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238話:ウソつきの猛攻

仲間である筈のアキラと戦う覚悟を決めたローザ、ルナ、ソルはそれぞれが最も動ける位置へと移動し、次々とアキラへと攻撃を仕掛ける。


「[雷痺(エレキショック)]っ!」


「ネットバーストッ!!」


後方からルナが放った電気魔法と、それに続いて発砲したソルの片手銃。

だが戦う意思はあっても、相手は仲間であるアキラ。2人は殺傷能力の無いスタンさせる魔法と、捕縛用ネットが出る銃弾を発砲する。


「甘いな…。遠慮なんかしてんじゃねぇよッ!!」


「「っ!!」」


アキラは怒気を強く込められた声でそう怒鳴ると、ルナの魔法を消滅させ、ソルの弾丸を黒い水流で受け流した。

そして反撃の黒い炎でルナとソルを容赦無く放火した。


「ほんっとに容赦無いな…!」


「前髪…あっ良かった、焦げてない…っ」


煙から晴れると、そこにはまたシールドを展開して攻撃を防いだソルとルナの姿があった。2人とも怪我は負っていない。



「っ!!嘘でしょ…っ!?」


「奇襲か、悪くは無いが……ローザ、君の邪剣はどうした?血器生成術で造り出した剣では俺は殺せないぞ」


背後からの突然の奇襲を仕掛けたのはローザだった。自身の体を小さな蝙蝠の大群へと変化させた高速移動の後に、アキラの背中を斬りつける。激しい出血をしていた。にも拘わらずアキラは涼しい顔をして、ローザの紅い剣をその手で掴み、破壊した。


「ミル!貴女も戦いなさい!!アキラは本気よ!戦わなければ本当に殺されてしまうわ!!」


新たに造り出した紅い無数の刃をアキラへと飛ばしつつ距離を取ったローザは、ボクへとそう叫びながら次の攻撃体制へと入る。


「ローザの言う通りだぞ、ミル。俺はもうお前らの仲間なんかじゃない。世界から憎まれる“悪“。ここで止めないと…世界は悲しみに包まれるぞ?───だからお前も本気で来やがれッ!!」


空から降り注ぐルナの火炎魔法をまたしても黒い水で全て呑み込んだアキラは、ローザのお腹へと蹴り入れて吹き飛ばし、地面を強く蹴り込むと黒い炎を残しながら一気にボクへと接近してきた。


「くっ…!本気なの…!?」


「……ああ、俺は本気だ。全ては俺の目的の為…俺はお前らを利用する」


「……っ」


嘘だ。アキラは嘘をついている。

だけどその裏では本当だという気配も感じる。とても不思議な感情……師匠であるボクでさえ理解しきれない強い感情…


「だけど…!ボクは今の言葉を信じないっ!」


「…!このっ…!俺は嘘なんかついてないッ!!」


何かに迷うような表情を浮かべたアキラは、そう叫ぶと同時に全身から黒い炎が包み込んだ。通常の人間ならほんの数秒で焼死してもおかしくない火力で焼かれたアキラは、声にならない絶叫と共に後退していく。


「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇッッ!!俺は嘘なんかついて────ア“ア“ア“ア“ア“ア“ッッ!!?お前は喋るんじゃねぇよぉぉぉ!!」


「なに…?なんなの…!?」


黒い炎に包まれたアキラは、首を掻きむしりながら叫び続ける。もはや見慣れたアキラの面影はそこには無く、あるのは全身炭のように体を焦がしもがくアキラだった。


「違う違う違う!!俺は嘘なんかついてない!!嘘を嘘で塗り固めた────黙れっつってんだろうがァァァッ!!」


またしても激しい炎上と共に熱風がボクを吹き飛ばす。凄まじい熱を帯びた風に、地面の草や花は次々と萎れていく。


「離れなさいミル!今のアキラは…何か様子がおかしいわ…っ!」


とても耐えられそうにない強い熱風を前に、ボクが[終雪(しゅうせつ)]の一部である[氷冠(ひょうかん)]から作り出された氷の塊を盾にしていた所にローザ達も駆け付ける。


「それだけじゃない。見ろ、アキラが出現させた悪魔達の様子もおかしいぞ…!」


ソルが指差す先には、確かに様子がおかしい2匹の悪魔がそこにはいた。昨日までの意識が無くなったかのように暴れ狂うレヴィアタンと、笑みを浮かべた紅い髪の女性がルミナスの騎士を燃やし尽くしていた。


「悪魔の本性を見た、って感じ…。今までとは比べ物にならない程凶悪ね…っ」


「こんな場所にいたら命がいくつあっても足らないぞ…!」


その圧倒的な力を示す悪魔達を前に、震えるルナと下唇を噛み、そう苦しげに呟いたソル。

ローザは何も言わないが、その表情は苦しげだ。


「でもアキラが…!」


「ええ…分かってる。あれが嘘だって事は私も理解しているわ。彼なりに何か目的があったんでしょうけど…きっとあれは予想外の事態の筈よ…!」


ローザの言葉にルナとソルは頷く。

やはりアキラのアレはイレギュラーのようだ。ならばボクはアキラの仲間として、師匠として救わないといけない。


「皆…!アキラを救うために……力を貸してくれる…!?」


「ああ!」「もちろんっ!」


「当然でしょ?」


皆は当然だといった表情で頷き、小さく笑う。その間にも絶叫と共に暴れ狂うアキラはへと視線を向ける。


「悪魔の力が暴走しているのなら、アキラを一時的にでも気絶させられれば…!全員で連携すれば、今のアキラならきっとボク達の攻撃も届く…!」


「分かったわ。アキラへの一撃を与えるのはミル、貴女に頼むわ。残念だけど、今の私はそこまでの力を出せない……ミルがこの中で1番の力を持ってる。やれそうかしら?」


ローザは腕を抑え、苦しげにそう言ってボクの右腕があった場所へと視線を向けた。

ボクには利き腕が無い。それを彼女は心配してくれているんだろう。


「やれる。だけどそれには皆の協力が必要不可欠…!」


「後ろからの援護は任せてっ!アキラ君を助ける為に、私張り切っちゃうよ!!」


「勿論俺も力になる。……この中で1番弱いけどな」


「もーう!ソルはすぐそんな事言うんだからっ!」


自虐気味に苦笑いを浮かべたソルを軽く小突いたルナ。この輪のムードメーカーである2人によって、少しの笑みが生まれた。


「ん…!じゃあ皆、行くよ…!」


そしてボク達は動き出した。

自分自身を騙してまで何かを考え、苦しんでいる大切な仲間であるアキラを救いだす為に。

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