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248話:解き放たれし黒龍

「っ…!!」


「どうした?」


天界中央前にあると言うゲートへの道を歩いている時だった。大森林の木々が大きく揺れだし、鳥達がざわめき出すと同時に先頭を歩くラミエルが立ち止まった。


「な、なに…!?この禍々しい気配は一体どこから…っ!」


ラミエルは1人そう呟きながら、金色の電気が漏れ出る槍を取り出すと、その険しい表情と共に警戒体制へと入った。

何かあったのは分かるのだが、何の力も無い一般人の俺には何が起こっているかは分からないので、当然ながら置いてけぼりだ。


「なぁラミエル、一体何があったんだ…?何かあったのはなんとなく分かるが…」


「…分かりません……ですがこの天界内に何か邪悪な者が現れたようです…!────っ!!危ないっ!!」


重苦しい雰囲気でそうラミエルが言った瞬間、彼女は何かを察知したようにそう叫ぶと同時に俺を突き飛ばした。

何があったのか、そう理解する前に俺が先程場所に黒い光線が放たれていた。もしラミエルが俺を突き飛ばさなければ、今頃俺は縦に真っ二つだっただろう。


「一体なんだってんだよ…!?まさか俺を狙っての攻撃か!?」


「いえ、今のは恐らく違います…!今の攻撃に含まれていた気配から判断するに、この天界内に現れた何者かによる無差別攻撃と思われます…!」


深い木々が邪魔でよく見えないが、確かに向かっていた中央前に巨大な何かがいるのがうっすら見える。広範囲な無差別攻撃程厄介なモノは無い。しかもデカいと思われるが…一体なにがこの天界に現れたんだ?


「ここは仕方ありません…っ。いいですか?貴方はここで隠れていてください!危険ですからっ…!」


「え!?あっちょっと待てよおいっ!!」


俺の制止も聞かずにラミエルは背中に大きな翼を生やして、大空へと舞い上がる。そしてそのまま高速で中央へと向かって行ってしまった。


「待ってろったてここでかよ……ううっ!!」


隠れる場所らしき場所も無いようなこの森林で隠れていろは少々無理がある気がする。そう考えながらもキョロキョロとしていると、激しい爆発音と共に激しい地響きが始まる。


「…あそこなら隠れられそうか?」


唯一隠れられそうな場所である白い塔を見つけた俺は、またいつ攻撃されるかどうか分からないので、駆け足でその塔へと急いだ。


───────────


アキラが塔へと逃げ込んだ時と同時刻。天界中央では突如出現した怪物を相手にしている4人の大天使がいた。


「くっ…!何て破壊力だ…!」


「何で天界にあんな怪物が現れるのっ…!?」


天界中央にて荒れ狂う巨大な漆黒の龍。放たれるブレスは全てを滅ぼし、振るわれる鋭き爪はあらゆる物を切り裂く。そしてその龍に触れたあらゆる物は一瞬にして朽ちていく。

その絶対的な破壊の力を集めたような龍を目の前に、大天使であるサリエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエル4名は苦戦を強いられていた。


「ラファエル、子供達の避難状況はどうなっている」


「い、今他の天使達が避難誘導を終えたって……言ってるよ…」


「そうか……しかしメタトロンはこの状況でどこに行ったと言うのだ…っ!」


未来の天界を担う子供達の避難が無事に行われた事に安堵するガブリエルだったが、メタトロンの行方が分からぬ事に表情を顰める。


「わ、分からない……れ、連絡はさっきからしてるんだけど…応答が無いんだよね…」


「メタトロンの事だ、既にあの龍にやられたという事は無いだろうが……」


メタトロンは長年大天使を務めてきた強者、心配は無い。だがメタトロンがこの場に真っ先に現れない事に些か違和感を覚えるガブリエル。奴の性格上、真っ先にこの龍を相手にしていてもおかしくないというのに……


「あの黒龍に近付いてはならない!距離を取り攻撃を仕掛けるんだ!!触れれば体を一瞬にして崩壊させられるぞ!!」


大天使長を務めるミカエルがいないこの状況ではガブリエルが指揮を取らなければならない。彼女はこの僅か数分で黒龍の動きやその無条件に崩壊させる力を見抜き、仲間へと指示を飛ばした。


「くっ…!!私達の攻撃を吸収しているだと…っ!?」


「お、おおおおかしいよぉ……ラファ達の攻撃がつ、通じないなんて…!」


闇から産まれるという黒龍には聖魔法は絶対的な効果を出す筈だというのに、あの黒龍には此方の聖魔法攻撃が一切通用しない。

ならばと各々が得意とする属性魔法で攻撃を仕掛けてみるが、ウリエルが得意とする光魔法は完全に意味を成さず、サリエルの風、ラファエルの水魔法によって与えられるダメージは微々たるモノであり、それらの傷さえもすぐさま再生してしまう。


「あのありとあらゆる物を崩壊させる力、そして我々大天使の聖魔法さえも無力化するあの皮膚……まさかあの黒龍は…!死天黒餓龍(してんこくがりゅう)なのかっ…!?」


黒龍の特徴を元に、数ある膨大な資料の中で見た記録を思い出したガブリエルは額から伝う汗を拭い、警戒を一層高める。


死天黒餓龍、それはかつて地上世界に突如として出現した怪物の名であり、国を3つ滅ぼし、死者数凡そ27万8400人という出したという。十二の災害の1つ、“魔災“から産まれた怪物だと言われている。


『しかし死天黒餓龍はこの天界の地下深くに封印されていた筈だ……何故このタイミングで出現した…?───っ!!』


出現する筈が無い怪物を目の前にして、冷や汗が止まらないガブリエル。当然だ、かつての大天使達でさえ手を焼いた結果がこの天界内で封印する事だったのだから。

再度封印するにはかなりの時間を要する。


「ガブリエルちゃん、危ないっ!!」


「っ!!」


思考に夢中になるがあまり、放たれた黒き光線に反応が遅れたガブリエル。ウリエルの声によって正気に戻れたが、回避するにはあまりに遅すぎた。体の一部を失う覚悟で回避行動に入ろうとしたガブリエルだったが、僅かに光った金色の雷がガブリエルの横を通ると同時に体が引っ張られる。


「大丈夫ですか、ガブリエル!遅れてすいませんでした…!」


「あ、ああ…助かったよ、ラミエル」


体に金色の電気を纏ったラミエルによって命拾いしたガブリエル。これで大天使が5人集まったが、状況はあまり変わりそうにない。





「この場にいる大天使達よ、聞け!!」


そんな時だった。

何処から都も無く聞こえたメタトロンの声が中央前へと響き渡った。この場にいる大天使全員がメタトロンを探すと、死天黒餓龍から少し離れた建造物の上にメタトロンが立っていた。


──ボロボロのテンドウ・アキラを掴みながら、、



「封印されし死天黒餓龍をこの天界に解き放った犯人はこのテンドウ・アキラだッ!!やはりこの人間は心が白くなろうが変わることの無い、産まれ持った純粋な悪なのだッ!!」


そう叫ぶように語ったメタトロンは、歪んだ笑みと共に血だらけのテンドウ・アキラをまるでゴミのように投げ捨てた。

またしてもボコボコにされる天道明星さん(心は30歳)

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