242話:色を無くした男
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ありがとう…(成仏)
もう1人の俺と分離し、大罪悪魔並びに吸血鬼族の王の力までを無くしてから数日が経った。
俺から全ての力を無くそうが、時間というのは流れ続ける。ルミナス聖国とカルネージ帝国は現在も戦争中。国の騎士達は忙しく駆け回っていた。
「…………」
「どうしたの?ボーっと空なんか見て」
「ローザ……いや別に深い意味は無いよ。ただ世界って広いなーってさ…」
「何よそれ。黄昏てるの?」
「まっ、そんな所だよね。あはは…」
最近はこうして空を見て、時間を無駄にする事が増えた。ミルはあの体なのに戦いに戻らされてしまったし、稽古なんかは暫くしていないのが原因だ。
『……いや、そんなのはただの言い訳だな』
本当は自分でも分かっていた。
単純にやる気が出ないんだ。前に“強欲“に全てを奪われた時と同じく、全ての力を失った今、俺はなんのやる気も起きなかった。
現状から立ち上がろうとしなかった。
「それで?いつまでこうしているの?何か行動を起こさないなんて貴方らしくないわ」
「俺らしくない、か。そうかもな…」
ローザの言葉に、ふと窓に反射した俺の姿を見て自虐的に小さく笑った。
白い髪に赤い瞳の俺がそこには映し出されていた。
病的までに色白いその色はまるで脱色されたかのように、今の俺を映しているように見える。
「はぁ……こうして部屋に籠りっきりは体に毒よ。たまには外に出て、日を浴びなさい、いいわね?」
「うん……そうだね」
何を言っても無駄だと思ったのだろうか。ローザは最後にそう言い残すと、部屋から出ていってしまった。
「……外に出てみるか」
戦争中という事もあり、国に活気は無く、殆どの人は他国に避難している。その原因は六剣が“強欲“によって潰されてしまったからだ。
そんな人気の無い街に出ても仕方ないので、俺はその足で屋敷の裏にある訓練所へと向かった。
「懐かしいな」
訓練所に常備されている木剣を手に取ると、それを軽く振るって少し前の事を思いだす。
コルさんにここでボコボコにされた事。あれは痛かった……今もう1度彼と戦ったら、きっと俺はすぐに降参してしまうだろう。
「フッ!!ハァッ!!───っ…!?イテッ!!…………あはは、情けねぇー…」
少しの間稽古をしていなかったせいか、体のバランスを崩して転倒してしまった。
誰かに見られたくない程恥ずかしい姿に、俺は言い訳のように口からそんな言葉が溢れた。
「くそっ………………ちくしょう…っ!」
悔しさのあまり涙が溢れる。出来ない事がこんなに悔しいと感じるなんて何十年振りだろうか。
懐かしいと感じると同時に惨めすぎる。
俺の中からレヴィとサタンがいなくなった事で、精神的な面では良好。だが力が無いというのはこんなにも辛く虚しいモノなのか…
「剣の才能……それさえも取られちまったのかな……ただでさえ才能が無いってのに…」
普段の俺なら、0にリセットされたのならまたゼロから始める異世k~と言っていただろう。
だがそんな事さえやろうと思えなくなってしまった。何をするにしても無気力。何かをしなければ、そう考えても何も行動を起こそうとしない。自分の体じゃないように不快感だけが残る。
「大丈夫っ?アキラ君」
「…!ルナか…」
このまま続けても意味がない。そんな俺らしくない考えと共に訓練所から立ち去ろうとした時だった。
訓練所の入口に立っていたルナが、俺を心配そうに見ているのが見え、俺は急いで涙を拭った。
「なんだかこうしてちゃんと話すのは久しぶりだよねっ?」
「そうだな…」
「あははっ……えっと、剣の訓練してたのっ?」
泣いている所を見られた事で、つい素っ気ない返しになってしまったにも拘わらず、気まずそうにしつつも話を繋げてくれた。
「まあね……でもやっぱ俺は何をしてもダメだな。何の成果も残せそうにない…時間の無駄だった」
「そんな事無いよっ!継続は力なりって言うでしょっ?やり続けて無駄な事なんか無いんだよっ!」
この世界にその言葉がある事に驚きつつ、俺はボソッと出た自分の言葉にも驚いてしまった。
稽古を時間の無駄だなんて俺は絶対に考えもしない。それなのに俺は…。……こんな事を思ってしまったのは俺の強さをもう1人の俺に奪われたからじゃない。俺自身が腐ってしまったからだ。
「確かに無駄じゃなかったな……取り消すよ。でも今の俺は結果を残せそうにない…」
「うーん…結果を残すのってそんなに大事な事なのかなっ?でも確かに落ち込んだ気持ちのまま稽古しても実を結ばないよねっ!そうだっ!なら私が魔法を教えてあげるよっ!」
「え?ルナが魔法を?」
「うんっ!ほらっアキラ君前に『魔法を使えるようになりたーいっ!』って言ってたじゃないっ!丁度いい機会だし、このルナ先生が教えて進ぜようっ!」
「え、えっ?───おわっ!?ちょっ!」
天真爛漫な笑みで俺の手を引いていくルナ。俺は驚きつつ、転けそうになりながらもしっかりついていった(※引っ張られているだけです)
「────でねっ!それが魔導工学第二部の部分なのっ!ここまでで基礎って感じかなっ」
「……OK、大体分かった」
訓練所を離れてから2時間程経過した。現在はクリークス家の屋敷にある魔導書か沢山ある部屋にて、ルナからのマンツーマン指導で俺は撃沈していた。
「それから元素を元にした五属性魔法を初めに、派生した魔法があるの。ミルちゃんが使ってる氷魔法なんかがいい例だねっ。あれは水から派生した魔法なのよっ!」
「へぇー」
「後は無属性魔法って言って、特殊な効果をもたらす魔法もあるのっ!バフ魔法が多いのが特徴でねっ?大魔導師レベルになると、瞬間移動とか重力魔法なんかも使えるようになるらしいのっ!夢が広がるわぁ~っ」
「へぇー…」
「後はねっ!古代魔法って言って、凄い強大な魔法もあったそうなのよっ!?大海を一瞬で干上がらせる魔法とか、国を1発で堕とせる魔法とかっ!」
「…へぇ……凄いね」
「それから魔導育成学校・パルヒューム学院とかもあるんだよっ!因みに私はそこの卒業生なんだぁ~!えへへっ!」
「凄い凄い」
ヤバい……もう頭がショートしそうだ。後半……いや前半から、もっと言えば最初から何を言っているのか分からない。強いて分かるのが凄い魔法があるっ!って事くらいだ。
「─────それで、アキラ君はどんな魔法が使ってみたいとかあるっ!まあアキラ君は火に適正があるからその限りになっちゃうけどっ」
「ん~っ……あっ!爆裂魔法使ってみたいかも!こうバーッン!ドゴォーッン!!みたいな!」
「ん、ん~……どうだろう…?多分…アキラ君の魔力量じゃ厳しいんじゃないかなぁ…?それ以外!うん、それ以外なら私がミッチリ教えてあげるよっ!!」
「えっ?」
何やら勝手に話を反らされた気が……と、考えている間に俺の目の前にドサッ!と置かれた魔導書が。
え、何…?読めってか?この量を…?正気ですか?(ケン○バ)
「先ずは知識が無いと魔法への道は始まらないっ!さっ!私と一緒に頑張ろーっ!おーっ!」
「お、おー……」
17分後、アキラの頭は漫画のように爆発するのだが、それはまあ置いておきましょう。
その後アキラはルナ監修の元、ミッチリ知識を叩き込まれるのであった。本人曰く、ある意味ミルとの稽古並みに辛かった…と語った。
異世界にありがちな白髪主人公と化したアキラ君。本人曰く、なんか思ってたのと違う…だそうです。
因みに今のアキラは異世界に来てから1番弱い状態です。もうカスです、くそ雑魚です。その上メンタル面、精神面でもくそ雑魚と化しました。長所が何も無い主人公となりました。




