24話:刺さった剣は抜くもの。そうだろ?
わわっ!何だ…?急に閲覧数が増えたゾ…?
ありがとうございます。
「死ぬッ!死ぬ死ぬ死ぬゥゥゥー!!」
謎の生物、まぁぶっちゃければ狼的な奴等に追われている。
「あんにゃろめ…!わざと襲い掛かってこねぇな!?ナメプですか!?あぁ!?」
何故相手が狼かわかったか、何故ナメプされていると感じているのか。それは俺が森を走ってる事が証拠だ。
俺は確かに村へと全力で逃げていた。だが追い掛けてくる奴等は、俺の左右に回り込んでプレッシャーを掛けつつ行く手を阻む。
んで狼的な奴等を避けて走っていたら、いつの間にか森の中。してやられた。
『狼って群れで行動するもんな…俺を捕まえないのは体力切れを狙ってるってとこか?…クソ……脇腹痛ぇ…』
だが確実に体力は削られ、地形も悪い場所へと見事に案内される俺。アイツらがわざとやってるのはわかってる。だがどうしようもない。だって常に俺を囲ってるんだぜ?どうしろって言うんだよ…逃げ道1つしかねぇってのによぉ…
『はぁ…!はぁ…!ならどうす、る!?はぁはぁ…!殴るか!?論外だろ』
今回の相手は単体かつ動きが遅めの熊公じゃない。俺が止まって構える頃には肉になってるだろうな。
大体追い掛けてくる狼は魔物なのか、それとも普通の狼なのか。それすら判断がつかない以上、下手な策は危なすぎるだろう。
「誰かぁぁあ!!誰かいませんか!!?助けて下さい!!…………クソ」
ダメ元とわかっていても、周りに助けてくれる人がいないと精神的にくるものがある。
せめて動物が嫌がる火でもあれば……
ん…?火?
「あるじゃん火!俺の魔法が!!」
そう叫んだ瞬間、脳裏を高速で過ぎ去った手持ち線香花火の映像。
余りに…余りに火力が足りない現実を思い出す。
「ダァァァァ!こんな時にも役に立たないのかよ!俺の魔法はよぉ!!大体ここどこよ!!?安定の迷子なんですが?!ああぁ!!もうどうにでもなれッ![火花]!!」
バチ…バチバチバチ…バチバチ……
「つっかえねぇぇぇぇぇ!!!!」
ヤケクソで魔法を放った結果、ただ疲れただけでした。
あっなろうタイトルっぽいな、これ。
クソどうでもいいことを考え、現実逃避をしながら長距離走マラソンをすること……どれくらいだろう。わからん。
ところが、そんな俺に奇跡が舞い降りた。
「あれは…まさか…!」
狼達に操作されながら逃げ続けている時、30m程先にある小さな泉が視界に入った。
小さな泉の中央にある小さな陸地に神々しく光が降り注ぐ。その光の先にあるのは、、、
「あれは本に書いてあった精霊剣…!?」
悪だけを斬ると伝えられる精霊剣。まさかこんな展開で出会えるとは…!もはや運命の域!
このピンチを乗り越える為、ジャブジャブと泉の中へと入っていく。時折裏を確認しつつ、急いで中央の陸地へと進んで行く。
「俺に力を…!精霊剣・アルクトゥルズッ!」
神々しい光が差す中、俺は精霊剣・アルクトゥルズを握り、引き抜く。
そう、それはまるで、憧れであったなろう主人公のように……
「………………抜けない…?え、いや、ちょ……え?」
『え、この展開で抜けないの?じゃいつ抜くの?今でしょ!!?』
ビクともしない精霊剣。力任せに抜こうとしても、両手で握って体重を掛けても抜こうとしても、それはそれは見事に抜けません。
グルルルルル…!
「ヒッ…?!」
あの手この手で精霊剣を抜こうとしても、一向に抜けない精霊剣に気を取られ、周りを見れば、既に狼達が涎をダラダラと垂らして泉を囲っていた。
「はぇ~狼系の魔物なんスねぇ~俺はてっきり普通の狼の方々かと……ってそうじゃねぇ!!」
蟻のように、口の横に牙…かな?多分。それが生えた狼さん方ご一行が──って説明してる暇ないんだって!強キャラ風に関係ない話をしてる暇ないんだって!
そうテンパっていると、あることに気付く。
「……なんだ?てっきり襲い掛かってくると思ってたんだけど…入ってこない…?」
何故か泉を越えてこない魔物達。
疑問については、俺のなろう書が説明してくれる。パターンで言えば、相手は魔物。対してこっちは悪を斬る精霊剣が寝る泉。
「そうか…!その答えはただ1つ…!お前らが魔物だから、浄められた泉に入ってこれな────って、いや入ってくるかい!!」
普通に入水してくる狼さん。
なんやねんこのくだり。あほくさ…やめたら?なろう語るの。茶番が過ぎるぞ…ッ
「………マジでここまでなのか?」
額を流れる一滴の汗。この間にも精霊剣を抜こうと頑張ってはいるものの、やはり抜かれてくれない。やっぱ精霊ってろくなのいねぇ…
ゆっくりと…しかし確実に迫る狼。裏へ逃げようにも、前後左右を完璧に封鎖。もはや逃げる場所を完全に失った。
「ちくしょう…精霊剣に釣られなかったら……逃げ切れたのかな……」
だが時すでに遅し。逃げを捨てて、戦いを選んでしまった時点で俺の負けだ。諦めよう。
でも………
「……………やっぱり…死にたくなんか……無い!うっしゃ!!上等だコラァ!!やってやんよ!掛かって来い、イッヌどもッ!!」
頬を叩き、気合いを入れて拳を構える。
残された最後まで俺は諦めない。ここで投げ出したら、憧れが、夢が、努力が全て無駄になる。
「やってやる…!あぁやってやるとも…!言っとくが、俺はギリギリになるほど強いぜ!?」
「グルルルルル……!」
『ああやっぱり怖いッ!ホント俺は対人戦特化なんだってば…!』
内心ビビってる。魔物は全て怖い。ましてや肉食なら尚更ね。
『俺なりのイキリってやつをしてみたが…少々弱い気がするな…。まぁあれは勝利確定だからできる所業だからね…』
俺の額の汗が、地面に落ちた瞬間。周りの狼達は動き出す。牙を剥き出しにして、、
「グルル…!ガウガウッ!!」
「掛かって来いやぁぁぁぁ!!」
お互いの武器である、牙と拳がぶつかり合う
その時だった。
「ギャ────」
「な、何だ!?」
俺の首へと飛び掛かってきた狼は、物凄い速さで地面へと落ちた。いや、墜とされた。
「一体誰が……」
《ただの人間如きが精霊剣を抜ける訳がないだろう。更にウルフェン達を単騎でとは…つくづく愚かな人間だ》
どこからか聴こえてきた強く美しい声。その声が聴こえた瞬間、俺の前に巨大な水の塊が出現した。
《ウルフェン達よ…貴様らも少々悪戯が過ぎるのではないか?ここを誰の領域だと思っている?》
その声は巨大な水の塊か聴こえてくる。やがて謎の声が話終えると、巨大な水の塊は破裂し、辺り一面に雨を降らせた。
《少々…───仕置きが必要か?》
目に入った水を拭うと、目の前に現れたのは、、
「四聖獣……水鞠の白…虎……!」
俺の体よりもデカイく、純白の毛並みを持つ、一頭の虎だった。
ウルフェン:2m程の狼型の魔物で、雑食。
群れを成して獲物を必要に追い回し、焦りと恐怖する姿を楽しむ性質がある。
口の横に、蟻ような特徴的な牙が生えている。
追われたら最後と言われている。




