペック高いよな。この渡された銃だって、この世界にあるかどうかは知らないが、オートマチックだ。俺は何も言ってないのに、効率を考えてこうしたんだから凄い以外の言葉が出ない。
「ならこれはどういう意味なんだ?」
「ん?ああ、これは“アルガッナ“。今で言う火魔法の事だ。…てかいちいち聞かれるのも面倒だから読んでやるよ」
「この歳で読み聞かせって……いやまあ助かるよ」
なんだか幼稚園の頃に戻ったような気分だな……
まあソルはイケメンだし、こうして隣で本を読んでくれるのはある意味役得なのかもしれない。もっとも、俺は男色って訳じゃないんだが。
─────────────
そして情報収集を終えたその日の夜。俺は久方ぶりに真剣に稽古に励みだした。本当はこの新たな銃を使ってみたいのだが、今は夜中だから近所迷惑になるので剣術だけなんだがな。
「───[霧雪]ッ…!よし、成功した…!」
木剣片手に剣を振り続ける事2時間。俺は漸く以前の勘を取り戻してきたようで、初めて習得した[霧雪]を放つ事に成功した。
「スキルを取られても体が覚えてる技能までは取られてないんだな…よかった」
どうやら奪われたのはスキルと悪魔達、そして俺の中にある強い感情のようで、こうした技のやり方はまだ覚えていた。
それと同時にミルとの記憶も取り戻しつつある。もしかしたらもう1人の俺はミルとの記憶さえもいらないと判断したのかもしれない。
「まだ起きていたの?もう寝ないと明日の朝、起きられないわよ?」
「ローザは俺の母さんかよ」
足音と共に現れたローザの言葉にベタな突っ込みをしつつ、振り返る。そこには当然ローザがおり、月光を浴びるローザはやはり絵になるくらいふつくしい。
「本当にどうしちゃったの?そんなにやる気をだして」
「このままじゃダメだなって思ってな。こんな俺でも何かの役に立てるなら立ちたい。勿論本心的には自分の為でもあるけど…ローザが辛いのは俺も嫌だから……それにいつまでもクヨクヨしてたらミル達にも心配掛けちゃうし。…って今更だな」
なに偽りの無い本心でそう語りつつ、俺は実戦なら無駄な動きだらけのアクロバティックな動きで木剣を振る。
そんな俺は見てなのか、彼女は口に手を当てて上品に笑うと、そのまま俺の元へとやって来て両頬に優しく手を当てた。
「え…えっ…!?な、なにっ…!」
ローザの手からほんのりと温かさを感じつつ俺は脳がショートしかける。なんてったって以前ミルに突然のキスをされたばかりだ。警戒という訳ではないが、緊張してしまうのは童貞の性だからね、しょうがないね。
「やる気に満ちてるアキラはとっても魅力的だけど、アキラは度が過ぎるような事をしても全く自制しないんだからもう寝なさい。いいわね?」
「あっ…はい」
全然違ったっ!!
キスとかそんなんじゃなかったよ!!
いやー自惚れたわ!ワンチャンハーレム系進出が!?と俺の心の中の住人が騒ぎだしたが、全然違った。しかもカスりもしなかった。
「いや知ってたけどさ……別に…期待なんかしてかいけどさ……」
言われた通りに体の汗を流してすぐに自室へと向かった俺は、ベッドに腰掛けながらブツブツと呟く。ミルはヒロイン兼主人公だから突拍子もない事をする。それを忘れていた俺は完全に自惚れていた。過去の俺、死すべし!
「まあいいさ、こんな夜中になるまで書庫を漁っただけの成果はあったしな。あんまり求めすぎたらバチが当たるかもだし」
そう呟きながら視線を向けたのは部屋にあるテーブル。その上にある1冊の本を手に取って、俺は数ページ捲った。
『精霊族の秘薬……これさえあればローザの傷は治る…』
如何なる毒物も浄化すると言われる、精霊族だけに伝わる秘薬。これさえあれば邪剣の毒だろうが治せるだろう。
だが問題もある。精霊族の本拠地が以前俺が出向いた精霊国シルフィールだと言う事だ。
俺はあの国では重罪人。死刑執行されてもおかしくないくらいの被害を出してしまった。
『俺が行った事に言い訳をするつもりはない……ただローザの傷さえ治せれば俺はどんな償いでもする』
そう心に決めて、俺は本を閉じて魔石灯の明かりを消してベッドへと入る。
明日向かう精霊国シルフィールへの心配と不安を抱いたまま、俺はそのまま眠りへとついた。
さて、どうやってこの先の物語に出てくる奴等をアキラに倒させるかねぇ…。それを考えるのも楽しいし、強者を倒させられたらアキラの株が僅かに上がる。良いことずくめだね。




