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239話:奪われる意識

久し振りに誤字報告をいただきました。

…大量に。

は、恥ずかしい限りです…!すいません!

「ア“ガ“ッ……ッ…!ぁぁぁぁあああッッ!!」


完全に制御を失った[黒水(こくすい)][黒炎(こくえん)]が俺の体を蝕み続ける。孤独、羨望、嫉妬、渇望、無力、憎悪、嫌悪、羞悪、憤怒……醜く黒い感情が俺の心を塗り潰す。


──いい機会だ、ここでちっぽけな関係を終わらせろ。大丈夫、コイツらは主人公を肯定する為だけに生きる人間。この異世界にはいくらでも代わりなんているさ。まあ……俺には仲間なんかいらないがなぁ?


「黙れぇぇぇ!!俺は…!俺はァ…ッ…!!」


脳内に響く俺の声。俺を縛るように纏わり付く俺が、泥沼へと引っ張っていく。どれだけ抵抗しても抜け出せない底無し沼。


「やめろ…!やめてくれ…ッ!!俺はそんな事望んじゃいない…!」


──本当にしょうもない奴だ。いいか?主人公になる為には覚悟ってもんが必要なのは俺なら分かるだろ?今がまさにその時って考えるんだよ…!ここを越えれば俺はもっと強くなれる!!


「嫌だ…ッ……!!イヤ、だ…!!頼むからやめてくれ……!───助けてくれ…っ」


俺の意識が消える。

俺じゃない俺に奪われる。

薄れていく意識を前に、最後に溢れてしまった情けない俺の声……







「大丈夫…!絶対に助けるからっ…!初めて出会った時のように…!」


白い吹雪と共に聞こえた少女の声。

それは何度も聞いた事があるかのように、心が満たされるような懐かしい感情。不思議と大丈夫だと思えるミルの声を最後に、俺の意識は途切れた。


────────────


頭を抑え震えるアキラ。

今にも消えてしまいそうな程にアキラが言った小さな声助けを求める声。それだけはアキラの本心だと理解できた。


「いひっ!いひひひひひ…!!あー…最っ高ぉ~…!」


だけど、今はもう違う。

あれはアキラだけどアキラじゃない。似て異なる所の話じゃない。アキラなのにアキラじゃない歪んだ存在だ。


「誰…!アキラじゃない!」


「いや、俺はアキラだよ。天道明星(てんどうあきら)、君がだぁ~いすきなアキラ君だよぉ!」


「違う…!!お前はボクの知ってるアキラじゃない…!」


「あーそっ。ならいいや───もう死ねよ」


「───っ!!」


地面を大きく抉って加速したアキラは一気にボクとの距離を積める。そしてそのままの速度を乗せてボクの横腹へと踵を蹴り込んだ。


『うっ…!人間が出せる力じゃない…!!』


内臓を潰されたのか、口の中に大量に溢れた血を吐き出し構える。


「次は…喰らわない」


「あっはは、どうかなー?今の俺ってか・な・り!強いんだよねぇ~」


速度、腕力、脚力、反射能力、戦闘センス。どれを見てもボクよりも何個も頭が抜け出ている。戦い方はアキラと似ている。だけど近くでずっと見ていきたから分かる。あれはボクの知っているアキラを模倣した力。その証拠に今のボクは死んでいない。あの力なら即死してもおかしくないからだ。


「強い?違う。貴方はアキラを真似ているだけの()()。力任せに暴れているだけの子供…!」


「……は?俺が偽者だぁ?力任せに暴れてる餓鬼だぁ?」


「そうだ…!────っ」


ボクの言葉を聞いた瞬間アキラは固まり、下を向いて体を小刻みに震わせる。

そして次の瞬間にボクの全身を包み込んだ激しい憤怒と殺意。ただ立っているだけなのに、滲み出るその気配はボクの足を震わせる。



「───俺は偽者なんかじゃねぇッッ!!俺が本物だぁぁぁぁぁ!!!!」


全身から滲み出る殺意を纏ったアキラは、更に激しい力で地面を蹴り混みボクへと接近してきた。

先程よりも素早いそのスピードは、もはや人間では対応できない速度に到達していた。だけど…!


「───同じ手は食わない…!!」


先程と同じ行動と、今のアキラが怒りに囚われていたのが功を奏した。ボクは剣の腹でアキラの拳を受け流し、そのままアキラの背中を蹴って転倒させる。


「ハッ!オモシレぇ、主人公を肯定するしか能がない人間が中々やるじゃねぇか。だがそれで勝ち誇ったつもりか!?」


流石はアキラの偽者なだけある。アキラは素早く体制を整えてボクへと吠える。その視線は思うようにいかずに癇癪を起こしている子供のようだ。


「勝ち誇った…とは違う。もうアキラは詰んでるよ」


「ふざけんな…!俺はお前如きに遅れを取る人間じゃねぇんだよ!!」


やはり目の前のアキラは本当のアキラじゃない。これがいつものアキラだったら、今自分が置かれている状況に気が付かない訳がない。



「[血牢之砦(けつろうのとりで)]っ…!」


「それっ![宝虹の鎖(アル・ペンタグラム)]っ!!」


空から降り注いだ紅く長い無数の棒。それは次々とアキラの周りを取り囲み、ほんの数秒で紅い鉄檻が完成した。

その紅い鉄檻に意識を奪われている隙に、ルナが続けて全属性魔法を酷使して虹色の鎖で檻の中のアキラを拘束した。


「チィ…!?雑魚の分際でぇ…!!この程度で俺を縛ることなんか不可能だ!」


アキラには相手の力を消す能力がある。それを使ってしまえばあっという間に脱出されてしまうだろう。だけどソルが言っていた仮説が通るなら…!


「───ッ!!?なんだこれは!?」


「お前の力の種は割れてるんだよ、アキラ!!ほら食らえっ!!」


ソルが立てた仮説。それは聖属性魔法を使えば拘束時間を伸ばせるのではないか、というのだった。そしてソルの言う通り、悪魔の力を所持しているアキラには効果覿面だった。全属性魔法を使えるルナだからこそ出来る芸当だった。


そしてソルは檻の中で鎖によって縛られているアキラへと空色の塊を投げると、それはアキラに当たる瞬間に破裂。そして中に入っていた液体がアキラへと付着した。


「ッ!!ふざけるなふざけるな…!!雑魚がモブがゴミが……!!こんな事あるわけねぇ…!!」


付着した液体は一瞬にして粘着性の物質へ変わり、更にアキラの動きを封じていく。


「僕自慢の粘着性の爆弾だ!これで少なくとも十数秒は動けない!!後は頼んだぞ、ミルっ!」


「ん…!任せて…っ!」


アキラを封じるには動きを完全に止めなければ勝てない。その為にローザ、ルナ、ソルが放った拘束技さえも、アキラは今にも突破してしまいそうだ。


──だからこれで終わらせる…!


「痛みは一瞬…!だから少し我慢してて、アキラ…!!───[天牢雪獄(てんろうせつごく)]っ!!」


自分が出せる最高威力の技。

利き腕ではない左腕で放つのは初めてだが、絶対に成功させる…!アキラの為ならボクはどんな事だって乗り越えて見せる…!!


「はああああああっ!!」


猛吹雪を起こし、それを剣に全て乗せる。

絶対零度の息吹を纏ったその1撃は完全拘束されているアキラへと直撃した。

辺り一面を凍結させた猛吹雪。そしてその吹雪が分散し、アキラがいた場所には巨大な氷塊が生まれた。中央に凍結されたアキラを入れて、、

ローザの血で作った檻は、同族の力を弱める力があります。アキラが吸血鬼族(ヴァンパイア)の力を使った時の対策です。

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