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245話:救いの大天使

「全く…ほんと貴方って人が分からないわ」


溜め息混じりにそう呟いたラミエルは、カルネージ兵2人へと視線を向ける。


「去りなさい。彼は我々の監視対象であると同時に、貴重な人間なの。早々に命を落とさせる訳にはいかないのよ。…不本意だけどね」


「いきなり現れてなんだお前。そんな破廉恥な服しやがって…痴女か?」


「なっ…!?」


確かに前々から大天使の女性陣って少し過激な服装をしているから、まあそう言われるのも分かるが……あぁ…ワナワナと震えてるよ…。


「変な格好に背中の大きな羽…まさかお前人鳥族(ハーピー)か?」


「いやよく見ろ、足が人間だ。だから多分半人(ハーフ)だろ」


男達はそう納得すると同時に、ラミエルの体からバチバチという高圧電流のような音を鳴らす。俺からはラミエルの後ろ姿しか見えないが、その背中からでも感じる怒気が凄い…!


「この服装は“人徳“を冠する大天使しか着る事を許されない由緒ある制服なんですよ…!別に私の趣味でこの服を着ている訳じゃないんですよ…!ええ、ええ…!」


キレてるやん。どうするだよ、俺にまで飛び火しそうじゃないか───って痛っ!!見ろ、電流が俺に当たったじゃないか!!静電気並みに痛かったぞ!


「ッ…!この痴女も魔導師かよ…!」


「魔法勝負になったら俺達が部が悪い、ここは引くぞ。どうせこの戦争には負けるんだ、ここにいつまでもいる意味は無い…!」


今尚バチバチと鳴らし続けるラミエルに恐れをなした男達は、撤退を選んだ。モブだから相手の力量も分からずに突っ込んでくると思ったんだが…まあここで戦いを始められて巻き込まれるよりはマシだな。


「最後の最後まで私を痴女と……っ!───んんっ、さて…邪魔はいなくなりましたし、じっくりとお話をしましょうか」


軽く咳払いをして俺を強く睨みを聞かせながらそう言ったラミエルは、俺の手を光の鎖で拘束すると、そのまま宙へと浮かばせる。


「おわっ!?」


「暴れないで。落ちるわよ?」


空を飛ぶのとはまた違った浮遊感に、俺は驚いているとラミエルがそう呟く。この高さからの落下は重傷…で済めばいいねってレベルだ。怖いから静かにしましょう…


そして暫くの浮遊の後、アキラとラミエルは一瞬にして消えてしまった。

彼らの行方を知る者は誰1人としていない。


───────────


暫くの間眩い光に包まれ、漸く収まったと思い目を開けるとそこは雲の上だった。

いやマジマジ。マジで雲の上に俺はいる。形の無い雲の上に乗るって変な感じだが、柔らかくないのが少し気になる。


「というわけで、お前さんは死んでしまった。本当に申し訳ない」


「…は?」


雲の上に到着したら言いたい言葉ランキング堂々の1位を言えた。サティスファクション、満足したぜ。

その代わりにラミエルから少々キレ気味の反応を貰ったが…まあいいでしょう。


「変な事言ってないでさっさと座りなさい。貴方には聞きたい事が山のようにあるんだから」


「は、はあ…」


雲で出来ていると思われる椅子に腰掛ける。座り心地は普通。

そんは俺の前にはラミエルが座り、何だか取り調べを受ける気分だ。ここに嘘発見機の魔道具とかあったら完全に【このすば】と化しそうだ。絵面だけだけど。


「まず始めに、何故貴方から悪魔の気配が消えたのか教えなさい」


「分離したから……。あ、えっとですね」


「今地上世界で出回っている話ね?それも後で聞かせて貰うわよ」


当然と言えば当然なのだが、やはり既に情報を知っているようだ。なので俺はあの日分離した事と、力を丸々全て奪われた事を説明した。


「成る程……それはどうやら悪魔の力でもなんでもないと思うわ。……ちょっとこれに触れてみなさい」


「これは…鑑定石か、懐かしいな」


昔フリューゲル家で見たやつと同じ石を差し出したラミエル。何か考えているのか、彼女は黙って俺を見ている。



名前:テンドウ・アキラ

種族:人族(ヒューマン)

性別:男

魔法:

スキル:[双子座(ジェミニ)]

加護:[治癒の女神・リコスの祝福]



目の前に現れた、俺のステイタスを示すウインド画面。分かってはいたが、こうしてハッキリと目の当たりにするとてもショックが大きい。

そう言えば[双子座]がちゃんと表示されてる…不思議だな。


「っ…!![双子座]ですって!?」


声を荒げ、力強く雲で出来たテーブルを叩いたラミエルは表情を歪ませると、額に手を当てて静かに座り込んだ。


「何か不味いんですか…?これ…」


「不味いなんてもんじゃないわよ……いい?そのスキルは禁忌スキルなのよ…!天界でもおとぎ話に出てくる程の古のスキルよ…。まさか実在するなんて…」


なにやらとてもヤバイスキルらしい。だが今のところ弊害は無いし、もっと言えば利害も無いスキルだ。そもそもこのスキルがもう1人の俺に奪われていない事に驚きだ。“強欲“にも奪われてなかったが……特殊なスキルなんだろうか?これの何が不味いのかいまいちピンとこない俺は置いてけぼりだ。


「……天界でもその禁忌スキルを知っている者はとても少ないわ。私の代よりもずっとずっと昔に、神が部下である7人の大天使に言ったそうよ……」


──十二使徒を超えし人間の心に宿る禁忌の力。その力を持つ人間が12人集まった時、この世界は役目を終える……


「そう言ったそうよ…」


「えぇ……なんですかそれ…」


なんだよ世界は役目を終えるって……十二使徒ってもう何体か討伐されてないか?双子宮のジェミニ、宝瓶宮のアクエリアス。現状2体討伐されている。


『何気に俺がいる場所に出現して、尚且つ俺がいる環境で2回勝ってる……すごっ』


まあ俺の力はあの場では微々たるモノなんだが、討伐に貢献したのは本当だ。

そう言えば処女宮のバルゴにも遭遇した事があるな、俺。ある意味死線は潜ってるな……


『俺には[双子座]以外のスキルは残ってない。だがこの話が本当なら、あの時アクエリアスを倒した時に宿っている筈だ』


元々ジェミニを倒した時も、かなりの人数があの場にはいた。その中で俺に宿った事がよく分からない。強い奴や、1番戦いに貢献した奴に宿るって訳でも無さそうだが……

ならアクエリアスの時は船員の誰かに宿った可能性もあるのか…?

うーむ…ヒントが少なすぎる。


「……あっ、そう言えば何で貴女は俺を助けてくれたんですか?さっきは貴重な人間だって言ってましたが……精霊国で最後に言った事を考えるに、助けるとは思えないんですが…」


「…貴方がちゃんとした言葉で話してると気持ち悪いですね……いつものような舐めきった態度じゃないの?」


「いや、あれは……ただふざけてるって言うかなんと言うか……」


「はぁ…まあいいわ。…別に理由なんて無いですよ。ただ私の部下を…フテラを助けてくれたお礼をしただけの話です。フテラが言ってました…『あの時私が倒れたのはアキラの毒じゃなくて、魔物から受けた傷のせい。助けてくれてありがとう』って…言ってましたよ」


俺に背を向けてそう小さく呟くように言ったラミエル。少し前まではお互いに戦い合ってたってのに、こうして今は普通に話している。悪魔の気配が無いから、少しキツくなくなってるのかもしれない。

だがそれは俺が無力な証拠でもある。そう考えてしまうと、なんだか心に穴が空いたような喪失感に苛まれ続けた。

やっと[双子座]に触れられたぜ……


因みに[双子座]の本質は“二面性“であり、戦闘用のスキルではありません。

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