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230話:記憶の鍵

地震が怖かったので、初投稿です。

「悪いな、オレしかいないからこんな粗茶しか出せねェ」


「いや、気にしなくていいよ」


応接室へと通された俺達は、ジェーンが淹れてくれたお茶をすする。屋敷内はやはり使用人はおろか、ジェーンの兄弟までいないようだ。


「……なあアキラ、今世間に出回っている噂は本当なのか?」


お茶を飲んで、一息ついた所でジェーンが話を切り出してきた。その目は軽蔑するような目線ではなく、どこか心配するような目線だった。


「ああ、本当だ。現に隣にいるコイツが俺と契約している悪魔だ。名前はレヴィアタン、俺はレヴィと呼んでる」


俺がそう紹介すれば、ジェーンの視線はレヴィへと向く。レヴィはジェーンを逆に睨み付けるような視線を送っている事が気になるが、流石に手を出したりはしないだろう。


「それはお前……自分がどうなるか分かってて大罪悪魔と契約しているのか…?」


「ああ。どうなるのかはこの身をもって、既に体験してる。それでも弱い俺には…この力が必要なんだ」


「そうか……アキラがそこまで覚悟をしているなら、オレからは何も言わない。だがこれだけは覚えておいてくれ、お前が死んだら悲しむ親友がいるって事をな」


何を言われるのか、俺はビビっていた。軽蔑されるかとしれないと怯えていた。

そんな俺にジェーンはニッと笑って俺の肩をポンポンと叩いた。


「…ありがとうな」


心配してくれる親友がいる。それだけでも今までの罵声によって受けた傷が癒えていく気がした。

だがその反面、申し訳ない気持ちが一杯になり、今にも心が潰れてしまいそうな程の罪悪感が襲う。


「っ…!」


「大、丈夫…大丈夫、だから……」


レヴィはそう小さく発し、俺の手を強く握り締める。その手からは確かな温もりを感じた。


「えっと、レヴィ……さん、でいいのか?アキラはかなり無茶な事をしでかすから、本当に目が離せない奴だ。だから何かあった時は頼んだ」


「言われる、までも…ない。わた、しのアキラ……はわた、しが守る…」


真剣な目線と声色でレヴィへとそう言ったジェーンは、レヴィの強気な返しにニッとまた笑った。


『誰にも心配されなくてもいいように、誰にも悲しい思いをさせないために……俺はもっと強くならなくちゃいけない』


レヴィとジェーンが何かを話す間に、俺は出されたお茶を口に含んで瞳を閉じ、1秒足らずで瞼を開いた。

また1つ、覚悟が決まる。


「所でジェーン、お前……その怪我はどうした?誰にやられた?」


「あァ、これな……へへッ、ヘマしちまッてよ」


「誤魔化すなよ。誰にやられたのか聞いてるんだ」


再開した時からずっと気になっていたジェーンの目元の傷。以前まではそんな傷は無かった。

それだけじゃない。所々に包帯を巻いているのが見える。

誰にやられたかは分かっていた。今にもマグカップを割ってしまいそうな程に、俺は今激しい怒りを帯びていた。


「……今から1週間程前の事だ。この国に突如“強欲“を名乗る“悪魔宿し“が現れやがッたんだ」


「ッ…」


心の中では嘘であってくれと願っていたこの気持ちは、呆気なく砕け散る。やはり新聞の記事は嘘ではなかったようだ。


「一瞬だッた。あの男は一瞬でこの国を炎で包みやがッたんだ…!当然オレ達六剣は国を守る為に戦った……だが奴の規格外の力を前に、六剣は1人、また1人と倒れていッた……」


「…!本当に負けたのか…!?聖剣士が()()もいて…!」


「…?確かにオレらは“強欲“の前に破れた。だがアキラ、ルミナスに聖剣士は()()だぞ?」


「……え?──────うぅ…ッッ!!?」


ジェーンの言葉を聞いた瞬間、激しい頭痛が俺を襲った。視界が激しく歪み、足に力が入らずにその場に倒れてしまった。


「おいアキラッ!?しッかりしろ!おいッ!!」


「し、かり…して…!」


ジェーンとレヴィの声が聞こえてくる。だがその言葉は全く聞き取れず、頭痛だけが俺の中を支配した。

開きかけた扉を強制的に閉めたような不快感。その扉を閉めたのは紛れもない自分だった。何故だ?何故そこまで否定する。何故そこまでして“ミル“を思い出させようとしない…?








「もう平気なのか?」


「ああ…心配かけてすまない、もう…平気だ」


暫く経った所で頭痛は引いた。

原因はやはり“ミル“と呼ばれている子で間違いない。とても大事な存在の筈なのに、俺はその大事な存在を否定している。訳が分からない。


「それでさッきの話の続きだが……その“強欲“は俺達を完膚無きまで痛め付けた後、4本の聖剣を奪ッて行きやがッたんだ…!」


「一体何の為に……“強欲“というその名の通り、貴重な剣が欲しくなった…とかか?だが聖剣は選ばれた所持者にしか使えない筈だが…」


「理由はオレらにも分からねェ……だがあの男はオレらから一瞬で聖剣を奪ッたのは紛れもない事実だ。4本の聖剣達は抵抗していたがな」


成る程、いくら相手の物を奪う“強欲“とはいえ、聖剣の心までは奪えないのか。

だがそれなら尚更分からない話だ、何故扱えもしない聖剣をアイツは集めている?


『展開予想をするのなら……聖剣を全て揃えれば何かが生まれるとか、どこかの鍵が開くとか……そんな所だろうか……うーむ…情報が少ないな』


「それでアキラ、もうミルさんの所には行ッたのか?彼女、かなり重症を負ッていたから─────ッておい!どこ行くんだ!?」


ジェーンの言葉が耳に届いた瞬間、俺は走り出していた。どこに向かっているかは分からない。それはまるで引き寄せられるかのように全力で走っていた。


「すまないジェーン!!俺は今からミルに会いに行ってくる!!」


屋敷の外へと出た俺は、窓から顔を出しているジェーンにそう叫ぶと、また走り出した。

その足はまるでミルがいる場所を知っているかのように……いや、失くしていた記憶を辿っているかのように。






「はあ…!はあ…!─────ッ!?」


「おっと……大丈夫ですかな?…おや?君は…」


全速力で走っていた俺は、曲がり角で誰かに衝突してしまった。圧倒的ラブコメ展開、だがぶつかったのはまさかの燕尾服を着たザ・執事といった渋いおじさまだった。しかも俺はかなりの速度で走っていたのに、弾かれたのが俺って言うね……


「おお…!やはりアキラ様ではありませんか!」


「えっと……」


「お忘れですか?ランカスター家の執事頭、マグ・カルキンでございます」


華麗に礼をし、そう名乗った男性。マグ・カルキンさんに、俺はポカンとしながら見つめていると、スッと手を差し出された。


「顔付き変わりましたね。一瞬誰か分かりませんでしたよ。この区域にいるという事は、()()御嬢様にお会いに来たのでしょう?」


「…!ミル……ええ、そうです」


「では共に参りましょう」


誰だか分からない執事だが、向こうは俺を知っているかつ、ミルの存在を知っていた。

つまりこの人は俺の消えている記憶の人物の1人という事だ。どうやらミルに関連している人物まで消されているようだ。

俺はそう思考しつつ、マグ・カルキンさんに付いて行った。

マグさんは絶対強い。

てか異世界の執事とメイドは大体強い(クール系に限る)

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