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253話:恩人は死なせない

ブックマーク150行ったぞーっ!ありがとうございますっ!!


…って言ったら、必ず1人外す人が出るのはお約束(笑)

「ローザ!大丈夫かっ!?」


嫌な予感に煽られるがままに、俺は失礼ながらノックをせずに部屋の扉を開ける。皆の反応を見るに寝込んでいると思ったのだが、意外にもローザは普通に窓辺の椅子に座って優雅に紅茶を啜っていた。


「い、いきなり何よ…!ビックリするじゃない…!」


「あ、ごめん……あの具合の方はどうだ?どっか痛いのか?」


「…別に平気よ。大した事無いわ」


軽く叱られた俺は、少しテンションを抑えてそう聞くと、ローザは紅茶を一口飲んでそう答える。しかし隠しているのが分かる。顔色はなんともなさそうだが…


『くそ、俺か主人公みたいな観察力があればローザの具合にもしっかり気付けるってのに…』


だが無い物ねだりは出来ない。ここは人間の武器でもある口で聞いてみるとしよう。

…答えてくるかどうか分からないけど。


「嘘つけ、顔色が悪いぞ。それになんとも無いならルナ達があんなに心配そうにするわけ無い。……俺の記憶が失くなってる間に何かあったのか?」


俺はローザにカマを掛けつつ、向かい側の椅子に腰掛けて聞いてみた。すると彼女は『ふう…』と小さく息を吐くと、視線を俺へと向けて口を開く。


「…なんだか雰囲気が変わったわね、少し前までは暗い顔だったのに。私がいない場所でまた何かあったのね…」


「そうか?」


でも確かにローザの言うとおり、少し前向きに考えられるようになったかもしれない。これも全てラミエルによって勇気づけられたからなんだが。天使の力ってスゲー。

そんな事を考えながら黙っていると、ローザは『まあいいわ』と呟いて、自身の具合について教えてくれた。


「以前、この国に“強欲“が現れたのはアキラも知ってるわね?」


「ああ、国の被害を見るに、相当暴れたのが分かるが…」


「理由は分からないけど、“強欲“はミル達が持ってる聖剣を狙って襲撃したの。それだけに留まらず、あの男は私の邪剣まで奪おうとしたの」


ため息混じりに、つまらなそうにそう語ったローザは、紅茶を口に含んで窓からの景色を眺めるながら話を続ける。


「当然ミル達同様抵抗はしたわ。でもあの男は規格外の力を持っていた…国に聖剣士が4人と邪剣士が1人いても敵わないくらいの力をね…」


そう呟くとローザはティーカップをテーブルに置いてゴスロリチックなドレスの袖を少し捲る。オフショルダーで上手く隠されていたが、彼女か捲った事でそこに隠されていたが傷が露になる。


ローザの左腕には生々しい深い傷があり、“強欲“襲撃から数週間経っているにも拘わらず、全くと言っていい程治癒されていなかった。

この異世界の治癒技術は日本の医学を軽く凌駕するにも拘わらず、これだけの傷を残している……以前俺が“暴食“の穴に呑まれる前に受けた傷と同じような呪いだろうか……


「この傷がただの呪いなら私だけでもなんとか出来たわ。…でもこれは呪いでも何でも無いただの()()()()()()()()()()()よ。───邪剣・紫毒蛾(しどくが)ディジーコープズのね」


名前から察するに毒の邪剣だろう……あの男は邪剣に選ばれたと言うのか?いや、他の者から剣を奪っている事を考えるに、他の所有者から強制的に奪ったのだろう。その所有者は運が良ければミルのように片腕などを失くし、運が悪ければ死んでいるだろう。


「その傷は治せないのか…?」


「さぁ…どうかしらね。この傷はミル達が色々と手を施してくれたけど無駄だったわ。多分力を継続し続けてる紫毒蛾を止めないと無理ね」


ミルの家は屋敷を持てるくらいの富豪だ。聖水やハイポーションは用意出来ただろう。そしてルナは聖魔法も使える才能の持ち主。浄化だって出来るだろうが、それでもダメだったという事だろう。

やはり邪剣本体の力を失わせるしか無いのかもしれない。そうなれば必然的に“強欲“とぶつかる事になるが……果たして勝てるだろうか。


「…その顔、まさか“強欲“に戦いを挑むつもりじゃないでしょうね?」


「っ…!よ、よくわかったな」


完全に図星を突かれた俺は驚きつつそう返すとローザは溜め息を吐いて、俺の頬を指で軽く弾く。


「バカね、そんな無茶な事はやめなさい。無駄死にするだけよ」


「で、でもローザがそうなったのは俺の責任でもあるだろ…っ」


俺がレヴィに会いに行くと言わなければ、ローザが傷を負う事も無かったかもしれない。森でひっそりと暮らしていれば…俺が1人で飛び出していれば…そう考えれば考える程心が苛まれていく。


「貴方って人はホントバカ……私が好きで付いてきたのよ?それに私がまだまだ未熟だったからこうして傷を負った訳だし…別にアキラのせいなんかじゃないわよ」


さも当然だといった表情でそう言ったローザ。むしろ彼女に気を使わせてしまった。情けないと感じると同時に、ミルやジェーンもそうだが、ローザ達が人として尊敬出来る人ばかりで頭が上がらない…


何か俺に出来る事は無いのだろうか。

無力でバカな俺でも出来る事を……



「……でも、俺はローザから貰った恩をまだ返せてない。どこの誰かも分からない人族(ヒューマン)を拾ってくれただけでなく、雇ってくれた。俺の危ない時にはローザは絶対に助けてくれた。そんな恩人が毒で苦しんでいるのに、このまま黙ってなんかいられない…っ」


ミルやジェーン、ローザの規格外な剣の力を考えるに、恐らく紫毒蛾は致死量並の毒があると考えていい筈だ。

治癒が得意なローザだから生きてられるのかは分からない。だけどいつ死んでしまってもおかしくない。そんな事、絶対にさせない…!


「頼りないかもしれないけど、俺は絶対にローザを助ける」


「…!もう…本当に貴方って人は…っ」


伸ばされたアキラの手を弱々しくも掴んだローザは小さく微笑む。少し前までは死人のように生きていた彼がここまで生気に満ちた表情をしてそう言った。アキラは少し照れながらも笑うその姿に、ローザは共に戦ってきた事を振り返る。


「…本当にアキラは不思議な人ね。ふふっ」


「そうですか?」


「ええ、変人よ」


「え“っ!」


照れているアキラをからかうと、予想通りの反応についつい笑みが溢れローザ。そしてそれに釣られて笑う、アキラ。

部屋の窓からはオレンジ色の夕日が入り込み、その光は片方の眼が黄色に輝くアキラの瞳に反射して輝いていた。

左目が黄色に染まっており、しかも十字架模様まで入っているアキラ君。

強い感情を抱いた時のみ出現する(ネタバレ)

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