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222話:俺は止まらない

感想が三件も頂けました!どんな内容でもホントに嬉しいです!貰えるだけありがたいですからねw

そして閲覧数が15万になりました!深くっ!深く感謝を!

「久し振りだな、ここに来るのは」


真っ暗で先の見えない不思議な空間。ここには今まで俺の体内に入った悪魔達が集まる場所だ。

俺はそのまま以前と同じ道を歩く。足首まで濡らす黒い水が少しもどかしいが、あの場所へと到着した。



「問掛。君がテンドウ・アキラだな?」


首が鎖に繋がれた血のように赤黒く、長い髪の女性が足を組んで椅子に座っていた。

ただ座っているだけ。それなのにピリピリと感じるこの気配、奴はとんでもない大物だ。


「……ああ、そうだ。アンタが“憤怒“と呼ばれているサタンだな?」


「肯定。その通りだ。外では君の契約したレヴィアタンが暴れている。故に単刀直入に言おう。君の体を私に渡して欲しい」


「ははっ、笑えねぇ冗談だな。つまんねぞ?」


「愉快。フッ…冗談ではないさ、私は本気だ」


お互いに小さく笑い合う。まるで世間話をして友達のように。

だがそれもほんの一瞬。笑い声は消え、両者鋭い目線と共に殺意を飛ばす。


「はいそうですか、って俺の体を渡す訳無いだろ?逆に言おう、お前が俺に力を貸せ」


「愚昧。それこそ何かの冗談だろう?何故私が君に力を貸さなければならない」


お互いに意見を変えるつもりは毛頭無い。いつこの場所で戦いが始まってもおかしくない。

向こうは無表情で、どこか俺を試すように、舐め回すようにジロジロと見ている。それに比べて俺は冷や汗が止まらない。どれだけ強気になっていても、奴が放つ気配は身が震えてくる。だがここで折れては俺の体は乗っ取られ、目的を果たせない。


「変化。体が震えているな、怖いのか?私が」


フッ…と小さく笑い、目を細める。

大当たりだよちくしょう…!


「…どうかな?そういうブラフかもしれないぜ?」


「虚言。嘘はよくないな、悪魔()の前で人間の感情を読めないと思っているのか?」


これもまた愉快だと言わんばかりに微笑みを浮かべるサタン。奴が笑い、俺の心情を看破される度に震えが止まらない。

これまでの“怠惰““嫉妬““色欲“とはタイプが違いすぎる。純粋に俺を屈服させようとしているのが強く伝わってくる。


「危険。どうやら外は凄い事になっているようだ。ベルフェゴールが上手く避けているようだが……ふむ、それも時間の問題だろうな。故に有限。時間がおしい。早々に終わらせようか」


「ッッ─────!!!!」


鎖を鳴らして立ち上がったサタン。その2つの赤黒い眼と俺の眼が合った。


──その瞬間、足腰に力が入らない程の恐怖が襲った。

ダメだ……これはダメだ。死ぬ。相手が悪すぎた。七つの大罪内ではルシファーの次に強く描写される事の多いサタン。相手にするにはあまりに早かった。

……いや違う。例えサタン以外の6人の悪魔を手懐けられたとしても、今の結果は変わらないだろう。俺の心が未熟だから……


「離別。今から君の人格を殺す。君とはこれでお別れだ。───辞別。さようなら」


「────────」


俺が恐怖に震えている内に、目の前へとやって来たサタンは静かに俺へと手を向けると、何の感情も感じられない“無“の表情で別れの言葉を言った。抵抗する時間さえ与えずに、、


────────────


「終結。ふむ…終わってしまえばどこにでもいるような人間でしたね」


目の前にある黒炭となったアキラだったモノを見つめながら小さく呟いたサタンは、自身の首に付けられた鎖を外そうと手を掛ける。

だが外れない。


「奇怪……何故外れない?この体の持ち主の人格は完全に死んだ筈…────っ…!?まさか…!」


自身の足首に感じた掴まれる感触。

まさかそんな事はあり得ない…!そう心で叫ぶように下へと視線を向けると、真っ黒い人形のモノがしっかりとサタンの足を掴んでいた。


「このッ…!!放せッ!!」


能面のようだった表情を変えて、アキラだったモノへと強い怒りの感情を向けたサタンは、その長い足でアキラだったモノを蹴り砕く。


「はあ…!はあ…!こんな事、あり得ない…!たかが人間に耐えられる筈がない…!」


特定の感情を強く表に出してしまうような“七つの大罪“の悪魔が自身を偽って付けていた仮面。それが1度外れてしまえば元に戻すには時間が掛かる。


「い、生きてる…!?何で────」


「ッ!?生き返るんじゃねぇよッ!!」


体が再生したアキラを、すぐさま赤黒い炎で黒炭へと変える。

ここは精神世界。ここで如何なる暴力を振るおうが殺そうが、現実世界の体には何の問題も無い。つまりこの場所では殺せない。それが分かっていたサタンが取ったのが今の行動だ。

ここで“死ぬ“という体験を味わいさせ、圧倒的な力の前に絶望させ心を折る。そうすれば脱け殻となったこの体を奪える。


筈だった。


「はぁ…!はぁ…ッ…!俺はまた…死んだのか…」


「何でッ…!くっ!!」


これで3度目だ。アキラはもう3回死んだ事になる。それでも精神が崩壊せず、戸惑い恐怖に震えながらも1歩ずつサタンへと近付いてくるアキラに、恐怖を覚え始めたサタン。


「あり得ない…!全身の皮膚を焼き払い、体の水分を蒸発させ、内臓を焼き尽くされたんだぞ…!?人間が耐えられる苦痛じゃない…!!お前は痛みを感じないのか!?死ぬ事への恐怖、死ぬまでの苦痛を感じないのか!!?」


これで12回目。何度殺しても、決して止まる事の無いアキラへとそう叫びながらサタンは1歩、自然と後ろへと向かっていた。


「イテェよ…!いや、痛いなんてもんじゃないッ!!今までに体験した事が無いような激痛が死ぬギリギリの瞬間まで覚えてやがる…それも何度も何度な…」


「だったら何故止まらない!?何故諦めない!?全てを捨てて、諦めてしまえばその苦しみを味わう事が無いと言うのに…!!」


「…確かお前の言う通りだ。こんな痛い思いをするなら逃げた方が絶対にいい。何度も自分の意思で死ぬ体験をするのは狂人だろう。だが俺には夢がある、目標がある…ッ!例えお前らみたいな化物相手でも俺は止まらない。怖くても、辛くても、惨めでも、無力でも……諦めるのは最後の最後だけでいい…!」


尻餅をついたサタンの前へと立った俺は、深呼吸の後に視線を反らさず真っ直ぐとサタンの眼を見つめる。


「俺はさっきも言った通り無力だし、お前に攻撃されれば即死しちまうくらいの雑魚だ。だからお前の…サタン、君の力が必要なんだ。どうか弱い俺の力になってくれないか?」


俺は膝を折り曲げ、サタンと同じ目線にしてそう懇願し、サタンへと手を差し出した。弱くてバカで惨めな俺の手を取ってくれる事を祈って。

テンドウ・アキラ。

なろう出身の頭弱い系主人公。

自分の事をなろう系主人公だと思い込んでいる30歳童貞。

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