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228話:嫌な予感の正体は

「アキ、ラ…!こっち、の方角は…不味い、よ…!」


「そんなの分かってる…!でも…どうしても俺はルミナスに行かなくちゃいけないんだ!!」


レヴィからやめるようにと言われるが、俺は止まらずに高速で飛行していた。

向かうは先程迂回した龍の山岳(ドラグ・マウンテン)。危険かつ俺の体が持たないという理由で迂回を選んだが、今は身の危険よりも到着時間を早める必要がある。早くつけるなら俺の体がどうなろうがいい。


「…なんて、そんな事を言ったら()()()()()()()()()()()。──────ッ…!」


激しい頭痛が襲う。

靄の掛かっている少女の姿が見え隠れしており、後少しでその子を思い出せる。“ミル“という少女の記憶を取り戻せる。


「ガァァァグルルルルガァァァァッッ!!」


行く手を遮る龍が俺に向けて火炎ブレスを放つ。熱だけでも生き物を殺せてしまいそうな程の熱を持つその熱光線は、俺の全身を貫く。

だか俺には相手からの痛みを感じず、この体が骨だけになったとしてもすぐさま再生が始まる。


「がぁぁぁぁぁ…!!────邪魔を……するんじゃねぇぇぇッッ!!」


気が狂いそうな激痛を抱えたまま、俺は龍の横を通り過ぎる。腕には[黒水(こくすい)]を纏わせており、光沢のある鋭い刃が龍の首を切り落とす。


「アキ、ラ…!無茶はダメ、だよ…!そんな戦い、方じゃ……精神、が持たな…い!」


「精神……確かにそうかもな。でも…俺は行かなくちゃいけないんだ…!理由は自分でも分からない……だけど俺の心がそう言ってる気がするから…!」


この気持ちさえも何なのかも分からない。今までにこんな思いをした事が無かったから。

だけど初めてだからこそ、この思いに従ってみたい。それが良い方に転がるのか、悪い方転がるかは分からないが、俺は自身が出せる最高のスピードで龍の山岳を進み、次々と現れる龍達を殲滅して行った。


────────────


それなら数時間、休みなく飛び続けた俺は疲労さえも感じる事無くただただルミナス聖国を目指して進み続けた。

いくら俺に主人公補正が無いとはいえ、やはり龍の山岳を越えるには数多の危険が待っていた。お陰で俺は3回程死ぬレベルのダメージを受けた。だがその甲斐もあって龍の山岳を突破する事には成功した。


「ゴホッ……なんだ?さっきから凄い煙い…火事か?」


「この、煙……火薬の臭い、がする。これは人間同士、が戦っている……時の臭い、だ」


「人間同士の戦い?それってもしかして…戦争とかか?」


「分から、ない……でも人、の悪感情……は凄い伝わって、くる」


神妙な表情でそう言ったレヴィに、俺はまた戦争が起こるのかと唾を飲み込む。

しかもこの煙が発生している場所の方角は奇しくもルミナス聖国。嫌な予感がしない訳がなかった。


「急ごう、レヴィ…!嫌な予感がしてしかたない」


「アキ、ラがそう言うなら……わた、しは従うよ」


頬を少し赤らめ、口角を若干上げて笑うレヴィ。可愛いのに、目のハイライトが無いせいで少し病みを感じてしまう。



「…?誰だ!」


話が終わり、一時休憩の為に休んでいた倒木から立ち上がった時だった。

枝を折る音がした。敵意は感じず、魔物や天使の類いでも無い。


「誰だ?安心してくれ、こっちに戦う意思は無い。だけど出てこないなら…分かるな?」


「ま、待ってくれ!い、い今出るっ!」


少し圧を乗せた言葉に反応したのは男の声だった。少し震えている声と、俺を認知していたにも拘わらず出てこなかった事を考えるに、隠れている男も俺を悪だと認知しているんだろう。


「頼む…!殺さないでくれ…!」


「素直に出てきてくれたんだ、殺しなんかしないさ。それで…どうしたんだ?そんなボロボロの格好をして……」


出てきたのは30代後半の男が1人と、その妻らしき30代の女性。そして5歳程の子供が1人。どうやら家族らしいが、その格好はボロボロであり、よく見れば足元などに怪我を負っている。走って逃げてきたんだろうか。


「俺達は戦争から逃げてきたんだ…ルミナス聖国とカルネージ帝国の戦争から」


「何ッ!?またカルネージと戦争が始まったのか!?」


「ああ……こうなってしまったのも全て“強欲“のせいだ…!アイツさえルミナスに来なければカルネージから攻められる事も無かったんだ…!ちくしょう……」


「……分かった、情報を感謝する。これ、少ないけど何かの足しにしてくれ」


俺は少ないが大金貨を男に渡すと、すぐさまルミナス聖国へと急いだ。段々と早くなっていくその足は、やがて空へと舞い上がる。


何で俺がこんなにも焦っていたのか、漸く分かった。ルミナス聖国には守らなくちゃいけない何かがある。だからこんなに俺は焦っていたんだ。


「ルミナス聖国に彼女がいる…!ミルがきっといる…!!」


やっと頭の靄が無くなる、漸く彼女に、ミルに会える。そう思った矢先だった。



「え…?」


俺の目でもルミナス聖国が見える場所にやって来た俺はポツリとそう小さく溢れた。

国から上がる黒煙。国中を囲う敵国の兵士達。ボロボロの城壁。国が堕ちるまで、もう時間は掛からなそうな程に劣勢のルミナス聖国に、俺は呆然としたまま見下ろしていた。

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